インスタでの開示請求はどう進む?対処方法や刑罪・解決までの流れを解説!
最終更新日: 2024年01月09日
- インスタで誹謗中傷を受けて困っている。悪質な投稿者の身元を特定したい。
- 自分がインスタで誹謗中傷したせいで、相手は開示請求等を行ったようだ。自分はどうなってしまうのだろう?
- 開示請求等を行ってから解決までの流れについて知りたい。
Instagram(インスタグラム)は略して「インスタ」とも呼ばれ、2010年にリリースされた、主に画像の投稿を目的として利用されるSNSです。
インスタではユーザーの趣向を凝らした画像の投稿で盛り上がる反面、勝手に他人の画像を掲載したり、誹謗中傷したりする被害があとを絶ちません。
発信者情報開示請求等を行えば、悪質な投稿者の身元は特定可能です。しかし、肝心なのは身元の特定後の対応といえます。
被害者は法的措置を取り、悪質な投稿の抑止に、投稿者(加害者)は穏便な解決を図りたいものです。
そこで今回は、インスタをはじめとしたSNSトラブルに対応してきた専門弁護士が、開示請求を行う方法、開示請求後の対処方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 投稿者の身元特定の方法として「発信者情報開示請求」や「発信者情報開示命令」がある
- 開示請求等で身元特定後、投稿者は損害賠償請求や刑事告訴を受けるおそれがある
- 権利侵害を受けた被害者や悪質な投稿をした加害者は、弁護士に相談し今後の対応を検討した方がよい
インスタで開示請求する方法
悪質な投稿を削除できたとしても、再び投稿されたり、拡散されたりするリスクが残ります。
悪質な投稿による権利侵害を防止するため、投稿者の身元を特定し、法的措置をとる必要があるでしょう。
投稿者の身元を特定する方法として、「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」の2つが用意されています。
発信者情報開示請求
従来より「プロバイダ責任制限法」に規定された開示請求方法です。
まず、インスタの管理者側(日本における代表者は「ビーコンサービス株式会社」)に発信者情報開示請求(任意開示)を行います。
ただし、インスタの管理者側が投稿者の個人情報(氏名・住所等)を把握しているわけではありません。管理者側が開示に応じた場合、投稿者のIPアドレスが通知されます。
このIPアドレスで、投稿者が利用している経由プロバイダ(例:NTTやソフトバンク、KDDI等)がわかります。
IPアドレスの開示後、投稿者が利用している経由プロバイダに発信者情報開示請求訴訟を提起し、投稿者の氏名・住所等が特定可能です。
発信者情報開示命令
改正プロバイダ責任制限法の施行により、2022年10月1日に新設された開示請求方法です。
裁判所に発信者情報開示命令を申立て、インスタの管理者と経由プロバイダ双方に対する請求を一括で行います。
申立て後、裁判所は次のような命令をします。
- インスタの管理者→IPアドレス提供命令
- 経由プロバイダ→発信者情報消去禁止命令
発信者情報開示請求ではインスタの管理者と経由プロバイダに対し、別々に請求する必要があったものの、開示命令ではまとめて請求できるため、投稿者の迅速な特定が可能です。
インスタの開示請求で問われる罪
開示請求等により権利侵害をした投稿者の氏名・住所等が判明した場合、被害者から刑事告訴(名誉毀損罪、侮辱罪)や損害賠償請求を受ける可能性があります。
名誉毀損罪
インスタのようなSNS等で、公然と個人や法人の事実を摘示し、社会的評価を低下させると名誉毀損罪に問われる可能性があります。
たとえば、「〇〇マンションの住民〇〇〇〇は、過去に強盗で逮捕された男だ。」等の投稿は名誉毀損罪です。それが事実か否かを問わず本罪に該当します。
本罪で有罪になると、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
インスタのようなSNS等で、事実を摘示せずに公然と、個人や法人を侮辱した場合、侮辱罪に問われる可能性があります。
たとえば、個人や法人に対し「人間のクズ」「死んじまえ」「ブラック企業」等と投稿した場合は侮辱罪です。
本罪で有罪になると、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます(刑法第231条)。
不法行為による損害賠償
インスタによる誹謗中傷で個人や法人に損害が発生した場合、投稿者は不法行為責任を問われる可能性があります(民法第709条)。
不法行為責任の場合は金銭による解決が図られ、まず示談交渉で和解成立を目指すことが一般的です。
ただし、加害者が話し合いを拒否した、または交渉が不成立に終わったという場合、被害者は裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する可能性が高いです。
被害者から請求される賠償金額(慰謝料額)は、名誉毀損の場合は10〜50万円程度(法人は50〜100万円程度)、侮辱の場合は1〜10万円程度となります。
ただし、誹謗中傷が原因で被害者に深刻な損害を与えた場合、賠償金額は数百万円に上るケースもあります。
財産以外の損害の賠償
誹謗中傷により名誉感情が侵害された被害者は、次の権利を主張し、投稿者の不法行為責任(民法第710条)を追及する可能性があります。
- 肖像権侵害:無許可で他人の顔や容姿等を撮影、インスタに使用・公表する行為
- プライバシー侵害:他人の私生活の情報を、インスタに無断で投稿する行為
肖像権侵害やプライバシー侵害があった場合、概ね10〜50万円程度の賠償金額(慰謝料額)の請求が想定されます。
インスタで開示請求されたときの対処方法
インスタで権利侵害を受けたと主張する人または団体が開示請求後、経由プロバイダから投稿者に「開示請求を受けたので、個人情報を開示してよいか?」と通知されます。
こちらは「発信者情報開示請求に係る意見照会書」と呼ばれており、意見照会書で回答を求められたときは、投稿者は慎重な対応が必要です(返答期間14日以内)。
身に覚えがある場合
投稿者である自分が特定の個人や団体の誹謗中傷を行ったならば、情報開示の要求を受け入れ、穏便な解決を図りましょう。
被害者と示談交渉を行い和解ができれば、損害賠償請求訴訟の提起や刑事告訴を受けるリスクは回避できます。
しかし、投稿者(加害者)と被害者が直接話し合うと、感情的になり和解が不成立となる可能性もあります。
示談交渉を成功させるため、弁護士をたてて交渉に当たりましょう。投稿者の代わりに法律のプロである弁護士が被害者側と話し合います。
身に覚えがない場合
悪質な投稿を全く行っていないならば、情報開示の要求を拒否して構いません。
ただし、インスタでは「乗っ取り」の被害が急増している点に注意しましょう。
乗っ取りとは、他人のIDやパスワードを不正に入手後、ログインまたはアカウントを操作する行為です。投稿者のIDやパスワードの情報を得て、悪質な投稿が行われている可能性もあります。
その場合は放置せずに、インスタ管理者側に報告し、警察にも通報しましょう。このようなサイバー犯罪の相談窓口は、都道府県警察本部に設置されています。
なるべく早く管理者や警察等に相談し、対策を話し合いましょう。
インスタの開示請求から解決までの流れ
相手が開示請求をすれば、いずれ投稿者は法的措置を受けてしまう可能性が高いです。
投稿者が穏便に問題解決を図りたいなら、弁護士になるべく早く相談しましょう。
専門弁護士への相談
SNSの法的トラブルの解決に豊富な実績を有する弁護士へ相談します。
投稿者(加害者)から相談を受けた弁護士は、主に次のようなアドバイスを行います。
- 投稿が誹謗中傷に当たるかどうか
- 示談交渉で解決する必要性
- 損害賠償請求訴訟を提起された場合の対応
- 刑事告訴されたときの対応
豊富な実績を有する弁護士かどうかは、法律事務所のホームページで次の内容をみて判断しましょう。
- SNSの法的トラブルに関する相談実績・解決実績が明記されている
- インスタ等の法的トラブルの相談事例や話題が豊富に掲載されている
- トラブル対応の手順や費用の目安が掲示されている
ホームページ内でこのような内容が確認できれば、SNSの法的トラブルに精通した法律事務所であるとわかります。
交渉
加害者となった投稿者は被害者と示談交渉で和解し、穏便な解決を図ったほうがよいです。
弁護士に代理人を依頼すれば、豊富な法律の知識と経験を活用し、和解のために尽力します。
示談のときは主に次のような条件を取り決めます。
- 投稿者(加害者)が被害者へ謝罪し、投稿の削除を約束する
- 投稿の拡散を防止するため、加害者も投稿の削除に協力する
- 被害者に支払う慰謝料(示談金)の金額、支払い方法、支払期限
- 被害者は加害者の告訴をしない、すでに告訴した場合は取り消す
示談が成立すると、弁護士は和解の証拠として「示談書(合意書)」を作成します。
訴訟・刑事告訴
示談交渉が決裂すれば、被害者から裁判所に損害賠償請求訴訟されたり、刑事告訴されたりするおそれがあります。
投稿者が弁護士に弁護を依頼すれば、次のような対応が可能です。
- 損害賠償請求訴訟:被害者からの賠償請求が過大である場合、減額の主張を行う
- 刑事告訴:投稿者が逮捕されたら早期の解放を警察に働きかけ、検察官が起訴しないよう説得を図る
なお、検察官が投稿者を名誉毀損罪または侮辱罪で起訴した場合、弁護士は刑事裁判で無罪の主張や減刑を図り、最後まで投稿者(被告人)のために弁護活動を行います。
インスタの開示請求および請求後の対応なら弁護士に相談を
今回はインスタ等のSNSトラブルに対応してきた専門弁護士が、開示請求の方法や、開示請求後の対応について詳しく解説しました。
インスタで権利侵害を受けた人も、権利侵害を行った投稿者も、なるべく早く弁護士に相談し対策を進めていきましょう。
弁護士の的確なアドバイスを受けながら、迅速に問題解決を図ってみましょう。