共有持分の不動産と債務整理|専門家が解説する穏便な解決法

2026年04月16日

共有持分の不動産と債務整理|専門家が解説する穏便な解決法

共有名義(共有持分)の不動産を持っている状態で借金問題を抱えていると、「債務整理をしたら家はどうなるのか」「家族に迷惑がかかるのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。

実際、共有不動産が関係する債務整理は通常よりも複雑で、対応を誤ると競売やトラブルに発展するリスクもあります。

しかし、適切な方法を選べば、不動産を残したり、他の共有者への影響を最小限に抑えたりすることは十分可能です。

本記事では、共有持分不動産がある場合の債務整理の基本ルールから、具体的な影響、そして穏便に解決するための現実的な対処法まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。

「家を守りたい」「家族に迷惑をかけたくない」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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目次

共有持分の不動産がある状況で債務整理をするとどうなる?

共有名義(共有持分)の不動産を所有している状況で債務整理を検討する場合、単独で所有しているケースよりも手続きが複雑になります。

特に、他の共有者への影響を心配される方は少なくありません。

ここでは、債務整理が共有持分不動産にどのような影響を及ぼすのか、基本的なルールと注意点を解説します。

原則として処分されるのは「自分の持分のみ」

債務整理の手続きにおいて、処分の対象となるのは、あくまで債務者本人の財産です。

そのため、不動産を複数人で共有している場合、原則として処分されるのは債務者本人が所有する「共有持分」のみとなります。

例えば、兄弟2人で不動産を2分の1ずつ共有している場合、兄が債務整理(特に自己破産)をしたとしても、弟が所有する2分の1の持分が勝手に処分されることはありません。

これは民法上の大原則であり、他人の財産権を侵害することはできないためです。この点を理解しておくだけでも、少し安心できるかもしれません。

しかし、実際には「自分の持分のみ」が処分されることで、結果的に不動産全体に大きな影響が及ぶ可能性があるため、注意が必要です。

他の共有者にはどのような影響があるのか?

自分の持分のみが処分対象とはいえ、他の共有者に全く影響がないわけではありません。

特に自己破産をした場合、以下のような影響が考えられます。

見知らぬ第三者が共有者になる可能性

自己破産をすると、破産管財人が債務者の財産(この場合は共有持分)を現金化し、債権者に配当します。

破産管財人は、その共有持分を第三者に売却しようと試みます。もし買い手が見つかれば、その第三者が新たな共有者として加わることになります。

これまで家族や親族間での共有だった不動産に、全く面識のない業者などが関与してくる事態は、他の共有者にとって大きな精神的負担となるでしょう。

共有物分割請求により競売になるリスク

新たに共有者となった第三者(特に専門業者など)は、その不動産を利用することではなく、利益を得ることを目的としています。

そのため、他の共有者に対して「不動産全体を売却して代金を分けましょう」と提案したり、持分の買取を交渉したりします。

この交渉がまとまらない場合、その第三者は裁判所に対して「共有物分割請求訴訟」を起こすことができます。

この訴訟が提起されると、裁判所の判断によっては、最終的に不動産全体が競売にかけられ、その売却代金を持分割合に応じて分配することになります。

結果として、住み続けたいと願っていた他の共有者も、家を失ってしまうという最悪の事態に陥るリスクがあるのです。

住宅ローンが残っている場合の注意点

共有持分不動産に住宅ローンが残っている場合は、さらに状況が複雑になります。

抵当権の実行

住宅ローンを組む際、通常は金融機関がその不動産全体に「抵当権」を設定します。

債務整理(特に自己破産や個人再生)を行うと、ローンの返済が滞るため、金融機関はこの抵当権を実行し、不動産を競売にかけることが一般的です。

この場合、共有持分だけでなく、不動産全体が強制的に売却されてしまいます。

連帯保証人・連帯債務者への影響

共有不動産では、他の共有者が「連帯保証人」や「連帯債務者」になっているケースが非常に多く見られます。

債務者本人が債務整理をすると、金融機関は連帯保証人や連帯債務者に対して、残りのローンの一括返済を請求します。

多額の請求を突然受けた連帯保証人・連帯債務者もまた、返済が困難となり、連鎖的に債務整理をせざるを得なくなる可能性があり、非常に深刻な問題に発展しかねません。

【状況別】共有持分不動産がある場合の債務整理3つの方法

債務整理には、主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3つの方法があります。

どの方法を選択するかによって、共有持分不動産への影響は大きく異なります。

それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った方法を検討することが重要です。

自己破産|持分は原則として処分される

自己破産は、裁判所に申し立てて借金の支払義務を原則として全額免除(免責)してもらう手続きです。

借金がゼロになるという強力な効果がある反面、不動産を含む一定以上の価値がある財産は処分され、債権者への配当に充てられます。

有持分不動産の場合、前述の通り、あなたの「共有持分」が処分の対象です。

破産管財人がその持分を売却しようとしますが、持分のみの買い手はつきにくいため、他の共有者へ買取を打診したり、最終的に共有物分割請求訴訟に発展したりする可能性があります。

不動産を手元に残すことは極めて困難な方法と言えます。

個人再生|不動産を残せる可能性がある

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額(通常は5分の1程度)し、その減額された借金を原則3年(最長5年)で分割して返済していく手続きです。

自己破産と違い、財産を必ずしも処分する必要がないのが大きな特徴です。

特に「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用できれば、住宅ローンはそのまま返済を続けることで、マイホームを手放さずに他の借金を整理することが可能です。

共有持分不動産であっても、ご自身が居住しており、住宅ローンの主たる債務者であるなど、一定の条件を満たせばこの特則を利用できる可能性があります。

ただし、共有不動産で住宅ローン特則を利用できるかどうかは、建物の使用状況や他の共有者との関係など、個別の事情によって判断が分かれるため、弁護士などの専門家による詳細な検討が不可欠です。

個人再生がご自身の状況に向いているかどうか、詳しい条件や手続きの流れについてはこちらの記事もご覧ください。

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任意整理|不動産への影響は少ない

任意整理は、裁判所を介さず、弁護士が債権者(貸金業者など)と直接交渉し、将来発生する利息のカットや、無理のない返済計画(3年~5年での分割返済)を立てる手続きです。

この方法は、整理する借金を選択できるのが最大のメリットです。例えば、住宅ローンはそのまま返済を続け、カードローンなどの他の借金のみを整理することができます。

そのため、住宅ローン以外の借金を任意整理する限り、共有持分不動産に影響が及ぶことは基本的にありません。

ただし、任意整理は元金そのものが減るわけではないため、借金の総額が大きい場合には解決が難しいこともあります。

不動産への影響を最小限に抑えたい場合に、まず検討すべき選択肢と言えるでしょう。

債務整理で共有持分不動産の問題を穏便に解決する4つの対処法

債務整理を進めるにあたり、他の共有者とのトラブルを避け、できるだけ穏便に問題を解決するための具体的な対処法をご紹介します。

任意売却で不動産全体を売却する

任意売却とは、住宅ローンなどの返済が困難になった場合に、債権者(金融機関)の合意を得て、競売ではなく一般市場で不動産を売却する方法です。

競売に比べて市場価格に近い高値で売却できる可能性が高く、その分、借金の残債を多く減らすことができます。

この方法を進めるには、他の共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する必要がありますが、全員が納得の上で進められるため、見知らぬ第三者が介入する事態を防げます。

他の共有者も持分割合に応じた売却代金を得られるため、関係者全員にとってメリットのある解決策となり得ます。

自分の共有持分のみを専門業者に売却する

他の共有者が不動産全体の売却に同意してくれない、あるいは持分の買取にも応じてくれない場合の選択肢として、自分の共有持分のみを専門の不動産業者に売却する方法があります。

この方法のメリットは、他の共有者の同意が不要で、スピーディーに持分を現金化できる点です。

債務整理の費用や当面の生活費を確保したい場合に有効です。

ただし、買取価格は権利関係の複雑さから、市場価格よりも大幅に安くなることがほとんどです。

また、持分を買い取った業者が、いずれ他の共有者と共有物分割の交渉を始めるため、問題の先送りにしかならない可能性も考慮しておく必要があります。

他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう

最も穏便かつ理想的な解決策の一つが、親や兄弟など、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法です。

これが実現すれば、共有関係に第三者が入ることなく、他の共有者はそのまま安心して住み続けることができます。

あなた自身も、持分の売却代金を借金の返済に充てることが可能です。

ただし、この方法の最大の課題は、他の共有者に買取資金があるかどうかです。

また、持分の価格算定でトラブルにならないよう、不動産鑑定士に査定を依頼するなど、客観的な価格を基準に交渉を進めることが望ましいでしょう。

破産管財人から持分を買い戻す(自己破産の場合)

自己破産の手続きを選択した場合でも、不動産を残す道が完全に閉ざされるわけではありません。

破産手続き中に、破産管財人が管理しているあなたの共有持分を、他の共有者や親族などが買い戻す(買い受ける)という方法があります。

これは「任意売却」の一形態として、破産管財人の許可を得て行われます。競売よりも有利な条件で不動産を守れる可能性があります。

ただし、買い戻すための資金を用意できる協力者が必要です。

また、破産申立ての直前に個人間で安易に売買すると、財産隠し(詐害行為)とみなされる重大なリスクがあるため、必ず弁護士に相談し、破産管財人を通すという正規の手続きを踏むことが絶対条件です。

共有持分不動産を含む債務整理を弁護士に相談するメリット

共有持分不動産が関わる債務整理は、法律問題と人間関係が複雑に絡み合うため、独力での解決は非常に困難です。

早い段階で弁護士に相談することで、多くのメリットが得られます。

最適な債務整理の方法を提案してもらえる

弁護士は、あなたの借金総額、収入、財産状況、不動産の価値、住宅ローンの有無、そして他の共有者の意向までを総合的にヒアリングし、分析します。

その上で、自己破産、個人再生、任意整理の中から、あなたにとって最も負担が少なく、かつ実現可能性の高い解決策を法的な観点から提案してくれます。

どの方法がベストなのか、的確なアドバイスを受けられることは大きな安心材料になります。

債権者や他の共有者との交渉を任せられる

弁護士に依頼すると、債権者からの督促が止まり、精神的なプレッシャーから解放されます。

その後の債権者との交渉はすべて弁護士が窓口となって行います。

さらに、他の共有者との持分買取交渉や任意売却の調整など、感情的になりがちな当事者間の話し合いにも、冷静な第三者として間に入ってくれます。

法的な根拠に基づいた交渉を進めることで、円満な解決を目指すことができます。

弁護士に依頼することで、なぜ最短即日で厳しい督促がストップするのか、その具体的な仕組みについてはこちらで解説しています。

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競売を回避し、有利な条件での解決を目指せる

債務整理の経験が豊富な弁護士は、債権者(金融機関)との交渉にも長けています。

弁護士が介入することで、金融機関もすぐに競売に踏み切るのではなく、任意売却などの話し合いに応じてくれる可能性が高まります。

また、破産手続きにおける破産管財人との買い戻し交渉など、専門的な知識が不可欠な場面でも、あなたの代理人として有利な条件での解決を目指して尽力してくれます。

共有持分の不動産と債務整理に関するよくある質問(FAQ)

Q:債務整理をしたら、他の共有者(家族など)に必ず知られてしまいますか?

A:選択する債務整理の方法によって異なります

任意整理の場合

裁判所を通さず、整理対象の債権者(消費者金融など)とのみ交渉します。

そのため、他の共有者に知られることなく手続きを進められる可能性が最も高いですす

住宅ローンを整理対象から外せば、不動産に影響は出ません。

自己破産・個人再生の場合

裁判所での手続きとなり、国の機関紙である「官報」に氏名や住所が掲載されます。

また、共有持分が処分の対象となれば、破産管財人から他の共有者へ連絡がいくため、知られることになります。隠し通すのは極めて困難です。

Q:住宅ローンが残っていますが、家を残したまま債務整理はできますか?

A:可能性はあります。主に2つの方法が考えられます。

個人再生の「住宅ローン特則」を利用する

一定の条件を満たせば、住宅ローンはこれまで通り返済を続け、それ以外の借金を大幅に減額できる可能性があります。これにより、共有不動産を手放さずに債務を整理できます。

ただし、利用には細かい要件があるため、弁護士への相談が不可欠です。

任意整理を選択する

住宅ローンは整理の対象から外し、カードローンなどの他の借金のみを整理する方法です。これにより、住宅ローンへの影響を避け、家に住み続けることができます。

ただし、任意整理で解決できる範囲の借金額であることが前提となります。

個人再生の「住宅ローン特則」を利用してマイホームを守るための詳しい要件や手続きについては、以下の記事で徹底解説しています。

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Q:自己破産する前に、親族に自分の持分を安く買い取ってもらうことはできますか?

A:絶対にやめてください。

自己破産を目前にして、財産を不当に安価で親族などに譲渡する行為は「財産隠し(詐害行為)」とみなされる可能性が非常に高いです。

この行為が発覚すると、以下のような重大なペナルティが課せられます。

  • 売買行為そのものが破産管財人によって取り消される(否認権の行使)
  • 借金の免除が認められなくなる(免責不許可事由)
  • 最悪の場合、詐欺破産罪という刑事罰の対象となる

もし親族に買い取ってもらいたい場合は、必ず弁護士に相談の上、自己破産手続きの中で、破産管財人を通じて適正な価格で買い取ってもらうという正規の手順を踏む必要があります。

Q:他の共有者が持分の買取や不動産全体の売却に協力してくれません。どうすればいいですか?

A:他の共有者との交渉が難航する場合は、まず弁護士に相談し、交渉を代理してもらうことをお勧めします。

専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いが期待できます。

それでも合意形成が難しい場合の最終手段として、ご自身の「共有持分のみ」を専門の買取業者に売却する方法があります。

この方法であれば、他の共有者の同意は不要で、スピーディーに現金化が可能です。

ただし、売却価格は市場価格より大幅に安くなること、そして持分を買い取った業者が将来的に他の共有者と共有物分割の交渉を始めるため、問題の根本解決にはならない可能性がある点は理解しておく必要があります。

まとめ

共有持分不動産を所有している状況での債務整理は、確かに複雑で多くの課題を伴います。処分対象は原則として「自分の持分のみ」ですが、それが引き金となり、最終的に不動産全体が競売にかけられたり、他の共有者に多大な迷惑をかけたりするリスクもはらんでいます。

しかし、個人再生で不動産を残す道を探ったり、任意売却や共有者による買取といった穏便な解決策を選択したりすることで、最悪の事態を回避することは十分に可能です。

重要なのは、一人で抱え込まず、問題が深刻化する前に専門家である弁護士に相談することです。

あなたの状況に合わせた最善の解決策を見つけ、新たな一歩を踏み出すために、まずは無料相談などを利用して専門家の意見を聞いてみることを強くお勧めします。

共有持分の問題に限らず、借金を返せない状態を放置するリスクや現実的な解決策全体について知りたい方は、こちらの記事もご一読ください。

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