持ち家と立ち退き拒否の問題を2つのケースで解説!地権者が押さえるべき知識を弁護士が紹介

最終更新日: 2023年11月03日

持ち家と立ち退き拒否の問題を2つのケースで解説!地権者が押さえるべき知識を弁護士が紹介

  • 所有する土地が公共事業の対象エリアに該当し、持ち家まで取り壊す必要が出てきて困っている
  • 土地を賃借人に貸していたが、賃借人はその土地に持ち家があり、立ち退きへ不満を持っている
  • 賃借人に土地・持ち家を立ち退いてもらうには、どのような条件が必要なのだろう

地権者は、自分の土地や持ち家が公共事業の対象地域とされ立ち退きを要求されるリスク、それとは逆に、土地を貸していて持ち家があるのを理由に立ち退きを拒否されるリスクもあります。

いずれのケースが発生しても、冷静に対応していきたいものです。

そこで本記事では、多くの立ち退きトラブルの解決に尽力してきた専門弁護士が、地権者が持ち家に関する立ち退きで悩むケースを2つ取り上げ、その対応方法を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。

  • 自分の土地や持ち家が公共事業の対象地域となった場合、最終的に立ち退きに応じる必要がある
  • 土地を貸していて持ち家があるのを理由に賃借人から立ち退きを拒否された場合、正当事由の有無等が問題となる
  • 公共事業の施行者から立ち退きを要求された場合も、借地人に立ち退きを要求する場合も、立ち退き条件を冷静に考慮する必要がある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

地権者が持ち家の立ち退き拒否で悩む2つのケース

地権者が持ち家の立ち退き問題で悩むケースは主に次の2つです。

持ち家の立ち退き問題で悩むケース

権利関係・交渉相手等

【ケース1】

国や地方自治体の公共事業で持ち家の立ち退きを要求された

(1)権利関係

  • 土地所有者:地権者
  • 持ち家所有者:地権者

(2)立ち退き要求:施行者

(3)交渉相手:施行者

【ケース2】

土地を貸しており立ち退いてもらいたいが、賃借人が持ち家を建てており、立ち退きを拒否している

(1)権利関係

  • 土地所有者:地権者
  • 持ち家所有者:賃借人

(2)立ち退き要求:地権者

(3)交渉相手:賃借人

ケース1は、国や地方自治体で土地区画整理事業や道路拡張工事のような公共事業を行うため、土地や持ち家の立ち退きを要求される場合です。

立ち退き要求を受ける側は地権者で、交渉相手は公共事業の施行者(行政)となります。

一方、ケース2は逆に地権者側が立ち退きを要求する側であり、交渉相手は土地を貸している賃借人となります。

【ケース1】自分の土地・持ち家で公共事業に対して立ち退きを拒否

地域の都市環境や快適性、安全性を高めるため公共事業が行われる可能性もあります。

公共事業の目的は間違っていないものの、公共事業の対象となるエリアの地権者は立ち退きを要求され、大きな影響を受けます。

地権者は先祖から譲り受けた土地・持ち家の立ち退きに関して、大いに悩むはずです。

任意の立ち退き交渉

当然ながら公共事業が決定されたからといって、施行者が一方的に地権者の土地を奪い取るなどということは行われません。

施行者は地権者と冷静に立ち退き交渉を進めていきます。施行者は立ち退きの対象エリアにある私有地、建物(持ち家)、工作物、立木等を確認し、立ち退き料等を決めるための情報を収集します。

立ち退きにかかる費用は基本的に施行者がすべて負担し、地権者側が負担する費用はほとんどありません。

ただし、施行者の提示する立ち退きの条件が適正かどうか、不動産会社に現在の土地・持ち家の価値を評価してもらったり、弁護士へ調査を依頼したりして、地権者の方で確認しておいた方がよいでしょう。

土地収用法による強制収用

公共事業(都市計画事業)では土地収用が認められており、立ち退きの対象となっている土地や持ち家を強制執行されてしまう可能性があります(土地収用法第3条、都市計画法第69条)。

つまり、頑なに拒否していても、いずれ立ち退きをしなければいけないときはやってきます。

その前に、なるべく地権者の望む条件で交渉を進めるのが、賢明な判断といえるでしょう。

出典:土地収用法|e-Gov法令検索

出典:都市計画法 | e-Gov法令検索

立ち退き拒否できないときの選択肢

公共事業による再開発の対象エリアとなり、持ち家を取り壊す必要がある場合は、主に次のような補償が図られます。

  • 新しい権利取得
  • 立ち退き料の受け取り

それぞれの方法について解説しましょう。

新しい権利取得

この方法は「権利変換」と呼ばれています。立ち退きで持ち家を手放す代わりに、再開発後の土地・建物(持ち家)に新たな権利を取得する方法です。

立ち退き料を受け取らない代わりに、現在の持ち家を施行者へ譲渡すれば、この方法が選択可能です。

権利変換で取得できる地や床に関する権利は、立ち退いた持ち家と同程度の価値のあるものが対象となります。施行者が作成した権利変換計画に基づき、取得の手続きが進められます。

もしも、施行者に譲渡した持ち家より、新たな持ち家が著しく価値の低いものだった、という場合は施行者と争うことが可能です。

弁護士へ相談すれば地権者のために、施行者側と交渉を行ってくれます。

立ち退き料の受け取り

立ち退きにかかる費用は、基本的に施行者側がすべて負担してくれます。主に次のような費用が補償対象です。

  • 新たな代替地を取得する費用
  • 現在の持ち家を解体する費用
  • 新たな持ち家を建築、移転する費用
  • 新たな移転先に引越しする転居費用
  • 持ち家が完成するまで一時的に賃借する住居の費用 等

また、慣れ親しんだ土地・持ち家から退去しなければいけない、という精神的な負担も迷惑料(慰謝料)として加算してくれる場合があります。

弁護士へ相談すれば、この目には見えない地権者の苦悩を、施行者側へ論理的に主張し、立ち退き料の増額を要求する等、有利に交渉が進められるはずです。

【ケース2】貸している土地に賃借人の持ち家があり立ち退きを拒否された

自分の所有する土地を貸しているからといって、自らの都合だけで賃借人に立ち退きを迫っても、その主張は認められない可能性が高いです。

こちらでは、どのようなケースであれば賃借人へ立ち退きを要求してよいのかについて解説します。

正当事由がないと難しい

 

地権者側が賃借人に立ち退きを進める上では、地権者が土地の使用をしなければならない正当事由が必要です。

なお、立ち退き料を支払えば退去が可能になるわけではなく、賃借人側の立ち退きに応じ難い事情がある場合、立ち退き要求はまず認められません。

裁判所は、地主が自宅を建てる目的で賃借人(借地人)に立ち退きを求めた事案で、地主側は他に不動産があり、一方の賃借人(借地人)は無職で病気を患っていて転居が難しく、立ち退き料を支払うからといって、立ち退きは強制できないと判示しています(東京地方裁判所平成23年3月11日判決)。

また、賃借人が借地上に店舗を建てて営業している場合でも、長年にわたり事業を継続し、今後も借地利用を継続する必要性が高く、かつ地主側が貸している土地を利用する必要性が低い(正当事由がない)ならば、強制的な立ち退きはできないとした裁判所の判決もあります(東京地方裁判所平成23年5月23日判決)。

立ち退きを進められる条件

地権者が立ち退きを要求できるケースは、主に次の4つがあげられます。

  • 正当事由がある場合更新拒絶
  • 契約違反が認められる場合
  • 債務不履行がある
  • 定期借地契約

それぞれのケースについて解説しましょう。

正当事由がある場合更新拒絶

地権者に立ち退きを要求する正当事由が認められれば、立ち退きをスムーズに進められます。主に次のようなケースが該当します。

  • 地権者が他に土地を所有しておらず、自分の居住する家を建てるため、貸している土地を利用する具体的な計画がある
  • 自分の土地が再開発計画のエリアに含まれ、すでに一帯で計画が進められており、賃借人に土地を明け渡してもらう必要がある

ただし、正当事由があるからといって、直ちに更新を拒絶できるわけではありません(借地借家法第6条)。

出典:借地借家法 | e-GOV法令検索

契約違反が認められる場合

賃借人に契約違反があった場合、地権者は賃貸借契約を解除し、土地の返還はもちろん持ち家の収去も要求できます。

賃借人がそれに応じない場合、裁判所に土地明渡し及び建物収去の強制執行の申立てが可能です。

契約違反となる可能性が高いのは次のようなケースです。

  • 持ち家を建て居住するために貸した土地だったのに、持ち家の他に性風俗の店舗も構えて営業している
  • 居住目的で貸した土地だったのに、持ち家の他に廃棄物の投棄場所として使用するようになった

このような場合、地権者が立ち退き料を支払う必要はない他、賃借人に損害賠償を請求できる可能性もあります。

債務不履行がある

地権者との契約に従い、居住目的で持ち家を建てたケースであっても、賃借人が地代を長期間滞納している場合、地権者は賃貸借契約を解除し、土地の返還・持ち家の収去も要求できます。

ただし、1か月程度の短期間の滞納ならば、立ち退きを要求するのは難しいでしょう。地代を数か月間(3か月以上など)滞納しているケースであれば、立ち退き要求が認められる可能性があります。

定期借地契約

定期借地契約とは、期間満了時に借地契約が終了する契約です。主に土地を借り、持ち家を建設するとき利用される契約は「一般定期借地契約」と呼ばれています。

契約で50年以上の存続期間を設定できるものの、更新は認められず、建物の再築による期間の延長もなく、賃借人(借地人)は持ち家の買取を地権者に請求できません。

そのため、賃借人は期限がきたら持ち家を取り壊し、土地を返還する義務を負います。当然、地権者が立ち退き料を支払う必要もありません。

なお、定期借地契約の中には「建物譲渡特約付借地権」も存在し、こちらの契約の場合は地権者が賃借人の持ち家を買い取る必要があります。

出典:借地借家法 | e-GOV法令検索

持ち家と立ち退き拒否で悩んでいるなら弁護士へ相談を

今回は多くの立ち退き問題を取り扱ってきた専門弁護士が、持ち家と立ち退き拒否が問題となるケースと対応方法等について詳しく解説しました。

立ち退きを要求された場合も、立ち退きを要求する場合も、弁護士に相談しそのアドバイスやサポートを受ければ、有利に交渉が行えます。

立ち退きの検討を進めるときには弁護士の助力を得て、問題解決を目指しましょう。

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