賃貸で立ち退き通知をするには?受け取ったら何をすべき?確認事項・弁護士の必要性も詳しく紹介!
最終更新日: 2023年11月29日
- 賃借人へ立ち退き通知書を送りたいが、どのような内容を記載するべきなのだろう
- 賃貸人から立ち退き通知書が届いたけれど、自分はどのような行動をとるべきかわからない
- 立ち退き通知を届いた場合、どこに相談するべきなのだろう
賃貸人が賃貸建物の取り壊しや再利用をするため、賃借人に立ち退きを通知する場合があります。
その際に、立ち退き通知を送る賃貸人が確認するべき事項や、立ち退き通知が届いた際に賃借人のとるべき行動が、それぞれにあるはずです。
そこで本記事では、多くの立ち退きトラブルの交渉・訴訟を扱ってきた専門弁護士が、賃貸人・賃借人双方の立場から、立ち退き通知に関する対応方法を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。
- 賃貸人は立ち退き通知を立ち退きの半年前には行い、賃借人に交渉や退去するための猶予期間を与える
- 賃借人に立ち退き通知が届いたら、通知の内容で不明な点や不備はないか等をまずチェックする
- 賃貸人も賃借人も立ち退き通知に関して、弁護士のアドバイスを受け対応した方が良い
賃貸の立ち退き通知とは?
賃貸の立ち退き通知は、賃貸人が賃貸物件からの立ち退きを求める文書です。主に次のような内容を明記します。
- 賃貸借契約を締結した日時
- 賃貸借契約の期間満了日
- 賃貸物件から立ち退いてもらいたい理由
- 立ち退き料や、敷金、引越し費用について
- 賃貸物件の所在地、家屋番号、種類、構造、床面積 等
賃貸人は、立ち退き料や敷金、引越し費用については、明記された内容以外の支払いについて「考えていない」と記載し、自らの条件を提示することができます。
一方で、賃借人はそのまま了承する必要はありません。更に交渉を行って、有利な条件を引き出せる場合もあります。
賃貸の立ち退きの通知タイミング
賃貸の立ち退き通知は賃借人にとって、不意打ちのような通知といえます。賃借人は通知を受けてから、立ち退きを受け入れるのかどうか検討し、引越し先を探すなどさまざまな対応を検討する必要が出てきます。
そのため1週間前はもちろん、1か月前であっても通知のタイミングとしては短すぎます。
基本的に賃貸人が賃借人に対し立ち退きを要求する場合、賃貸契約更新の1年〜半年前に行わなければいけない、と定められています(借地借家法第26条)。
そのため、賃貸人が送付する立ち退き通知は半年以上前に行う必要があります。
賃貸の立ち退き通知書を送付するときに確認すべきこと【賃貸人】
賃貸契約更新の1年〜半年前までに賃貸の立ち退き通知をすれば、いかなる理由があっても、立ち退き要求が認められるわけではありません。
正当事由の有無や、賃借人側が納得するような立ち退き料か等、考慮しなければいけない点があります。
正当事由
賃貸人が立ち退きを要求する場合、正当事由があるかが重要になります。
正当事由とは、賃貸人の建物利用の必要性を示す理由です。しかし、多くの場合、賃貸人の建物利用の必要性が賃借人の建物利用の必要性を明らかに上回ると認められることは難しいといえます。そのため、正当事由を補完するものとして立退料が支払われます。
たとえば、正当事由として、建物の老朽化があげられます。ただし、単に建物が古くなってリフォームしたいから立ち退いてもらう、という理由だけでは正当事由と認められない可能性もあります。
一方で、裁判所の判断では、賃貸建物が耐震化に関する法令に基づいた耐震診断で、耐震性に問題(地震が起きたら倒壊する可能性が高い)があり、賃貸建物を解体する必要のあった場合、正当事由として認められるとしたケースもあります。
立ち退きの期限
立ち退き要求は、原則として期間満了の6か月以上前までに申し入れる必要があります。
賃貸人がたとえ6か月より短い期間で立ち退きを要求しても、賃借人がその要求に従う義務はないので、賃貸人の意図した通りに立ち退きがなかなか進まないかもしれません。
立ち退きを要求する場合は、なるべく早めに立ち退き通知を送付し、賃借人に立ち退きの準備期間を十分与える必要があります。
逆に賃借人は、6か月より短い期間で立ち退きをする必要はないといえます。
立ち退き料
立ち退きに正当事由があり、立ち退きの期限を半年以上に定めたからといって、立ち退き料を全く払わなくてもよいとは限りません。
立ち退き料は明確に法令等で金額が決まっておらず、賃貸人と賃借人が話し合いで決定します。
賃貸人は立ち退き料を事前に提示し、賃借人から同意を得れば問題はありません。しかし、立ち退き料に納得せず、交渉が長引いたり、裁判で解決を図ったりする場合もあります。
賃貸人は、立ち退き問題の解決が長期化する可能性もある点に留意しておきましょう。
なお、賃貸物件の立ち退き料は家賃の約6か月~10か月分が目安となっています。
ただし、裁判所で「引越し料相当額+賃料の2年分程度」の金額を立ち退き料とするのが妥当、と判断したケースもあります。
賃貸人・賃借人それぞれの事情を考慮し、慎重に立ち退き料を決める必要があるでしょう。
立ち退き料の算定についてよくわからなければ、弁護士に相談してみるのもよい方法です。立ち退き交渉に詳しい経験豊富な弁護士のアドバイスの下で、賃借人に説得力のある立ち退きの条件を提示できるはずです。
賃貸で立ち退きを通知されたらすべきこと【賃借人】
賃借人は予想もしなかった立ち退き通知を受け取り、かなり動揺してしまうかもしれません。まずは通知書の内容を確認し、賃貸借契約書の見直しをします。
立ち退き要求へ素直に応じるべきか悩んでしまったならば、弁護士への相談も検討しましょう。
契約書の見直し
立ち退き通知を受けた場合、立ち退き料が全く明記されていなくても、慌てず賃貸借契約の締結時に受け取った契約書を確認してみましょう。
契約内容が次のような場合、立ち退き料は請求できません。
契約内容 | 理由 |
定期借家契約 | 本契約は契約時に設定した賃貸借期間が終了したら契約も終了するので、終了時は当然に賃借人が退去する必要があります。 |
一時使用目的の賃貸借契約 | 転居のための仮住居・仮店舗等、非常に短期間の利用目的で賃貸借契約を締結したため、立ち退き料は請求できません。 |
取り壊し予定の建物の賃貸借契約 | 建物の取り壊しが決定したときに締結した賃貸借契約のため、取り壊しと同時に契約終了となります。契約終了時は当然に賃借人が退去しなければいけません。 |
契約内容に違反してしまった場合 | 家賃を長期間滞納した、契約で禁じられていた無断転貸をした、迷惑行為を繰り返した等が該当します。立ち退き料が得られないどころか、賃貸人側から損害賠償を請求されるおそれもあります。 |
まず契約書で普通賃貸借契約なのか、それとも定期借家契約なのか等を今一度確認し、立ち退き料の請求はできるかどうかをチェックします。 普通賃貸借契約ならば、契約違反による立ち退きの場合を除き、立ち退き料を受け取れる可能性があります。
弁護士への相談
普通賃貸借契約で入居したにも関わらず、立ち退き通知に立ち退き料が提示されていない、または提示していても金額に納得できないといった場合もあります。また、そもそも立ち退きに「正当事由」があるのか、賃借人はさまざまな疑問や不満を抱くかもしれません。
そのようなときには弁護士へ相談してみましょう。 弁護士に依頼すれば、立ち退き料が適正な金額なのか更に増額できるのか、立ち退きに正当事由はあるのか等を詳しく検討・調査することができます。
また、賃借人の立場にたって賃貸人側と交渉してくれるはずです。 なお、初回の相談は無料にしている法律事務所も多いので、気軽に立ち退き相談ができます。
賃貸で立ち退きの通知を弁護士に相談するメリット
賃貸人・賃借人も立ち退きの問題を円滑に解決するため、弁護士に相談し助言やサポートを受けた方が良いでしょう。
弁護士へ相談するメリットは主に次の3つです。
- 法的なアドバイス
- 親身な対応
- 冷静な交渉
こちらでは、それぞれのメリットについて解説します。
法的なアドバイス
賃貸人は立ち退き通知をする前に、賃借人は立ち退き通知を受け取ったら、弁護士へ相談しアドバイスを受けてみましょう。
それぞれ次のようなアドバイスが期待できます。
賃貸人・賃借人 | 弁護士のアドバイスの内容 |
賃貸人 | ・立ち退きの内容が正当事由にあたるかどうか ・賃借人の立ち退き期限の検討 ・立ち退き料が必要か否か、必要ならば合理的な金額の算定 等 |
賃借人 | ・立ち退き料を請求できる内容の賃貸借契約か ・立ち退きの内容が正当事由にあたるかどうか ・賃借人の立ち退き期限は十分な猶予期間かどうか ・賃借人の契約違反の有無 ・賃借人の事情に応じた立ち退き料の算定 等 |
賃貸人は弁護士のアドバイスも受けながら立ち退き通知を作成すれば、説得力のある通知が完成するはずです。
また、賃借人が弁護士に立ち退き通知の相談をすれば、弁護士は通知内容を参考に、賃借人の希望を踏まえ賃貸人側と交渉してくれるはずです。
親身な対応
賃貸人・賃借人双方に都合があり、立ち退きに関してそれぞれ言い分があります。その悩みや希望を親身になってヒアリングし、交渉を進めてくれます。
どこまでなら依頼者が妥協できるのかもよく話し合い、問題の解決を図るはずです。
たとえば次のようなケースがあげられます。
- 賃貸人側:賃貸物件の原状回復は不要なので、敷金全額と賃料6か月分の立ち退き料でまとめたい
- 賃借人側:現在の物件と同等でかつ、仕事場から同じ距離にある新たな物件をみつけたものの、敷金が高い、せめて新たな物件の敷金の差額分も立ち退き料に加えてもらいたい
このような互いの主張を踏まえ、その溝を埋める交渉が行われます。
冷静な交渉
賃貸人と賃貸人が直接交渉すると、つい感情的になり交渉が進まなくなる可能性もあります。弁護士が依頼者の代わりに交渉をすれば、理性的に依頼者本人の希望を主張してくれます。
依頼者は弁護士を介して交渉できるので、弁護士のアドバイスも受けながら、冷静に問題解決を図っていけます。
賃貸での立ち退き通知は弁護士に相談を
今回は多くの立ち退き交渉に携わってきた専門弁護士が、賃貸の立ち退き通知の内容や、通知のタイミング、弁護士に相談するメリット等を詳しく解説しました。
賃貸人は立ち退きを通知する前に、賃借人は通知が届いた後で弁護士に相談し、そのアドバイスやサポートを受ければ、有利に交渉が進められるはずです。
立ち退き通知による交渉が必要となった場合、弁護士の助力を得て、問題解決を目指してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。