覚醒剤で逮捕2回目の量刑はどうなる?逮捕後の流れ・影響・対策を解説
2025年02月24日
- また覚醒剤で逮捕されてしまった。今度は重い罪に問われるのだろうか?
- 覚醒剤で再犯になると、刑が加重されると聞いた。加重される条件等を知りたい。
- 覚醒剤依存から脱却する措置を提案したら、減刑が見込めるだろうか?
覚醒剤の依存をやめられず、再び覚醒剤で逮捕されると、刑が重くなる可能性があります。
再犯者となった場合は刑の加重により、懲役刑(拘禁刑)の上限は2倍になる可能性があるのです。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、覚醒剤での逮捕が2回目の場合の量刑、2回目以降の逮捕による影響等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 覚醒剤の再犯者になれば、刑の加重により罪がかなり重くなる場合がある
- 覚醒剤で再逮捕された場合も、基本的に送致→勾留→起訴・不起訴→刑事裁判という手順で進められる
- 2回目以降の覚醒剤取締法違反の逮捕では、執行猶予付き判決を受けられない可能性がある
覚醒剤で逮捕2回目の場合の量刑
覚醒剤の使用・所持等で再犯となれば、刑の加重があり得ます。
ただし、覚醒剤の使用・所持等で逮捕されたのが2回目であっても、無条件で再犯となるわけではありません。
懲役刑は2025年6月1日以降、拘禁刑に変更されます。
再犯の定義
再犯とは、懲役(拘禁刑)に処せられた者が、その執行を終えてから5年以内に罪を犯し、有期懲役となる状況を指します。
再犯となった者が有期懲役(有期拘禁刑)を受けると、法定されている刑よりも重い刑(上限の2倍以下)が科される可能性があるのです(再犯加重:刑法第57条)。
出典:刑法|e-GOV法令検索
刑の加重
覚醒剤取締法違反で逮捕されたのが2回目で、懲役(拘禁刑)の実刑判決を受けた場合、次のように刑を加重されてしまう可能性があります。
・刑の執行を終えた日から5年以内に覚醒剤の所持で逮捕:刑を加重され、20年以下の懲役(拘禁刑)
・刑の執行を終えた日から5年経過後に覚醒剤の所持で逮捕:刑は加重されず、10年以下の懲役(拘禁刑)のまま(覚醒剤取締法第41条の2)
なお、刑が加重されるのは有期懲役(拘禁刑)を受ける場合のみです。
ただし、刑が加重されなくても、次のように刑が重くなる場合もあります。
- 1回目の覚醒剤の所持で懲役(拘禁刑)の執行猶予付き判決を受け、執行猶予期間中に2回目の覚醒剤の所持で逮捕された→執行猶予が取り消され、1回目・2回目の刑罰を一挙に受ける
- 執行猶予期間満了後に覚醒剤の所持で逮捕された→刑の言渡しは効力を失っており、2回目の刑罰だけが科される
覚醒剤で逮捕2回目後の流れ
覚醒剤の使用・所持等の疑いで2回目の逮捕が行われた場合も、1回目と同様の刑事手続で、取り調べや証拠となる覚醒剤の押収等が進められていきます。
ただし、2回目の逮捕であるため、被疑者は逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして、在宅事件となる可能性は低いでしょう。
送致
覚醒剤の使用・所持等の疑いで、逮捕・留置を受けた場合、48時間以内に検察官へ送致されます。
送致後も、覚醒剤の使用・所持等の経緯や、動機等の取り調べを受けます。
1回目の逮捕であれば、被疑者が反省し、取り調べに協力する姿勢を示せば、釈放され、在宅事件に移行する場合もあるでしょう。
しかし、2回目の逮捕の場合は、検察官が被疑者による覚醒剤の使用、逃亡、証拠隠滅を防ぐため、留置施設への勾留継続を決める可能性が高いです。
検察官は24時間以内に、裁判所へ「勾留」請求を行うでしょう。
勾留
裁判所が勾留請求を認めた場合、更に留置施設で被疑者の身柄拘束が可能となります。
勾留期間中、被疑者は捜査機関の取り調べを受け、被疑者自宅等も家宅捜索され、覚醒剤をはじめとする証拠物が押収されることになるでしょう。
勾留期間は原則10日ですが、捜査機関が必要であれば、更に10日間延長されます。
起訴・不起訴
覚醒剤に関する捜査を終えた後、検察官は被疑者を起訴するか否かを決定します。
捜査の結果、次のような場合は不起訴処分となるでしょう。
- 覚醒剤の所持や使用の疑いが晴れた(嫌疑なし)
- 証拠があまりにも乏しい(嫌疑不十分)
ただし、2回目の逮捕となるのでより徹底した捜査が行われ、捜査機関が十分な証言・証拠を揃えるでしょう。起訴される可能性は非常に高くなります。
起訴(公判請求)されれば、公開の法廷で覚醒剤の使用・所持等の事実が審理されます。
裁判
刑事裁判になると、被疑者から「被告人」に呼び方が変わります。刑事裁判までの基本的な流れは次の通りです。
- 起訴から約1〜2週間後:第1回公判期日の日程が決定
- 起訴から約1〜2か月後:第1回公判期日が開かれる
被告人が覚醒剤に関する事実を認めれば、基本的に2回の公判期日で終了するでしょう。
- 第1回公判期日:人定質問(本人確認)〜証拠取調べ等が行われ結審
- 第2回公判期日:判決が言い渡され、裁判は終了
裁判官は検察側・弁護側の主張や証拠、事実等を審理した後、有罪か無罪かの判決を言い渡します。
被告人を有罪とする証言や証拠がない場合、無罪判決を言い渡すでしょう。
一方、有罪となる場合は、前回も有罪判決を受けているため、実刑判決を言い渡される可能性が高いでしょう。
被告人が再犯の場合は、加重された刑罰を言い渡され、かつ刑罰が執行される可能性が高いのです。
なお、検察側や被告人側が判決に不服であれば、上級裁判所に対し控訴できます。
覚醒剤での2回目の逮捕による影響
覚醒剤の使用・所持等の疑いで2回目の逮捕となった場合、裁判官の心証も悪くなり、被告にとって厳しい判決となる可能性があります。
また、覚醒剤取締法違反で有罪となった場合、必ず懲役刑(拘禁刑)が言い渡される点に注意が必要です。
懲役刑が付く
2回目の逮捕となり再犯となれば、刑が加重され、刑期は長くなるでしょう。
覚醒剤取締法違反で実刑判決を受ければ、必ず懲役刑(拘禁刑)が言い渡され、刑事施設に収容されます。
また、覚醒剤取締法違反の懲役刑(拘禁刑)は最低でも1年です。そのため、刑が加重されると少なくとも1年を超える期間は、刑事施設で刑に服さなければなりません。
長い刑期となれば、それだけ社会復帰は難しくなるでしょう。
執行猶予は付かない可能性が高い
覚醒剤取締法違反で再犯となった場合、執行猶予付き判決を受けるのは極めて困難です。
執行猶予付き判決を受ければ刑事施設に収容されず、日常生活が送れて、執行猶予期間を無事終えれば刑の言渡しは効力を失います。
しかし、執行猶予が付かなければ、刑事施設で罪を償っていかなければなりません。
覚醒剤取締法違反で逮捕された再犯者に対し、執行猶予付き判決が言い渡される可能性があるのは、前科が覚醒剤以外の場合でしょう。
覚醒剤で2回目の逮捕の場合にすべき対策
覚醒剤取締法違反の再犯にならなくとも、何度も覚醒剤の使用を繰り返していると、自身の生命・身体に重大な影響が及びます。
刑の執行を終え帰宅できたとしても、覚醒剤依存を断ち切る努力が必要です。また、説得力のある再犯防止対策を立てれば、減刑を受けられる可能性があります。
弁護士への相談
覚醒剤の使用・所持等の疑いで2回目の逮捕となった場合も、速やかに弁護士と相談し、今後の対応の仕方を協議しましょう。
弁護士は相談者の事情をヒアリングし、次のようなアドバイスやサポートをします。
- 覚醒剤取締法違反で再犯となる可能性
- 再犯となった場合のリスク
- 逮捕後の弁護活動の説明
- 再犯防止対策の検討
- 刑事裁判でどのような主張を行うか
弁護士に私選弁護人を依頼すれば、最後まで依頼者のため弁護活動に尽力します。
また、覚醒剤依存を断ち切る再犯防止対策について、弁護士とよく相談しましょう。
刑事裁判のときに再犯防止対策を提示すれば、裁判官が「更生の余地がある」と判断し、減刑を得られる可能性があります。
周りへの協力依頼
刑の執行を終えた後も、引き続き覚醒剤依存を断ち切る努力が必要です。
自分一人の力だけではなく、周囲の方の協力を得ましょう。
- 家族の協力:家族と同居し行動の監視を依頼する。外出時も必ず付き添ってもらう。
- 刑務所出所者等就労支援を利用する:法務省が厚生労働省と連携して実施する支援制度で、ハローワークが実施するセミナー、職場体験講習等を受講できる
薬物使用の再犯者は、住所不定・無職である場合が多いでしょう。
そのため、家族と同居し覚醒剤を購入しないよう監視する措置や、安定した就労先を確保する支援制度への参加も再犯防止対策の1つとなります。
通院
覚醒剤等、薬物依存治療を専門に扱う医療施設での通院治療は、再犯防止対策として重要です。
薬物依存症外来の診療内容は主に次の通りです。
- 集団精神療法:患者数名~十数名程度のグループを対象に、概ね週に1回、2時間程度の集団認知行動療法を行う
- 個人精神療法:精神科医による個別のカウンセリング
- 薬物療法:薬物関連精神障害に対して薬物を投与し、改善を図っていく
薬物依存症外来は集団精神療法がメインとなります。
ワークブックを用いた治療、薬物依存の回復者によるグループセッションを通して、覚醒剤依存からの脱却を目指しましょう。
環境の見直し
覚醒剤が使用できない環境を作る必要があります。
覚醒剤をはじめとする違法薬物との出会いは、友人・知人をきっかけとしたケースが多いです。
- 友人や知人から紹介された売人を訪ね、面白半分で覚醒剤を購入・使用した
- 大学のサークル仲間が覚醒剤を使用していたので、自分も使用し病みつきになった 等
覚醒剤等の使用は、友人や知人からの誘惑が多いとされます。また、交際相手からの勧めで利用したケースもあります。
違法薬物に関する交友関係の見直しも、再犯防止に役立つでしょう。
覚醒剤で2回目の逮捕時の弁護士の活動内容
弁護士にサポートを依頼すれば、本人の代理人として様々な活動を実施していきます。
弁護士と話し合い、覚醒剤依存を断ち切る方法について検討しましょう。
治療計画
弁護士と相談して、再発防止のための治療計画を策定しましょう。
たとえば、刑の執行を終えた場合、次のような治療計画が可能です。
2.回復支援施設からの退所後は、薬物依存治療専門の医療施設で通院治療を継続
3.薬物依存症者の自助グループに参加し、ミーティング等を行う
弁護士は、本人の覚醒剤依存の度合いや健康状態を考慮し、急がずに薬物依存から抜け出せるような治療計画をアドバイスします。
治療機関の紹介
弁護士は本人の状態やニーズにあった治療機関(団体)の紹介も可能です。
- 回復支援施設:覚醒剤をはじめとした各種依存症から回復するためのリハビリ施設。回復プログラムの他、金銭管理、生活訓練、就労支援等も行う。
- 専門医療施設(薬物依存症外来):集団精神療法を中心とした通院治療が受けられる。
- 自助グループ:覚醒剤依存の悩みを抱えた本人や家族が、自発的に結びついた集まり。主に仲間の話から自ら学ぶスタイルをとる。
1つの治療機関(団体)にこだわらず、治療しながら再犯防止プログラムやワークに参加すれば、自分を見つめ直すよい機会にもなるでしょう。
家族への協力依頼
弁護士は、家族の協力が得られるよう説得します。
薬物依存脱却のためには、家族の協力が必要です。しかし、本人と家族が疎遠になっているケースも多いでしょう。
弁護士は本人と同居し、監視役となってもらうよう家族に協力を求めます。弁護士の説得で、家族は本人との同居や監視に同意する可能性があるでしょう。
減刑に向けた活動
刑事裁判で再犯防止対策を示せば、減刑を得られる場合があります。
弁護士は、被告人本人の「薬物依存から必ず脱却する」という強い意思を、裁判官に明確に示す必要があるのです。
また、弁護士は自らがアドバイスした治療計画である旨を裁判官に告げれば、裁判官は更生する可能性が高いと判断し、減刑を決める可能性があります。
覚醒剤で逮捕2回目の場合も春田法律事務所にお任せを
今回は多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、2回目の覚醒剤取締法違反の逮捕でも、減刑を得られる方法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は刑事裁判に実績のある法律事務所です。薬物依存からの脱却を望むなら、再犯防止対策を弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。