強制わいせつで自首すべき状況とは?メリット・進め方を弁護士が徹底解説!
最終更新日: 2023年04月26日
- 強制わいせつで自首すべきかどうか悩んでいる
- 素直に強制わいせつしてしまったことを自首した方が刑が軽くなるだろうか
- 強制わいせつをした場合に自首する流れについて知りたい
自らの性的興奮・欲求を満たすため、見ず知らずの相手や知り合いを暴行または脅迫し、わいせつ行為に及んだという事件をニュースで見ることがあります。
強制わいせつで逮捕されると、6ヶ月以上10年以下の懲役刑を受けるかもしれません。しかし、早期に自首すれば不起訴処分や減刑が期待できます。
そこで本記事では、多くの強制わいせつ事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、強制わいせつ事件を起こした場合に自首するメリット、弁護士に相談する必要性等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 強制わいせつ事件では、速やかに自首をしないと加害者本人が精神的にどんどん追いつめられる場合がある
- 速やかに自首をすれば、逮捕・勾留されない可能性や不起訴で済む場合もある
- 弁護士に相談し、アドバイスとサポートを受けることで、自首に向けて冷静に準備を進めることが大切
強制わいせつで自首すべき状況
強制わいせつを行った後、「見ず知らずの相手だったし、暗闇だったので自分の顔は見られていない」「自分の知人なので、警察に被害届を出す度胸はないだろう」このような考えで自分の犯した罪を放置する人がいるかもしれません。
しかし、次のようなケースから自らの罪が暴かれ、取り返しのつかない事態となる可能性があります。
- 明確な証拠がある
- 被害者から疑われている
- 第三者から目撃されている
それぞれのケースから、自首するべき理由について解説しましょう。
明確な証拠がある
1つ目の状況は、明確な証拠があることです。
暴行または脅してわいせつ行為に及んだ相手と面識がないので、自分は逮捕されないと安心していたものの、思いもよらない証拠から犯行が発覚するケースもあります。
主に次のようなケースがあげられます。
犯行が発覚するケース | 内容 |
防犯カメラの映像 | 路上や駅等に設置された防犯カメラに犯行が記録されていたケースです。現在はAIによる画像認識技術で、加害者の画像・通行人の画像を瞬時に照合ができます。 |
DNA鑑定 | 科学捜査の進歩により、事件現場にあった加害者の毛髪、体液(唾液や精液等)、血液等からDNA鑑定で犯行が発覚するケースもあります。 |
物的証拠 | 強制わいせつをした加害者が事件現場に何らかの証拠(私物)を残して逃走した、被害者が被害の状況や加害者の顔等をスマートフォン等で撮影していた、という場合に発覚する可能性があります。 |
加害者が思いもよらない証拠によって逮捕につながる可能性は十分にあります。
「自分はいずれ逮捕されるかもしれない」という不安を感じているなら、犯行後は速やかに自首し、真摯に警察の取り調べに応じることがよいでしょう。
被害者から疑われている
2つ目の状況は、被害者から疑われていることです。
加害者は強制わいせつをしたと思っていなくても、被害者がそのような行為をされたと疑い、被害届を提出する可能性もあります。
強制わいせつ罪は、13歳以上の者に対して暴行または脅迫をしてわいせつ行為をした場合に成立します(刑法第176条)。
たとえば暴行は相手を殴る・蹴るといった暴力だけが暴行に該当すると考えがちです。しかし、他人の着衣を強く引っ張る行為や胸ぐらをつかむ行為も、暴行とみなされる場合があります。
被害者の着衣を強く引っ張り、怯えさせたうえで服を脱がし、乳房や性器をもてあそぶ行為は強制わいせつに該当する可能性が高いでしょう。
「殴らなかったし、着衣を強く引っ張って押し倒したが、陰部を触っても抵抗しなかったのだから、相手は同意したのだ」と考えるのは、加害者側の身勝手な思い込みです。
被害者が冷静さを取り戻せば、警察に被害届を提出するかもしれません。警察の捜査が開始される前に自首をして、真摯に反省すれば、被害者が示談に応じてくれる可能性もあります。
第三者から目撃されている
3つ目の状況は、第三者から目撃されていることです。
被害者ではなく、強制わいせつを目撃した第三者から警察に通報される可能性もあります。第三者から強制わいせつの犯行をスマートフォン等で撮影されていたなら、動かぬ証拠となるでしょう。
たとえ目撃者と面識がなくても、通報で犯行が発覚すれば、その後の警察の捜査で加害者が特定される可能性があります。
第三者から通報される前に自首すれば、「目撃者がいた場合、もしかしたら通報されるかもしれない」という恐怖心からも早期に解放されます。
強制わいせつで自首するメリット
被害者の被害届、第三者からの通報、思いもよらない証拠から犯行が発覚する可能性もある以上、自分の犯行に眼をそむけたまま平穏な日常生活を送るのは難しいはずです。
自首をすれば次のようなメリットがあります。
- 逮捕・勾留されない可能性
- 周りに知られない可能性
- 精神的な不安の除去
- 不起訴の可能性
- 減刑の可能性
こちらでは、それぞれのメリットについて解説します。
逮捕・勾留されない可能性
1つ目のメリットは、逮捕・勾留されない可能性です。
強制わいせつによる逮捕・勾留は、留置場等の施設で身柄を拘束されます。逮捕直後から勾留が決まるまで、約3日間は原則として家族とも面会が認められません。
ただし、自首すれば身柄拘束を回避できる可能性が高くなります。
被疑者(加害者)の逮捕が必要なのは次のような場合です(刑事訴訟規則第143条の3)。
- 逃亡するおそれがある
- 罪証を隠滅するおそれがある
つまり、強制わいせつの加害者が自首すると、自ら犯行を告白した人物の逃亡、証拠の隠滅のおそれは低く逮捕の必要性もない(刑事訴訟法第199条第2項)、と捜査機関が判断する可能性は高くなります。
出典:刑事訴訟規則 | 裁判所
周りに知られない可能性
2つ目のメリットは、周りに知られない可能性が高まることです。
強制わいせつをはじめとした性犯罪では、加害者本人の性癖(例:性的暴行に関心がある、児童の裸体に関心がある等)が徹底的に捜査対象となる傾向があります。
この場合、自宅を捜索され関連するDVDやスマートフォン、パソコンに保存してある画像・動画等が差押えられる可能性が高いです。
また、加害者が事業所に勤務しているならば、本人が使用するパソコン等も差し押さえられる場合があるでしょう。
その際に、本人の犯行が家族・勤務先に知られてしまうおそれがあります。しかし、自首をして積極的に捜査へ協力した場合、自宅や勤務先への強制捜査は回避できる可能性があります。
そのため、家族・職場関係者に強制わいせつの事実を知られるリスクの低減も期待できます。
精神的な不安の除去
3つ目のメリットは、精神的な不安の除去です。
強制わいせつは、いつ・どのような形(被害届、第三者の通報)で発覚するかわかりません。
現在のところ警察官が自宅を伺う、自宅に連絡があったという事実はなくても、「誰かが通報するかもしれない」「警察が自宅へやってくるかもしれない」という不安に駆られてしまいます。
いずれ罪悪感や心理的なストレスに押しつぶされてしまうかもしれません。このように毎日を怯えて暮らすよりは、自首して犯した罪と向き合う方が心理的な負担を軽減できるはずです。
不起訴の可能性
4つ目のメリットは、不起訴の可能性です。
迅速に自首したうえで、被害者に謝罪することで示談ができる可能性もあります。
示談という形で被害者から許しを得られるなら、被害届を取り下げてもらえるかもしれません。そうすれば検察官が情状を考慮し、不起訴処分となる可能性が高まります。
不起訴処分になれば前科は付かず、加害者は以前の平穏な日常生活に戻れることでしょう。
ただし、自首したからといって被害者が必ず示談に応じてくれるわけではありません。示談に応じてくれるよう誠心誠意の謝罪が求められます。
減刑の可能性
5つ目のメリットは、減刑の可能性です。
検察に起訴され、強制わいせつ罪に問われると6か月以上10年以下の懲役刑を受けるおそれがあります。つまり、最悪の場合は10年も刑務所へ入らなければいけない場合があるのです。
しかし、自首をすれば減刑が期待できます。刑法では、加害者が捜査機関へ発覚する前に自首した場合、刑を減刑できると明記されています(刑法第42条)。
減刑により3年以下の懲役刑の言渡しが妥当と裁判所から判断された場合、執行猶予付き判決を受ける可能性が高いです。
執行猶予とは、有罪判決による刑の執行を一定期間先送りし、その期間内に別の犯罪を起こさなければ、刑が言渡しの効力が消滅するという制度です。この執行猶予期間中は、基本的に刑務所へ入らず普通の生活を送れます。
強制わいせつで自首するための進め方
強制わいせつ罪を犯したときは自分一人だけで抱え込まず、なるべく早く弁護士に相談しましょう。弁護士のアドバイスを受け、自首をすれば迅速な問題解決が図れるかもしれません。
ここからは、進め方について、以下3点を解説します。
- 弁護士への相談
- 自首準備
- 自首
弁護士への相談
1つ目は、弁護士への相談です。
警察署に自首した場合、警察官から強制わいせつを行った経緯や被害者等について、詳しく取り調べがなされます。
当然ながら、攻撃的な言動(例:自分が加害者でありながら警察官の厳しい指摘に憤慨する、被害者が露出度の高い衣服を着ていたのが悪いといった責任転嫁等)は、逆に自分の立場を不利にします。
そこで、自首する前に法律の専門家である弁護士事務所へ相談してみましょう。休日も相談が可能な弁護士事務所もあります。
まずは自首前に弁護士へ相談し強制わいせつの経緯を説明、的確なアドバイスを受け、自首の準備や被害者との示談交渉の準備を進めましょう。
弁護士と相談すれば、警察から取り調べを受けるときの注意点について詳しい説明がなされるはずです。
自首準備
2つ目は、自首準備です。
相談後、本人の承諾の下で弁護士は上申書・弁護人選任届出等を準備します。
弁護士の準備だけではなく、本人が自首する当日の持ち物、服装の確認、自首したあとの手順が詳しく弁護士から説明されます。
また、自首する日時と場所を決めます。いつ自首するのが効果的かは弁護士のアドバイスに従った方が良いでしょう。
自首
3つ目は自首です。
いきなり自分だけで自首するのではなく、弁護士と一緒に警察署へ出頭することをおすすめします。
自首のときに行われる手順は次の通りです。
- 警察署に出向く
- 事情を説明する
- 現場の詳細を伝える
- 服装や所持品を説明する
- 犯罪に関する質問に答える
それぞれの手順について説明します。
警察署に出向く
自首したとき、同伴した弁護士から警察署に次のような説明を行います。
- 強制わいせつにより自首した経緯
- 逮捕せずに在宅で捜査してもらいたい旨
- 家族や勤め先に連絡しない
自首して逮捕されなければ、その当日に帰宅が可能です。たとえば、午前中に自首したならば、概ね当日の昼過ぎ〜夕方までに釈放される傾向があります。
事情を説明する
自首後は警察等の取り調べが複数回行われます。概ね警察署で1回~3回程度・検察で1~2回程度です。
強制わいせつに至った経緯を、なるべく具体的にわかりやすく説明します。
取調べの日程が本人と合わない場合、弁護士の方から警察等へ日程の調整を依頼することも可能です。取り調べのときは何度も同じ質問を受けるかもしれませんが、誠意を持って回答しましょう。
現場の詳細を伝える
強制わいせつに及んだ場所・日時・被害者に面識があったか等について、できる限り正確に伝えます。
たとえば強制わいせつをした相手が学生だった場合、「夕方過ぎで街灯がなくても、被害者が学生カバンを持ち・制服を着ていたので未成年者とわかった」「周囲は暗かったので、羽交い絞めにして押し倒せば相手が恐怖で抵抗できないと思い、下着をはぎ取って行為に及んだ」等、当時の状況を詳しく説明します。
服装や所持品を説明する
強制わいせつに及んだときの服装、所持品についても詳しく説明します。
たとえば、被害者を暴行・脅迫しわいせつ行為に及んだ時に、失くした物を指摘すれば、警察が現場を捜索したとき、加害者の所持品を発見できるかもしれません。
警察が自首した本人を犯人と特定する上で重要な情報となります。
犯罪に関する質問に答える
警察等から強制わいせつに関する質問を受けた場合は、正直に回答しましょう。
たとえば強制わいせつの内容を質問されたときは、次のような回答が考えられます。
- 出会い系サイトで知り合った女性と、カラオケボックスの中で衣服を強く引っ張り押さえつけてキスをした
- 夜間に女性を公園で引きずり倒し、衣服の上から胸を掴んだ
- このような強制わいせつは初めてした(または複数回行った)
1つ1つの質問へ正直に答えましょう。嘘をついてもいずれ捜査の過程で真相がわかるはずです。
強制わいせつで自首をお考えなら当事務所にご相談を
今回は多くの性犯罪事件に携わってきた専門弁護士が、強制わいせつを行った場合に自首するメリット、弁護士に相談する有効性や自首の流れ等を詳しく解説しました。
強制わいせつ事件の解決には、弁護士のアドバイスや弁護活動が大きな影響を与えます。
ただし、弁護士に捜査機関との話し合いや、被害者との示談交渉を任せるだけではなく、加害者の真摯な反省と、被害者に謝罪する姿勢が何よりも大切です。
強制わいせつ事件を引き起こしたら、弁護士に相談して早期の問題解決を目指しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。