立ち退き料の交渉・裁判の流れを専門弁護士が徹底解説!役立つ判例も紹介

最終更新日: 2023年06月13日

立ち退き料の交渉・裁判の流れを専門弁護士が徹底解説!役立つ判例も紹介

賃貸人や、不動産管理会社から突然、賃貸借契約の解約通知が届いたことで、すぐに退去しなければいけないのか、対応に苦慮される方は非常に多いです。

そこで、賃貸人や、不動産管理会社から解約通知等を受け取った後の立ち退き交渉の流れや、立ち退き料の交渉を開始するにあたり、特に気を付けなければいけないポイントについて、立ち退き交渉の専門弁護士が徹底的に解説をしていきます。

それでは、早速参りましょう。

目次

立ち退き料の交渉はどのようにしてはじまるのか

立ち退き交渉が開始されるきっかけとなるのは、賃貸人や、不動産管理会社から届けられた解約通知や、立ち退きのお願い文書となります。実際、どのような書類が届くことが多いのでしょうか。以下、具体的にみていきましょう。

  • 解約通知や立ち退きのお願い文書が内容証明で届く
  • 何ヶ月前までに契約更新拒絶の通知書を出す必要があるのか?
  • 参考にできる成功事例や過去事例の知識が豊富

解約通知や立ち退きのお願い文書が内容証明で届く

立ち退き紛争は、賃貸人から入居者に立ち退きのお願い文書が届くことで始まります。 その書面の書きぶりは様々ですが、いずれにしても文書を受け取った入居者としましては、生活の本拠を失う危機に置かれることに間違いありません。

また、賃貸人から届く立ち退きのお願いの文書は、借地借家法上、賃貸借契約の更新等拒絶通知として扱われるものです。

すなわち、借地借家法上、賃貸人は、更新をしない旨を通知することが求められていることから、立ち退きのお願い文書が届くことになっています。

このような通知は、普通郵便でも行われることもありますが、通知したことが記録として間違いなく残る内容証明郵便の方法によってなされるのが通常です。

何ヶ月前までに契約更新拒絶の通知書を出す必要があるのか?

借地借家法上、賃貸借契約を更新しない場合、賃貸人は、契約終了の1年前から6か月前までの間に契約更新拒絶の通知書を出す必要があるので、その期間内に賃貸人から通知書が届きます。

もっとも、借地借家法の規制を無視して、「来月末までに退去してください」などの通知書が突然届く例もよくあります。このような通知は借地借家法に違反している更新拒絶通知であるにもかかわらず、出ていかなくてはならないのかと誤解される入居者も多くおられます。

立ち退き料を交渉する相手は誰か

賃借人が立ち退き交渉をする相手は賃貸人です。賃貸物件の近所に大家である賃貸人が住んでいるような事案では、賃貸人と入居者の間に関係性も生まれ、心情的に争いにくいことがあります。 それでも、入居者にとっては、十分な立ち退き料が得られなければ、自身の生活に影響が生じますから、毅然と交渉をしなければなりません。 もっとも、賃借人である入居者が実際に交渉をする相手は、必ずしも大家である賃貸人本人とは限りません。

  • 不動産業者、不動産会社
  • 管理会社
  • 弁護士

不動産業者、不動産会社

賃貸人が不動産業者、不動産会社であれば、その会社の担当者が相手方となります。 会社の担当者は、上司の指示に基づいて交渉しており、自身は賃貸物件に対して個人的な利害・感情を持ち合わせていません。

基本的には、会社にとって利益になるかどうかによって動いているということをよく理解する必要があります。

つまり、訴訟などして時間と費用をかけて争うよりも、立ち退き料を支払った方が、会社にとって利益になるということを、資料を元に説得的に主張できるかどうかがポイントとなります。

管理会社

賃貸人が個人の場合、相手方当事者は当該賃貸人です。しかし、当該賃貸人が懇意にしている管理会社が間に入る場合もあります。 管理会社は、賃貸人にとって事実上の伝達係にすぎないので当事者ではありません。

管理会社が賃貸人の伝達係として機能している限り問題はありませんが、管理会社が賃貸人の代理人であるかのような振る舞いを始めた場合には注意が必要です。

管理会社は、法的に有効な代理人ではありませんので、管理会社が事を判断、決定することはできません。管理会社の独断であるのか、賃貸人の判断、決定であるのか逐一確認することが重要です。

弁護士

賃貸人が、弁護士に立ち退き交渉を依頼するケースもあります。 弁護士が付いたからといって、交渉の余地が全くなくなったと考えるのは早計です。

弁護士は、依頼者の主張に無理があるなら、法律の専門家として自身の依頼者を説得することもあります。

むしろ、積極的に賃借人の主張を裏付ける資料を賃貸人の弁護士に提出することで、弁護士は合理的に判断し、その結果、早期に紛争解決に結びつくこともあります。

立ち退き要求は拒否できるのか?拒否をして立退料の支払いを求めてもよいのか?

突然、賃貸人から立ち退きを求められても、正当事由がない限り賃貸契約が終了することはありませんので、当然、立ち退きを拒否することができます。

突然更新をしないという通知が届き、不安を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、退去の合意をしない限りは、借地借家法上、当然に契約が更新されて賃借権が存続するので、不法占拠になることはありません(たとえば、借家の場合、期限の定めのない契約に変わることが定められています。)。

ただし、注意していただきたいのは、賃借人に契約違反(債務不履行)がある場合です。

たとえば、賃借人において家賃滞納があると、賃貸人において、債務不履行を理由とする一方的な賃貸借契約の解除が可能となります。 債務不履行を理由とする契約解除の場合、そもそも正当事由は不要であり、立ち退き料を求めることはできなくなります。

そのため、借地借家法の規定によって賃貸借契約が法律上更新された場合であっても、賃借人が賃借建物に住み続ける限りは、従前の家賃を支払い続ける必要があります。

立ち退き料を支払ってくれない場合はどのように交渉すべきか

立ち退きを求める賃貸人は、一刻も早く賃借人に立ち退いてもらって、土地・建物を有効活用したいと考えているのが通常です。

しかし、多額の立ち退き料を払う金銭的余裕がないなどの理由により、最低限の賃料が支払われている限り、積極的には立ち退きを求めず、賃借人が出ていきたいと考えるようになるのを待つという賃貸人もいます。

適正な立ち退き料を得るための交渉術としては、賃貸人が立ち退き料としてどの程度の金額を負担する用意があるのか、再開発によってどれくらいの利益を享受することになるのかなどの賃貸人の考えを探ることが重要となります。

このような実情を無視し、現実的でない提案を続けていては、賃貸人の方が立ち退きを諦めてしまいます。賃貸人が立ち退き交渉を諦めてしまうと、当然ながら、立ち退き料ももらえません。

また、賃借人は、紛争状態にある物件に住み続けなければならないという問題も残ります。 そのため、立ち退き交渉にあたるには、賃貸人が譲歩しうる最大限のラインの見極めが重要となります。

立ち退き料の交渉結果をどのような書面に残すべきか

立ち退きをするに際して、合意書面(契約書)を締結の上、立ち退きに応じるのが通常です。下記は合意書面(契約書)の例文です。

甲は賃借人、乙は賃貸人、本件物件は賃貸借契約の目的となっている建物を指しています。

1 乙は、甲に対し、本件物件の立退料として、金○○万円の支払義務があることを認める。

2 甲は、乙に対し、本件物件を令和○○年○○月末日までに明け渡す。

3 乙は、甲に対し、第1項の金員を以下のとおり分割して、甲指定の下記口座に振り込んで支払う。但し、振込手数料は、乙の負担とする。

 (1)本合意書締結日から7日以内  ○○万円  

 (2)甲が乙に本件物件を明け渡した日から7日以内 ○○万円

4 乙は、本件物件を取り壊すことに鑑み、甲に対し、本件物件の原状回復費用を請求しないことを約する。

5 甲は、第1項の立退料が支払われることに鑑み、乙に対する敷金返還請求権を放棄する。また、甲は、本件物件の明渡日以降、本件物件に残置した動産の処分を乙に委ねるものとし、その処分について異議を述べない。

6 甲と乙は、本合意書に記載するもののほか、本件に関し、甲乙間に何らの債権債務関係も存しないことを相互に確認する。

立ち退き料を交渉した場合に金銭が支払われるタイミングは?

では、実際に立ち退き料の交渉をした場合、立ち退き料が支払われるタイミングはいつになるのでしょうか。以下では、交渉の場合と、訴訟になった場合に分けて、詳しく説明していきます。

交渉による場合の支払時期

他方、交渉で立ち退きについて合意が成立した場合は、ケースバイケースです。 たとえば、弁護士を介させず、賃借人本人において交渉をしたケースでよく目にするのは、明渡しが済んだことを確認できたら、引っ越し費用相当額を支払うという、賃貸人に有利な立ち退き料の支払条件を定めている場合です。

そもそも立ち退き料の金額が低いという問題もありますが、それ以前に、賃貸人の一方的都合で退去を迫られながら、賃借人において、一旦、退去にかかる引っ越し費用や、新規賃貸借契約の費用を持ち出さなければならないという点でフェアな条件とはいえません。

これはおそらく、世間一般においては、賃貸人の立場が強く、賃借人の立場が弱いという前提が根強く存在していることを表しているのでしょう。

しかしながら、裁判実務においても、十分な立ち退き料が支払われない限り、賃借人には建物を明け渡す義務は生じないのですから、立ち退き料の支払い時期についても、強く交渉するべきです。

具体的には、合意した立ち退き料の全額が一括で支払われる場合もありますし、新たに賃貸借契約を締結するのに必要な一時金等を前払金として支払い、明渡完了を条件に残金を支払うという方法があります。

判決による場合の支払時期

立ち退き料の支払い時期については、特に法律で決まっているわけではありません。 裁判所の明渡訴訟においても、賃貸人に対して、いつまでに立ち退き料を支払いなさいという判決が出るのではなく、実際には、立ち退き料を支払うことを条件として、問題となっている建物を明け渡すよう求める「引換給付判決」が出されます。

つまり、この「引換給付判決」とは、賃借人に対して、裁判所が建物の明渡しを命じていることに間違いないのですが、立ち退き料を支払うことが建物の明渡しの条件になっているので、立ち退き料全額の支払いがなされない限り、賃借人において賃貸の目的物を明け渡す必要はありません。

賃貸人の立場からみますと、引換給付判決には、立ち退き料の支払時期は明示されないので、いつ支払ってもかまわないことになります。

もっとも、立ち退き料の支払いがない限り、明渡を強制できないのですから、支払いに了承できる金額の立ち退き料であれば、賃貸人から賃借人へ速やかに立ち退き料を支払うのが通常です。

立ち退き料の交渉において忘れてはいけない原状回復

立ち退きにあたって無視できないのが、賃貸目的物の原状回復の問題です。

当事者としては、立ち退き料をいくらにするかという問題に終始してしまい、原状回復の問題を忘れがちです。

しかし、賃貸借契約終了の場面において、たとえば居住用賃貸建物の場合、部屋の清掃費用であったり、鍵交換費用を賃貸人から請求されることが通常です。賃借人が汚損した壁紙の補修費なども請求されることがあります。

退去の際、原状回復の費用だけでも数万円はかかりますので、原状回復費用も無視できません。 特に店舗の場合には、原状回復費用だけで数百万円かかってくることもありますので、原状回復費用の負担も大きな争点となりえます。

実際、無事に明渡しが完了したと思って建物内部を確認したところ、多額の清掃費用、廃棄物処理費用を要する状態であり、賃貸人から、別途、賃借人に損害賠償請求をしなければならない事例もあります。

このように、原状回復をめぐって、再度の紛争が生じる可能性もありますから、立ち退きの合意をする時点で、原状回復に関しても取り決めをしておく必要があります。具体的には、賃貸人の原状回復請求権を放棄させる条項を入れることになるでしょう。

最近の立ち退き事案は、立ち退き後に建物を取り壊すケースが多く、そのようなケースでは原状回復は基本的には問題となりません。もっとも、産業廃棄物として別途に処分が必要なものが多くある場合には、取り壊しのケースにおいても別途に費用を賃貸人から請求される可能性があります。

要するに、原状回復費用の負担について取り決めをしていないと、原状回復費用を控除されるなど、立ち退き料が思ったより少なくなるという落とし穴もありますから、合意をするにあたっては、原状回復費用の規定の有無を確認するべきです。

交渉結果が不十分であれば調停・裁判で立ち退き料の増額を狙う

当事者同士の交渉では上手くいかない場合、第三者に入ってもらうことによって、交渉をよい方向に進めることが可能です。 そこで、適当な第三者として考えられるのが裁判所となります。ここでは、裁判所を利用した増額方法について説明していきます。

賃借人から取り得る法的手続

立ち退き料の交渉をしても、残念ながら、賃貸人が全く取り合わない事案もあります。 賃貸人が立ち退き料を支払わない理由は様々ですが、賃貸人の一方的都合によって賃借人に出て行ってもらうために立ち退き料が必要であることを理解していない賃貸人が多いようです。

その場合、専門家である弁護士が立ち退き紛争に介入し、借地借家法によって容易には賃貸借契約を終了させることはできないことを粘り強く賃貸人に説明することで、立ち退き料の必要性について理解してもらいます。

他方で、どれほど弁護士が説明をしても、話し合いにならない事案も残念ながら存在します。 立ち退き料とは、賃貸人が支払意思を明示しない限り、賃借人が請求できるものではないため、賃貸人に支払うつもりがないのであれば、話し合いはそれ以上進めることができません。

とはいえ、賃借人から賃貸人に対して法的手続を起こす必要がある場面も考えられます。この場合、どのような手続きを利用するのかが問題となります。

賃借人の賃貸人に対する立ち退き料の請求訴訟は認められるのでしょうか 賃借人には立ち退き料の請求権が認められませんので、賃借人の訴えは棄却される(敗訴する)こととなります。

そのため、賃借人としては訴訟という手段はとりえません。 他に裁判所の手続きを利用する紛争解決手段として、民事調停があります。民事調停とは、裁判所が介在する点で訴訟と共通するものの、話し合いによる解決を目指す点において訴訟と異なる手続きです。

賃借人から何度も働きかけても一向に話し合いに応じない賃貸人であっても、裁判所から出頭するよう通知が来ると、さすがに無視できず、とりあえず交渉のテーブルには着くということが多くあります。賃借人から民事調停を起こす最大のメリットは、まさにこの点にあります。

また、民事調停は、立ち退きを巡って解決方法を話し合う場であるため、訴訟のように請求権の有無を厳格に判断する必要もありません。柔軟な解決方法を模索できることもメリットとなります。

そのため、賃貸人が全く話し合いに応じない場合であっても、賃借人の方から積極的に立ち退き料を求めていくためには、民事調停の利用を検討すべきです。 その他、訴訟手続の一つとして、債務不存在確認訴訟という方法もあります。

ただ、債務不存在確認訴訟をするためには、原告となる賃借人に確認の利益が認められなければ、不適法な訴えとして却下されることになります。

居座りは違法 不法占拠していると立ち退きを強制執行される

土地、建物の上で生活を続けるためには、当該土地、建物に対する占有の「権原」が必要です。

「権原」とは所有権、賃借権、借地権などです。 このような土地、建物に対する占有の「権原」なく、土地、建物に居座り続けることは違法であり、当該土地、建物の所有権者や、本来の賃借人などから不法占拠を理由とする立ち退きを求められます。

不法占拠は、民法上、不法行為(民法709条)に該当する違法行為であるため、不法占拠者は、立ち退き料を請求することは当然できず、むしろ不法占拠した期間に相当する損害賠償をすべき義務を負います。

立ち退きに応じなければ、所有権者あるいは本来の賃借人などから訴訟を起こされ、当該訴訟に敗訴すると、強制執行になります。不法占拠者は、強制執行に要した撤去費用についても賠償する必要があります。

賃貸借契約を締結している賃借人が、賃貸人から更新拒絶を伝えられた際、契約期間が満了した後は不法占拠になると言われ、出ていかなければならないのかとご相談を受けることもあります。

しかしながら、正当事由のない更新拒絶には法的効力がなく、法定更新によって、従前の賃貸借契約の条件に従い、期限の定めのない契約として賃貸借契約が自動的に更新されます。そのため、直ちに不法占拠者となるものではありませんから、居住を続けても問題はありません。

なお、法定更新の場合であっても、従前の賃料を支払う義務はあります。賃料滞納がありますと、契約違反(債務不履行)による契約解除の理由となり、退去しなければならなくなるので、注意が必要です。

立ち退き料の交渉に期限はあるのか?

立ち退き事案の端緒としては、賃貸人から契約終了間際になり、突然、「月末までに出ていってくれ」と突然求められることから始まります。

「月末までに出ていってくれ」という賃貸人の主張は、ほとんどの場合、借地借家法の規制を無視した不当なものですから、応じる必要はありません。

期間の定めのある賃貸借契約の場合は契約満了日の6か月前から、期間の定めのない賃貸借契約の場合は契約を終了する通知があった日から6か月後、それぞれ十分な猶予期間があります。

また、弁護士を介した立ち退きの交渉では、十分な引っ越しの期限を設定した上で賃貸人と合意するのが通常ですから、猶予期間の心配はそれほど要りません。 ただ、少しでも早く退去する約束をした方が、賃貸人としても高い立ち退き料を支払いやすいでしょう。

これに対して、立ち退きの裁判では、立ち退き料が支払われることを条件として、賃貸目的物を明け渡すよう求める引換給付判決が出るので、立ち退きの時期は、賃貸人から立ち退き料が支払われてからということになります。

しかしながら、賃貸人から立ち退き料が支払われた後、いつまでに明け渡しをしなければならないのか、決められているわけではありませんが、立ち退き料が支払われたにもかかわらず、速やかに立ち退きに応じなければ、いつでも賃貸人から強制執行を受けてしまう立場に置かれます。判決後、立ち退き料を受け取ったなら、できる限り速やかに明渡しをしなければなりません。

立ち退きの交渉事件に関する裁判例

実は、よくある居住用建物の立ち退き交渉については、判例集を確認しても参考になる裁判例は少ないです。

判例集に掲載されている事案は、特殊な事情が影響しており、あまり一般化はできません。

裁判例の考え方を明確に示すことはできないものの、裁判実務では立ち退き料の算定方式がある程度確立しています。裁判所の和解手続や、民事調停の場面において立ち退き料の金額が問題となったとき、紛争を解決基準となる算定方式がやはり存在しているのです。

具体的には、新家賃と現行家賃との差額2~3年分に引越し費用や、新規賃貸借契約に必要な初期費用を加えた金額が採用されています。 一般的な1LDKの物件の立ち退き事案では、100~150万円程度の立ち退き料が認められることが多いでしょう。

立ち退きのトラブルは立ち退き問題に強い弁護士へご相談を

ここまで立ち退き交渉を専門に行ってきた弁護士の立場で、交渉術やノウハウに至るまで、かなり詳細に解説してきました。

しかし、実際に自分で実践する自信がないという方は、弁護士に交渉を任せるのがよいでしょう。 そこで、ここからは、弁護士に立ち退き交渉を依頼するメリットはあるのか、弁護士費用の相場観を含めて説明していきます。

立ち退き料の交渉を弁護士に依頼するメリット

賃借人には、住む場所を追われて路頭に迷うかもしれないとの不安があり、有効期限が満了したら直ちに出ていかなければならないという賃貸人側の理屈に押し切られてしまう方もいます。

賃貸人には、いくら借地借家法の規定を説明しても、法律の専門家から丁寧に説明をしないと考えが変わらない方も珍しくありません。

賃借人において、勇気を振り絞って、立ち退き料の交渉をしても、「その金額は認められない。早く出て行ってくれ」と言われ、引っ越し代程度しか提示されない事案も多くあります。

残念ですが、その場合、賃借人において、たとえ正しい法的主張を行ったとしても、専門家の言葉でない以上、賃貸人としても聞き入れず、状況が変わりません。 しかし、弁護士が、賃貸人と賃借人の間に入り、立ち退き料の交渉代行をすることで、賃貸人の態度はかなり変わってきます。

当初、引っ越し費用程度しか負担しなかった賃貸人であっても、弁護士が粘り強く交渉をすることで、最終的には、弁護士費用を差し引いても十分に手元に立ち退き料が残るほど、立ち退き料の増額を見込める事案も多くあります。

また、交渉は非常に煩わしいものです。特に、賃貸人がすぐ近くに住んでいる賃借人の方にとっては、重い心労になります。弁護士に交渉を任せることで、そのような心労から解放されることも、弁護士に立ち退き料の交渉代行を依頼するメリットといえます。

さらに、立ち退きの交渉は、立ち退き料の金額の問題のみならず、原状回復費用の問題、立ち退き料の支払方法に関する問題もあります。 立ち退き料について、ある程度納得できる金額を得たとしても、原状回復費用を負担しなければならない条件であった場合、結果的には賃借人が損をする場合もあります。

立ち退き料の交渉にあたる弁護士は、立ち退きによって生じうる問題をトータルにチェックして、賃借人に有利な結果を導き出すことできます。

以上のとおり、弁護士に立ち退き料の交渉代行を依頼することは、結果的に、弁護士に支払う報酬以上のメリットが得られる可能性が高いといえますので、交渉を始める前に弁護士に相談しましょう。

立ち退き料交渉の弁護士費用の相場

では、弁護士に支払う費用に見合うものなのでしょうか。弁護士に立ち退き料の交渉を依頼した場合、どの程度の費用がかかってくるのか、説明していきます。

賃借人側の弁護士費用

通常、どの法律事務所でも、取得した立ち退き料を元に成功報酬を計算するので、得られた立ち退き料によって変わってきます。

最低でも20~40万円程度の弁護士費用を要する法律事務所が多いのではないかと思います。

他方、賃料不払い等を理由とする賃貸借契約の債務不履行解除の事案では、交渉の目的が、賃貸借契約の解除を阻止したり、賃貸人からの損害賠償請求の減額であったりと、方針が全く異なるので、事案ごとに弁護士費用は変わってくることになります。

【参考】賃貸人側の弁護士費用

賃貸人の場合、立ち退き料を支払って賃借人を賃貸物件から退去させることが目的となるので、弁護士費用は、手数料としての金額になります。

話し合いでの立ち退きに成功した場合を前提とした場合、着手金と成功報酬金を合計して50~60万円程度かかるのが一般的です。

しかし、話し合いでは解決せず、訴訟にまで紛争が発展した場合には、さらに追加で数十万円前後の追加費用を要するのが通常と思われます。

【参考】立ち退きの強制執行にかかる費用

賃貸人が、不法占拠者を立ち退かせる場合、判決で勝訴判決を獲得することはもちろん、最終的には強制執行まで実施する必要があります。

通常、民事訴訟を提起するために訴訟着手金などの弁護士費用を要しますし、また、強制執行手続のためにも別途、執行手数料といった弁護士費用や、執行官の日当といった諸経費を必要とします。

また、立ち退きの強制のことを明渡断行の強制執行と呼ぶことがあります。不法占拠者は、建物内に様々な残置物を置いていることが通常であるため、明渡断行の強制執行を実現するには、建物内の残置物を撤去する必要もあります。

残置物を撤去するには、業者に費用を支払って行う必要があります。この費用は、執行を申し立てた債権者、すなわち賃貸人が負担する必要があります。廃棄物が大量にある場合、その処理費用も加算されることがあります。

最終的に執行に要した費用を不法占拠者に請求することができるものの、ほとんどの不法占拠者は、これら費用を支払うことがないため、賃貸人において事実上負担することとなります。

このように、賃貸人において、裁判手続によって、明渡しを強行するにも多大な費用がかかることになりますから、実際には、簡単に立ち退き交渉を決裂させて、訴訟には踏み切れないことが現実なのです。

立ち退き交渉をしていますと、賃貸人から訴訟提起を言われることがありますが、ブラフであることが多いため、我々弁護士からするとあまりプレッシャーにはなっていません。

非弁行為に該当する立ち退き業者に要注意

非弁行為とは、弁護士の資格がないものが、報酬を得て法的紛争の代理を行うことを言います。 賃貸人から立ち退きを求められて困っている賃借人において、インターネットを検索していると、立ち退き交渉の代行業者に接することがあります。

これら代行業者は、賃貸人から得た立ち退き料の一部を得るために紛争に介入しますが、報酬を得て法的紛争の代理をすることは、弁護士にしかできません。

そして、このような非弁行為は、弁護士法によって刑事罰をもって禁止されています。非弁行為をした業者はもちろん、非弁行為であることを知りながら、このような業者を使った依頼者も弁護士法によって処罰の対象となりますので要注意です。

まとめ

いかがでしたか。ここでは、立ち退き料の交渉に必要となる交渉術や、ノウハウを詳細にご紹介させていただきました。

突然、解約通知を受け取ったとしても、専門弁護士の交渉方法をマスターしていれば、何も慌てる必要はありませんし、立ち退き料の増額を狙うことも可能です。

ただ、立ち退き料の交渉においては、様々な事態が生じることになりますから、思い通りに交渉を運ぶこともそれほど容易ではありません。

そのため、解約通知を受け取ったなら、まずは方針について専門弁護士に相談して、交渉を全て弁護士に依頼する方がメリットと感じたなら、弁護士に任せることも検討すべきでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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