立ち退きするときに敷金は返還される?ありがちなトラブル・注意点を徹底解説!
最終更新日: 2023年11月03日
- 賃貸人から立ち退きを要求されたが、敷金が戻ってくるか心配
- 立ち退きで敷金が返還されるケース・返還されないケースをそれぞれ教えてほしい
- 敷金返還トラブルが起きた場合の解決法について知りたい
賃貸人から立ち退きを要求される場合があります。賃借人からすれば、立ち退き料はもちろん、契約のときに渡した敷金もしっかり返還してもらいたいはずです。
しかし、敷金が戻らないなどのトラブルも発生するおそれはあります。そのようなときは冷静に対応していきたいものです。
そこで本記事では、多くの立ち退き交渉に携わってきた専門弁護士が、立ち退きで敷金が返還されるケース・返還されないケース、敷金返還トラブルへの対応方法について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。
- 賃貸人側の都合で賃貸物件を立ち退くときは、立ち退き料と別に原則として敷金全額が返還される
- 敷金返還の交渉では、賃借人・賃貸人が直接話し合うと、感情的になり話がまとまらない可能性もある
- 立ち退きで敷金返還トラブルが起きたら弁護士に相談し、敷金返還請求訴訟も検討する
立ち退きするときに敷金は返還されるのか
賃貸人が立ち退きを要求したとき、その事由に正当性が不足している、または正当事由について賃借人と賃借人が折り合わないという場合、立ち退き料が発生します。
立ち退きを要求された場合、立ち退き料に加え、敷金も返還されるかどうかが問題となります。
転居前の敷金は返還される
賃貸人が立ち退きを要求され、それに応じるならば転居前の敷金の全額返還が原則です。
敷金は賃貸物件を借りるときに賃貸人へ預ける保証金です。そのため、賃借人が家賃を滞納している、賃借人が突然いなくなり音信不通、賃借人が部屋を汚した・部屋を壊した、という事実がない限り、敷金は差し引かれずに返還されなければいけません(民法第622条の2)。
そのため、賃貸人の都合で立ち退きが要求された場合、賃借人が取得できるのは「敷金+立ち退き料」となります。
通常立ち退きの場合
賃貸人の立ち退きに賃借人が合意して退去する場合は、立ち退き料に加えて敷金も返還されます。
ただし、主に次の場合では原状回復が必要となり、敷金からその費用が差し引かれる可能性もあります。
- 賃貸物件内の備品などの手入れ不足:カーペットへ飲み物をこぼしシミやカビになった、台所の油汚れなど
- 適切な管理不足:雨が吹き込みフローリングが色落ちした、タバコのヤニによるクロスの変色や臭いの付着など
- 引越し作業による破損:家財道具を運んだときに生じたひっかき傷など
強制立ち退きの場合
賃貸人の所有する賃貸物件が、行政機関・第三者の専門家の調査を受け、地震のような災害で倒壊の危険が判明する場合もあるでしょう。
この場合は、建物の取り壊し・建て替えのため居住者の退去が必要となり、立ち退き要求に「正当事由」があるケースといえます。
立ち退き通知や交渉をしても賃借人が立ち退きに応じない場合、賃貸人は「建物明け渡し訴訟」を提起するはずです。
ただし、賃貸人の主張が通ったとしても、賃借人から預かった敷金は原則として全額を返還する必要があります。
違反行為による場合
賃貸契約期間中、賃借人が度重なる迷惑行為を行った、契約書で禁じられている行為をしたという場合、賃貸人から「強制退去」を命じられる可能性があります。
主に次のような迷惑行為・禁止行為があげられます。
- 借りた部屋をまったく別の目的で使用している:他人へ更に無断転貸した、性風俗の営業に利用している
- 契約した賃借人だけでなく別の人・ペットも住んでいる:一人暮らし用で契約したのに無断で恋人と同棲した、ペット不可の条件なのに犬を飼っている
- 家賃を長期間滞納する:3か月にわたり賃料を支払っていない
- 騒音トラブルを繰り返す:大音量でTVやラジオを聴く、楽器を演奏する
- 故意による物件への毀損行為:クロスにひどい落書きをした、癇癪を起こして暴れ壁が壊れた
このような理由で退去を命じられた場合、敷金は返還されない可能性があります。
転居後の敷金に差分がある場合
立ち退きを要求された賃貸物件の敷金は返還される他、転居先の賃貸物件の敷金を立ち退き料に加算できるケースもあります。
立ち退きするときに返還される敷金より、新たな転居先の敷金が高くて、賃借人の負担が難しい場合、この敷金の差額を立ち退き料に含めて請求できます。
立ち退き時の敷金返還でありがちなトラブル
立ち退きのときは、敷金返還がスムーズに行われるとは限りません。次のようなトラブルが想定されます。
- 退去時期で金額が変わる
- 敷金以外が払われない
それぞれのトラブルへの対処法について解説します。
退去時期で金額が変わる
基本的に退去時期が長引いたからといって、単純に敷金が減額されるわけではありません。
賃貸物件を長期間利用しているなら経年劣化は避けられず、原状回復の必要性または賃借人側が契約に違反した事実を除き、退去時に賃貸人側は原則として返還に応じる必要があります。
なお、賃貸人・管理会社が負担する費用は主に次の通りです。
- フローリングのワックスがけの費用
- 畳の裏返し、表替え
- カーペット類の家具設置による跡
- 壁やクロスの黒ずみ
- ライトの電気焼けによる天井の黒ずみ
- 水まわりの設備が経年変化で故障した
このような自然な消耗は、賃借人の費用負担の範囲外です。このような修繕費を賄うため、敷金が返還されない場合は敷金返還請求訴訟を行い、敷金を取り戻しましょう。
敷金以外が払われない
立ち退きをする場合、敷金は問題なく戻ってくるものの、それ以外の立ち退き料の請求には応じない、と賃貸人側から主張される可能性があります。
しかし、裁判所でも賃貸人側に正当事由がなければ、立ち退き料を支払う必要があると判示しています。
そのため、賃借人側は敷金の他に納得できる立ち退き料が得られないならば、賃貸人の立ち退き要求へ安易に応じない、弁護士に相談し交渉を依頼するなど、冷静な対応を進めていきましょう。
立ち退き時の敷金返還で注意すべきこと
立ち退きのとき、賃貸物件内の自然な消耗を修繕する費用まで、敷金から差し引かれる事態になるかもしれません。その場合、賃借人側は怒りをあらわにしてしまう可能性があります。
これでは賃借人・賃貸人双方が感情的になってしまい、立ち退き交渉が全く進まなくなるおそれも出てきます。
賃貸人側の立ち退き要求で、このままでは十分な敷金が返還されない、立ち退き料が納得できる金額ではない、と賃借人が感じたら直接交渉するのは避け、弁護士に交渉を依頼した方がよいでしょう。
弁護士は法律に精通した専門家であり、豊富な知識と経験で、理性的に賃借人の立場から主張を行ってくれます。
立ち退きで敷金返還トラブル時にすべきこと
立ち退きで敷金返還のトラブルが発生したら、自分だけで解決しようとせず、弁護士の力を借りて対応した方が有利です。
敷金返還のトラブルは弁護士に相談し、場合によって、敷金返還請求訴訟も検討しましょう。
弁護士への相談
法律事務所に敷金返還に関するトラブルが起きている旨を伝え、弁護士から助言を受けます。相談では次のような内容をメモ書きしていると、話が伝わりやすいです。
- 立ち退きを要求された経緯
- 敷金の返還トラブル(敷金の全部・一部が返還されないなど)
- 立ち退きで賃借人に非は無いのか(例:賃料の滞納がある場合は滞納期間を明記)
なお、法律事務所によっては初回の相談が無料となっている場合もあります。
相談後、弁護士に敷金の返還トラブルなどの交渉を依頼したい場合、事務所側と委任契約を締結します。
敷金返還請求訴訟
賃貸人側と交渉しても話し合いがまとまらない、という場合は「敷金返還請求訴訟」を検討しましょう。敷金返還請求訴訟は敷金の返還額が60万円に収まる場合、少額訴訟の提起が可能です。
少額訴訟とは原則として1回の期日で審理を終え、判決を下す特別な訴訟手続です。
訴状を提出後1~2か月程度で審理が開催され、原則1回で判決が出るため、短期間に敷金を取り戻せます。
賃借人だけでもこの訴えは可能ですが、弁護士がサポートしてくれるなら証拠書類の収集、申立て手続きを任せられます。また、裁判所に適切な証拠提出・主張もしてくれるので、賃借人側に有利となるはずです。
立ち退き時の敷金返還トラブルなら弁護士へ相談を
今回は多くの立ち退き問題に携わってきた専門弁護士が、立ち退きを要求された場合の敷金返還、敷金返還でありがちなトラブル、トラブルへの有効な対処法を詳しく解説しました。
賃借人本人だけで立ち退き交渉・敷金返還交渉をするのは難しいと感じたなら、弁護士のアドバイスやサポートを経て対処した方が安心できます。
立ち退きで敷金返還のトラブルが発生したら、まず弁護士へ相談して問題の解決を目指してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。