リフォームのミス・施工不良を見つけたときの対応を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年02月22日
「新しい住まいのために、多額の代金を支払ってリフォーム工事をお願いしたものの、施工ミスが発覚してトラブルになった!」
ニュースなどでそのような話を聞いたことはないでしょうか。
リフォーム工事のミスが発生する原因は様々考えられますが、根本的な要因としては、施主と施工業者の事前の打ち合わせが不十分であることが圧倒的に多いと思われます。また、施工業者の技術不足による欠陥ということもあります。
そこでこれからリフォーム工事を考えている人がトラブルに巻き込まれないように、ミスの原因と対策について詳しくご紹介します。
リフォームのミス・施工不良が頻発しています
「リフォーム業者はプロなのだから、任せていれば完璧な仕事をしてくれる」残念ですが、そんな時代はとうに終わっています。
住宅のリフォーム工事において、施工業者のミスに伴う法的紛争は、毎年のように増加しています。その内容を詳しくご紹介します。
リフォーム工事を巡るトラブルの実態
住宅のリフォーム工事に関する相談は、「公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター」に持ち込まれています。これは国土交通大臣から指定を受けた住宅専門窓口です。
そこで毎年、住宅相談に関する統計結果を公表していますが、リフォーム工事に関する相談は増加傾向にあります。
特に、2019年度はリフォーム工事のトラブルに関する相談は全国で8,238件と、過去最高の件数になっています。
その苦情相手の割合は以下のとおりです。
- リフォーム業者 93.5%
- 発注者 2.0%
- 新築時の施工業者 0.8%
- 設計者 0.8%
- 不動産業者 0.6%
- その他 2.3%
この統計から、新築よりもリフォーム業者とのトラブルの方が圧倒的に多いことがわかります。つまり現場のリフォーム工事において何かしらの問題が発生し、その相談が持ち込まれるケースが多いということになります。
そして主な不具合事象とその割合は以下のとおりです。
- はがれ 16.2%
- 雨漏り 15.6%
- 性能不足 11.7%
- ひび割れ 9.8%
- 汚れ 9.6%
- 変形 9.1%
- きず 5.3%
- 漏水 4.2%
- 排水不良 3.3%
これらはリフォーム工事における施工で何らかのミスが生じたことによる欠陥とみてよいでしょう。そこで、なぜそのようなミスが発生するのかを説明します。
なぜリフォーム工事にミスが起きるのか
リフォーム工事におけるミスの原因はいろいろとあります。大きくわけると、業者と施主との情報共有が十分になされていないことと、リフォーム工事そのものの欠陥が考えられます。そこで挙げられるリフォーム工事のミスの原因として、次のようなものがあります。
- 施主に工事内容をきちんと説明していない
- 経費削減による手抜き工事
- 作業員の不足による技術不足
連絡不足のケースとしてよく見られるのは、現場監督とリフォーム業者の営業との連携が取れていないことです。そのため現場で起きていることが営業に伝わらず、施主も変更があることなどを把握できないことになります。
施工に関するミスとして多いのは、リフォーム業者の経営悪化により、安い建材を使用して品質不足に陥るケースです。あるいは技術のある職人を手配できずに、経験の浅い職人に作業させることで、欠陥が生じることがあります。
さらに、契約したリフォーム業者が、悪質な詐欺行為をはたらいている場合もあります。工事もほとんどしていないのに、代金だけ取られてしまう酷い事案も増えているのです。
リフォーム工事の業者はミスに対応してくれるのか
リフォーム工事でミスが発生した場合、やり直しを要求すれば業者は対応してくれるのでしょうか。もちろん対応してくれる業者もいますが、実際には補修対応しない業者もいます。
補修に応じない理由としては、施主が「欠陥」と認識している施工について、施工業者において適正な施工であると言い張る場合が多いでしょう。
また、「欠陥」という点では共通認識があるものの、施主が適正と考えている補修方法を、施工業者が「過剰」と考えていて、対応してくれないケースもあります。
このように、リフォーム工事のトラブルに関する相談が年々増加していることからもわかります。そのためミスが発覚したら、早期に相談できるところに連絡することが必要です。
よくあるリフォームのミス事例
具体的に、リフォーム工事のミスにより生じるトラブルとしてはどのような事例があるのかご紹介します。
- リノベーション工事により生じるトラブル
- 水栓やコンセントの位置や数に関するトラブル
- 工事中の破損に関するトラブル
- 工事中の破損に関するトラブル
リノベーション工事により生じるトラブル
賃貸物件のリノベーションのためにリフォーム業者を入れる場合にも、注意しなければミスが発生します。具体的に次のような事例があります。
- 見積もりが曖昧であるため費用がかさむ
- 完成してから追加費用を請求される
- 壁紙の色が違うなど打ち合わせと仕上がりが違う
- 交換すべき箇所がすべて施工されていない
- マンション内での周知がなく苦情がくる
水栓やコンセントの位置や数に関するトラブル
基本的には事前の打ち合わせが不十分であることが理由ですが、次のようなケースがあります。
- 蛇口の水栓金具が指定したものと違う
- 水栓金具の取付位置が違う
- コンセント設置の位置が指定と異なる
- コンセントの数が契約書と違う
工事中の破損に関するトラブル
リフォーム工事中において、既存の家具や壁などを傷つけるといったトラブルも発生しています。
- 養生をしていないため工具で壁に傷がついた
- 家具や家電に埃がついて使用できなかった
- 壁に備え付けていたエアコンが破損した
- 天井の照明器具が破損した
工事中の破損に関するトラブル
外壁塗装に関するトラブルも、リフォーム工事ではよく起こるものです。作業内容を見ていないことで手抜きをされるケースもあります。
- 外壁塗装の技術不足により塗膜が剥離した
- 防水工事をきちんと行わず水漏れする
- 塗料の品質が悪くすぐに劣化した
- 目地の処置が不十分なため水漏れが発生した
- 高価な塗料を選んだが塗装技術がなくきちんと塗装されていない
リフォームの施工不良があったらとるべき対応は?
では、実際にリフォーム工事中、あるいはリフォーム工事完了引渡し後に施工ミスが発覚した場合、施主として、どのように対応したらよいのか、具体例を交えてご説明します。
ミスを発見した後の初動が大切
リフォーム工事において、何らかのミスを発見した場合には速やかに対応する必要があります。
請負契約において完成した目的物が、取り決めた仕様に適合していない場合、行政法規と適合しない場合には以下を行使することができます。
- 修補請求権
- 報酬減額請求権
- 損害賠償請求権
- 解除権
しかし、施主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を施工業者に通知しなければ行使できなくなりますので、ミスを発見し次第、速やかに対応する必要があります。
その具体的な方法については、施工を行ったリフォーム業者に電話またはメールをするのが早いですが、1年以内に通知したとの証拠を残すためにも、内容証明郵便の方法によるべきでしょう。
では、実際に、リフォーム工事のミスを発見した人が、実際に施工業者に修補などを求めた場合、どのように解決しているのでしょうか。
相談した人が希望する解決策としては、次のような割合になっています。カッコ内は実際に解決した割合です。100%を超えるのは、ほかの解決方法を希望していた人の分が含まれることを意味します。
- 修補 38.3%(87.7%)
- 修補と損害賠償 9.2%(75%)
- 損害賠償 13.9%(141%)
- 契約解消 11.4%(22.7%)
- 工事代金関係 0.7%(111%)
- その他 26.5%(131%)
これをみると、修補を希望するものの業者が対応できず、損害賠償という形で解決するケースも多少存在することが分かります。
また、実際にリフォーム工事のミスを「公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター」に相談した場合、同センターより紹介された機関としては、多い順に次のようなところがあります。
弁護士会・法テラス
建築設計団体
関連団体
消費生活センター等
紛争解決機関
行政庁
評価機関・保険法人等
裁判所
その他
さらに相談をしたあとの具体的な助言内容としては、多い順に次のようなものがあります。
- 業者との交渉方法に関するアドバイス
- 解決希望に対する弁護士の判断
- 相談の事象に対する建築士の判断
- 紛争処理等の手続きを勧めた
- 原因等の調査を勧めた
- 今後の補修方法等に関するアドバイス
この助言内容から、リフォーム工事のミスへの対処として、自分でリフォーム工事業者と直接話し合うことになるケースが多いことが分かります。
リフォーム工事業者との話し合いの進め方
リフォーム工事業者とミスについて話し合いをするうえで、交渉方法をアドバイスしてもらうケースが多いものです。その具体的な内容として、次のようなことが挙げられます。
まずリフォーム工事業者と話し合う際に、決して感情的にならないことが大事です。特に金銭の要求を先に行うと、業者は警戒して話し合いを引き延ばす可能性があります。
そこでリフォーム工事業者と話し合いをする前に契約書と保証内容を見直し、ミスの起きた箇所を確認しておきましょう。その上で具体的な解決策を提示して、対応できるか否かを確認します。
リフォームのミスに対する法的対応は?
リフォーム工事のミスに対して業者が対応しない場合、法的手続きをすることになります。その際に注意しておくべき事項を説明します。
契約不適合責任とは?
まずはリフォーム工事のミスに対して、業者が対応すべき理由がどこにあるのかを把握しておきましょう。
リフォーム業者に課せられるものとして、先ほど述べた『契約不適合責任』があります。これはリフォーム工事完成後に何かしらの不具合や欠陥が見つかった場合、リフォーム工事業者が責任を負うものです。
なお、2020年4月1日の民法改正以前、「瑕疵」と表現されていましたが、どのような場合に施工業者に責任が生じるのか、その判断方法は基本的に同一と考えられています。
では、どのような場合に「契約不適合」と言えるのでしょうか。まずは、建築基準法などの行政法規に違反があるかどうかが重要となります。
次に、発注者と施工業者との契約内容、すなわち、設計図面や、仕様書の記載どおりの施工となっているかどうかによって判断されます。
さらに、契約内容として明確に定めていない事項の不具合については、標準的な施工基準が参照されることもあります。
瑕疵の補修や損害賠償の請求に期間制限はあるのか
リフォーム工事のミスに関する補修や損害賠償請求は、いつまでも行えるわけではありません。
まず瑕疵の補修や損害賠償の請求は、工事にミスがあることがわかってから1年以内に行わなければなりません。さらにその時効があるので注意が必要です。
民法改正により、時効は以下のいずれか早い方となっています(民法166条1項)。
- 請求の権利を行使できる時から10年
- 権利行使できることを知ってから5年
また、代金減額請求権については、まず発注者から施工業者に対して相当の期間を定めて補修を依頼し、その期間内に補修がなされないときに、代金の減額を請求するという流れになります。
リフォームのミスの交渉と弁護士費用
リフォーム工事にミスが発覚したら、まずは業者と補修に関する交渉をします。そのための弁護士費用について説明します。
交渉の費用
リフォーム工事業者との交渉において、弁護士費用がどれくらいかかるのかを説明します。法律事務所により設定する費用は異なりますが、建築訴訟は対応できる法律事務所が少なく、難易度も高いため、高額な費用を要するところが多いと思われます。
弊所では、着手金として33万円(消費税込み)からご依頼を受けていますが、難易度の高い案件や、契約不適合とされる欠陥の数が多岐にわたる訴訟事件となりますと追加の報酬をいただいております。
裁判手続の費用
話し合いでは問題が解決しない場合には、訴訟手続きをして裁判をすることになります。
民事訴訟費用として裁判所に納める手続費用の額が定められています。
たとえば訴訟の目的の価額が400万円であれば、裁判手続きの費用は25,000円と決められています(ただ、通常は6,000円の郵券の予納を求められます。)。
このように、裁判所を利用する費用それ自体はそれほど負担になる金額ではありません。しかしながら、弁護士に裁判を依頼する場合には、弁護士に訴訟着手金を支払う必要があるので、注意が必要です。
まとめ
リフォーム工事のミスはそれほど珍しいものではありません。まずは業者としっかり打ち合わせをすることが大切です。それでも問題が発生した場合には、すみやかに弁護士に相談することをおすすめします。業者が対応しないこともあるので、トラブルを最小限に防ぐことにつながります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。