なりすまし被害で開示請求する流れと問われる罪とは?取るべき対策を徹底解説
最終更新日: 2024年11月29日
- 私は「なりすまし被害」を受けた。犯人を何とか特定したい。
- 私は「なりすまし」の疑いで逮捕されそうだ。どのような罪に問われてしまうのだろう?
- なりすまし犯を特定する開示請求には、弁護士のサポートが必要なのだろうか?
なりすましとは、何者かがあなたを装い、あるシステムを利用したり、他のユーザーと交流したりする行為です。
なりすまし行為は、不正な手段で個人情報を盗む場合や、資金を不正送金する場合に利用される等、深刻な社会問題となっています。
なりすまし犯を見つけ出し、民事責任や刑事責任を追及したいものです。
そこで今回は、なりすまし被害の解決に携わってきた専門弁護士が、なりすまし犯に関する開示請求を行う手順、なりすまし犯が問われる罪等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- なりすまし犯を特定するには、サイト管理者やプロバイダを相手になりすまし犯の情報開示を求める、「仮処分手続き」を裁判所に申し立てる
- なりすまし犯を特定できた場合、被害者は損害賠償請求や刑事告訴が可能
- 特定されたなりすまし犯は、名誉毀損罪や詐欺罪等に問われる可能性がある
なりすましで開示請求する流れ
なりすましを放置すれば、なりすまし犯はあなたを装った偽アカウントで、嘘を流布したり、他のユーザーからお金を騙し取ったりするおそれもあります。
速やかになりすまし犯を特定し、被害を最小限に抑えなければいけません。
仮処分手続き
損害賠償請求や刑事告訴を行うには、なりすまし犯が誰かを特定する必要があります。
そこで、SNS・掲示板サイト等の管理者を相手に、偽アカウントを開設したなりすまし犯の氏名・ 住所等の開示を求める、「仮処分手続き」を裁判所に申し立てます。
ただし、匿名でアカウントが開設できるSNS等の場合、管理者側は、なりすまし犯の携帯電話番号しかわからない場合もあるでしょう。
なりすまし犯の氏名・住所等の情報を特定するには、まず管理者側から携帯電話番号を開示させます。その後、携帯キャリア等を相手に、携帯電話の契約者情報の開示請求を行います。
損害賠償請求
なりすまし犯の氏名・住所等が特定できたら、なりすまし犯の住所に「損害賠償請求」の通知を送付しましょう。
通知には次の内容を記載します。
- 損害賠償額の明記、支払方法
- 偽アカウントや誹謗中傷の投稿の削除
- 期限までに履行しなければ法的措置を行う旨
「内容証明郵便」を利用し送付した方が、なりすまし犯に心理的なプレッシャーを与えられる他、「なりすまし犯に損害賠償を請求した」という証明になります。
ただし、内容証明郵便を送付しても、なりすまし犯が請求を無視したり拒否したりするかもしれません。
その場合は指定期限経過後、なりすまし犯の住所地を管轄する裁判所に、「損害賠償請求訴訟」を提起します。
裁判所からあなたの主張が認められたら、なりすまし犯に損害賠償を命じる判決が言い渡されます。
なお、なりすまし犯に損害賠償請求の通知をせず、いきなり訴訟提起も可能です。また、刑事裁判中でも訴訟提起ができます。
刑事告訴
なりすまし犯が特定できれば、刑事責任の追及も可能です。基本的に、被害者であるあなたが警察署へ告訴状を提出した後、捜査が開始されます。
なりすまし犯が逮捕され、検察官から起訴された場合、刑事裁判が開かれます。裁判所から有罪判決を受けた場合、なりすまし犯は懲役刑、禁錮刑、罰金刑等を受けることになるでしょう。
なお、2025年6月1日施行の改正刑法では、懲役刑と禁錮刑を統合した「拘禁刑」が導入されます。
なりすまし犯が問われる罪
なりすまし犯が、あなたを装いどのような行動をとったかで、問われる罪は異なります。
最悪の場合、なりすまし犯は10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁)に処される可能性もあるでしょう。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、なりすまし犯が公然と特定の個人・団体の事実を摘示し、その名誉を侵害する罪です。
名誉毀損罪は親告罪なので、被害者が刑事告訴しなければ、捜査機関は捜査を開始しません。
名誉毀損罪が適用されるのは、たとえばSNS・掲示板サイト等で、「〇〇は過去に銀行強盗を行った凶悪犯だ。刑務所を出所後、再び同様の事件を起こそうとしている。」と投稿するケースです。
名誉毀損罪に問われ有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日以降は拘禁に統一)又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
侮辱罪とは、公然と事実を摘示せず、多数の人が見聞きできる状況の中、口頭や文書を問わず、特定の個人・団体を侮辱する罪です。なお、侮辱罪も親告罪です。
侮辱罪が適用されるのは、たとえばSNS・掲示板サイト等で、「〇〇、お前は低学歴のくせに、大卒に意見するな。このクズ」と罵倒する投稿が該当します。
侮辱罪に問われ有罪判決を受けた場合、1年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日以降は拘禁に統一)若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第231条)。
詐欺罪
詐欺罪は、SNS・掲示板サイト等であなたを装い、他のユーザーを欺き、財物を交付させた場合に適用される罪です。
あなたの信用を利用し、ユーザーから現金を騙し取る行為が該当します。
詐欺罪は非親告罪なので、捜査機関が詐欺の事実を確認すれば、被害者が刑事告訴を行わなくとも、捜査が開始される場合もあります。
詐欺罪に問われ有罪判決を受けた場合、10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁)に処されます(刑法第246条)。
電子計算機使用詐欺罪
電子計算機使用詐欺罪とは、人ではなく、コンピューターを騙し(誤情報を与え)て、財産上の不法な利益を得る罪です。本罪は詐欺罪と同様に非親告罪です。
次のようなケースが電子計算機使用詐欺罪に該当します。
- なりすまし犯があなたを装ったアカウントで、決済時にポイントを使用した
- なりすまし犯があなたを装ったアカウントで、電子決済で商品を購入した
電子計算機使用詐欺罪に問われ有罪判決を受けた場合、10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁)に処されます(刑法第246条の2)。
不正アクセス禁止法違反
なりすまし犯が、あなたのID・パスワード等を不正に利用する行為は、不正アクセス禁止法違反です(非親告罪)。
不正なアクセス行為はもちろん、なりすまし犯が不正アクセスのための情報を不正に取得・保管する行為や、不正アクセスを助長する行為等も、同法違反となります。
不正アクセス禁止法違反で有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁)または100万円以下の罰金に処されます(不正アクセス禁止法第11条)。
出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | e-Gov法令検索
損害賠償請求
損害賠償請求は刑事罰と異なります。被害者であるあなたはなりすまし犯に対し、不法行為を理由に賠償請求が可能です。
名誉毀損や侮辱等を理由に刑事裁判を進めつつ、損害賠償を求める民事裁判の手続きも可能です。
損害賠償額はなりすましの悪質性や、被害者の損失等によって算定され、100〜200万円程度が相場となります。
なりすまし被害での開示請求されたことがわかるタイミング
あなたがSNS・掲示板サイトでなりすまし行為を行った場合、被害者があなたの氏名や住所等を特定するため、裁判手続きを開始する可能性があります。
契約プロバイダが、あなたの個人情報を開示するか否かについて検討しはじめている場合、あなたの自宅に「発信者情報開示請求に係る意見照会書」の通知が届きます(発信者のメールに意見照会の通知を送信するケースもある)。
これは「被害者からあなたの個人情報の開示を求められたので、情報開示に応じてよいか?」を尋ねる通知です。
あなたは通知を拒否しても構いません。ただし、契約プロバイダはいずれ裁判所から、あなたの個人情報の開示を命じられる可能性もあります。
意見照会の通知があなたのもとへ届いたら、法律の専門家と相談し対応を協議した方がよいでしょう。
なりすまし被害の開示請求ですべきこと
あなたがなりすまし行為の被害者の場合、開示請求に手間取っていれば、あなたを装う偽アカウントが削除され、なりすまし犯の特定が難しくなる場合もあります。
速やかに誹謗中傷の証拠を保存し、専門家の助力を受けながら、開示請求の手続きを進めていきましょう。
証拠収集
あなたを装う偽アカウント等はスクリーンショットで撮影、証拠を保存しましょう。
保存する場合、偽アカウントはもちろん、投稿内容、投稿日時、URL等が確認できるように撮影します。
パソコン画面の方がスマートフォン画面より大きく見やすいので、撮影はパソコン画面で行った方がよいです。
専門家への依頼
被害者であるあなたが、自分だけの力で開示請求を進めていくのが不安な場合、法律の専門家である弁護士と相談してみましょう。
弁護士はなりすまし行為の内容を確認し、次のようなアドバイスを行います。
- なりすまし犯がどのような罪に問われるか
- 裁判所に情報開示を申し立てる方法
- 開示手続きをスムーズに進めるポイント
- 弁護士に代理人を依頼するメリット
あなたは弁護士との相談後、開示請求の代理人を委任できます。
弁護士はあなたの代理人として活動を開始し、開示請求に関する手続きを、スピーディーに進めていきます。
なりすまし被害で開示請求されたらすぐすべきこと
あなたがSNS・掲示板サイトでなりすまし行為をした側の場合、いずれあなたの個人情報が被害者に開示されることでしょう。
開示後は被害者から損害賠償請求を受けたり、捜査機関から逮捕・起訴されたりする可能性もあります。加害者であるあなたは、速やかに今後の対応を検討しなければいけません。
専門家への依頼
被害者からあなたの個人情報が特定される事態を踏まえ、民事裁判・刑事裁判に実績のある弁護士と相談してみましょう。
弁護士は契約プロバイダからの意見照会の通知内容を確認後、次のような助言を行います。
- あなたがなりすまし行為でどのような罪に問われるか
- 意見照会書の記載ポイント
- 損害賠償請求を受けたときどのように対処するか
- あなたが逮捕された場合の対応
- 被害者と示談で問題を解決する必要性
弁護士と相談したら、あなたの私選弁護人としてサポートを依頼しましょう。
弁護士はあなたの代わりに、被害者との示談交渉や、逮捕を回避する措置等、様々な弁護活動に全力を尽くします。
意見照会書への回答
あなたのもとに意見照会の通知が届いたならば、記載内容をじっくりと確認し、契約プロバイダの開示に同意するか、それとも拒否するかについて回答しましょう。
なりすまし行為を認めているなら、開示に同意した方がよいです。返答を契約プロバイダ側に通知したら、弁護士と以後の対応を取り決めていきましょう。
一方、なりすまし行為をした覚えがない場合、開示拒否を返答しても構いません。ただし、拒否する意思を明確にするなら、プロバイダ側も納得できるような反論を主張する必要があります。
なりすましでの開示請求なら弁護士にご相談を
今回は、なりすまし被害の解決に尽力してきた専門弁護士が、なりすまし犯を特定する開示請求のポイント等について詳しく解説しました。
開示請求の方法がわからなければ、まずは弁護士と相談し、開示請求に関するアドバイスを受け、今後の対応を協議していきましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。