発信者情報開示請求を受けたが家族が犯人!?対処法を専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年05月18日

発信者情報開示請求を受けたが家族が犯人!?対処法を専門弁護士が解説

 

  • 発信者情報開示請求を受けたけど自分は心当たりがない
  • 発信者情報開示請求に心当たりのある家族がいる場合の対応は?
  • 自分も家族も心当たりがない場合、どのように対応すればいい?

近時、インターネット上の書き込みやファイル共有ソフトでの違法ダウンロードによって発信者情報開示請求を受けるケースが非常に増えています。発信者情報開示請求は書き込みなどをしたインターネット回線の契約者を特定する手続きですが、加害者は回線の契約者の家族であるなど、契約者と加害者が一致しないケースがあります。

今回は、発信者情報開示請求を受けた際に家族が犯人である場合などについてその対応を専門弁護士が解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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発信者情報開示請求で家族の情報が開示される?

プロバイダからはその契約者宛に「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届きます。

しかし、インターネット上の掲示板やSNSへ書き込みをした、ファイル共有ソフトで違法ダウンロードをしたなどの権利侵害をした人とインターネットのプロバイダの契約者は必ずしも一致しません。

プロバイダの契約者ではなくその家族が権利侵害の当事者であるケースはよくあります。

この場合、発信者である家族が違法な権利侵害をしたことを認め、自身の氏名や住所などの発信者情報をプロバイダに伝え、その開示に同意した場合にはその家族の情報が開示されます。

他方、発信者である家族の情報を開示したくないと考え、自分が発信者であるとしてプロバイダの契約者が発信者情報開示に同意した場合にはプロバイダの契約者の情報が開示されます。

発信者情報開示請求を家族がやったと拒否できる?

次に、プロバイダの契約者自身は発信者ではなく、その家族が発信者である場合に、発信者は自分ではなく家族であると主張して、発信者情報の開示に同意をしなかった場合はどうなるのでしょうか。

結論としては、プロバイダの契約者の個人情報が開示されてしまいます。

なぜなら、発信者情報開示の要件として、プロバイダの契約者自身が加害者であることは求められていないからです。つまり、違法な権利侵害がある限り、プロバイダの契約者の情報が開示されてしまうのです。

なお、前記のとおり、発信者である家族が自分が発信者であることをプロバイダに伝えてその情報開示に同意をしたときは、その家族の情報が開示されます。

発信者情報が開示された後は、権利侵害をされたと主張する請求者は、損害賠償を求める民事訴訟をしてきます。これに対して、自身が加害者ではなく家族が加害者であることを立証することができれば、これらの法的責任を免れます。

他方、単に自分ではなく家族がやったと主張するだけでは法的責任を免れません。なぜなら、プロバイダの契約者が加害者であると事実上、推定されてしまうからです。

発信者情報開示請求に家族も心当たりがない場合

プロバイダの契約者である自分自身も、その家族も請求者から言われている権利侵害について心当たりがないというケースがあります。この場合、どのように対応するべきかについてご説明します。

  • 同意する
  • 不同意にする
  • 無視する

同意する

発信者情報開示に同意をして、誤解であることを説明しようと考えるかもしれません。

しかし、誤解を解くための説明は、発信者情報開示に不同意としてもすることはできます。また、誤解であるとの説明に相手が納得しなかったときは、発信者情報の開示を得た後に、相手は民事訴訟などの法的手続をとってきてしまいます。

したがって、心当たりがない場合には原則として同意をするべきではありません。

他方、違法な権利侵害があることは明白であり、かつ自身が加害者ではないことを立証できないと判断される場合、後の損害賠償請求の訴訟でも自身が加害者と認定される可能性が高いため、穏便に、かつ賠償額を最小限にするために発信者情報開示に同意をして、請求者と示談をすることも賢明な選択肢といえます。

不同意にする

心当たりがない、自身は加害者ではないことを立証できる場合には、発信者情報開示に不同意とするべきです。

この場合、自身が加害者でないことをプロバイダに対する回答書の中で証拠とともに説得的に主張すれば、損害賠償請求訴訟をしても敗訴する可能性を考えて、請求者が発信者情報開示請求を断念する可能性があります。

また、自身が加害者ではないことを立証できない場合であっても、請求者の主張では違法な権利侵害がないと判断できる場合にも、発信者情報開示に不同意とするべきです。

この場合もプロバイダに対する回答書の中で違法な権利侵害がないことを説得的に主張することで、請求書は発信者情報開示請求を断念する可能性がありますし、仮に発信者情報開示請求訴訟を提起しても請求者が敗訴する可能性があります。

無視する

自分も家族も心当たりがないがないから、発信者情報開示請求は無視すれば良いと考える方もおられます。

しかし、無視という対応は厳禁です。

無視をした場合、プロバイダは契約者には特に言い分がないものとみなします。そうすると、請求者の言い分だけをもとに、発信者情報を開示するかどうか判断されてしまうのです。

心当たりがない、あるいは違法な権利侵害がないことについて、回答書の中で適切に主張をしておけば発信者情報開示を回避できたかもしれないのに、開示される結果となりかねません。

また、違法な権利侵害が明白であり、かつ心当たりがないことを立証できない場合には、民事訴訟で損害賠償を命じられることになります。

この場合、無視をしたことによって余計にかかった弁護士費用の賠償も求められます。このような不利な場合には、支払金額を最小限にするために発信者情報開示に同意をして、示談をするという選択肢も検討して良いでしょう。

このように無視をするという対応にメリットはありませんので、無視は厳禁です。

まとめ

以上、発信者情報開示請求を受けた際に家族が犯人である場合などについてその対応を解説しました。

発信者情報開示請求に対しては正しい対応をしなければ、思わぬ損害賠償責任を負わされる可能性がありますし、場合によっては逮捕、起訴もありえます。

そのような事態を避けるためには、発信者情報開示に係る意見照会書を受領した時点で、一日も早く専門の弁護士にご相談ください。

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