立ち退きの相談窓口は?弁護士に相談するメリットも解説
最終更新日: 2024年01月26日
- 賃貸人から立ち退きを要求されて困っているが、どこに相談すればよいかわからない
- 賃貸人としては賃借人に立ち退いてもらいたいが、なるべく穏便に話を進めたい
- 当事者同士で立ち退き交渉を始めたが話が進まず困っている
借りている側が家賃滞納をしているというような契約違反はなくても、賃貸人が何らかの理由で賃貸物件の取り壊しや、賃貸物件の再利用を検討している場合、立ち退きを要求される可能性もあります。
しかし、当事者だけでは立ち退き交渉が思うように進まず、貸す側・借りる側も頭を抱える事態になるかもしれません。
そこで本記事では、多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、立ち退き問題を相談できる窓口はどこか、弁護士に相談するメリット、頼りになる弁護士の選び方等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。
- 立ち退き問題を相談できる窓口として法律の専門家、公的な団体等がある
- 立ち退き問題を弁護士に相談するときは、実績豊富で相談者の悩みに寄り添う人が適任
- 立ち退きを弁護士に相談・依頼するとき、必要な費用として着手金や成功報酬等があげられる
立ち退きを相談できる主な窓口
立ち退き交渉を進める場合、賃借人と賃貸人が直接、話し合っても構いません。ただし、当事者間で交渉がうまくまとめられず、トラブルが発生することも懸念されます。
立ち退き問題で悩んだら次のようなところに相談が可能です。
- 弁護士
- 法テラス
- 各種協会
- 各自治体
こちらでは、それぞれの相談先について解説します。
弁護士
法律事務所への相談は賃借人・賃貸人双方が可能です。法律事務所の中には初回相談無料のところもあります。
担当者と相談すれば、どのように交渉を進めたらスムーズに手続きが進められるのか、交渉をする場合の注意点等について教えてもらえます。
ただし、相談をパラリーガルが担当する事務所も多くあります。法律事務所の中には相談者へ配慮し、「弁護士が直接面談(相談)対応」とホームページに明記しているところがあります。そのような事務所を選んで相談してもよいでしょう。
法テラス
法テラスとは法務省所管の法人「日本司法支援センター」の通称で、法的トラブル解決の総合案内所です。
弁護士等の法律サービスをより身近に受けられるよう、総合的な支援の実施のため設置されました。47都道府県すべてに地方事務所が存在します。
法テラスでは無料の法律相談(1回の相談時間:30分間程度)を受けられますが、誰でも利用できるわけではありません。
法律相談を受けるには次の条件が必要です。
- 収入等が一定額以下
- 民事法律扶助の趣旨に適する(今抱えている法律問題を純粋に解決したいという意思がある)
賃借人・賃貸人も、今抱えている立ち退き問題を解決したいのは同じだと思いますが、法テラスでの法律相談は経済的に余裕のない人が対象です。そのため、収入条件へ合致する可能性の高い賃借人側が、主に利用できるサービスといえるでしょう。
出典:無料の法律相談を受けたい 「民事法律扶助制度」を使った無料法律相談とは | 日本司法支援センター 法テラス
各種協会
賃借人・賃貸人の立ち退き交渉を直接仲介してくれるわけではありませんが、相談対応をしてくれる団体もあります。次のような公益社団法人です。
- 公益社団法人東京共同住宅協会:民間賃貸住宅経営者・入居者・住宅関係企業を支援する公益団体。立ち退きに関しては、専門の資格を持った相談員が対応してくれる。
- 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会:健全な賃貸住宅経営を目的に活動する団体で、「安心ちんたいコールセンター」で無料相談案内を行っている。
相談内容への回答・助言等は、立ち退きに関する内容から考えられる一般論としての見解・参考情報です。そのため、専門的な相談は弁護士に行うべきでしょう。
出典:公益社団法人東京共同住宅協会
出典:公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会
各自治体
立ち退きトラブルがあったからといって、市区町村や都道府県のような地方自治体が問題解決に関わってくれるわけではありません。
ただし、地方自治体では弁護士相談を無料で実施しているところがあります。もちろん、立ち退きを含めた借地借家契約のトラブルにも対応しています。
基本的に予約制で平日のみの対応となり、法人は利用できません。相談時間は1人30分程度です。また、地方自治体では民間団体と協力し居住支援協議会等を設け、立ち退きトラブルに関する相談へ応じているケースもあります。
お住いの市区町村または都道府県で、立ち退きに関する相談サービスを行っているか、自治体のホームページや窓口で確認してみましょう。
なお、お急ぎの場合は消費者庁が運営する「消費者ホットライン」に連絡をとりましょう。各地方自治体が設置している身近な消費生活センター、消費生活相談窓口を紹介してくれます。
立ち退きの相談窓口を弁護士にするメリット
賃借人・賃貸人同士で直接話し合いをすると片方または双方が感情的になり、交渉がなかなか進まなくなる可能性もあります。
このようなリスクを考慮すれば、法律の知識に精通し、冷静に交渉を進められる弁護士へ相談し、交渉のサポート依頼をした方がよいでしょう。
冷静な交渉
立ち退き問題をはじめとした不動産トラブルに携わってきた弁護士は、不動産の法律に深い知識を持つ他、交渉に関して高いスキルを持った方々が多いです。
当事者が感情的になりそうな部分は理性的な対応を行い、依頼者の立場にたった弁護活動が期待できる点がメリットです。
もちろん話し合いで解決できればよいのですが、交渉が不調に終わった場合は、裁判所での調停・審判、そして訴訟へと進んでいきます。この場合の手続きや裁判所での主張も弁護士に任せられます。
相場を元にした説得
立ち退き料は法律で明確に決められておらず、賃借人・賃貸人の合意で決められます。賃貸人からすれば立ち退き料は低く提示したいですし、賃借人は立ち退き料を高く要求したいはずです。
立ち退き交渉に詳しく経験豊かな弁護士ならば、どの程度の立ち退き料に収まるのか、おおよその見通しを立てられます。
現在の引っ越しの費用相場や、立ち退き物件と同等の広さの賃貸物件を借りる場合の費用相場等も踏まえ、弁護士なら説得力のある立ち退き料を提案してくれるはずです。
その金額を参考に、立ち退き料の調整を図れば、スムーズな立ち退き問題の解決が期待できます。
立ち退きを相談すべき弁護士の選び方
立ち退き問題の相談先として、弁護士は頼りとなる存在といえます。
ただし、弁護士にも得意分野があり、刑事事件を得意とする弁護士、相続問題を得意とする弁護士、そして立ち退き等の不動産に関する問題を得意とする弁護士と様々です。
こちらでは、立ち退きの相談および代理人として頼りとなる弁護士の選び方を説明します。
実績豊富
立ち退き等の不動産に関する交渉、訴訟に経験豊かな弁護士が適任といえます。
立ち退きに関する問題解決の経験から、賃借人・賃貸人が歩み寄れる立ち退きの条件、裁判で立ち退きに関するどのような主張をすれば勝訴できるか等、ある程度予測できるはずです。
立ち退き問題を数多く扱ってきた弁護士かどうかは、まず法律事務所のホームページを確認してみましょう。
立ち退きに関する話題を数多く掲載しているなら、その分野の法律問題を得意とする法律事務所とみてほぼ間違いありません。
粘り強い
立ち退きへ合意し賃借人に新たな賃貸物件が見つかっても、賃借人の生活には少なからず影響が出てくるはずです。
新たな賃貸物件は現在の物件と同等のものを見つけられるか、引っ越しの準備・転居の手続きが面倒、仕事場から自宅が遠くなるかもしれない等、賃借人にかなりの負担となる事態が予想されます。
そのため、賃借人になるべく有利な条件(立ち退き料を多めにもらう、引っ越し代を賃貸人の負担とする等)となるよう、粘り強い交渉のできる弁護士が最適です。
粘り強い交渉の結果、賃貸人側が賃借人の条件に歩み寄ってくれる可能性もあるでしょう。
悩みに沿ってくれる
依頼者の悩みをしっかり聴いて、依頼者の希望に沿った対応のできる弁護士が適任です。
- 賃貸人の場合は立ち退きが進まず、賃貸物件の取り壊しや再利用等が進まない
- 賃借人の場合は十分な立ち退き料を受け取れないと、新たな生活に不安を感じる
それぞれの担当となった弁護士は、単に立ち退き相場を主張するだけでなく、依頼者の悩みを汲んで、合意のための条件を調整してくれる場合、円満な解決が図れるかもしれません。
適切なコスト
弁護士に相談し、立ち退き交渉の代理人としたならば着手金、報酬等の支払いが必要です。特に着手金は依頼のとき支払うので、交渉が不調に終わっても依頼者へ返還されません。
そこで、着手金・報酬等が良心的であるかどうかもよく確認しましょう。
特に賃借人が弁護士を立てるときは、十分な立ち退き料が得られるのか、立ち退きの自己負担額もよくわからない状態です。この状態で高額な着手金を支払うのは、難しいかもしれません。
そのため、なるべく依頼時の負担が軽減されている法律事務所を選びましょう。
立ち退きを弁護士に相談するときに必要な費用
立ち退き問題を相談・依頼する場合の費用は、各法律事務所が自由に設定できます。そのため、法律事務所によって大きく差が出てしまいます。
依頼者が賃借人か賃貸人かでも、費用負担は異なる場合もあるので注意しましょう。こちらでは、弁護士に支払う着手金・報酬等について解説します。
費用 | 賃借人 | 賃貸人 |
相談料 | 30分5,000円~ ※初回相談無料の事務所もある | |
着手金 | 無料~ | 22万円(税込)~ |
成功報酬 | ・基本:22万円(税込) ・立ち退き料の金額の11~22%(税込) | 22万円(税込)~ |
実費等 | 日当、切手代、交通費等 |
立ち退きを相談窓口に問い合わせする前に注意すべきこと
弁護士等に相談をする場合、依頼者の口頭による説明だけでは状況がうまく伝わらない可能性もあります。相談前に次のような準備を行いましょう。
- 書類を整理する
- 経緯を整理する
こちらでは、それぞれの準備について説明します。
書類を整理する
まずは賃借人・賃貸人が賃貸借契約を締結したときの契約書、重要事項説明書等をまとめておきます。これらの書類を参考として主に次の内容が確認できます。
- 賃借人の契約違反の有無
- 立ち退き交渉が正当な事由によるものか否か
賃借人の場合はそれらに加え、賃貸人から送付された「立ち退き通知書」も準備しましょう。この通知書の内容をみれば、立ち退き条件に無理がある(例:最初から立ち退き料はない旨の記載がある、1週間で立ち退きをせよと記載されている等)点もわかります。
一方、賃貸人は物件の登記情報、固定資産税評価証明書、間取り図等も用意していた方が、弁護士の情報把握に役立ちます。
経緯を整理する
どのような経緯で賃貸借契約をしたのかをまとめましょう。たとえば、次のような内容を整理します。
- 立ち退きをしなければならない理由(例:建物の取り壊し、賃借人の賃料滞納等)
- 賃借人・賃貸人との話し合いがうまくいかない理由(例:立ち退き期間が短すぎる、立ち退き料で合意が得られない等)
- 問題の発生した期間(例:昨年から揉めている等)
弁護士へ提出する書類に加え、以上の情報を時系列でわかりやすく書面化しておきましょう。
弁護士に相談するとき、経緯を事前に整理しておけば、弁護士も状況が把握しやすくなり、迅速に交渉の見通しを教えてもらえるはずです。
立ち退きの相談窓口で迷ったら弁護士に相談を!
今回は多くの立ち退き交渉に携わってきた専門弁護士が、立ち退き問題の相談先、弁護士に相談するメリット、立ち退きの交渉で最適な弁護士を選ぶコツ等について詳しく解説しました。
当事者だけで立ち退き交渉を行っても構いません。しかし、弁護士のサポートを得て進めれば、交渉が成功する可能性も高くなるはずです。
立ち退きを円満に、かつ納得できる解決を目指したいなら、まず弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。