【弁護士解説】家族経営をしている中で離婚を考えたら押さえておくべき知識
最終更新日: 2023年07月04日
- 家族経営をしている夫婦が離婚を考えたときの注意点は
- 配偶者に会社を辞めてもらうことはできるのか
- 慰謝料や養育費はどうなるのかを知りたい
家族経営している夫婦が離婚するときは、一般的な会社員同士が離婚するときとは異なり、特有の問題が生じることがあります。会社経営者としては、経営者個人の家族の問題と、事業経営という2つの課題が絡むことがあり、話し合いが難航することも少なくありません。
そこで今回は、数々の離婚問題を多く取り扱う弁護士が、家族経営している夫婦が離婚するときの財産分与や解任・解雇、慰謝料や親権の問題について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 家族経営での離婚を考えているなら、「財産分与の割合」「事業の財産」の2つを押さえておく必要がある
- 配偶者に会社を辞めてもらうことは、離婚したとしても配偶者が役員であっても従業員であっても、勝手に辞めさせることは大変難しい
- 慰謝料は夫婦のどちらかにのみ責任があるとは言えない、「性格の不一致」「価値観の相違」などが原因で離婚した場合は、請求が難しい
家族経営している夫婦に起こりやすい離婚問題
家族で会社を経営している夫婦が離婚をするときは、さまざまな面で折り合いがつかずトラブルが起こりやすい傾向にあります。問題が起こる大きな要因としては、離婚が夫婦だけの問題ではなく、会社の経営にも影響するためです。
まず、夫婦で事業の経営をしており重要なポジションを担っている場合、離婚後もビジネスパートナーとして割り切って仕事を続けるのか、どちらかが辞めるのかを検討しなければなりません。
また、財産分与をするときにも、会社の資産・株式をどう取り扱うかが問題になりがちです。夫婦間で話し合いが難航する状態が長期化すると、会社の経営にも悪影響を与えかねません。
故に、家族経営している夫婦が離婚する場合は、家族と会社の両方の事情を考慮して、話し合いや手続きを進めていく必要があるでしょう。
家族経営している夫婦の離婚!財産分与はどうなる?
家族経営している夫婦が離婚を考えたとき、目下の課題となるのは財産分与に関する問題です。ここでは、財産分与とは何か、財産分与の割合や事業の財産について解説していきます。
財産分与とは
財産分与とは、離婚するときに、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産を、精算・分配することをいいます。
離婚が成立したあとに財産分与を行うケースもありますが、離婚時に財産分与に関する協議を進め、問題を解決してから離婚の手続きを進めるのが一般的です。
仮に夫婦の双方が財産分与を請求しなかった場合、財産分与は行われません。しかし、財産分与の請求は法律上の権利でもあるため、相手が財産分与を請求した場合、拒否することは難しいでしょう。
財産分与の割合は
財産分与の割合は、2分の1であることが大原則とされます。この原則はどちらか一方だけが会社経営者であったとしても変わりません。
たとえば、夫が会社経営者として高収入を得ており、妻は家事・育児に専念中で経営に携わっていなかったとしても、妻は夫が築いた資産の半分を受け取れる可能性があります。
ただし、個別の事情によっては財産分与の割合が変更されることがあります。たとえば、夫婦のどちらか一方が会社の経営をしながら家事・育児も全面的に行っていた場合、夫婦のどちらか一方の特殊な才能・能力によって事業の成功を収め、資産形成をした場合などです。
事業の財産は
家族経営であったとしても、会社を経営していた場合は事業による資産は財産分与の対象にはなりません。会社(法人)の財産と、経営者(個人)の財産は、法律上は別の人格だとみなされるためです。
しかし、株式として会社の株を保有していた場合は個人名義の資産となり、財産分与の対象となりえます。同様に、会社の債券を経営者が保有している場合は、その債券も配偶者の個人財産とみなされるため、財産分与の対象となるでしょう。
そのため、会社経営者である配偶者と離婚するときには、会社の株式や債券の有無を確認し、その金額が分かる書類などの資料を提出してもらうことをおすすめします。
家族経営している夫婦の離婚!解任や解雇はできる?
離婚したあとも、配偶者と一緒に仕事をするのは苦痛だと思う人もいるでしょう。結論から言うと、離婚したとしても配偶者が役員であっても従業員であっても、勝手に辞めさせることは大変難しいものです。
ここでは、配偶者が役員だった場合、従業員だった場合に解任や解雇をしたい場合と、配偶者に自主的に辞めてもらう方法の3つのケースに分けて解説します。
配偶者が役員の場合
家族経営の会社では、夫が社長で妻が取締役だということがあります。配偶者が会社の役員だった場合、解任するには株主総会の決議をする必要があります。
解任するときには正当な事由が必要で、単純に「離婚したから辞めさせる」という理由での解任は難しいでしょう。もし正当な理由なく解任したとすれば、役員である妻から会社に対して損害倍書を請求できる可能性があります。
配偶者が従業員の場合
夫が会社経営者で、妻である配偶者を従業員として雇用している場合でも、離婚したからといって解雇することはできません。配偶者とはいえ労働者であることに変わりはないため、解雇するときには解雇理由が必要で、かつ解雇の適正な手続きを踏む必要があるでしょう。
自主的に退任・退社してもらう場合
配偶者も、離婚したあとに同じ会社で仕事を続けるのに抵抗があると考えているかもしれません。その場合は二人でよく話し合い、自分から会社を退職もしくは辞任してもらうという方法があります。
このように自主退社の方法を取るのが、最も穏便な解決法だと言えるかもしれません。解雇ではなく労働者の意思で退職するため、他の社員が退職するときと同様、退職金支給制度があれば支払います。
家族経営している夫婦の離婚!慰謝料や親権の問題は?
離婚する前に、慰謝料や親権について知っておきたいものです。家族経営している夫婦の場合、慰謝料や親権の問題はどうなるのかを解説していきます。
慰謝料について
慰謝料とは、相手が受けた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。そのため、夫婦のどちらかにのみ責任があるとは言えない「性格の不一致」「価値観の相違」などが原因で離婚した場合は、請求できないと考えておきましょう。
一方で、浮気や不倫、暴力・モラハラなど不法行為があり離婚に至った場合には、請求される可能性が高いといえます。
親権について
未成年の子どもがいる場合、夫婦のどちらが親権を持つかを決める必要があります。もし、経営する事業を将来子どもに継がせたいと考えている場合は、会社の経営者である配偶者が親権を持つことも検討しましょう。
会社経営者が非親権者であっても、子どもに会社を継がせられる可能性はあります。しかし、離婚後に子どもと離れて暮らし交流が途絶えると、子どもは親権を持たない親や、その事業に触れる機会が減ってしまうことも考えられるでしょう。
親権は、子の福祉のために父母のどちらを親権者とするのが望ましいかという基準で決められます。そのため、夫婦のどちらが子どもを監護していたかという点が重視される傾向にあります。
単に「子どもに会社を継がせたい」という理由だけでは認められない可能性があるため注意しましょう。なお、子どもが15歳以上であった場合は、子どもの意志が尊重されます。
まとめ
今回は、数々の離婚問題を多く取り扱う弁護士が、家族経営している夫婦が離婚するときの財産分与や解任・解雇、慰謝料や親権の問題について詳しく解説しました。
家族経営といっても、会社の規模や資産、配偶者がどの程度事業に関わっているかは、夫婦によってさまざまです。ご自身のケースではどうなのか疑問に思った場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみませんか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。