離婚で慰謝料なしになるケースとは?支払うことになりやすいケースも弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月04日
- 離婚で慰謝料なしになるケースを整理したい
- 離婚の慰謝料を支払いなしにしにくいケースも把握しておきたい
- 離婚を慰謝料なしで行えない場合にはどのように対応すればよいのか
離婚するときには、その原因を作り出した配偶者が相手に慰謝料を支払うことが基本と思われているかもしれませんが、実際には慰謝料なしで離婚するケースもあります。ただ、慰謝料なしでは離婚が困難なケースも存在します。
また、慰謝料なしで離婚する場合や、反対に慰謝料を支払う義務が生じた場合についても、注意点を整理したいところです。
そこで今回は、離婚時の慰謝料に詳しい専門弁護士が、離婚が慰謝料なしで行えるケースとそうでないケース、慰謝料なしで離婚できない場合の対処方法などについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 慰謝料なしになりやすい離婚ケースは、「性格の不一致」「配偶者の親族と不仲」「宗教への信仰」「婚姻関係の破綻」「証拠不十分」「支払い能力のなさ」などがある
- 慰謝料なしになりにくい離婚ケースは、「不貞行為」「モラハラ」「ネグレクト」「セックスレス」などがある
- 慰謝料なしでの離婚を進められないときの対応は、「提示されている慰謝料の妥当性を確認」「分割払いにできないか相談」の2つが大切
慰謝料なしになりやすい離婚理由
ここでは、慰謝料なしで離婚しやすいケースについて、以下の6つを解説します。
- 性格の不一致
- 配偶者の親族と不仲
- 宗教への信仰
- 婚姻関係の破綻
- 証拠不十分
- 支払い能力のなさ
それでは、1つずつ解説します。
性格の不一致
離婚できるケースの1つ目は、性格の不一致が理由で離婚したケースです。
性格の不一致が理由で離婚した場合は、原則として慰謝料の支払いは認められません。なぜなら、性格の不一致では夫婦のどちらに非があるのか立証することが困難だからです。それでも慰謝料を請求したい場合は、原因がある側や損害の規模などを明らかにする必要があります。
配偶者の親族と不仲
離婚できるケースの2つ目は、配偶者の親族と不仲が理由で離婚したケースです。
配偶者の親族と不仲で、どちらに原因があるか立証できないと、慰謝料の請求は困難です。ただ、配偶者の親族からのいじめなど、婚姻の継続が困難な事由が存在すると認められれば、慰謝料が認められる可能性があります。
宗教への信仰
離婚できるケースの3つ目は、宗教への信仰が理由で離婚したケースです。
宗教への入信や信仰が理由で離婚する場合も、慰謝料が認められる可能性は低いと考えられます。ただ、お布施のため家族にお金を入れないなど、宗教信仰により婚姻関係を破綻させる不法行為があった場合は、慰謝料が認められる可能性があります。
婚姻関係の破綻
4つ目は、婚姻関係がすでに破綻していたケースです。
不倫が離婚の原因である場合、不倫以前にそもそも長期間の別居や夫婦のすれ違いなど、明らかに婚姻関係が破綻していた場合は、慰謝料が認められない可能性が高まるでしょう。ただ、別居期間中でも家族との交流があったなど、婚姻関係が破綻していなかったと認められることもあります。
証拠不十分
5つ目は、離婚理由の証拠が不十分であるケースです。
相手が不倫していた事実を突き止めても、肉体関係の証拠をつかめなければ不貞行為は法的に認められません。慰謝料が認められるためには、その事由に該当することを示す客観的証拠をしっかり残しましょう。
支払い能力のなさ
6つ目は、支払い能力が相手にないケースです。
相手にそもそも慰謝料として差し押さえられる財産や支払能力が請求相手になければ支払えません。ただ、不倫が原因で離婚した場合は、不倫相手に請求することも可能です。また、相手が財産を隠しているケースもあるため、弁護士にも相談しましょう。
慰謝料なしになりにくい離婚理由
ここでは、離婚の慰謝料を支払いなしにしにくいケースについて、以下の4つを解説します。
- 不貞行為
- モラハラ
- ネグレクト
- セックスレス
それでは、1つずつ解説します。
不貞行為
1つ目は、不貞行為が理由で離婚したケースです。
配偶者以外の異性と肉体関係(不貞行為)が認められた場合、慰謝料を支払う義務が生じます。一度だけでも不貞行為があれば、慰謝料を支払うことは避けられません。
モラハラ
2つ目は、モラハラが理由で離婚したケースです。
夫婦間でも暴言などモラハラが認められた場合も、慰謝料の対象になります。DVで身体的暴力が認められたときも、慰謝料の対象になります。
ネグレクト
3つ目は、ネグレクトが理由で離婚したケースです。
配偶者や子どもなど、家族に対するネグレクトが認められた場合も、慰謝料なしでの離婚は困難です。たとえば、仕事で働けるのに働けない、もしくは家族を家に入れないなどの行為は、ネグレクトと認められる可能性が高いでしょう。
セックスレス
4つ目は、セックスレスが理由で離婚したケースです。
夫婦は、両者とも相手に性交渉を求める権利とそれに応じる義務を有しています。病気など特別な理由がなく性交渉を拒否し続けセックスレスになることも、夫婦関係に悪影響を与えます。
そのため、自分が性交渉を拒否し続けてセックスレスになったことが理由で離婚した場合も、慰謝料なしでの離婚は困難なのです。
慰謝料なしの離婚を進める上で気をつけるべきこと
ここでは、離婚を慰謝料なしで行うときに気をつけることについて、以下の2つを解説します。
- 後出しで慰謝料を請求されることがある
- 公正証書の作成
それでは、1つずつ解説します。
後出しで慰謝料を請求されることがある
気をつけることの1つ目は、後出しで慰謝料を請求されることがあることです。
慰謝料請求のタイミングは、必ずしも離婚時に限られたものではありません。そのため、証拠がそろっていれば、離婚成立後に慰謝料を請求することもあり得るのです。それを防ぐためには、離婚時に「今後も慰謝料を請求することはない」との証拠を残しておきましょう。
公正証書の作成
気をつけることの2つ目は、公正証書を作成することです。
慰謝料なしで離婚することを、公正証書により書面で残します。自分や配偶者で作った書面で離婚内容を残す場合、私文書であるため、あとから「勝手に書面が作られた」といったトラブルの原因になりかねません。
しかし、公正証書は公証役場が作成に関与する公文書で、より証拠としての効力が高まります。そのため、公正証書として慰謝料なしなどの離婚内容を残しておくことがベターなのです。
慰謝料なしでの離婚を進められないときの対応
ここでは、慰謝料なしでの離婚を進められないときの対応について、以下の2つを解説します。
- 提示されている慰謝料の妥当性を確認
- 分割払いにできないか相談
それでは、1つずつ解説します。
提示されている慰謝料の妥当性を確認
1つ目は、提示されている慰謝料の妥当性を確認することです。
相手から提示されている慰謝料が、相場と比較して不当に高くないか、妥当性を確認しましょう。このとき離婚問題に詳しい弁護士に相談すれば、過去の事例などから慰謝料の妥当性を判断してくれる上に、減額交渉を行うときにも強い味方になってくれるでしょう。
分割払いにできないか相談
2つ目は、分割払いにできないか相談することです。
慰謝料は一括での支払いが基本です。しかし、慰謝料を一度に全額支払うことが困難な場合は、分割払いにできないか相手に相談しましょう。離婚慰謝料の支払い条件を弁護士を通じて交渉することも可能です。
まとめ
今回は、離婚時の慰謝料に詳しい専門弁護士が、離婚が慰謝料なしで行えるケースとそうでないケース、慰謝料なしで離婚できない場合の対処方法などについて解説しました。
性格の不一致や宗教への信仰など、どちらか片方に明確な責任があると断定できない場合は、離婚を慰謝料なしで行うケースがあります。ただ、不貞行為やネグレクトなど、どちらかに明確な責任があると認められる場合は慰謝料が発生するものと考えましょう。
また、離婚時に慰謝料を請求されなかったとしても、あとから請求されることがないよう、公正証書を残しておくと安心です。反対に、慰謝料を支払う必要が生じた場合は金額の妥当性を確認した上で、分割払いが可能かどうかも聞いておきましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。