開示請求の流れを徹底解説!スムーズに進めるためのポイントも紹介
最終更新日: 2024年01月08日
- インターネットの掲示板で誹謗中傷を受けている、投稿者の身元を割り出したい。
- 誹謗中傷をした投稿者の情報開示の請求手続きはどうすればよいのだろう?
- 掲示板に投稿した自分の感想が、他人への誹謗中傷に当たると判断されたらどうすればよい?
インターネットの掲示板等で、特定の個人や団体を誹謗中傷するケースがあとを絶ちません。
インターネットの掲示板は匿名で自由に書き込みができるため、その特徴を悪用し、悪意のある投稿を行う者も数多くいます。
そのようなときに、悪意のある投稿者の身元を割り出す方法があります。それが「発信者情報開示請求」です。
そこで今回は、インターネットのトラブルに対応してきた専門弁護士が、発信者情報開示請求の方法、請求前に弁護士と相談するメリット等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 発信者情報開示請求をする場合は、まず証拠の保管や仮処分手続き等を行う
- 開示請求をするためには、権利侵害が認められ、請求に正当な理由がなければならない
- インターネットのトラブルに詳しい弁護士に依頼すれば迅速な請求が可能
開示請求の流れ
発信者情報開示請求とは、掲示板の管理者(サイトの運営元)や、投稿者が利用したプロバイダ(例:NTT等)に対し、悪質な投稿者に関する情報開示を求める手続きです(プロバイダ責任制限法第5条)。
発信者情報開示請求が認められれば、悪質な投稿者の身元(氏名・住所・メールアドレス等)の特定ができます。
こちらでは、従来の開示請求の手順と新設された手続き方法について説明します。
証拠保管
インターネットの掲示板等に投稿された誹謗中傷の内容・画像、日時、URL等を保管します。
具体的には次のような内容をスクリーンショット等で撮影し、証拠を残します。
- 誹謗中傷の口コミや画像、動画
- 悪質な投稿が確認されたスレッドの名称・URL
- レスの番号
- 投稿日時 等
掲示板の管理者(サイトの運営元)に任意開示を求める
証拠を保管しただけではまだ安心できません。
なぜなら、プロバイダのログ保存期間は悪質な投稿があったときから通常3〜6か月程度だからです。
投稿者が利用したプロバイダが判明しないと、時間の経過で発信者情報が消失してしまうリスクがあります。
そのため、早期にIPアドレスの開示を受ける必要があります。IPアドレスとは、投稿で利用したパソコンやスマートフォンに対して、割り当てられる識別符号です。
IPアドレスがわかれば、投稿者の利用したプロバイダがわかります。
IPアドレスを知るため、発信者情報開示請求書を掲示板の管理者(サイトの運営元)に送り、その情報を開示してもらいましょう(任意開示請求)。
仮処分手続き
掲示板の管理者(サイトの運営元)が、IPアドレスの開示に応じないときは仮処分の手続きを進めます。
仮処分は、発信者情報開示請求訴訟の確定前に証拠の保全(管理者にIPアドレスの開示を求める)を図る裁判手続きです。
ただし、被害者が悪質な投稿と主張した内容を、裁判所が名誉毀損に当たらないと判断した場合は、仮処分は認められない可能性が高いです。
IPアドレス特定
掲示板の管理者(サイトの運営元)からIPアドレスが送達されると、投稿者が利用したプロバイダが特定できます。
プロバイダはインターネット接続サービスの提供事業者です。発信者情報開示請求をするためには、プロバイダの特定が必要です。
発信者開示請求
IPアドレスでプロバイダが判明した場合、当該プロバイダを相手にして発信者情報開示請求訴訟を提起します。
訴訟はプロバイダの本社所在地を管轄する裁判所で行う必要があります。
裁判所が「プロバイダは発信者情報を開示する義務がある」と判示すれば、プロバイダは投稿者(発信者)に関する情報を開示しなければなりません。
発信者情報開示
プロバイダが悪質な投稿を行ったときに利用された契約者の氏名、住所等を開示します。
ただし、投稿者の氏名や住所がわかったからといって、悪質な投稿を抑止できるわけではありません。
情報開示後、被害者は投稿者への法的措置(損害賠償請求や刑事告訴)等を行い、問題の解決を図っていきます。
【新設】発信者情報開示命令
従来は任意開示請求→仮処分→IPアドレス特定→発信者情報開示請求訴訟という流れでした。
しかし、2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、「発信者情報開示命令」が新設されました(プロバイダ責任制限法第8条)。
発信者情報開示命令の導入により、1回の裁判手続きで掲示板の管理者(サイトの運営元)とプロバイダの双方に対する請求を、まとめて行えるようになりました。
発信者情報開示命令の手順は次の通りです。
- 証拠を保管する
- 裁判所に発信者情報開示命令の申立てをする
- 裁判所で審理開始
- 裁判所が、掲示板の管理者(サイト運営元)に「IPアドレス提供命令」、管理者とプロバイダに発信者情報「消去禁止命令」を行う
- 裁判所が管理者とプロバイダに発信者情報開示命令を行う
- 開示された情報をもとに被害者が法的措置等を行う
なお、従来の発信者情報開示請求で手続きを進めても構いません。
開示請求時のポイント
従来の発信者情報開示請求、または新設された発信者情報開示命令によって投稿者を特定するためには、いろいろな要件を満たさなければなりません。
公開されている情報であること
開示請求が可能な情報は、インターネット上で誰でもアクセスできる状態の投稿です。
具体的には次のような掲示板等が該当します。
- インターネット掲示板
- ブログ
- SNS(ソーシャルネットワークサービス)
- 口コミサイト
特定の人だけがアクセスできるメールやチャット、DMは対象外です。
本人であること
開示請求ができるのは、原則として権利を侵害された本人です。
親しい友人・知人が被害を受けたからといって、他人が代わって請求することはできません。
ただし、次のケースでは代理人が対応できます。
- 弁護士に代理人を依頼→弁護士が対応
- 開示請求者が未成年者→法定代理人(親等)
- 開示請求者が成年被後見人→後見人等
侵害が明らかであること
投稿による権利侵害が明らかでなければなりません。
請求のとき、次の違法性阻却事由に該当しない点を証明する必要があります。
- 公共性:投稿が公共の利害に関わる事実である
- 公益性:投稿の目的が専ら公益のためである
- 真実性:投稿内容が間違っていない
個人(法人)を貶める目的で、根拠のない醜聞を広めて嘲笑うような投稿は開示請求の対象となります。
正当な理由があること
開示請求を行う正当な理由が必要です。
投稿の内容が誹謗中傷に当たらないのに、開示請求をする側が恣意的な理由(例:単に投稿された意見が気にいらない等)で開示請求手続きを進めても、請求は認められない可能性が高いでしょう。
発信者情報に該当すること
開示情報は、省令に規定する発信者情報に該当するものに限ります。
開示できる情報は次の通りです。
- 氏名または名称、住所、電話番号、メールアドレス
- IPアドレス、ポート番号(IPアドレスの下に設けられた補助アドレス)
- インターネット接続サービスの利用者識別符号
- SIMカード識別番号
- タイムスタンプ(サイトに投稿をした時刻の記録)
開示請求から解決までの流れ
被害者が発信者情報開示請求を行い、認められると掲示板等に投稿した人の身元が特定できます。
もし自分が誹謗中傷をしていたのであれば、次のような対応をとりましょう。
意見照会書への回答
被害者が発信者情報開示請求をすると、契約中のプロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」という書類が届きます。
意見照会書は情報開示に同意するか否かを確認する書類です。
他人の権利侵害がない、または請求内容に納得がいかないならば、情報開示に同意しない旨を回答しましょう。
一方、被害者を誹謗中傷した、または誹謗中傷であるとみなされても仕方がない投稿をしたと認めるなら、情報開示に同意し示談交渉へ応じた方が無難です。
和解交渉
被害者そして加害者である自分が話し合いで解決したい場合、「和解交渉(示談交渉)」を行います。
話し合いでの解決のためには、加害者である自分が誠心誠意、被害者に謝罪するとともに、投稿を削除できるならば積極的に自らが削除し、慰謝料の支払いに応じる必要があります。
慰謝料額は投稿の内容や拡散の状況により異なるものの、概ね次の金額が目安です。
- 名誉毀損:個人は10~50万円程度、企業は50~100万円程度
- 侮辱:1~10万円程度
- プライバシーの侵害:10~50万円程度
- 肖像権の侵害:10~50万円程度
慰謝料額が相応か否か、素人では判断がつき難いので、加害者側も弁護士をたてて、アドバイスを受けつつ、交渉成立を目指しましょう。
訴訟
和解交渉が決裂した場合や、他人への誹謗中傷となる投稿はしていないと主張している場合、被害者側から損害賠償請求訴訟や刑事告訴を受ける可能性があります。
損害賠償請求訴訟を提起されたら高額な請求であると反論したり、刑事告訴を受けたら無罪を主張したりして、対応していく必要があります。
そのため、意見照会書の通知を受けた早い段階で、弁護士に相談しサポートを依頼しましょう。
弁護士をたてればアドバイスはもちろん、自分に有利となる主張、証拠の提示もスムーズに行えます。
開示請求の流れの早い段階で弁護士に相談するメリット
開示請求を行う被害者側も、法的措置を受けた加害者側も、なるべく早く弁護士に相談しサポートを得た方がよいでしょう。
こちらでは弁護士に相談する3つのメリットを取り上げます。
高い専門性
弁護士に相談すれば、法律の知識と経験から、相談者の立場にたった有益なアドバイスが可能です。
被害者側ならば発信者情報開示請求は認められるか、請求後の措置等について詳しく説明します。
一方、加害者には投稿の内容が誹謗中傷といえない場合の対応や、誹謗中傷と認められる可能性が高い場合の対応をわかりやすく助言します。
実績が豊富
インターネットに関するトラブルの交渉・訴訟に実績がある弁護士なら、依頼者の望む結果が得られる可能性は高いです。
実績豊富な弁護士を選ぶコツは、まず法律事務所のホームページを確認しましょう。
- 相談や交渉実績が明記されている
- インターネットに関するトラブルの話題が豊富に掲載されている
- トラブル解決までの流れや費用目安が掲載されている
上記の内容が明記されていれば、その分野に精通した弁護士であるとわかります。
適した方法で提案が可能
相談者(依頼者)の希望をヒアリングし、従来の発信者情報開示請求の手続きを行うべきか、新設された発信者情報開示命令を行うべきかについて、弁護士はわかりやすくアドバイスします。
そして、当該事案により適している方の手続きを勧めてくれるでしょう。
開示請求の流れで困ったら弁護士に相談がおすすめ
今回はインターネットの投稿に関するトラブル解決を行ってきた専門弁護士が、発信者情報開示請求の手順等を詳しく解説しました。
発信者情報開示請求や、法的措置は弁護士の助力を得ればスムーズに手続きが進められます。
弁護士のアドバイスを受けつつ、冷静に対応策を検討してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。