マンション建替え反対者との立ち退きを巡るトラブル

マンション建替え反対者との立ち退きを巡るトラブル

2020年01月08日

1 反対者とのトラブルの原因

 マンションの建替えには、これに反対し、建替えのための立ち退きを拒む人が、必ずと言ってよいほど存在します。マンションの建替えには、莫大なコストがかかりますし、建替え工事の間は仮住まいへ引っ越しを余儀なくされるなど入居者の生活に大きな影響を与えます。

マンションの区分所有者(ここでは、以下「分譲所有者」と言います。)は、多くの場合、一生住み続ける住宅として、あるいは当該不動産から家賃収入を得るための賃貸物件として分譲マンションを購入しておりますので、立ち退きを巡るトラブルが生じるのも当然といえます。しかしながら、全分譲所有者及び入居者等の関係者の協力を得られないままでは、マンションの建替えは実現しません。

そこで、以下では、マンションの建替えに賛成しない人との立ち退きを巡るトラブルの解決方法を具体的に説明します。

2 マンション建替えにおける反対者の扱い

マンションの建替えは、基本的には、分譲所有者全員による建替え決議が必要となり、建替え決議に反対した分譲所有者が、「建替えに賛成しない人」として扱われることとなります(マンションを賃貸借契約により入居している賃借人は、分譲所有者ではないので、建替え決議に加わることができません)。

施工者は、マンションの建替えを推進するため、「建替えに賛成しない人」の区分所有権及び敷地利用権を全て取得しておかなければなりません。

施工者がマンション建替えの立ち退きを実現するための法的手段として、「売渡し請求」という手段がありますが、当該区分所有権を買い取るための費用はもちろん、権利実現までかなりの時間(場合によっては、立ち退きだけで数年間)を要することもあります。

最終的に、施工者から反対派に対して、売渡し請求ができるからといって、何の対策もせずにマンションの建替えを始めても、莫大な費用・時間・労力を費やすことになりますので、そもそもマンション建替えの反対派を増やさないことや、法的手続に移ることなく迅速に建替えに応じてもらうための交渉方法が重要となってきます。

3 立ち退きを実現する手段

⑴ 反対派を増やさない努力

まず、新築一戸建てであれ、新築分譲マンションであれ、建物は、数十年で老朽化して寿命を迎えるので、必ず建替えが必要となってきます。しかし、ある日突然、施工者から建替えが必要だと言われて、自身の大切な分譲マンションを明け渡す人はいません。

そこで、数年後に建替え予定であることを早いうちからアナウンスしておくことで、住民たちはそれに合わせた行動をとることができ、反対派をいたずらに増やすことを防止できます。そのため、10年後に建替えを考えているというマンションであっても、施工者としては、今から、建替えに向けて住民説明会を開くことが非常に重要です。

⑵ 反対分譲所有者との交渉方法

前述したとおり、売渡し請求権の行使にはコストがかかります。建替えに納得できず、最後まで居座る反対分譲所有者に対しては、最悪の場合、明渡しの民事訴訟まで提起し、強制執行によって立ち退いてもらわなければならず、膨大なコストを要することになります。

そのため、施工者としては、交渉によって、賛成派となってもらうか、迅速に立ち退きに応じてもらうか、早期に決めることが有用です。交渉では、いずれの方法をとるにしても、最終的に施工者から「時価」で売渡し請求できることをベースに条件を詰めていくことになります。

とはいえ、一般の入居者にとって、適正な「時価」の判断は容易でありません。施工者としては、迅速な交渉を実現するため、弁護士を交渉の代理人として利用し、反対分譲所有者を十分納得させるだけの説明を用意する必要があります。

⑶ マンションの建替えにおける借家人の扱いについて

マンションには、分譲所有者と賃貸借契約を締結し、賃借権に基づいて入居者となっている人(以下「借家人」といいます。)が住んでいることもあります。そして、借家人が旧マンションに残っている限り、旧マンションを取り壊して、新マンションを建設することができないので、借家人に建替えに協力してもらうことも重要です。

借家人には、新マンションの入居者となってもらうため借家権を付与することも可能ですが、実際問題として、仮住まいへの転居、新マンション入居の転居と引っ越し先が2つもあること、新築マンションとしての家賃相当額に賃料が増額となることから、新マンションの借家権の付与を受けるケースは珍しいようです。そのため、通常、施工者は、早い段階から、借家人と立ち退きの交渉を開始し、賃貸借契約の合意解約を目指すこととなります。

また、マンション賃貸借契約も借家契約となりますので、賃貸借契約を解除するには、借地借家法の「正当事由」が必要となります。正当事由の判断においては、契約期間、当該契約の形態(定期借家契約かどうか)など、様々な要素が考慮されますが、賃貸人側の事情だけで正当事由を認めるに不十分であれば、立ち退き料の交渉が必要となります。

⑷ マンションの建替えにおける敷地の借地権の扱いについて

建替え対象となるマンションについては、敷地となっている土地に借地権を設定して、当該マンションを建造している場合(以下「借地権設定型マンション」といいます。)もあります。この場合、当該土地に借地権を設定している土地の賃貸人(以下「底地権者」といいます。)に対する対応も問題となります。

借地権設定型のマンションを建て替える場合、当該土地に存在していた既存の借地権が一旦消滅し、新マンションの所有を目的とする新たな借地権が敷地利用権として設定されます。そのため、借地権の内容が変更されることに対する底地権者の同意が必要となります。

また、マンション建替え円滑化法の手続として、権利変換計画案についての底地権者の同意も取得する必要があります(円滑化法57条2項)。

さらに、建替え決議に反対した者に対して売渡し請求を行使した場合、敷地利用権である借地権も移転することになるので、賃借権の譲渡としての賃貸人である底地権者の承諾も必要です(民法612条)。

4 最後に

繰り返しになりますが、多くの区分所有者にとって、一生住み続けることができる資産として分譲マンションを購入しています。そのことを前提に、各自の収支を組み立てているので、突然、建替えをしなければならないとすると、様々な費用を負担しなければなりません。また、納得できる説明があれば、建替えに反対しなかったという方も少なくありません。

マンション建替え円滑化法により、建替えのための法的手続が保障されているとはいえ、建替えに伴う立ち退きの問題はなくなりません。他の分譲所有者・入居者等の関係者への説明をおろそかにすると、結果的に、建替え及び立ち退きにかかるコストが大幅に増えることとなりますので、事前説明の段階から、準備を進めることが重要です。

不動産会社がマンション建替えをサポートしているケースもありますので、何から手を付ければよいのかわからない場合、不動産会社を訪ねる方法もあります。あるいは、建替えに詳しい弁護士に相談することも有用です。

この記事を書いたのは

弁護士篠田 匡志
東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
金沢市にて総合法律事務所勤務
春田法律事務所入所

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