発信者情報開示請求で冤罪!?対処法を弁護士が解説
最終更新日: 2023年11月09日
- 発信者情報開示請求書の意見照会書が来たがそんなことしてない!
- 冤罪なのに個人情報が開示されてしまうの?
- 冤罪なのに賠償しないといけないの?
インターネット上での匿名の名誉毀損、プライバシー侵害や著作権侵害について、発信者情報開示請求がなされて加害者が特定されるケースが非常に増えています。しかし、発信者情報開示請求は本当に権利侵害をした人だけにされるわけではなく、冤罪のケースもあります。
今回は、発信者情報開示請求を受けたものの冤罪という場合の対処法について専門弁護士が解説します。
発信者情報開示請求は冤罪の場合がある!?
まずは、何故、冤罪なのに発信者情報開示請求が来ることがあるのかご説明します。
- なぜ冤罪なのに請求が来る?
- 冤罪のケース
なぜ冤罪なのに請求が来る?
プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が送られてきた時に初めて発信者情報開示請求を受けたことを知ります。
自分の権利が侵害されたと主張する人は、問題の投稿などをした際に使用されたIPアドレスを特定し、そのIPアドレスを保有するプロバイダに対し、そのIPアドレスを使用した人の氏名や住所などの発信者情報を開示するよう請求します。
このようにして発信者情報開示請求はなされることから、ご自身は問題の行為をしていなくても、自分以外の誰かがご自身の契約するインターネット回線が使用してその行為をした場合には、プロバイダの契約者であるご自身に発信者情報開示請求がされるのです。
そのため、冤罪なのに発信者情報開示請求が来ることがあるのです。
冤罪のケース
では、このような冤罪が起きるケースとはどのようなケースがあるのでしょうか。
自宅で契約しているインターネット回線であれば、同居の家族が問題の投稿などをした可能性があります。また、自宅に遊びに来ていた友人がインターネット回線に接続してその行為をした可能性もあります。会社のインターネット回線であれば従業員がした可能性もあります。
このようにインターネット回線の契約者が権利侵害と主張されている行為をしたとは限りません。そのため、冤罪の発信者情報開示請求がありうるのです。
発信者情報開示請求は冤罪なのに開示される?
では、冤罪なのにご自身の氏名や住所などの情報が開示されてしまうことはあるのでしょうか。
結論としては、冤罪であっても個人情報は開示されてしまいます。
なぜなら、権利侵害をしたのがプロバイダの契約者であることは発信者情報開示の要件ではないからです。違法な権利侵害の事実が認められる限り発信者情報は開示されるのです。
このように冤罪であるのに見ず知らずの人に個人情報を開示されてしまうことを避けるためには、以下でご説明する対応が必要となります。
発信者情報開示請求が冤罪である場合の対処法
次に、発信者情報開示請求が冤罪である場合の、プロバイダから届く「発信者情報開示請求に係る意見照会書」への対処法、そして、もし発信者情報が開示されてしまった場合にはどのように対処すべきかについてご説明します。
- 同意する
- 不同意にする
- 無視する
- 冤罪なのに責任を負うの?
同意する
発信者情報開示に同意した上で冤罪であることを説明した方が良いのではないかと思われるかもしれません。
しかし、発信者情報開示に不同意としても誤解を解くための説明はできます。また、冤罪であることの説明に相手が納得しなかったときはその後に民事訴訟などの法的措置を取られます。
したがって、誤解を解くという理由で発信者情報開示に同意する必要はありません。
一方、違法な権利侵害の事実が明白で、なおかつ冤罪であることを立証することが困難と判断される場合もあります。そのような場合は、後の損害賠償請求の訴訟も敗訴する可能性が高いため、納得はいかないと思いますが、穏便に和解することも支出を最小限に抑えるための合理的な対応といえます。
不同意にする
冤罪であることを説得的に主張立証できる場合、発信者情報開示には不同意とすべきです。
このような場合、プロバイダに送る回答書において、冤罪であることを証拠とともに説得的に説明することで、請求者はその後の発信者情報開示請求訴訟の提起を断念する可能性がありますし、発信者情報開示請求訴訟でも請求者が敗訴する可能性があります。
また、違法な権利侵害は認められないと判断できる場合も、発信者情報開示には不同意とすべきです。
このような場合、プロバイダへの回答書において、違法な権利侵害が認められないことを法的に説得的に記載することで、請求者はその後の発信者情報開示請求訴訟の提起を断念する可能性がありますし、発信者情報開示請求訴訟でも請求者が敗訴する可能性があります。
無視する
冤罪だから無視しておけばいいと考え、プロバイダから届いた書類に何も回答しないという対応をとられる方が稀におられます。
しかし、このような無視という対応はしてはいけません。
何も回答しなかった場合、特に言い分はないものとみなされ、請求者の主張だけを考慮して発信者情報を開示すべきか判断されてしまいます。適切に反論をしておけば発信者情報の開示を避けられたかもしれないのに開示されてしまうかもしれません。
また、裁判所が発信者情報開示を認めた場合、その裁判にかかった数十万円~100万円ほどの弁護士費用の賠償請求されることになります。明白に違法な権利侵害が認められ、かつ冤罪を立証できない場合に、開示に同意する回答書をプロバイダへ送っておけばこのような余計な出費は避けられました。
このようにプロバイダに回答書を送らないという対応にはデメリットしかありません。
冤罪なのに責任を負うの?
最後に、冤罪なのに発信者情報が開示されてしまった場合についてです。この場合、相手は民事訴訟や刑事告訴をしてきます。
プロバイダの契約者が加害者であることは請求者が証明しなければなりません。しかし、問題の行為をした際に使われたIPアドレスの使用者が加害者であると事実上、推定されます。
単に冤罪だ、ハッキングされたなどの主張をするだけではこの推定は覆りません。冤罪であることを裏付ける証拠とともに説得的に主張する必要があります。
そのような説得力のある主張立証ができなければ、冤罪にもかかわらず、民事、刑事の責任を負わされる恐れがあるのです。
まとめ
以上、発信者情報開示請求を受けたものの冤罪という場合の対処法について解説しました。
発信者情報開示請求に係る意見照会書を受け取ったときは、適切な対応をしなければ多額の損害賠償を強いられたり、最悪の場合、逮捕、起訴されることもあります。
そのようなことにならないために、発信者情報開示請求を受けたときは、一日も早く専門の弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。