立退きで裁判になる前に知っておきたい対応策と弁護士の活用法
最終更新日: 2025年09月09日
立退きをめぐるトラブルは、交渉がこじれると裁判に発展することがあります。この記事では、立退きトラブルが裁判になるケース、裁判の流れや費用、解決までの期間、立退き料の相場や交渉のポイントなどをわかりやすく解説します。
また、実際にあった裁判例を紹介しながら、裁判で争った場合の見通しやリスクも紹介します。さらに、弁護士に依頼することで得られるメリットやサポート内容も具体的にご説明します。
立退きを求められた側も、求める側も、早めに専門家へ相談することが、トラブルを長引かせないための鍵です。
どんな時に立退き問題が裁判に発展する?
立退きをめぐるトラブルは、次のような場合に裁判へと発展しやすくなります。
- 賃借人が立退きに応じず、話し合いが平行線になってしまった
- 賃貸人が正当事由なしに立退きを求めていると反論されている
- 立退き料の金額で折り合いがつかない
- 一方的に契約解除を通知し、明け渡しを強制しようとしている
立退き問題では、まず話し合い(交渉)からスタートしますが、双方の主張がぶつかってまとまらないと、賃貸借契約の有効性や正当事由の有無を裁判所で判断してもらう必要が出てきます。特に、長年住んでいる住居や、事業用物件などでは、利害が大きくなりがちで、裁判になりやすい傾向にあります。
立退き裁判の流れと期間・費用
立退き裁判の主な流れは、以下のようになります。
- 内容証明郵便での立退き通知(または契約解除通知)
- 交渉・協議
- 調停申立て(任意)
- 訴訟(明け渡し請求)
- 判決(立退料の支払を条件とする場合もあり)→強制執行(必要な場合)
訴訟に至ると、書面の準備や証拠集めが必要となり、通常6か月〜1年ほどかかることもあります。訴訟費用としては、以下のような項目が挙げられます。
- 裁判所へ納める印紙代・郵券代:数千円〜数万円
- 弁護士費用:着手金30万円〜、報酬金が別途発生するケースが多い
精神的負担だけでなく、金銭的にも大きな負担となることが多いため、できるだけ早い段階で交渉による解決を目指すことが重要です。
実際の裁判例から見る争点と結果
裁判例:築40年のアパート立退き請求事件(東京地裁平成23年6月23日判決)
老朽化した木造アパートの建て替えなどを理由に、賃貸人が立退きを求めた事案。賃借人は高齢で長年居住していたことから、生活基盤の喪失を主張。裁判所は、賃貸人が引越先の物件を紹介するなど誠実に交渉していたことを理由として、建て替えの必要性を認めつつも、立退き料として賃料の30か月分に当たる150万円の支払いを条件に、明け渡しを認容。
裁判例:土地活用目的の歯科医院立退き請求事件(東京地裁平成23年2月22日判決)
ビルのオーナーが土地の有効活用を目的として、ビルの建て替えを計画し、テナントである歯科医院に対し、立退きを求めた事案。裁判所は、土地の有効活用の必要性を認めたものの、退去及び移転によって、歯科医院に発生する営業損失などを考慮して、立退料2200万円の支払いを条件に、明け渡しを認容。
裁判例:自己使用目的の貸家明渡し請求事件(東京地裁平成22年3月29日判決)
賃貸人が、自身の親戚を住まわせる目的で、貸家からの明渡しを求めた事案。裁判所は、賃借人が住み続ける必要性と比較すると、賃貸人側が建物を使用する必要性・緊急性は高くないと判断し、引越料を支払うという提案があったとしても、正当事由が不十分として請求を棄却。
これらの例からも分かる通り、明け渡しが認められるかどうかは、「正当事由」が認められるかどうか、つまり、建て替えの必要性、賃借人の生活への影響、立退き料の妥当性などが主な争点になります。
裁判を避けるには?交渉で解決する方法
できるだけ裁判を避けるためには、交渉段階で信頼関係を維持しながら歩み寄ることが大切です。特に、以下のような対応が有効です。
- 弁護士を通じて書面での丁寧な通知と、事情説明
- 適切な立退き料の提示
- 代替物件の紹介など、転居支援の提案
立退きを拒否する側も、納得できる条件があれば交渉に応じやすくなります。法的な根拠や判例をもとに話を進めると、相手も無理な主張をしにくくなります。
弁護士に依頼するメリットとサポート内容
立退き問題は、交渉・調停・訴訟と段階が進むごとに専門的な知識が求められるうえ、感情的な対立が生じやすいテーマです。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 立退き交渉の代行、相手方との連絡や通知書作成
- 法的根拠に基づくアドバイスで、主張の説得力が増す
- 調停や訴訟での代理人として、主張・立証を任せられる
- 精神的負担の軽減
- 合意書の作成や適切なタイミングでの通知等で法的トラブルを回避
また、立退きトラブルに詳しい弁護士を選ぶことで、相場に合った立退き料の交渉や、裁判を有利に進める戦略的な助言も受けられます。まずは相談だけでも受けてみることで、不安を大きく減らすことができます。
まとめ
立退きに関するトラブルは、感情的にも経済的にも大きな負担を伴う問題です。裁判に発展する前に、冷静に法的な立場を確認し、交渉での解決を目指すことが理想です。
不当な立退き要求に屈しないためにも、適切な立退き料を確保するためにも、立退き問題に詳しい弁護士へ早めに相談することが重要です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。