発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た!?対応方法を専門弁護士が徹底解説!

最終更新日: 2024年01月27日

 

発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た!?対応方法を専門弁護士が徹底解説!

  • 発信者情報開示請求とはどのようなものなのか?
  • 意見照会書に対してどのように対応したらいいのか?

近時、掲示板やSNSへの投稿、BitTorrentなどのファイル共有ソフトの利用に関して発信者情報開示請求がなされるケースが急増しています。このような請求を受けることは初めてという方がほとんどですから、正しい対応がわからず困惑することでしょう。

そこで今回は、発信者情報開示請求を専門とする弁護士がプロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た場合の対応について徹底解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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発信者情報開示請求に係る意見照会書とは?

発信者情報開示請求に係る意見照会書とはどのようなものなのでしょうか。以下では、そもそも意見照会書とはどのような書類であるのかについて解説し、意見照会書が届くまでの流れ、回答後の流れについてご説明します。

  • 発信者情報開示請求とは
  • 意見照会書とは
  • 開示される情報

発信者情報開示請求とは

「インターネット上で誹謗中傷の被害に遭った」、「インターネット上で自分や会社の権利を侵害するような投稿がされている」というご相談は近年増加しています。

しかし、インターネットに関する事件は、加害者である発信者がどこの誰で、どういった人物なのかわからないことがほとんどです。

これは、インターネットに関係する事件の被害者は、加害者である発信者を自ら特定しなければ、自分の権利を守るために民事上の損害賠償請求や刑事告訴をすることができないということを意味します。

そこで、プロバイダ責任制限法という法律(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が、インターネット上のトラブルに関する被害者に対して、発信者の特定を可能とする法律上の手段を用意しています。それが、発信者情報開示請求と言われるものです。

発信者情報開示請求は専門性が高く、対応できる弁護士は限られています。

もっとも、その専門性の高さから、被害者が自分で発信者情報開示請求を進めることも困難です。そのため、被害者が弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行っている、というケースが通常です。

意見照会書とは

被害者が発信者情報開示請求を行った場合、発信者が契約しているインターネットサービスプロバイダから契約者に対して、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」というタイトルの書類が郵送されます。

これは、プロバイダ責任制限法が発信者情報開示請求を受けたインターネットサービスプロバイダ等に対して、開示に同意するか同意しないかの意向を契約者に確認することを義務付けているからです。

TwitterやInstagram、インターネット掲示板等は「コンテンツプロバイダ」と呼ばれます。これらコンテンツプロバイダの立場にあるサイトから意見照会がなされることもありますが、通常、サイト側は発信者の氏名や住所を保有していませんから、コンテンツプロバイダから意見照会がなされることは稀です。

一部のブログサービスや、サイト側が発信者の氏名や住所を把握している場合には、コンテンツプロバイダから意見照会が行われるケースもあります。また、郵送ではなくメールで届くケースもあるようです。

開示される情報

開示される発信者情報とは、以下のとおりです。

  • 発信者の氏名
  • 発信者の住所
  • 発信者の電話番号
  • 発信者のメールアドレス
  • 発信者のIPアドレス及びIPアドレスと組み合わされたポート番号
  • インターネット接続サービス利用者識別符号
  • SIMカード識別番号
  • 侵害情報が送信された年月日及び時刻(タイムスタンプ)

開示の対象となる情報は総務省令の改正によって日々追加されていく傾向にあります。最新の改正では、電話番号が発信者情報に追加され、被害者側にとっては開示後の対応が一層容易になりました。

発信者情報開示請求に係る意見照会書が来るまでの流れ

次に、発信者情報開示請求に係る意見照会書が届く流れについて、ブログや掲示板などのコンテンツプロバイダから届く場合とインターネットサービスプロバイダから届く場合に分けてご説明します。

  • コンテンツプロバイダの場合
  • インターネットサービスプロバイダの場合

コンテンツプロバイダの場合

先に説明したように、コンテンツプロバイダから意見照会が行われるケースは多くはありませんが、ブログ記事を運営しているケースにおいて、契約しているサーバー管理会社やブログサービスを提供している会社から連絡がある場合があります。

もっとも、インターネットサービスプロバイダとは異なり、コンテンツプロバイダからの意見照会は通常郵送されず、サービスに登録しているメールアドレス宛にメールで連絡があることが多いようです。

そのため、意見照会のメールを見ていなかったという方もおられます。そして、気が付かないうちに開示請求が進んでいて、裁判所から損害賠償請求の訴状が届いたということで慌ててメールを確認したところ、コンテンツプロバイダからの意見照会メールが見つかったということがあります。

そもそも違法な発信をしないよう気を付けるべきですが、ブログ等を利用している場合は、登録しているメールアドレスについて定期的に確認した方が良いでしょう。

インターネットサービスプロバイダの場合

当然ですが、インターネットサービスプロバイダは、違法な発信に用いられたインターネット回線(自社が提供する回線)の契約者が誰かということを把握しています。ですが、具体的な発信者が誰かということまでは把握できません。

このため、契約者と発信者が別というケースがしばしばあります。一例としては、契約者は親だけれども、投稿をした発信者は子であったというケースや、妻が契約している回線で夫が違法な発信をしていたというケースです。

このような場合、意見照会書はあくまでも契約者である親や妻宛に届くことになります。親が契約しているインターネット回線で、子供が下宿等をしていて実家にいないという場合も、意見照会書は実家の親宛に届きます。

意見照会書には回答書が添えられており、一定期間の間に開示に同意するか、不同意かを回答しなければいけません。

発信者情報開示請求に係る意見照会書への回答書

では、発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た場合、具体的にどのような対応をすべきなのでしょうか。

意見照会書(や意見照会のメール)には、回答書や回答欄が添付されており、発信者情報開示に同意するかどうかの回答を求められます。

以下、回答方法や回答後の流れについて見ていきましょう。

  • 同意する回答
  • 不同意の回答
  • 回答しない
  • その後の法的請求

同意する回答

発信者情報開示に同意をすれば、発信者情報開示の請求者に対しては、請求者が開示を求める発信者情報が通知されます。

不同意の回答

他方、不同意の回答をすれば、開示の可否はプロバイダが決めることになります。安易に開示しますと契約者から法的責任を追及される恐れがありますので、よほど権利侵害が明白であるケースを除き、プロバイダは原則として開示をしません。

そのため、請求者は次にプロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起して開示を求めていきます。そして、裁判所が開示すべきと判断したときは、プロバイダは発信者情報を開示します。

回答しない

発信者情報開示請求に係る意見照会書に対して何も回答をしなかったという方もしばしばおられます。しかし、同意・不同意について何ら回答をしないことはお勧めできません。

定められた回答期間内に回答がなかった場合に、どのように取り扱うのかについてはプロバイダによって対応が異なりますが、「合理的な理由のない不同意」として取り扱うプロバイダが多いようです。

権利侵害が認定されるケースであれば、請求者の心象を害し、その後の和解が困難になります。他方、権利侵害が認定されるか微妙なケースでは、しっかりと反論をしなければ発信者情報が開示されてしまう可能性があります。

したがって、いずれのケースでも同意・不同意の回答はするべきです。

その後の法的請求

発信者の同意、あるいは裁判所による開示を命じる旨の判決を経て、請求者である被害者は投稿者の発信者情報の開示を受けることができます。

発信者情報の開示を受けた後は、民事で損害賠償請求がなされますし、場合によっては刑事告訴がなされ、その後、逮捕・起訴されることになります。

発信者情報開示請求に係る意見照会書への対応事例

最後に、発信者情報開示請求に係る意見照会書が来たときの具体的な対応事例を踏まえ、それぞれの解決や結果について見ていきましょう。

転職サイトに悪評を投稿した事例

Aさんは、退職していた会社で折り合いが悪かった上司(役員)について、社内で社員に対して暴力を振るっている、従業員に対して高圧的な態度を取ること、妻子がありながら女性秘書と不倫関係にあるというようなことを転職サイトの会社のページに投稿していました。なお、そのような事実はなく、Aさんの創作だったそうです。

すると元上司から、発信者情報開示請求が行われ、ある日Aさんの元に意見照会書が届きました。Aさんは転職先の会社が支給する社用スマホから投稿を行っていました。そのため、意見照会書は転職先の会社宛に届き、Aさんの投稿だということはすぐに明らかになりました。

投稿内容が悪質で、開示がされてしまうことは避けられない状況だったため、開示請求には同意し、元上司との示談交渉を進める方針となりました。しかし、元上司の怒りは凄まじく、刑事告訴がなされAさんは警察の捜査を受けることになりました。

もっとも、難航した示談交渉の末、元上司と示談が成立し、刑事罰も回避することができました。

発信者情報が開示されなかった事例

Bさんは、インターネット上の掲示板において著名なインフルエンサーの直近の不用意な言動を指摘する投稿をしました。すると、投稿から役3か月後、自宅のインターネット回線の契約者であった夫宛に発信者情報開示に係る意見照会書が届きました。

夫と共に投稿内容を確認したものの、指摘は穏便な態様にとどまっており、人格攻撃に及んでいることもありませんでした。それでも開示に応じないといけないのか不安になったBさんは、弁護士に依頼をしました。

投稿内容それ自体や、前後にある別人の投稿内容を踏まえたとしても、請求者の権利を侵害しているとは読めませんでした。そこで、発信者情報開示に同意しない旨の回答をする方針となりました。

もっとも、不同意の回答をする場合は、多くのプロバイダでは不同意の理由を説明することを求めてきます。この理由には、単に「反省している」とか「投稿は消した」としても意味がありません。請求者の請求内容を踏まえた上で、法律的に開示されるべき投稿ではないということを丁寧に説明しなければなりません。

後日プロバイダからは不開示とした旨の連絡があり、その後の訴訟提起もなくBさんの案件は終結となりました。

アニメなどの多数の著作権侵害をした事例

Cさんは、アニメや漫画作品についてファイル共有ソフトを通じて多数をダウンロード、アップロードしていました。すると、遂に、権利者から発信者情報開示請求がなされました。

著作権侵害の場合は、権利者は自分が権利を有している著作物であることと、Cさんが著作物を権利者に無断で流通させていることだけ主張できれば良く、証拠も用意しやすいです。そのため、Cさんも発信者情報が開示されてしまうことは不可避の状況でした。

また、著作権侵害については、著作権法の改正、社会問題化によって刑事罰が課されるケースも珍しくありません。開示請求に対しては同意した上で、早期の示談を図る方針となりました。

名誉毀損やプライバシー権侵害の場合と比べ、著作権侵害の場合は損害賠償の金額が高額になりやすいといえます。Cさんも、著作権侵害の件数が非常に多く、請求者からは当初1,000万円を超える損害賠償請求が行われました。交渉は難航しましたが、最終的には請求者が主張していた金額からは大幅に減額を行った上での和解・示談が成立しました。

ビットトレントでAV(アダルトビデオ)の著作権侵害をした事例

Dさんは、ファイル共有ソフトのビットトレントでAVをダウンロードして閲覧していました。トレントソフトの場合、ダウンロードをすると自身も当該ファイルをアップロードすることになるのですが、Dさんはそれを知らずにダウンロードを繰り返していました。

ある日、インターネットのプロバイダから発信者情報開示に係る意見照会書が来たものの、何かの詐欺かと思い開示に同意しないと記入して回答書を提出しました。ところが、その約1年半後の平日の早朝、当然、警察官が令状をもって家宅捜索にやってきて、そのまま任意同行を求められました。Dさんはその段階で初めて、ビットトレントによるAVのダウンロードで著作権侵害の犯罪を犯してしまっていたことを理解したのです。

Dさんは急いでAVメーカーとの示談を当事務所に依頼しました。幸い速やかに示談が成立し、書類送検後に検察官に示談成立を報告したところ、起訴はされず前科もつかずに解決となりました。

まとめ

以上、プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た場合の対応について解説しました。

たった一つの権利侵害でも、莫大な損害賠償を負うことになる場合もあれば、刑事事件となって前科がつくケースもあります。個々の事案において最も適切な対応は何かということを模索して、慎重に対応を行わなければなりません。

的確な回答書を作成することで発信者情報開示を回避できる場合もあれば、開示はやむを得ないので民事訴訟や刑事告訴を避けるべく、示談を目指すべきケースもあります。

発信者情報開示請求に係る意見照会書が来た場合は、できる限り早期に専門の弁護士にご相談ください。

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