競売での立ち退きをスムーズに!買受人が知るべき流れとポイントを徹底解説
2024年11月12日
- 競売動産の買受人である私は裁判所に代金を納付したが、落札した物件に債務者が居座っている。どのような措置をとるべきか?
- 物件に居座る債務者に立退料を支払う必要はあるのか?
- 競売での立ち退きを迅速に進めたいときは、弁護士に相談した方がよいだろうか?
競売不動産を買受人が取得したのに、債務者が物件に居座わるケースがあります。
債務者を強制的に立ち退かせるためには、法律に従い手続きを行わなければなりません。
そこで今回は、立ち退き問題の解決に携わってきた専門弁護士が、競売による立ち退きまでの流れ、立ち退きを進めるポイント等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 競売不動産の買受人が債務者を強制的に追い出したいときは、裁判所への引渡命令申立て→強制執行申立てと進む
- 債務者を立ち退かせるときに、立退料を支払う必要はない
- 債務者と立ち退き交渉を進めるときは、専門弁護士からアドバイスを受けて対応した方がよい
競売による立ち退きで知っておくべき知識
不動産の競売は、通常地方裁判所が行う競売を指します。売却方法は、一般市場で行うわけではなく、裁判所での入札形式です。
競売手続きは、裁判所の主導の下に行わます。私人間での不動産売買契約とは異なるため注意が必要です。
競売とは
競売はオークションとも呼ばれます。売主が価格を決めず(最低価格を決める場合あり)に売り出し、購入希望者が購入価格を申し出る販売方法です。通常、販売期間内に最高価格を提示した購入希望者に売却されます。
不動産の競売は、地方裁判所で行われます。
不動産購入時に金融機関から借り入れた住宅ローンを債務者が返済できない場合に、債権者からの申立てにより、地方裁判所が不動産競売を行う仕組みです。
競売物件は一般的な市場物件よりも、比較的低額で購入できる可能性があります。ただし、債務者が購入して住んでいる自宅を諦めきれずに、競売物件にそのまま居座り続けるリスクがあります。
基本的な手続き
裁判所は競売物件の購入希望者を募集し、「期間入札」の方法で競売を行います。
競売物件を落札するためには、他の購入希望者よりも高い金額で入札しなければなりません。
競売物件を落札した場合、裁判所から売却許可を受け、代金を納付すれば正式に競売物件の所有者となります。
債務者は、買受人の代金納付日に、競売物件からの立ち退きが必要です。
もしも債務者が競売物件の引渡しを拒否し居座るときは、買受人は法律に従い、強制執行の申立てができます。
競売による立ち退きまでの流れ
競売物件の購入を希望するときは、裁判所の公告を確認して希望する競売物件を選び入札に参加しましょう。
競売物件の買受人になっても、当該物件に住む人(債務者)が立ち退かないケースもあるため、冷静に対応措置をとる必要があります。
競売開始
不動産競売を行うときは、まず債権者が不動産執行の申立てを、目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所に行います。
裁判所が申立てを認めた場合、不動産執行を開始する旨と目的不動産の差押を宣言する開始決定がなされます。
債務者に裁判所から「競売開始決定通知」が送付されますが、通知内容は次の通りです。
- 事件番号
- 競売の手続きが開始した旨
- 申立てた債権者:借入先の金融機関または保証会社
- 債務者(不動産所有者)
- 借金の内容:担保権、被担保債権、請求債権目録
- 物件情報 等
現地調査
裁判所は執行官や評価人(不動産鑑定士)に調査を命じます。
ただし、債務者が住んでいる競売物件に、いきなり執行官や評価人が立ち入るわけではありません。
債務者には前もって「現況調査のための連絡書」を通知し、執行官・評価人が競売物件を訪問すると連絡します。
一戸建が競売物件となっている場合は、次の現況を調査します。
- 競売物件の前の道路の幅(幅員)
- 隣家との境界確認
- 未登記の建物の有無、車庫の確認
- 競売物件内の状態を確認、写真撮影
- 間取り図作成
マンションの一室の場合は、室内状態の確認・写真撮影や間取り図作成が主な調査内容です。
裁判所は競売物件の調査結果を参考に、売却基準価額を決定します。
売却基準価額が決まれば、売却日時・場所・売却方法(期間入札)を定め、入札開始です。
入札
期間入札の開始前に、債務者に入札期間や開札期日・売却基準価格等を記載した「期間入札の通知」が送付されます。
期間入札の通知を送付し2〜3か月後に、購入希望者による入札が開始されます。
競売物件の入札に参加を希望するのであれば、裁判所の掲示板の公告書や「BIT」を確認しましょう。
BIT(Broadcast Information of Tri-set system)は、不動産競売物件情報サイトです。インターネット上で競売物件情報を公開するシステムとなっています。
あなたの希望に合う競売物件があれば、入札期間内に入札手続きを進めましょう。手順は次の通りです。
1.裁判所の執行官室で入札用紙等を取得し、必要事項を記載
2.保証金を納付
3.入札書を提出
参考:競売物件情報(BIT)について | 裁判所
買受人決定
落札者は開札期日に決まります。あなたが競売物件を落札できた場合、裁判所による審査が行われます。購入が認められたときは、期日までに購入代金を裁判所に支払いましょう。
買受人は裁判所が指定した期限までに、入札額から保証金額を差し引いた代金を納付する必要があります。
期限までに納付しないと、競売物件の買い受けはできません。原則として、保証金も返還されません。
代金納付後に買受人が登録免許税等の費用を支払えば、所有権移転登記手続きは裁判所が行います。
立ち退き
買受人が落札後、債務者は物件を立ち退かなければなりません。
債務者が落札物件に居住し続けた場合、不法占拠になります。ただし、債務者は原則として落札後〜6か月間までの退去猶予を受けることが可能です。
退去猶予期間後も債務者が物件に居座り続けた場合、買受人は裁判所に引渡命令申立てができます。
強制執行の申し立て
債務者が物件に居座り続けている場合、法律に則り、引渡命令申立て→強制執行申立てと手続きを進めていきます。
あなたの落札した物件に債務者が住み続けている場合、まず裁判所に引渡命令申し立てましょう。原則として、代金を納付した日から6か月以内であれば申立て可能です。
申立てが認められた場合、裁判所から引渡命令が出されます。引渡命令は強制執行申立て時に必要な債務名義です。
債務名義とは、落札物件の強制執行による明渡しの根拠となる裁判所作成の文書です。他に送達証明書(債務名義が送達されたことを証明する文書)、執行文(強制執行を認める文書)を裁判所に申請して用意し、手続きを進めていきましょう。
強制執行の申立てが認められれば、裁判所は2週間以内に債務者に催告書を通知しなければなりません。記載された期日までに立ち退きをしなければ、執行官・専門業者による強制執行が開始されます。
強制執行
強制執行になると、債務者本人・家族の強制退去だけでなく、落札物件内の家財・家具の全てが撤去されます。
強制執行のときに、債務者本人や家族が抵抗することや威嚇行動をとるかもしれません。その場合、執行官は警察官に応援を要請する等して、強制執行を進めていきます。
ケースによっては債務者本人や家族が、公務執行妨害で逮捕される可能性もあるでしょう。
競売による立退料の相場
買受人は、債務者に立退料を支払う必要はありません。
しかし、強制執行の費用は100万円以上かかる場合があります。そこで立退料を支払って債務者に自主的な退去を求める方が、費用負担を軽減できる可能性もあります。
債務者に支払う立退料は、数万円程度が相場です。債務者が引越し代を用意できないほど窮乏している場合は、金額を上乗せして立ち退いてもらうことも可能です。
競売での立ち退きをスムーズに進めるポイント
債務者が立ち退きを拒んでいる場合、買受人は裁判所に引渡命令申立てや強制執行申立てが可能です。
ただし、手続きには時間とお金がかかります。物件にすぐ居住できるとは限りません。その場合、債務者に自主的な退去を求める方が、時間とお金の節約になります。
立退料の提示
債務者が立ち退きを拒んでいるときは、立退料の支払いと引き換えに退去を要求してみましょう。
立退料に明確な決まりはないため、買受人と債務者が合意すれば自由に金額を決定できます。
競売による立退料は数万円程度が一般的ですが、移転先の賃貸物件の家賃や引越し代金相当額をある程度上乗せすれば、退去に応じる可能性もあります。
弁護士への相談
競売物件からの立ち退きについては、立ち退き交渉や裁判に詳しい弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士は、あなたの立ち退き交渉に関する不安や悩みをヒアリングし、次のようなアドバイスを提供します。
・立ち退き交渉のポイント
・立退料は十分か否か
・交渉が失敗した場合の対応措置
・弁護士を交渉役にする有効性
弁護士に債務者との交渉を依頼すれば、豊富な法律の知識を活用し、債務者に強制執行のリスクをわかりやすく説明しつつ、自主的な退去に応じるよう説得します。
競売による立ち退きでお悩みなら春田法律事務所へご相談を
今回は立ち退きトラブルの解決に携わってきた専門弁護士が、競売による立ち退きまでの手順等を詳しく解説しました。
春田法律事務所は立ち退き問題の解決に豊富な実績を持つ法律事務所です。債務者がなかなか立ち退きに応じないときは、弁護士と相談し、有益なアドバイスを受けましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。