立ち退きの査定で地権者が押さえるべき知識とは?土地区画整理事業や都市計画道路への対応方法を紹介
最終更新日: 2023年11月03日
- 自分の住んでいる地域で土地区画整理事業等が計画され、立ち退きを要求された
- 施行者側(行政)の提示した立ち退き料は、少ないような気がする
- 立ち退きの査定について専門家から詳しく意見を聞きたい
お住まいの地域で、国・地方自治体が進める土地区画整理事業・都市計画道路等の公共事業が計画され、地権者の方々が立ち退きを要求される場合もあります。施行者側から立ち退き料は提示してくれるものの、地権者が納得し難い金額・条件かもしれません。
そこで本記事では、多くの立ち退き問題に携わってきた専門弁護士が、公共事業による立ち退きの査定額の内訳、立ち退き料を増額するポイント等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。
- 立ち退きの査定額は土地建物の売却金額の他、移転に伴う費用、迷惑料等も考慮される
- 施行者側から立ち退き料を提示されても、すぐに同意せず慎重に金額等を確認する
- 立ち退きを増額したい場合は専門性の高い弁護士のサポートが有効
立ち退きでの査定が必要な状況
保有している土地によっては、地権者が公共事業による立ち退きを検討しなければならない場合もあります。公共事業による立ち退きを検討する場合、地権者が保有する土地を専門家に依頼して査定することは有効な交渉材料となります。
国・地方自治体の公共事業による立ち退きは、次の2つがあげられます。
- 土地区画整理事業:単に「区画整理」とも呼ばれる。地域の土地を安全かつ効率的に利用するため、土地の形を再編する事業。ただし、対象地域の地権者の土地は少しずつ削られ再配置されてしまう。
- 都市計画道路:交通の安全・効率性のために新たな道路を造る、または拡張する公共事業。交通事故の軽減や渋滞緩和に役立つものの、対象地域の地権者は土地の全部または一部から立ち退く必要がある。
いずれの場合も、地権者の所有する土地・建物に重大な影響を与える公共事業なので、立ち退き料が発生します。
立ち退き料を決めるときには、施行者側も対象地域にある私有地、建物、工作物、立木等を確認し、査定のための情報を収集します。
立ち退きの査定額を決める主な要素
査定額は私有地、建物の評価だけではなく様々な費用が考慮されます。
- 土地建物の売却金額
- 移転に伴う費用
- 迷惑料
- 店舗の場合の補償
こちらでは、それぞれに関する費用を解説します。
土地建物の売却金額
まずは立ち退き対象となる土地・建物の価値が評価されます。
土地の場合は立ち退きの範囲となる面積分の損失 ・工作物(例:塀・壁等)・樹木等が対象です。土地に関しては次の情報を基に査定されます。
- 公示価格:国土交通省の審議会である土地鑑定委員会が公表する土地の価格
- 基準地価:各都道府県が主体となり公表する土地の標準価格
たとえば、公共事業で失う土地面積が400㎡で、近隣の公示価格1㎡あたり40万円だった場合は次のように計算します。
一方、建物の場合は築年数(新築か否か)や構造(木造か鉄骨造か等)、用途等を基準に査定されます。
移転に伴う費用
移転に関して、地権者が実際に支払う費用も立ち退き料の対象です。内訳は主に次の通りとなります。
- 引っ越し費用:引っ越し会社への代金、梱包や運送、移転通知費用等
- 一時的に賃借する住居の費用:新しい建物が完成を待つ間、賃貸アパート・マンションの賃料や不動産会社への仲介手数料、敷金等
一律に「移転費用は〇〇万円」とは定められていません。
引っ越しに伴う費用や賃貸物件の賃料等により、移転に伴う費用の差が出ます。
迷惑料
立ち退きをする地権者は、新しい住居を建てる手間の他、現在の土地・建物を離れるストレスに悩まされたり、新しい生活環境に適応できるのか不安になったりするはずです。
土地・建物のような目に見える損失だけではない精神的な損失(疲弊する)部分も、迷惑料(慰謝料)として査定されます。
ただし、精神面の損失部分は数値化が困難で、迷惑料はどれくらいなら妥当なのか、弁護士のような法律の専門家に相談した方が無難です。
店舗の場合の補償
店舗の場合は立ち退き対象となっている業種や業態、規模、立地で異なります。土地・建物を所有し、店舗を経営していた場合、立ち退き料が非常に大きな金額になる可能性もあります。
また、店舗の立ち退きのときには次の費用も補償しなければいけません。
- 店舗収入
- 固定経費:雇用している従業員の給与や賞与および福利厚生費など
- 得意先を失うなどの機会損失
- 改装工事費用
そのため、住宅の場合より高額な立ち退き料となります。たとえば、店舗を賃貸して事業を行っていたケースでも費用相場は次の通りです。
- 小規模の物販店舗:約300万円~600万円
- 美容院:約400万円~500万円
- コンビニ:約7,000万円~1億円
- 診療所・歯科医院:1億円~2億円
査定によって公共事業の立ち退き料を増額するポイント
施行者の提示した立ち退き料が自分の理想に近いなら、そのまま立ち退きに合意しても構いません。
しかし、自分の正確な立ち退き料を知り、交渉に活かしたいなら、次のようなポイントを押さえて対応しましょう。
一回で合意しない
施行者側の提示した立ち退き料が、安いのか高いのかピンとこない、納得できる金額にほど遠いと感じたら、すぐに合意しない方が無難です。
施行者側は、やはり立ち退き料が安く収まるのを望んでいるはずです。そのため、一回目の提示額は施行者側に有利な金額となっているかもしれません。
まずは即答を避け「提示額は検討しておきます。」と返答し、地権者側の方で改めて査定してみましょう。
土地・建物の値段は不動産会社に査定を依頼する
土地の売却価格の相場に関しては、公示価格や基準地価で査定は可能です。しかし、建物の評価額の場合は築年数・構造を考慮する等、複雑な算定が必要です。
そのため、不動産会社に査定を依頼し、建物の評価額を正確に算定してもらいましょう。不動産会社に評価額を出してもらい、あまりに施行側の価格が低い場合は、交渉して立ち退き料の増額を図ってみましょう。
立ち退きの専門弁護士への相談
立ち退き料に納得がいかず、施行者側と交渉が進まなかったり、頑なに立ち退きを拒否したりすると、最終的には土地が収用され、強制的な立ち退きを余儀なくされるおそれもあります。
ただし、交渉段階でうまく立ち退き料・条件がまとまれば、地権者側に有利となるケースもあります。
地権者側に有利な結果となるよう、法律の専門家である「弁護士」に相談し、そのサポートを得た方がよいでしょう。
弁護士に依頼すれば、地権者側の希望する金額で粘り強く施行者と交渉したり、算定の難しい迷惑料について説得力のある主張を行ったりと、地権者の立場にたった対応をしてくれるはずです。
立ち退き料の増額を希望するなら、弁護士と相談して話し合いを進めることで、よい結果が期待できます。
立ち退きの査定を進めるなら弁護士に相談
今回は多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、立ち退きに関する査定の主な要素、立ち退き料を増額するポイント等を詳しく解説しました。
立ち退きを拒否し続ければ、土地収用による強制執行が行われる可能性もあります。公共事業の立ち退きにはいずれ応じなければいけません。
しかし、弁護士等の助力を受ければ、立ち退き交渉を有利に進められるはずです。弁護士のアドバイスを受けつつ、地権者は柔軟な姿勢で問題を解決していきましょう。
立ち退き査定に納得したいなら、弁護士へ相談し、万全の態勢で施行者との交渉に臨んでみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。