区画整理による立ち退きとは?拒否できるか・費用・流れ・すべきことを徹底解説!
最終更新日: 2023年11月29日
- 自分の住んでいる地域で区画整理が行われるため、立ち退きを要求されて困っている
- 区画整理がどのように進められていくのか、非常に気になる
- 行政機関と立ち退き交渉をしたいが、有利に行う方法を知りたい
道路や公園といった公共施設の整備・宅地の利用増進のため、区画整理事業を実施する場合があります。そのときに対象地域の建物を取り壊す必要があれば、居住者は立ち退きを要求されるかもしれません。
区画整理事業はどのような流れで手続きが進行するのか、立ち退きの費用はどうするのか、地権者の方々は不安を感じてしまうはずです。
そこで本記事では、多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、区画整理で立ち退きを行う場合の費用負担、区画整理による立ち退きの流れ、有利に交渉を進めるコツ等も詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 区画整理の立ち退きを拒否し続ければ、強制立ち退きの執行対象になるおそれもある
- 区画整理の立ち退き対象となった地権者は事業説明会に参加し、内容を冷静に確認する
- 区画整理の立ち退き交渉は、弁護士のサポートを受けて臨んだ方がよい
区画整理による立ち退きとは
行政による区画整理は、正確には「土地区画整理事業」と呼ばれ、公共施設(道路・公園等)の整備、宅地の利用増進を目的に行なわれます。
行政はこの事業により、複雑に入り組んでいる街並みや狭すぎる道路を整備し、安全性や利便性の向上を目指します。
一方で、区画整理の対象となっている土地を保有する地権者は、立ち退きを要求されます。短期間に立ち退きを強制されるような事態とはならないものの、地権者は立ち退きの検討を余儀なくされます。
検討を進めるにあたって行政の立ち退き要求をすぐに受け入れず、立ち退き内容・条件をよく確認し、慎重に交渉を進めた方がよいでしょう。
区画整理による立ち退きは拒否できるのか?
行政に言われるがまま立ち退き要求に応じるのは避けるべきですが、立ち退きを正当な理由もなく拒否し続けるのは難しいものです。
区画整理は市街地開発事業であるため土地収用が認められています(都市計画法第69条)。そのため、立ち退きには法的な強制力が認められ、立ち退きの対象となっている土地・建物を強制執行されてしまう可能性があります。
区画整理の立ち退きに関する費用
立ち退きに応じるとしても、気になるのは立ち退き費用です。行政が全額を負担してくれるのか、自分が負担しなければいけない部分もあるのか、不安になるかもしれません。
こちらでは、立ち退きの費用がどうなるのかについて説明します。
行政負担分
立ち退きにかかる費用として主に次のものがあげられます。
- 新たな代替地を用意する費用
- 現在の建物の解体費用
- 建物の建築・移転費用
- 新たな移転先に引越しをする転居費用
- 建物が完成する間、一時的に賃借する住居(アパート・マンション)の費用 等
これらの費用はすべて行政から補償してもらえます。
自己負担
原則として自己負担はありません。
ただし、暴力や威圧行為で行政に抵抗した場合、逮捕や損害賠償の請求も想定されます。また、正当な理由なく立ち退きを拒否していると、強制執行が行われてしまう可能性もあります。
立ち退き交渉は冷静に対応し、急ぐ必要はないものの、立ち退きを拒否し続けた場合、重いペナルティが課せられるおそれもあるのです。
区画整理の立ち退きの主な流れ
区画整理による公共事業は、将来の地域の利便性・安全性を高めるために必要ですが、地権者に大きな影響を与えるため、慎重に進められていきます。
こちらでは、区画整理による立ち退きの大まかな流れについて説明しましょう。
事業説明会
まずは区画整理の案を地元の地権者の方々と検討し、土地区画整理事業の施行区域を決定後、事業計画として資金計画・設計・期間等を定めます。
区画整理事業を行うならば、行政の独断だけで進めるのではなく地権者の承諾が必要です。円滑な計画をすすめるため事前の周知を徹底します。
計画決定後には住民説明会を実施し、地権者の同意を得るため区画整理の情報開示や、質疑応答を行います。
なお、地権者への説明が終わると「土地区画整理組合」を設立します。区画整理事業が実施される区域内の所有権者または借地権者を組合員とし、原則として組合員は7人以上が必要です。
都道府県知事へ組合設立認可申請を行うときは、区域内の所有権者・借地権者それぞれ3分の2以上が事業計画に同意していなければいけません。
立ち退きの通知
行政(施行者)から立ち退きに関する通知が郵送されてきます。移転する期限や、立ち退き料について、担当者の連絡先等が明記されています。
通知書が届いた後は、行政との交渉の準備を進めた方がよいでしょう。立ち退きに関する通知で不安な点があれば、今のうちに弁護士等の法律の専門家へ相談することで不安が解消され、適切な対応をとることができます。
交渉
行政の担当者と交渉を開始します。立ち退き料の詳細な説明や、自分が希望する条件等も提示します。
当初から立ち退きを頑なに拒否すれば、最終的に行政から強制的な立ち退きが実行されてしまう可能性もあるため、自分に有利な条件を引き出す方へ注力しましょう。
合意
立ち退き交渉で合意に達したら、行政と契約を締結します。
主に次の内容が合意書(契約書)に明記されます。
- 施行者、地権者の名称・所在地等
- 交渉の合意内容
- 立ち退き料・補償金額、支払い方法等を明記
- 仮換地の指定内容 等
なお、仮換地の指定とは立ち退きをする土地に換えて、将来新たに使用できる土地を指定することです。
地権者が合意書(契約書)の内容を確認し、サインをすれば交渉は完了です。
立ち退き
交渉完了後は区画整理の対象となっている所有建物の移設または撤去等が行われます。所有していた土地・建物は名残惜しいかもしれませんが、合意完了後には立ち退きましょう。
行政によって、立ち退き前の立ち退き料の一部が支払われる可能性もあります。立ち退き料の支払いの条件やタイミングはしっかり確認しておきましょう。
支払い
区画整理の対象となる所有地の引渡し、物件の移転が完了すると、立ち退き料が支払われます。地権者の指定した銀行口座にお金が振り込まれます。
立ち退き料が振り込まれたら、合意した通りの金額かどうかをよく確認しましょう。
区画整理の立ち退きですべきこと
区画整理の通知がされたら、最終的には立ち退きを行う必要があります。そのため、「面倒なので説明会にも出ないし、交渉もしたくない。」と思う人がいるかもしれません。
しかし、交渉次第では自分に有利な条件で立ち退きができる可能性もあります。
ここでは、地権者が行うべき対応について解説します。
弁護士への相談
区画整理による立ち退きは、人生の中で何度も経験するわけではありません。そのため、立ち退きの通知を確認して動揺し、どうなってしまうのか不安を感じる人は多いはずです。
そのようなときに立ち退き問題に詳しい弁護士へ相談すれば、区画整理による立ち退きの流れや、交渉を有利に運ぶコツ、交渉のときの注意点を教えてくれます。
初回であれば弁護士への相談料が無料という事務所もあるので、気軽に相談してみましょう。
説明会参加
土地区画整理事業の説明会は1回だけでなく、複数回開催されることが一般的です。無理に全ての説明会へ参加する必要はないものの、直接、行政の説明を聞いた方がよいでしょう。
説明に不明な点や疑問点があれば、どんどん質問し、事業内容の正確な把握に努めます。なお、土地・建物にいくら思い入れがあっても、立ち退かされる怒りから、行政の説明を妨害したり、暴言を吐いたりするような行動は厳禁です。
冷静に行政の説明を聴き、地権者側も理性をもって意見する姿勢が大切です。
交渉
行政との立ち退き料の交渉のときは、うまくいけば地権者側へ有利な金額で合意に至る可能性もあります。次のような方法を試してみましょう。
- 立ち退く意思がない旨を主張:理性的に話をし、条件次第では応じる姿勢を示す
- 現在の土地・建物の重要性を主張:店舗や事務所の場合、非常に好立地であり新たな場所で営業しても、現在ほどの収益をあげられない可能性について主張する
- 立ち退きによる損害を計算:立ち退き料を増額させる根拠について主張する
地権者本人だけでは、なかなか説得力のある主張や損害額の算定が難しいかもしれません。しかし、法律の専門家である弁護士に頼めば、地権者側に寄り添って行政との交渉をサポートしてくれます。
合意
交渉に合意したら、合意書(契約書)へサインします。ただし、いきなりサインはせず慎重に内容をチェックしましょう。弁護士と一緒にチェックすれば不明確な部分も判明するはずです。
合意書(契約書)の内容に疑念があれば、行政にしっかり確認をする必要があります。
移転
合意した後は速やかに立ち退きを行います。現在の土地・建物が惜しくなり、そのまま居座るようでは契約違反となってしまいます。
新しい土地で新たな生活をはじめられるよう、気持ちの切り替えが大切です。
区画整理の立ち退きで困ったら弁護士に相談を
今回は多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、区画整理の立ち退きに関する費用、立ち退きの流れ、立ち退きのときに地権者が行うべき対応等を詳しく解説しました。
自分だけで立ち退き交渉をするのは難しいと感じたなら、弁護士へ相談しアドバイスやサポートを経て交渉に臨んだ方が安心できます。
区画整理による立ち退き要求があったら、弁護士へ相談して後悔のない立ち退き交渉を目指してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。