器物損壊における示談金とは?相場額・決定するための要素も解説
最終更新日: 2023年09月13日
- 他人の物を怒りに任せて壊してしまった・・・でも、他人を傷付けていないから微罪で済むのだろうか
- 器物損壊の容疑で逮捕された、何とか穏便に解決したい
- 器物損壊の被害者と和解したい、弁護士を立てるべきだろうか
器物損壊罪とは故意に他人の物を「損壊」する犯罪行為です。なお、傷害に該当するのは他人のペットを傷つける行為です。
本罪の対象は他人の所有物の他、命あるペットも含まれます。なお、本罪に問われると、最長3年の懲役刑が言い渡される可能性もあるので注意しましょう。
器物損壊罪で逮捕された場合は、被害者と速やかに示談を成立させたいところですが、本罪の示談金額がどうなるのか、気になる方々も多いでしょう。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、器物損壊の示談金額、示談金を支払うメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 他人にケガを負わせたわけではなくても、他人の物を故意に壊した者は逮捕される可能性が高い
- 器物損壊罪は親告罪なので示談が成立し、被害者が告訴を取り下げれば不起訴処分となる
- 示談交渉の条件・示談金額の提示は、弁護士を立てて調整した方がよい
器物損壊における示談金とは
器物損壊罪は親告罪なので示談が成立し、被害者が告訴を取り下げれば検察官から起訴されることはありません。
しかし、示談が成立せず起訴され、刑事裁判で有罪が確定すると「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」に処されます(刑法第261条)。
加害者としては示談を成立させ、穏便に解決したいものです。そのため、示談するときに被害者が納得するような示談金額を提示し、和解に応じるよう働きかける必要があります。
また、示談金額は、被害額の直接的な損害賠償金だけではなく、他に迷惑料・慰謝料を上乗せして支払うよう、被害者から要求されるケースも多いのです。
示談金
示談金とは、器物損壊罪のような刑事事件で示談交渉をするときに、加害者が被害者へ謝罪の意を込めて支払うお金です。
示談金額は、たとえば「器物損壊罪なら一律〇〇万円」と決まっているわけではありません。加害者側が示談金額を提示し、被害者が示談金額に納得すれば和解は成立します。
ただし、加害者が提示した示談金額で納得するかどうかは被害者次第なので、法定された罰金刑よりも多額となる可能性もあります。
損害賠償金
他人の物を故意に破損させている以上、示談金はその被害を回復するという損害賠償金としての役割があります。
たとえば、破損させた他人の物(例:自動車、バイク、壁等)が修理可能ならば、被害者に修理費用の見積りをとってもらい、修理費用を損害賠償金として支払います。
ただし、「損害賠償金=示談金」として、修理費用の同額を支払えば被害者が納得するとは限りません。
迷惑料
被害者は損害賠償金だけでは納得せず、更に金銭を上乗せして支払うよう要求する可能性があります。
被害者は、所有物を壊された被害届の提出のため警察署を訪れ、警察官からの事情聴取や、その後の実況見分に同行する等、多くの時間と労力がかかります。
そのため、破損した物の金銭賠償だけでは納得がいかず、迷惑料が加算されなければ和解に応じないと主張するかもしれません。
この場合は損害賠償金に加え、数万円〜10万円程度の迷惑料を加えて和解を図ります。
慰謝料
被害者の精神的苦痛に対する損害賠償金として、「慰謝料」を考慮しなければいけない可能性があります。
加害者からしてみれば、「ケガを負わせたわけではないのに、何故、慰謝料まで支払う必要があるのか」と思われるかもしれません。
しかし、たとえば加害者が八つ当たりで、何の落ち度もなかった被害者(飼い主)のペットを蹴り負傷させた場合、その傷害行為を目の当たりにして、被害者が精神的苦痛を受けたケースも想定されます。
たとえペットのケガが治っても、被害者の精神的苦痛はなかなか治らないかもしれません。
この場合、弱い立場のペットを傷つけた行為はもちろん、被害者の精神的苦痛について謝罪するため、示談金額を上乗せする必要があります。
器物損壊の示談金に影響を与える主な要素
器物損壊の示談金額は、一般的に数万円〜数十万円程度になりますが、その金額が決まる背景には、器物損壊による実際の損害額の他、被害者の感情、犯行態様、加害者の社会的地位なども影響します。
したがって、示談金額の決定に当たっては、様々な点を十分考慮に入れなければなりません。 器物損壊の示談金を決める要素としては以下があります。
- 物の性質(破損したのは物なのか、それともペットを傷つけたのか等)
- 損害金額(物の修理費用、ペットの治療費等)
- 被害の内容、程度(全部壊したのか、一部を壊したのか)
- 被害者の処罰感情
- 被害者の物に対する思い入れ
- 犯行態様・動機
- 加害者の年収、職業、社会的地位(経営者なのか、給与所得者なのか、学生なのか)等
これらの内容を踏まえれば、示談金額が数百万円に上るケースもあるでしょう。
以下では、その中で示談金に影響する3つの主な要素について詳しく説明します。
被害者の感情
加害者への処罰感情は、個々の被害者によって大きく違ってきます。
加害者が被害者の所有する自動車に深刻なダメージを与えたとしても、「損害賠償金を支払えば許す」という処罰感情の小さい被害者がいます。
その一方で、家族の一員であるペットにケガをさせ、軽いケガで済んでも「絶対に許すものか!」と強く憤る被害者がいます。
交渉の際、被害者の処罰感情も考慮した適切な示談金額の提示が必要です。ただし、単に示談金額を高くすれば良いのではなく、被害者へ真摯に謝罪し、処罰感情を和らげる努力も大切です。
加害者の犯行態様
犯行の態様(ありさま)が悪質かどうかも、示談金額に大きな影響を与えます。
例えば、加害者は被害者を日ごろから気に食わず、嫌がらせをしようと計画的な犯行に及んだ場合、和解が非常に難しく、高額な示談金額を必要とする可能性があるでしょう。
一方で、犯行が計画的でない(場当たり的な)犯行だったならば、悪質性がやや薄まり示談金額を抑えられる場合もあります。
加害者の社会的地位
加害者の社会的地位も、示談金額に考慮しなければいけません。
たとえば、示談金額は10万円と考えていた場合、加害者が経済的に余裕のある経営者と、バイトで生計を立てているフリーターとでは、同じ金額でもお金の重みが違うでしょう。
フリーターならば十分反省していると考えられる示談金額でも、資金的余力が大きい経営者ならば謝罪しているとは思えない低い示談金額、と捉えられる場合もあるのです。
経営者のような社会的地位のある加害者は、反省の態度を示すため、通常より高めの示談金額が必要となるでしょう。
器物損壊における示談金を支払うメリット
器物損壊罪は「親告罪」なので被害者が告訴をしない、または取り下げれば検察官が起訴できません。
つまり、告訴されても示談という形で和解を被害者に働きかけ、被害者が示談内容に納得し、告訴を取り下げれば不起訴となります。
不起訴となれば刑事裁判は開かれず、懲役刑または罰金刑となるおそれもなくなる点が大きなメリットです。
また、勾留されているときも早期に解放され、普段の日常生活に戻れるので、精神的・肉体的な負担からも解放されます。
器物損壊における示談金交渉を弁護士に依頼するメリット
不起訴になるためには、弁護士に示談交渉を依頼した方が成功率はあがります。
ここでは、弁護士へ示談交渉を任せるメリットについて解説しましょう。
相手との冷静な交渉が可能
加害者本人が被害者に示談交渉を直接働きかけることもできます。
しかし、被害者側は加害者への恐怖や処罰感情から、なかなか交渉に応じないでしょう。
そこで、法律の専門家である弁護士を立てれば、被害者も冷静に示談交渉に応じてもらえる可能性があります。
弁護士を立てた場合、直接加害者本人に会う必要もないので、被害者も交渉しやすくなります。
一貫した対応
弁護士は示談交渉に尽力する他、示談が成立せずに加害者が検察官に起訴されたとしても、諦めずに執行猶予付き判決や減刑を得られるよう、最大限の努力を行います。
弁護士は刑事裁判が行われた場合、被告人(加害者)が初犯である点、犯行を反省している点を丁寧に説明し、最後まで被告人の立場で弁護を続けます。
適正額で交渉可能
器物損壊事件をはじめ、数多くの刑事事件の示談交渉を行ってきた弁護士であれば、示談金の適正額を把握しています。
そのため、弁護士に交渉を任せれば、被害者との交渉が行き詰る事態を可能な限り回避でき、スムーズに被害者と示談の条件・金額の調整を進めていけます。
支払う示談金額は器物損壊罪の罰金刑よりも多くなるかもしれえません。しかし、示談が成立し、「被害者は告訴を取り下げ、加害者を許す」との条項が明記されれば、不起訴処分に大きく前進します。
まとめ
今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、器物損壊の示談金額の目安、示談金交渉を弁護士へ依頼するメリット等について詳しく解説しました。
示談が成立するためには、単に多額の示談金額を提示すればよいわけではありません。加害者の誠心誠意の謝罪と反省が必要不可欠です。
器物損壊事件を示談で解決したいときは、速やかに弁護士へ相談しサポートを依頼しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。