夫婦財産契約とは?費用を含むその全てを専門弁護士が徹底解説!
最終更新日: 2023年11月29日
これから結婚しようとしている方が様々な記事を見ていると、「夫婦財産契約」という言葉を目にすることがあるかもしれません。
夫婦財産契約って聞いたことないけど、どんな契約なの?作っておいた方がいいの?
夫婦財産契約を作りたいと思うけど、どうやって作ればいいの?費用はかかるの?
このような諸々の疑問が湧いてくると思います。
従来、日本では夫婦財産契約はあまり利用されて来ませんでしたので、ネット上にも正確な情報が不足しているのが現状です。そのため、このような疑問への的確な答えを直ぐに見つけられないのもやむを得ません。
そこで、今回は、夫婦財産契約を専門的に扱う弁護士が、夫婦財産契約の全てについて網羅的にご説明したいと思います。
夫婦財産契約とは?その意味や意義
まずは、夫婦財産契約という制度の基礎についてご説明していきます。
- 夫婦財産契約は婚前契約の別名?違いはある?
- 法律(民法)に定められた条文
- 登記件数にみる日本での夫婦財産契約の激増
では、順番に見ていきましょう。
夫婦財産契約は婚前契約の別名?違いはある?
「婚前契約(夫婦財産契約)」のような記載を目にすることがあります。いずれも結婚する前にカップルが交わす契約ですが、婚前契約と夫婦財産契約は同じものなのでしょうか。
確かに、夫婦財産契約と婚前契約を同じ意味として使われている記事も見られますが、正確には同じではありません。
夫婦財産契約とは、日本の民法に定められている用語で、民法が定めている夫婦の財産関係(これを法定財産制といいます。)とは異なる財産関係をカップルが結婚前に契約で決めるものです。
このように夫婦財産契約とは、文字通り、夫婦の財産関係のみを対象とした契約です。
一方、婚前契約には、夫婦の財産関係や離婚時の条件だけでなく、家事、育児、仕事のことなど日常生活に関するルールなども含まれます。
つまり、夫婦財産契約と婚前契約は全く異なるものではなく、婚前契約に夫婦財産契約が含まれる、夫婦財産契約は色々な条項がある婚前契約の一部と考えるのが正しい理解です。
法律(民法)に定められた条文
夫婦財産契約は日本の民法に定められているとご説明しました。ここでは、民法で具体的にどのように定められているのかご紹介します。
民法には以下の条文があります。
- 夫婦財産契約を定めた条文
- 婚姻費用の分担に関する条文
- 日常家事に関する債務の連帯責任に関する条文
- 夫婦間における財産の帰属に関する条文
それぞれ順番に見ていきましょう。
婦財産契約を定めた条文
夫婦財産契約について定めた条文は下記の民法第755条です。「夫婦財産契約」という用語自体の記載はなく、「財産について別段の契約」とあるのが夫婦財産契約です。
(夫婦の財産関係)
第755条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
この条文は、婚姻届を出す前に夫婦財産契約をしなければ、夫婦の財産関係は、民法の定め(法定財産制)に従うという意味です。
婚姻費用の分担に関する条文
ここからは、夫婦財産契約をしない場合に適用される民法が定める法定財産制についてご紹介します。
まずは、婚姻費用の分担に関する下記の条文です。婚姻費用とは生活費のことです。
( 婚姻費用の分担)
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
夫婦は各自の資産や収入その他一切の事情を考慮して婚姻費用を分担するという意味です。
夫婦が仲良くやっている限りは婚姻費用については話し合いで決めているのが通常ですから、この条文が実際に使われるのは、夫婦関係が悪化して別居したときなど、一方が婚姻費用を払ってくれなくなった状況においてです。
この条文からは婚姻費用の具体的な分担金額がわからないのですが、実務上は、夫婦各自の年収から婚姻費用の金額を計算しています。これを標準的算定方法といいます。
夫婦財産契約では、生活費や婚姻費用の分担方法や計算方法、金額を決めることができます。
日常家事に関する債務の連帯責任に関する条文
次に、日常家事に関する債務についての夫婦の連帯責任について定めた下記の条文です。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
夫婦の日常生活では、例えば、携帯電話の契約をする、食料品を買うのにクレジットカードを使うなど各種債務を負担することがあります。
このような債務については、いちいち他方の了承をとっていては円滑な生活を送れませんので、夫婦の一方が他方の了承なく負担をしても他方は連帯責任を負うことになっています。
この日常家事に関する債務の連帯責任については、取引相手に不測の損害を与えかねませんので、夫婦財産契約で異なる定めをしても法的効力は認められません。
夫婦間における財産の帰属に関する条文
最後に、夫婦の財産の帰属についての下記の条文です。
(夫婦間における財産の帰属)
第762条
1 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
結婚前から各自がもっている財産も結婚後に各自が得た財産も、いずれも各自の特有財産、つまり夫婦の共有の財産ではないとしています。
このように民法の定める夫婦の財産制度は、婚姻前の財産も婚姻後の財産も各自の特有財産であるとするものですが、離婚時には婚姻後の財産は実質的には共有財産と考え、財産分与の対象とされます。
夫婦財産契約では、これとは異なる夫婦の財産制度や財産分与の方法を定めることができます。
登記件数にみる日本での夫婦財産契約の急増
後ほど詳しくご説明しますが、夫婦財産契約は、不動産登記のように法務局に登記することができます。
夫婦財産契約を作成したら必ず登記されるものではなく、登記する方はごく一部です。
夫婦財産契約の登記件数について、下記の統計があります。2005年頃までは全国で年間5件以下だったのですが、2010年頃には年間10件ほど、2016年以降は年間20件前後の登記がなされています。
実に10年ほどで約4倍の登記がなされるようになったということになります。
このように夫婦財産契約の登記件数が急増していることからすると、登記はしてないけれども婚前契約、夫婦財産契約を作成しているカップルはそれ以上に急増していることは間違いないでしょう。
このように夫婦財産契約が急増している理由は、離婚率の上昇、夫婦の価値観の変化、芸能人など著名人が作成することによる認知度の向上が考えられます。
夫婦財産契約が日本であまり使われてこなかった理由として、その要件が厳しい、制約が厳しいと説明している記事が散見されますが、婚姻前に作成すれば良いだけであって、登記も必須ではありませんので、理由として適当ではないでしょう。
夫婦財産契約の判例 はほとんど無いのが現状
従前、日本では夫婦財産契約があまり作成されてこなかったことから、夫婦財産契約について、その条項の有効性などが正面から裁判で争われたケースはほとんどありません。
現状、夫婦財産契約の内容の有効性について判断した判例は、下記のものくらいしか見当たりません。
夫婦いずれかの申し出によっていつでも離婚でき、いずれが申し出るかによって財産分与金額を異にしている婚前契約について、離婚という身分関係を金員の支払によって決するものであるから、公序良俗に反し、無効と判断した判例です(東京地判H15.9.26・H13(タ)第304号等)。
近時、夫婦財産契約を作成するカップルは急激に増えていますので、近い将来、夫婦財産契約を扱った判例はどんどん増えてくると見込まれます。
もちろん、現時点でもある程度はどのような夫婦財産契約が有効となるかの判断はつきますが、判例が増えれば、より正確に法的効力の有無を判断できるようになります。
夫婦財産契約は再婚のカップルにもお勧め
20代や30代の初婚の方で夫婦財産契約をつくりたいという方は多くみられますが、
再婚する方で夫婦財産契約をつくりたいという方も同様に多くみられます。
ただ、再婚の場合には初婚の場合とは異なるご要望やお悩みがあります。以下このようなお悩みやその解決方法についてご説明します。
再婚する方のご要望、お悩み
再婚の方からは、離婚の際に財産分与や慰謝料などで揉めた経験があるので今度の結婚ではそのように揉めないようにしたい、今度は家事育児など結婚生活のルールを予め決めておいて夫婦円満を長続きさせたいというご要望をお聞きします。
また、再婚する中高年の方からは特有のお悩みをお聞きすることがあります。
そのお悩みとは、一方又は双方に成人した子がいて、離婚や相続で再婚相手に親の財産が行ってしまうことを子が心配している、お互いにそれなりに資産があるので、再婚相手ではなく子にできるだけ多く財産を残してあげたいといったものです。
夫婦財産契約で解決できます!
これらの再婚に特有のご要望やお悩みは、夫婦財産契約によって概ね解決が可能です。
夫婦財産契約(婚前契約)を作成する場合には、家事、仕事、親族との関わりなど結婚生活、日常生活における様々なことを二人で話し合い、ルールを決めます。そうすることで、結婚した後に初めて相手の考え、価値観がわかり衝突するという事態を減らせます。
また、夫婦財産契約では、財産分与の対象や方法、慰謝料金額などを定めておくことができます。このように予め離婚する際の条件を決めておけば離婚で揉める可能性は低くなります。
前妻との子に財産を残したいというお悩みについては、夫婦財産契約において夫婦の財産を各自の特有財産として、かつそれを財産分与の対象から除外すれば、離婚によって財産が配偶者に移転することを防止できます。
また、結婚後、夫婦財産契約とは別途に、子に全財産を相続させる旨の遺言書を作成し、かつ夫婦でお互いに遺留分の放棄手続をとることで、相続によって財産が配偶者に移転することを防止できます。
夫婦財産契約のメリットとデメリット
以上のとおり、夫婦財産契約は便利なもので、作成する方も増えていることがわかりました。
しかし、実際に夫婦財産契約をした方がいいのか判断するためには、そのメリットだけでなくデメリットも知っておくべきでしょう。
以下順番にご説明します。
夫婦財産契約のメリット
夫婦財産契約の主たるメリットとして、以下の3つを挙げることができます。
- 夫婦、家族について価値観、考え方のすり合わせができる
- 結婚生活でのもめ事が減る
- 離婚時の争いが減る
順番に見ていきましょう。
夫婦、家族について価値観、考え方のすり合わせができる
プロポーズがあり、その後、家族の顔合わせや結婚式場選びなど、結婚前は何かと慌ただしく、結婚後の日常生活、家庭についてじっくりと話し合うことは少ないようです。
そのため、いざ結婚生活を始めてみると知らなかった相手の考え方や価値観、生活スタイルを知り、衝突することがあります。
夫婦財産契約を交わす場合、結婚後の生活や家庭について具体的に話し合うことになります。恋人同士の時には話すことのなかったお金のことについても話し合うことになります。
このようなプロセスを経ることで、お互いに対する理解が深めることができます。
結婚生活でのもめ事が減る
上記のようにお互いの価値観、考え方をすり合わせ、結婚生活に関する具体的な取り決めをします。どの程度具体的な取り決めを夫婦財産契約に書くかはカップルによります。
お互いに話し合って決めたルールを契約にすることで、結婚生活におけるもめ事が減り、円満な夫婦関係の持続を期待することができます。
離婚時の争いが減る
離婚する時には、財産分与や慰謝料、養育費など専らお金のことを話し合います。関係が悪化した状態のため、このお金に関する争いは熾烈になりがちです。
このような離婚時のお金のことを予め夫婦財産契約に定めておくと、離婚するときにはその契約どおりに離婚することになりますので、無用な争いがなくなり、お互いに速やかに新しい人生を始めることができます。
夫婦財産契約のデメリット
夫婦財産契約の主たるデメリットとして、以下の3つを挙げることができます。
- 離婚の可能性を考えていると思われる
- 喧嘩になることもある
- 最悪の場合、交際解消になることも
順番に見ていきましょう。
離婚の可能性を考えていると思われる
先ほどのとおり、夫婦財産契約には離婚に関することを書くことが多いです。
そのため、夫婦財産契約を相手に提案する場合、結婚しようとしているのに離婚の可能性を考えているのかと相手に思われ、喧嘩になることがあります。
そのため、夫婦財産契約を提案するときには、あくまで円満な結婚生活が永続させることが目的であることを理解してもらうように丁寧に説明していくことが重要です。
信用してないと相手に思われる
お互いの財産を各自の固有の財産として、離婚時には各自の財産を財産分与の対象外とするような夫婦財産契約をする場合があります。
特にこのような契約をする場合、提案を受けた相手は、財産目当てと思われているのではないか、自分は信用されていないのではないかと思うかもしれません。
そのような誤解を持たれないためには、自分だけでなく相手にとってもメリットのある契約であることを説明して、納得を得ることが重要です。
最悪の場合、交際解消になることも
夫婦財産契約を作成するには、結婚生活に関することや、夫婦のお金に関することなどを話し合うことになります。
そのような話し合いをするなかで、喧嘩になり、交際解消になったというケースはたまにあります。多くの場合、それまでは知らなかった相手の性格や考え方を知って、それを受け入れられず、破局に至っています。
破局に至ったことは残念ですが、結婚後には避けては通れないテーマで折り合いがつかなかったのですから、そのまま結婚していれば衝突することは必至で、最悪の場合、離婚に至ることになるでしょう。
そうだとすれば、結婚前に交際解消になったことは、結婚後に離婚に至るよりは諸々のダメージが少なくて済んだという考えもあるかもしれません。
夫婦財産契約の内容について実例を踏まえながらご紹介
さて、ここまで夫婦財産契約の概要についてご説明しました。ここでは、夫婦財産契約は具体的にどのような内容になるのか、実例を踏まえながらご紹介いたします。
- 夫婦の財産について共有とするか特有(固有)とするか
- これをしたら離婚に応じること
- 財産分与の対象や割合について
- 不倫した時の慰謝料など
- 婚姻費用の金額や算定方法
- 子の養育費の金額や算定方法
- 相続については夫婦財産契約には定めない
- 無効となる内容や法的効力のない内容
これらについて、以下順番にみていきましょう。
夫婦の財産について共有とするか特有(固有)とするか
先ほどご説明しましたとおり、夫婦財産契約を作成していない場合には、民法の法定財産制が適用されます。
そして、法定財産制においては、婚姻前の財産も婚姻後に得た財産も共有財産ではなく各自の特有財産(固有財産)になるということでした。
財産関係については法定財産制と同じで良いという場合は、婚姻前の財産も婚姻後に得た財産も特有財産と夫婦財産契約に定めます。
夫婦財産契約に定める法定財産制とは異なる財産関係として、以下のいずれかのパターンとすることが多いです。
- 婚姻前の財産、婚姻後の財産ともに共有財産
- 婚姻前の財産は特有財産、婚姻後の財産は共有財産
- 婚姻前の財産は特有財産、婚姻後の財産の一部は特有財産、残りは共有財産
一つ目の婚姻前の財産も婚姻後の財産もともに共有財産とするパターンは、比較的若く、婚姻前にはあまり資産を保有していないカップルに多くみられるものです。
二つ目の婚姻前の財産は特有財産で、婚姻後の財産は共有財産というパターンも多くみられます。婚姻後の財産は共有財産として扱っている夫婦は多く、そのような夫婦はこのパターンの夫婦財産契約を作成します。
三つ目の婚姻後の財産の一部だけ特有財産とするパターンは経営者の実例によくみられるものです。婚姻後に取得した株式など経営する会社や投資先の持分については特有財産とし、かつ離婚時の財産分与の対象外とする夫婦財産契約を作成することが多くあります。
これをしたら離婚に応じること
これをしたら離婚という内容を夫婦財産契約に定めることもあります。
例えば、不貞行為をしたら相手からの離婚の申し出に応じなければならないと定めることがあります。不貞行為は法律上も離婚原因とされています。
離婚原因については民法に列挙されており(770条1項)、これ以外の離婚原因を夫婦財産契約に定めても法的効力は認められません。そのため、契約をしても離婚時に相手がやっぱり離婚したくないと言えば、離婚はできません。
とはいえ、契約した以上それに従って離婚できる可能性は十分ありますので、そのような条項を定めることが無意味とはいえません。
法的効力のないものの実例として以下のようなものがあります。
- 別居期間が1年を経過したら相手からの離婚の申し出に応じなければならない
- 隠れた借金が発覚したら離婚しなければならない。
- 一方からの離婚の申し出があり、その申し出が6か月間撤回されない場合、他方は離婚に応じなければならない。
財産分与の対象や割合について
離婚時には婚姻後に夫婦各自が築いた財産を合算し、原則として半分に分配します。これを財産分与といいます。
この財産分与の対象は夫婦の実質的共有財産です。「実質的」とありますように、夫婦の共有財産とイコールではありません。特有財産であっても婚姻後に築いたものは実質的共有財産と扱われます。
したがって、特有財産については財産分与の対象外としたい場合には、そのことを明記しておく必要があります。
例えば、財産分与の対象には特有財産は含まれない、この夫婦財産契約で共有財産とした財産だけが財産分与の対象となるということを定めます。
また、財産分与の割合は原則として半分ですが、この割合を7対3などに変更する契約が可能です。例えば、不貞行為が原因で離婚する場合は7対3にするといった契約をする実例があります。
不倫した時などの慰謝料
残念ながら婚姻中に配偶者が不倫をするケースはよくあります。不倫は民法上の不法行為のため、不倫をした配偶者は他方配偶者に対して慰謝料を支払う法的義務を負います。この慰謝料は離婚をしない場合でも請求することができます。
夫婦財産契約には、配偶者が不倫をしたときには慰謝料として○○万円を支払うと定めることができます。
慰謝料は思ったほど高額にはならないことが多いため、相場よりも多少高めに設定して夫婦財産契約に定めておくと良いでしょう。
相場は100万円から高くても300万円ほどです。実例としては200万又は300万と定める例が多いです。
1000万や2000万という慰謝料は法外な金額として法的効力が否定されます。
また、不倫だけでなく家庭内暴力の慰謝料を定めることもありますが、家庭内暴力という言葉は広義ですから、ある程度その定義を限定した方が良いでしょう。
婚姻費用の金額・算定方法
夫婦の生活費のことを婚姻費用といいます。夫婦が仲良く生活しているときは、生活費の分担方法について明確なルールがなくても問題になることは少ないのですが、夫婦仲が悪くなって別居すると生活費を入れてくれなくなることがあります。
このような場合、収入の少ない方は収入の多い方の配偶者に婚姻費用を請求することができます。この婚姻費用の金額は夫婦のお互いの年収をもとに標準的算定方式という計算方法で算出されます。
夫婦財産契約では、この婚姻費用の金額について標準的算定方式とは異なる計算方法や金額を定めたり、婚姻費用を負担しないと定めたりすることがあります。
また、離婚するまで永久に婚姻費用を支払い続けるのではなく、半年や1年など婚姻費用を支払う期間を限定する実例もあります。
このように婚姻費用について様々な定め方があるのですが、夫婦にはお互いを扶養する義務がありますので、標準的算定方式の水準以下の定めについて法的効力が認められるかどうかは、今後の判例の蓄積を待つ必要があります。
養育費の金額・算定方法
子の養育費の金額についても、夫婦お互いの年収をもとに標準的算定方式によって算出されます。
養育費については、子の権利でもありますから、夫婦財産契約によって勝手にその金額を決めることは原則としてできません。
もっとも、標準的算定方式によって算出される金額よりも高い金額を支払うなど子にとって有利な内容であれば法的効力が認められるでしょう。
夫婦財産契約では、子の養育費を20歳までではなく大学卒業まで負担したり、学費や習い事の費用も負担する定めをする実例はよくあります。
相続については夫婦財産契約には定めない
中高年の再婚の場合、配偶者ではなく、前配偶者との間の子に財産を相続させたいというご要望がよくあります。
相続については夫婦財産契約で定めたとしても法的効力はありませんので、子に相続させる遺言書を作成する必要があります。
無効となる内容や法的効力のない内容
夫婦財産契約の内容は基本的には自由ですが、法的効力が認められない内容や無効となる内容があります。
法的効力があるとは、相手が契約に違反したときは、裁判で相手にその履行を強制できることをいいますが、例えば、家事育児の分担など夫婦の日常生活におけるルールは、裁判で強制することになじみませんので、このような定めには法的効力はありません。
夫婦財産契約については判例がほとんどないため、有効性の判断が難しい条項が少なからずあります。
もっとも、明らかに無効といえる条項もあります。例えば、一定額を支払えばいつでも離婚できるという条項など離婚をしやすくする条項、子の養育費を負担しないなど子の権利を制限する条項などです。
他にも無効と判断できる条項はたくさんありますので、作成した夫婦財産契約は一度、専門家のチェックを受けることが重要です。
夫婦財産契約の書式(ひな形)・書き方
ここでは夫婦財産契約のイメージをもっていただくために、その書式(ひな形)をご紹介します。下記リンクよりダウンロードが可能です。
このひな形に多少変更を加えるだけでご自身の要望を満たした契約書ができるという場合にも、必ず、不備がないかどうか専門の弁護士に相談して確認を受けましょう。
また、弁護士においてお二人が内容をちゃんと理解し、納得した上でサインをしたことを確認することで、契約書の有効性が高まります。そのため、夫婦財産契約を自作した場合もサインをする際には弁護士に立ち合いを依頼しましょう。
各 条項についての説明は、以下の記事もご覧ください。
夫婦財産契約は結婚後でも結べる?変更はできる?
夫婦財産契約を作成しようと思ったけれども婚姻予定日まであまり日がないという方はしばしばおられます。
当事務所では特急で対応すれば3日でサインまで行きつくことができますが、遅くとも婚姻予定日の2、3週間前までには依頼することが望ましいです。
婚姻前には間に合わない場合、婚姻後に夫婦財産契約を作成したり、婚姻前にはとりあえずのものを作成し、婚姻後に改めて作成し直すことは許されるのでしょうか。
ここでは夫婦財産契約の作成時期について以下の順番にご説明します。
- 法律上は婚姻前に結ぶことが必要
- 婚姻後に結んだ夫婦財産契約は無効?
- 入籍前に口頭で合意して、入籍後に締結した場合
- 夫婦財産契約は婚姻後に変更できる?
- 婚姻前ならいつでも良いというわけではない
それでは順に見ていきましょう。
法律上は婚姻前に結ぶことが必要
民法は、夫婦財産契約は婚姻前にしなければならないと規定しています(第755条)。
これを受け、登記の際にも申請書類に婚姻前であることを証する書類として戸籍謄本の提出を求められます。
したがって、夫婦財産契約を作成する場合は、必ず、婚姻前に済ませましょう。
婚姻後に結んだ夫婦財産契約は無効?
先ほどご紹介しましたとおり、民法第755条は、「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。」と規定していました。
つまり、夫婦財産契約を婚姻前にしなかったときは、夫婦の財産関係は民法の定める法定財産制に従うことになります。
ですから、婚姻後に結んだ夫婦財産契約について、裁判所は無効と判断する可能性が高いでしょう。
もっとも、婚姻前に契約することを求めた根拠は、夫婦間の契約はいつでも取り消せるという民法第754条の存在にありますが、この夫婦間契約の取消権の規定には合理性がなく、死文化しています。
そうだとすれば、夫婦財産契約の作成を婚姻前に限定する根拠はないともいえますので、婚姻後に結んだ夫婦財産契約の有効性を認める解釈も成り立ちうるのかもしれません。
婚姻前に口頭で合意して、婚姻後に締結した場合
夫婦財産契約の作成が婚姻に間に合わなかったカップルから、口頭では婚姻前に契約が成立していたから、口頭で契約した内容を婚姻後に書面にしたいというご相談を受けたことがあります。
確かに、法律上、夫婦財産契約は書面で作成しなければならないとは規定されていませんので、口頭での契約も可能です。
問題となるのは、婚姻前に口頭で契約していたこと、口頭で契約した具体的内容を証拠で立証できるかどうかという点です。
また、カップルで共謀し、夫婦財産契約の作成日付を婚姻前の日付にして、婚姻後に契約書を作成することも考えられますが、将来夫婦間で争いになったときには、その点を他方配偶者から指摘され紛糾することは必至でしょう。
なお、夫婦財産に関わらない、例えば、家事育児や夫婦間のルールなどの契約については、夫婦財産契約ではありませんので、婚姻後に契約することも可能です。
夫婦財産契約は婚姻後に変更できる?
民法上、夫婦財産契約は婚姻後に変更できないと規定されています(758条1項)。そのため、夫婦財産契約を婚姻後に変更することはできません。
もっとも、この条文についても、夫婦間契約の取消権が根拠にありますので、婚姻後の変更について認める解釈も成り立ちうるかもしれません。
とはいえ、婚姻前に夫婦財産契約を登記していた場合には、勝手に変更されては第三者にとって不意打ちとなりますので、仮に婚姻後の変更が認められたとしても第三者には対抗できません。
民法も婚姻後の夫婦財産契約の変更について例外を認めています(758条2項)。
その例外とは、夫婦の一方が他方の財産を管理する内容の夫婦財産契約をしている場合で、その管理が不適切なために財産が危うくなったときには、家庭裁判所に財産管理者の変更を請求することができ、それが認められると夫婦財産契約の登記変更も可能です。
このように法律上は原則として、夫婦財産契約の婚姻後の変更は認められていないのですが、夫婦間で変更に異存がなければ、変更した契約に夫婦が従うのは自由です。
このような趣旨から当事務所の夫婦財産契約のひな型には契約の変更や解除の規定を盛り込んでいます。
婚姻前ならいつでも良いわけではない
以上のとおり、夫婦財産契約は婚姻前にすることが必要です。
ただし、婚姻前であればいつでも良い、婚姻届を出す直前でも良いというわけではありません。
なぜなら、相手に十分に契約内容を確認、検討してもらったうえでサインをもらわなければ、将来、夫婦で争いになったときに、契約の作成過程の問題を指摘され、その法的効力を争われる可能性があるからです。
アメリカの州法には少なくとも婚姻の7日前までにサインすることを求めているものもあります。
逆に、婚姻の数か月前などに作成することもお勧めしません。婚姻までに考えに変化があり、サインした後に何度も修正、変更が必要になる可能性があるからです。
夫婦財産契約にサインをする最適な時期としては、婚姻の10日から14日前あたりかと思います。
夫婦財産契約は公正証書や登記をしないと無効?
夫婦財産契約のことをネットで調べていると「公正証書」や「登記」という言葉が出てきます。ここでは、夫婦財産契約と公正証書、登記の関係についてご説明します。
- 私文書でも法的効力はあって方式に決まりはない
- 公正証書にしなければ無効?
- 公正証書にすることはデメリットが大きく、メリットは小さい
- 登記は必須?登記しなければ無効?
・それでは順番に見ていきましょう。
私文書でも法的効力はあって方式に決まりはない
夫婦財産契約書を作成し、お互いに署名、捺印すれば、夫婦財産契約は成立となります(効力が発生するのは入籍時点です。)。
内容や手続きに問題がなければ、私文書でも当然に法的効力は認められます。
法的に有効となるために重要なのは、その内容が法的効力を認められる内容なのか、また、お互いが契約内容を十分に理解して、納得してサインしたかという手続きの適正さです。
公正証書にしなければ無効?
ネット上の情報の中には、公正証書とすることが法的効力、有効性の要件のような記述が見られます。
諸外国では公正証書にしなければ法的効力が認められないという法律もあるようですが、日本にはそのような法律はありませんので、法的効力、有効性の要件ではありません。
また、公正証書とすることで有効性が高まる、有効性が担保されるという記述も見られます。
確かに、公正証書とする場合、公証人が契約の内容を確認しますので、弁護士が関与せずに、カップルだけで作成した場合よりは有効性は高まるでしょう。
しかし、公正証書にしても裁判で無効と判断される可能性はあります。つまり、公正証書となれば有効性が確定する、担保されるわけではないのです。
公正証書にすることはデメリットが大きく、メリットは小さい
夫婦財産契約の場合、公正証書とするとかえって大きな弊害、デメリットがあります。
どのような弊害かというと、夫婦財産契約については判例がほとんどないことから、公証人でも契約の有効性を正確に判断することはできないのです。そのため、公証人は無効だと思って削除した条項も、裁判では有効と判断される可能性があるのです。
せっかくカップルが話し合って決めた契約内容で、裁判でも有効と判断される可能性のある条項が公正証書とすることで削除されてしまうのは問題でしょう。
このように公正証書にすることで有効性が担保されるというメリットはありませんので、残るメリットは公証役場に保存してもうらことによる偽造防止や紛失防止くらいです。しかし、この点は法務局に登記をしておけば同様のメリットが得られます。
以上のとおり、メリットはほとんどないのに、弊害・デメリットが大きいことから夫婦財産契約を公正証書にするべきではありません。
登記は必須?登記しなければ無効?
夫婦財産契約は必ず登記しなければならない、登記が有効性の要件のような記述も見られます。
しかし、登記は第三者に契約内容を主張(対抗)するための要件です。有効性とは関係がなく、登記しなければ無効ではありませんし、必ず登記しなければならないものでもありません。
とはいえ、相続人や債権者などの夫婦以外の第三者に夫婦財産契約の効力を主張する必要が出てくる可能性がありますので、登記しておくことをお勧めします。
夫婦財産契約の登記についてまとめ
夫婦財産契約の登記件数は急増しているとはいえ、未だ、夫婦財産契約を作成したカップルのうち登記までするカップルは少数にとどまります。
その理由の一つには、夫婦財産契約の登記手続をしたことのある専門家が少なく、登記についてその意義や手続きについて依頼者にきちんと説明がなされていないことがあると思われます。
ここでは、以下の順番に夫婦財産契約の登記の全てについてご説明します。
- 登記は第三者への対抗要件で、成立要件ではない
- 登記する管轄の法務局はどこ?
- 夫婦財産契約を登記する際の書式
- お相手が海外の国籍の場合の必要書類
- 登記された夫婦財産契約の閲覧の方法
それでは、順番に見ていきましょう。
登記は第三者への対抗要件で、成立要件ではない
先ほど、登記は夫婦財産契約の有効性には関係がないことをご説明しました。登記をしなくとも夫婦財産契約は有効に成立します。
夫婦財産契約に限りませんが、原則として、契約は契約当事者のみを拘束します。もっとも、登記をすることで、その契約内容が第三者にも公に示されたとみなされます。その結果、契約した当事者以外の者(第三者)も、契約の効果に拘束されることとなります。
これを第三者への対抗要件といいます。
これによって、例えば、夫にお金を貸した債権者に対して、その預金は夫婦財産契約で妻のものになっているから差し押さえはできないと主張したり、亡き夫の相続人に対して、その財産は夫婦財産契約で妻のものになっているから相続財産ではないと主張したりすることが可能となります。
登記の手続きをする管轄の法務局はどこ?
夫婦財産契約の登記申請の手続きをする法務局はどこでも良いわけではなく、「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律」の第5条によって管轄が決まります。
その規定によれば、日本国内に住所が無いなどの例外的な場合でない限り、以下の法務局が管轄の法務局となります。
・夫婦となるべき者が夫の氏を称するとき 夫となるべき者の住所地を管轄する法務局
・夫婦となるべき者が妻の氏を称するとき 妻となるべき者の住所地を管轄する法務局
例えば、婚姻後は夫の苗字を名乗る場合で、夫が東京都港区に住民票を置いているのであれば、港区の法務局に登記の手続きすることとなります。
夫婦財産契約を登記する際の書式
夫婦財産契約の登記の手続きは夫婦となる二人が共同で管轄法務局に申請します。弁護士などの代理人に依頼する場合には、代理人が二人を代理して申請します。
申請の際の必要書類は以下のとおりです。
- 登記申請書 1通
- 登記原因証明情報である夫婦財産契約書(原本還付) 1通
- 戸籍全部事項証明 各1通
- 住民票 各1通
- 印鑑登録証明書 各1通
- 代理権限証書(委任状) 1通
下記リンクより、登記申請書の書式例をご覧ください。
お相手が海外の国籍の場合の必要書類
夫婦財産契約の登記申請をするためには、「各契約者が婚姻の届出をしていないことを証する情報」を提供する必要があります。
日本人であれば戸籍謄本がこれにあたりますが、海外の国籍の方の場合にはその国が発行する独身であることの証明書が必要となります。取得方法については大使館に確認します。
海外の国によっては、この独身証明の取得に1か月ほどかかることがありますので、もし登記まで予定している場合には、婚姻予定日よりも相当余裕をもって準備を進めることをお勧めします。
登記された夫婦財産契約の閲覧の方法
自分たちの夫婦財産契約の登記簿謄本を取得したいという場合には、登記をした管轄の法務局に申請します。手数料は600円です。
不動産や会社の登記の場合は電子化されているため、全国の法務局で取得できるのですが、夫婦財産契約の登記は電子化されていないため、夫婦が登記した管轄法務局でしか取得できません(郵送取得は可能)。
夫婦財産契約の登記は夫婦以外の第三者でも取得することができます。しかし、第三者が取得するためには、住民票や戸籍をたどり、どこの法務局に登記をしたのか調査する必要がありますので容易ではありません。
とはいえ、夫婦生活におけるルールなどプライベートな内容は他人に見られたくないという方は、登記用に夫婦財産関係についてのみ定めた契約書を別途に作成してそれを登記すると良いでしょう。
夫婦財産契約で思わぬ税金を課されないように要注意!
夫婦財産契約では、夫婦間で所得や財産を移転させる内容の契約をすることがあります。夫婦財産契約も他の契約と同様、税金の点にも留意する必要があります。
以下、贈与税、相続税について順番に見ていきましょう。
夫婦財産契約で贈与税を課されるケース
夫婦財産契約においては、例えば、以下のように、夫婦間で所得や財産を移転させる条項を入れることがあります。
- 夫は、毎月、給料の20%を家事育児の対価として妻に支払う。
- 夫が不貞をしたときは、その特有財産の全てを妻の特有財産とする。
国税庁は、夫婦財産契約による財産上の利益の移転について贈与税の課税対象となると説明しています。
そのため、上記のいずれも原則として贈与税の課税対象となります。
もっとも、生活費に充てるために通常必要と認められる程度のものであれば、贈与税は課されません(相続税法第21条の3第1項2号)。上記1の程度であれば、その程度の範囲内といえますから、贈与税は課税されないと考えて良いでしょう。
他方、上記2の場合には、生活費に充てるためとはいえません。そのため、例えば、一定金額について非課税とする何らかの特例を利用できなければ、財産が移転した時点で贈与税が発生してしまう可能性があります。
夫婦財産契約で相続税を課されるケース
夫婦財産契約で注意しなければならないのは、贈与税だけではありません。「夫は、毎月、給料の20%を家事育児の対価として妻に支払う。」「夫が不貞をしたときは、その特有財産の全てを妻の特有財産とする。」のような夫婦財産契約によって夫から妻に財産の移転があった後、夫が亡くなった場合、夫婦財産契約が登記されていれば、妻に移転した財産は相続財産の対象外であることを相続人に主張(対抗)できます。
もっとも、国税庁との関係では別です。
例えば、夫から家事専従の妻に毎月給料の20%が支払われ、それを妻が蓄えていた場合、先ほどのとおり贈与税は課税されないでしょうが、妻が蓄えていたお金も亡き夫の財産とカウントして相続税が課税される可能性があります。
夫婦財産契約は弁護士、行政書士、司法書士のいずれに依頼すべきか?
夫婦財産契約は自分で作成することもできますが、法的知識が関わる内容もありますので、専門家に依頼をした方が良い場合も多くあります。
ネットで検索をしてみると、夫婦財産契約の作成を請け負っている専門家には、弁護士、司法書士、行政書士がいます。どの専門家に依頼したら良いのか判断が難しいのではないでしょうか。
そこで、それぞれの専門家の特徴も踏まえ、以下の順番にご説明します。
- 法的効力が必要ないなら行政書士
- 登記手続なら司法書士
- 法的効力を求めるなら弁護士
それでは順番に見ていきましょう。
法的効力を求めないなら行政書士
行政書士は、飲食店や建設業の許認可など行政手続を主たる業務とする専門家です。
原則として依頼者の代理人として交渉や裁判をする権限は法律上ありませんので、離婚調停や離婚訴訟は専門ではありません。
そのため、離婚事件において問題になる点や訴訟で争点となりやすい点を踏まえた夫婦財産契約の作成は困難です。
そこで、家事育児の分担や親族との関わり合いなど法的効力は認められない、家庭におけるルールを専らの内容とする契約であれば、行政書士に依頼するのが良いでしょう。
このような法的効力と関わらない内容の契約であれば、弁護士に依頼することはコストパフォーマンスが良くありません。
登記の手続きなら司法書士
次に、司法書士についてです。
司法書士は、不動産や会社の登記の手続きを主たる業務とする専門家です。
夫婦財産契約について作成を請け負っている司法書士は少数ですが、登記が関わるため、作成を請け負っている司法書士も見られます。
司法書士は行政書士と異なり、簡易裁判所の事件については代理人として訴訟をすることができます。しかし、行政書士と同様、離婚事件の取り扱いはありません。
そのため、行政書士と同様、法的効力の関わらない契約であれば司法書士に依頼するのも良いでしょう。
なお、後ほどご説明しますが、夫婦財産契約の登記を司法書士に依頼する場合、費用は割高なようです。
実践的なもの、法的効力を求めるなら弁護士
最後にどのような夫婦財産契約の作成を弁護士に依頼するべきかご説明します。
弁護士と他の専門家の一番の違いは、依頼者の代理人として交渉や調停、訴訟を対応する点です。交渉や調停の経験から相手から争われやすい点を想定できたり、訴訟になった場合にどのような点が争点となり、裁判所がどのような判断をする傾向にあるか想定できます。
そのような経験をもとに、争いになった場合に備えた契約内容にすることができますし、そもそも争いになりにくい契約内容にすることができます。また、裁判所の傾向を踏まえ、最大限に法的効力を維持する契約を作成することができます。
このように法的な争いに備えた実践的な夫婦財産契約、法的効力をできる限り維持できる夫婦財産契約を作成したい場合には弁護士に依頼するべきでしょう。
なお、後ほどご説明しますが、夫婦財産契約を弁護士に依頼する費用は他の専門家とあまり変わりません。
夫婦財産契約の作成や登記にかかる費用は?
最後に、夫婦財産契約を専門家に依頼する場合、どれくらいの費用がかかるのかについてみてみましょう。
契約書作成の費用
インターネットで調べてみますと、夫婦財産契約作成の費用は、概ね以下のとおりでした。
- 弁護士 10万円から30万円
- 司法書士 5万円から15万円
- 行政書士 5万円から10万円
司法書士の場合、登記費用として10万円以上を設定している場合が多いです。
また、行政書士の場合、公正証書を代行しているケースが多く、その費用として5万円から10万円を設定していることが多いです。
先ほどもご説明しましたが、夫婦財産契約の場合、公正証書にする意義はほとんどありませんので、追加費用を支払ってまで公正証書にする必要はないでしょう。
登記に要する費用
次に、夫婦財産契約を登記する場合の費用についてです。
司法書士に依頼する場合、登記費用として10万円以上を設定していることが多いです。
確かに、不動産取引などの登記手続は難しい場合も多いため登記の専門家である司法書士に依頼した方が良いですが、夫婦財産契約の登記は難しくありませんので、ご自身でも申請できなくはありません。
ちなみに当事務所では登記手続は5万5000円(税込)にてお受けしています。
登記する際には、このような専門家の費用のほかに、登録免許税として1万8000円の費用がかかります。
まとめ
夫婦財産契約の作成をお考えの方は、まずはパートナーとの会話で夫婦財産契約について話題にし、本ページなどを参考に夫婦財産契約について知ってもらいましょう。
そして、一度、作ってみようという段階になったときは、ひな形などを参考に、結婚生活についてよく話し合いましょう。
たたき台となるものができたら、次は専門家に相談です。専門家に相談するときは、夫婦財産契約を専門的に扱う当事務所にご相ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。