窃盗罪の刑罰とは?逮捕後の流れと前科をつけないための対処法

2026年01月23日

窃盗罪の刑罰とは?逮捕後の流れと前科をつけないための対処法

窃盗罪は、日常生活で身近に起こりうる犯罪でありながら、刑法によって「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という重い刑罰が定められています。万引きや置き引きといった行為も含まれるため、意図せず加害者となってしまうケースも少なくありません。もし窃盗罪の疑いで警察から呼び出しを受けたり、逮捕されてしまったりした場合、その後どのような刑事手続きが進み、どのような刑罰が科される可能性があるのか、多くの方が不安に感じるでしょう。

この記事では、窃盗罪の具体的な定義から、実際に科される刑罰の重さ、そして逮捕されてから起訴・不起訴が判断されるまでの詳細な流れを解説します。特に重要なのは、将来にわたる大きな不利益を避けるために「前科をつけない」という目標をどのように達成するかです。早期に弁護士に相談し、被害者との示談交渉を進めることが、不起訴処分の獲得や、もし起訴されたとしても執行猶予付き判決を得るためにいかに不可欠であるかを詳しくご紹介します。具体的な解決策を知り、迅速な対応を取るための第一歩として、ぜひお役立てください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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窃盗罪とは?万引きや置き引きも含まれる身近な犯罪

窃盗罪は刑法235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する」と明確に定められています。ここでいう「他人の財物を窃取する」とは、持ち主の意思に反して、その財物を自分の支配下に置く行為を指します。つまり、他人の物であることを知りながら、それをこっそり自分の物にしてしまう行為全般が窃盗罪に該当するのです。

この窃盗罪は、日常生活の中で誰もが耳にする万引きや置き引き、自転車盗、スリといった行為も含まれる非常に身近な犯罪です。たとえば、スーパーマーケットで商品を代金を支払わずに持ち出す「万引き」はもちろん、カフェで隣の席の人が離席した隙に荷物を持ち去る「置き引き」なども窃盗罪にあたります。これらの行為は、軽い気持ちで行われることがありますが、法的には重い罪として扱われます。

窃盗罪は、被害額の大小に関わらず成立するため、「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な考えは禁物です。たとえ少額の商品であっても、他人の財物を無断で持ち去る行為は、刑罰の対象となり得るのです。自身の行動が窃盗罪にあたるのかどうか、正確な知識を持つことが重要になります。

窃盗罪が成立する3つの要件

窃盗罪が成立するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。これらの要件は、警察や検察が事件を捜査し、最終的に裁判で有罪・無罪を判断する際の重要な基準となります。

1つ目は「他人の占有する財物であること」です。ここでいう「財物」とは、お金や物はもちろん、電気などのエネルギーも含まれます。そして「占有」とは、必ずしも所有者である必要はなく、現実にその物を管理・支配している状態を指します。例えば、落とし物であっても、他人が見つけて警察に届けようとしている途中で奪えば、その拾得者の占有を侵害したとして窃盗罪が成立する可能性があります。

2つ目は「窃取行為」です。これは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自分の支配下に置く行為を指します。暴力や脅迫を用いて奪い取る場合は強盗罪となり、窃盗罪とは区別されます。あくまで相手に気づかれないように、あるいは気づかれても抵抗できない状況で持ち去る行為が窃取にあたります。

3つ目は「不法領得の意思」があることです。これは窃盗罪の成立において特に重要な要件で、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用・処分する意思」を指します。簡単に言えば、一時的に借りるつもりではなく、自分の物として完全に利用したり、売却したりする意図があったかどうかが問われます。例えば、友人の自転車を無断で借りて乗り回し、後で返すつもりだった場合は、この「不法領得の意思」が認められないため、窃盗罪ではなく「使用窃盗」として、罪には問われない可能性が高いです。しかし、一時的な借用であっても、それが物の本来の価値を著しく損ねるような行為であれば、不法領得の意思が認められる場合もあります。

窃盗罪にあたる具体的な行為の例

窃盗罪は、私たちの身の回りにも多様な形で存在します。ここでは、代表的な窃盗行為とその事例についてご紹介します。

最も一般的なのが「万引き」ですこれは店舗に陳列されている商品を、代金を支払わずに持ち去る行為で、先の要件で言えば、店舗の占有する財物(商品)を、店の意思に反して窃取し、自分の物にする(不法領得の意思)に該当します。

職場での窃盗が疑われた場合の対処法は以下の記事で解説しています。

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次に「置き引き」です。これは、他人が公園や駅などの公共の場所に置いた荷物などを、その隙を狙って持ち去る行為です。たとえ一時的に置いてあっただけであっても、その荷物は持ち主の占有下にあるとみなされるため、これも窃盗罪となります。

「空き巣」は、住居侵入を伴う窃盗です。留守宅に侵入し、現金や貴金属などを盗む行為で、窃盗罪の中でも特に悪質性が高いと判断される傾向があります。侵入行為そのものが住居侵入罪にもあたるため、より重い罪に問われることになります。

住居侵入を伴う窃盗罪(空き巣)については以下の記事で解説しています。

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「車上荒らし」は、駐車中の車から金品を盗む行為です。窓ガラスを割るなどの手口が用いられることが多く、車の所有者の占有を侵害し、車内の財物を窃取するものです。

「自転車盗」は、施錠してあったかどうかに関わらず、他人の自転車を無断で乗り去る行為です。多くの場合、後で売却したり、自分の交通手段として利用する意図があるため、不法領得の意思も認められます。他人の占有が認められない場合には、占有離脱物横領罪が適用されるケースもあります。

自転車盗の示談金相場や罰金について、詳しくはこちらで解説しています。

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最後に「食い逃げ」(無銭飲食)も、広義の窃盗罪として扱われることがあります。飲食店で食事を終えたにもかかわらず、代金を支払わずに逃走する行為は、料理という「財物」を窃取し、その経済的価値を不法に取得したとみなされるため、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用されるケースもあります。

窃盗罪の刑罰|拘禁刑・罰金はどのくらい?

窃盗罪は、身近な犯罪でありながら、その刑罰は決して軽いものではありません。このセクションでは、窃盗罪に対して法律で定められている刑罰の範囲、つまり法定刑について詳しく解説します。さらに、実際に個別の事件でどのような刑罰が科されるのか、その重さを決定する要素、そして初犯か再犯かによって刑罰がどのように変わるのか、執行猶予がつく可能性についても掘り下げていきます。

法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」

日本の刑法235条によって定められている窃盗罪の法定刑は、「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。これは、窃盗罪を犯した場合に、裁判所がこの範囲内で刑罰を言い渡すことを意味します。たとえば、拘禁刑は最長で10年、罰金は最高で50万円までが科される可能性があるということです。

「拘禁」とは、刑務所に収容されて改善更生を図るため、必要な刑務作業又は指導を行う自由刑であり、個人の自由を拘束する重い刑罰です。一方、「罰金」は、国に対して一定の金額を支払うことを命じられる財産刑であり、拘禁刑に比べると身柄の拘束を伴わない点で異なります。しかし、罰金刑であっても刑法上の「前科」となるため、その影響は決して小さくありません。個々の事件の状況に応じて、これらの刑罰が選択され、その重さが決定されます。

刑罰の重さを決める5つの要素

窃盗罪の刑罰が法定刑の範囲内でどのように決まるのかは、一概には言えません。検察官の起訴・不起訴の判断や、裁判官が最終的な量刑を決定する際には、さまざまな要素が総合的に考慮されます。主な要素として、以下の5点が挙げられます。

まず、被害金額の大小は、刑罰の重さを決定する上で最も重要な要素の一つです。少額の万引きと、数百万円規模の窃盗では、当然ながら刑の重さが大きく異なります。次に、犯行態様の悪質性も考慮されます。計画的であったか、どのような手口を用いたか、凶器を使用したり、複数人で犯行に及んだりした場合は、悪質性が高いと判断され、より重い刑が科される傾向にあります。例えば、空き巣のように住居侵入を伴う窃盗は、単なる路上での置き引きよりも悪質性が高いとみなされます。

さらに、被害者との示談の有無は、刑罰の軽重に極めて大きな影響を与えます。被害者が損害を弁償され、加害者を許している(宥恕している)場合、検察官は不起訴処分とする可能性が高まり、裁判になったとしても刑が軽くなる傾向があります。一方、示談が成立しない場合や、被害者が厳罰を求めている場合は、刑が重くなる可能性が高まります。

前科・前歴の有無も重要な要素です。過去に同種の犯罪で有罪判決を受けたことがある場合、再犯とみなされ、刑罰は重くなる傾向があります。特に短期間に複数回の窃盗を繰り返している場合は、「常習累犯窃盗」としてさらに重い刑が科される可能性もあります。

最後に、被告人の反省の度合いや更生の意欲も考慮されます。深く反省し、二度と罪を犯さないという強い意思を示し、具体的な再犯防止策を講じている場合は、裁判官の心証が良くなり、刑が軽くなる方向で考慮されることがあります。

初犯と再犯で刑罰はどう変わる?

窃盗罪における刑罰は、犯行が初犯であるか、それとも再犯であるかによって大きく傾向が異なります。初めて窃盗罪を犯した場合、特に被害金額が軽微な万引きなどであり、被害者との間で示談が成立しているケースでは、不起訴処分となる可能性や、起訴されたとしても罰金刑、あるいは執行猶予付きの判決となる可能性が高いです。これは、初犯であり深く反省していると判断されれば、社会内での更生を促す目的から、寛大な処分が下される傾向にあるためです。

しかし、再犯の場合、特に短期間に窃盗を繰り返しているケースでは、刑罰は格段に重くなります。過去の経験から反省や更生が期待できないと判断されやすく、実刑判決のリスクが飛躍的に高まるのが特徴です。例えば、常習累犯窃盗罪に問われると、3年以上の拘禁刑という非常に重い刑罰が科されることになります。

このように、一度でも前科があると、その後の人生において刑事手続き上の不利益が大きくなるため、最初の段階での適切な対処が極めて重要となります。

窃盗罪の初犯で前科を避けるための対策は、以下の記事で解説しています。

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執行猶予がつく可能性は?

執行猶予とは、裁判で拘禁刑や禁錮刑が言い渡されても、その刑の執行を一定期間猶予し、その期間中に再び罪を犯すことなく問題なく過ごせば、言い渡された刑の効力が消滅し、刑務所に行かなくて済むという制度です。窃盗罪においても、この執行猶予が付される可能性はあります。

執行猶予が付されるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、言い渡される刑が「3年以下の拘禁刑または禁錮、または50万円以下の罰金」であること、そして「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、処せられたことがあっても、その執行を終えてから5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」といった条件があります。窃盗罪の場合、法定刑が「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」であるため、裁判官が3年以下の拘禁刑と判断すれば、執行猶予の対象となり得ます。

特に、被害者との示談が成立していること、被疑者自身が深く反省し、再犯防止のための具体的な努力をしていることが、執行猶予付き判決を得る上で非常に重要な要素となります。これらの事情は、裁判官が「被告人には更生の可能性がある」と判断するための強力な材料となるからです。示談交渉や反省の意思を示す活動は、弁護士のサポートを得ながら早期に進めることが、執行猶予を獲得するために不可欠と言えます。

窃盗罪で逮捕された後の流れ【タイムリミットあり】

窃盗罪で逮捕されてしまうと、その後の刑事手続きは非常に厳格な時間的制約の中で進められていきます。この手続きの流れを理解し、各段階で迅速かつ適切な対応をとることが、身柄拘束からの早期解放や、最終的な処分を有利に進めるために不可欠です。

逮捕直後から起訴・不起訴の判断が下されるまでの期間は、法律によって明確なタイムリミットが設けられています。この限られた時間の中で、警察や検察による取り調べが行われ、被疑者の勾留(身柄拘束の継続)が必要かどうかが判断されます。

このセクションでは、逮捕後の手続きがどのように進行し、どのような時間的な制約があるのかを詳しく解説します。特に、弁護活動が決定的に重要となる各段階でのタイムリミットと、それに対する対応策について理解を深めていきましょう。

①逮捕から送検まで(最大72時間)

窃盗罪で警察に逮捕されると、まず警察署で取り調べが開始されます。警察は逮捕から48時間以内に、事件の証拠収集や被疑者の供述調書作成を行い、この間に事件を検察官に送致(送検)するか、あるいは釈放するかを判断します。

事件が検察官に送致されると、検察官は被疑者からさらに事情を聞き、送致を受けてから24時間以内に、裁判所に対して被疑者の身柄拘束の継続(勾留)を請求するか、あるいは釈放するかを決定しなければなりません。

このように、逮捕から検察官による勾留請求の判断が下されるまで、合計で最大72時間という非常に短い時間しかありません。この72時間は、被疑者が社会生活に戻れるかどうかの最初の重要な分岐点であり、弁護士による初期段階でのサポートが非常に重要となります。

②勾留決定と勾留期間(最大20日間)

検察官の勾留請求が裁判所に認められると、被疑者は原則として10日間の勾留が決定され、引き続き警察署の留置施設などで身柄を拘束されます。この勾留期間中に、警察や検察は事件の真相を解明するために、さらに詳細な捜査や取り調べを進めます。

もし10日間の勾留期間内で捜査が完了しない場合、検察官は裁判所に対して最大10日間の勾留延長を請求することができます。この請求が認められると、被疑者の身柄拘束は合計で最大20日間に及びます。この長期間の身柄拘束は、被疑者の身体的・精神的な負担が大きいだけでなく、職場や家族への影響も深刻なものとなります。

この最大20日間の勾留期間は、弁護士が被疑者のために活動できる貴重な時間です。特に、被害者との示談交渉を進め、検察官に起訴しないよう働きかけるためには、この期間をいかに有効に使うかが極めて重要になります。

③検察官による起訴・不起訴の判断

勾留期間が満了するまでに、検察官は被疑者を刑事裁判にかけるかどうかを最終的に判断します。この判断には「起訴」と「不起訴」の2つの主要な選択肢があります。

「起訴」とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけることを決定することです。起訴には、公開の法廷で審理が行われる「公判請求」と、書面審理のみで罰金刑が決まる「略式起訴」があります。いずれの場合も、刑事裁判の対象となり、有罪となれば「前科」がつきます。特に略式起訴であっても前科がつくという点には注意が必要です。

一方、「不起訴」とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかける必要がないと判断し、事件を終了させることです。不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれず、法律上の「前科」もつきません。これは被疑者にとって最も有利な結果であり、弁護活動の重要な目標の一つとなります。

④刑事裁判(起訴された場合)

検察官によって起訴(公判請求)が決定された場合、いよいよ刑事裁判が開かれます。刑事裁判は、まず「冒頭手続」から始まります。ここでは、検察官が起訴状を朗読し、裁判官から被疑者(この段階では被告人となります)に対して黙秘権などの権利が告知されます。その後、被告人や弁護人が起訴内容に対して意見を述べます。

次に「証拠調べ手続」が行われます。ここでは、検察官が提出した証拠品や証人尋問などによって、事件の事実関係が明らかにされます。弁護人も被告人に有利な証拠を提出したり、証人を尋問したりして、被告人の無罪や刑の軽減を主張します。

証拠調べが終わると、「弁論手続」に移ります。検察官は論告で事件に対する意見を述べ、被告人にどのような刑罰が適切かを求める「求刑」を行います。これに対し、弁護人は最終弁論を行い、被告人の情状酌量を訴えます。これらの手続きを経て、最後に裁判官が「判決」を言い渡し、被告人の有罪・無罪と、有罪の場合の刑罰が決定されます。日本の刑事裁判は有罪率が非常に高いため、起訴されることの重みは大きいと言えるでしょう。

前科をつけないために最も重要な「不起訴処分」とは

窃盗事件の被疑者となってしまった場合、最も目指すべき目標は「不起訴処分」の獲得です。不起訴処分とは、検察官が事件を裁判にかけることなく終了させる判断であり、この処分を得られれば刑事裁判を受ける必要がなくなり、何よりも「前科」がつくことを避けられます。前科は、ご自身の将来やご家族、そして社会生活に計り知れない影響を及ぼすため、このセクションでは、なぜ不起訴処分が重要なのか、そしてその獲得がもたらす影響について詳しく解説していきます。

続くパートでは、実際に不起訴処分を目指すための具体的な方法についても深掘りします。示談交渉の重要性や、ご本人の反省を示す態度、そして最も効果的な「早期の弁護士相談」がいかに重要であるかを理解することで、最善の解決へとつながる道筋が見えてくるでしょう。

前科がつくことによるデメリット

もし刑事事件で有罪判決を受け「前科」がついてしまうと、その後の人生においてさまざまな不利益を被る可能性があります。前科は単なる記録として残るだけでなく、特定の職業への就職や海外渡航、そして社会的な信用といった面で、大きな足かせとなる恐れがあるため注意が必要です。

例えば、国家資格を必要とする公務員、弁護士、医師、看護師、警備員などの職業では、前科があることで資格を剥奪されたり、そもそも取得・更新ができなかったりするケースがあります。現在の仕事を続けることが困難になるだけでなく、将来のキャリア形成においても大きな制限を受けることになりかねません。

また、一度前科がついてしまうと、再び罪を犯してしまった場合(再犯)には、刑罰がより重くなる傾向があります。これは、裁判官が量刑を判断する際に、過去の犯罪歴を考慮するためです。海外への渡航に関しても、国によってはビザの申請時に犯罪歴の申告を求められ、入国を拒否される可能性があります。何よりも、前科があるという事実は、ご自身の心に深い傷を残し、ご家族や周囲の人々からの信頼を失うことにもつながりかねません。このような多くのデメリットを避けるためにも、前科をつけないための早期かつ適切な対応が非常に重要となります。

不起訴処分になれば前科はつかない

窃盗事件の被疑者となってしまった方が前科を回避するための、最も確実な方法は「不起訴処分」を獲得することです不起訴処分とは、検察官が被疑者を裁判にかける必要がないと判断し、刑事手続きをそこで終了させることをいいます。この判断が下されれば、刑事裁判は開かれず、有罪・無罪の判断自体が行われないため、法律上の「前科」がつくことはありません。

不起訴処分になった場合でも、警察や検察の捜査対象になったという事実は「前歴」として記録に残りますが、これはあくまで捜査機関内部の情報であり、戸籍や住民票に記載されることはありませんし、一般に公開されることもありません。この点が、刑事裁判で無罪判決を勝ち取るケースとは大きく異なります。

無罪判決は、裁判によって潔白が証明された結果ですが、不起訴処分は裁判自体が行われないため、より早期に事件を解決し、社会生活への影響を最小限に抑えることが可能です。したがって、前科をつけずに事件を解決するには、いかに不起訴処分を目指すかが非常に重要になるのです。

不起訴処分を獲得するための3つの対処法

検察官から起訴猶予による不起訴処分を得るためには、単に反省するだけでなく、被害者との示談交渉、具体的な再犯防止策の提示、そして何よりも早期の弁護士相談が不可欠です。

以下の3つの対処法はそれぞれが独立しているわけではなく、互いに密接に関連し合い、不起訴処分の可能性を大きく高めます。それぞれの段階で適切かつ迅速な行動を取ることが、事件解決への最短ルートとなります。

被害者との示談を成立させる

不起訴処分を目指す上で、被害者との示談成立は最も重要な要素の一つです。示談とは、加害者が被害者に対して謝罪し、盗んでしまった品物の返還や、被害品が返せない場合はその損害賠償を行うことで、被害者の方から許し(宥恕)を得る手続きを指します。被害者の方に被害届を取り下げてもらうことや、宥恕(許し)の意思を記載した示談書は、検察官が起訴・不起訴を判断する際に極めて大きな影響を与えます。

しかし、加害者本人やそのご家族が直接被害者の方と交渉しようとすると、感情的になったり、被害者の方が接触を拒否したりすることが多く、かえって事態を悪化させてしまうケースも少なくありません。被害者の方の心情を尊重し、冷静かつ円滑に交渉を進めるためには、第三者である弁護士が間に入ることが非常に有効です。弁護士が交渉することで、被害者の方の警戒心を和らげ、適切な示談金を設定し、法的に有効な示談書を作成することが可能になります。

示談は、事件の早期解決だけでなく、被疑者の方の反省と誠意を示す重要な手段でもあります。検察官は、示談が成立しているか否かを起訴・不起訴の判断基準として非常に重視します。そのため、逮捕後のできるだけ早い段階で弁護士に依頼し、示談交渉に着手することが、不起訴処分獲得の鍵となります。

窃盗事件の示談金相場と示談交渉の重要性については、以下の記事で解説しています。

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深く反省し、再犯防止策を示す

示談交渉と並行して、ご自身の行動を深く反省し、二度と罪を繰り返さないための具体的な再犯防止策を明確に示すことも極めて重要です。単に口頭で「反省しています」と述べるだけではなく、ご自身の言葉で記した謝罪文や反省文を作成し、これを捜査機関に提出することで、反省の誠意を具体的に伝えることができます。

また、再犯防止策については、ご家族による監督体制を構築する、窃盗行為の背景にストレスや精神的な問題がある場合は、精神科医などの専門医の診断を受け、クレプトマニア(窃盗症)の可能性があれば、治療計画書や通院の証拠を提出するなど、具体的な取り組みを示すことが求められます。

特にクレプトマニアの場合、病気であるということを理解し、専門的な治療を受ける姿勢を示すことは、検察官や裁判官の心証を大きく改善し、起訴猶予による不起訴処分や執行猶予付き判決につながる可能性が高まります。

被害者への謝罪文・反省文の書き方は以下の記事で解説しています。

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早期に弁護士に相談し、弁護活動を依頼する

上記2つの対処法を効果的に、かつ迅速に進めるためには、刑事事件に詳しい弁護士への早期相談が不可欠です。窃盗事件で逮捕されてしまった場合、逮捕から検察官による勾留請求までの最初の72時間は、弁護士としか自由に面会できない重要な時間であり、この期間にいかに適切な対応を取れるかがその後の展開を左右します。

弁護士は、この限られた時間の中で、被疑者の方の取り調べに対する適切な対応方法をアドバイスしたり、警察や検察の捜査状況を確認したりします。また、被疑者の方に代わって速やかに被害者との示談交渉を開始することで、早期の示談成立を目指します。

時間との勝負となる刑事手続きにおいて、弁護士は被疑者の権利を守り、最も有利な結果を導くために不可欠な存在です。弁護士への相談が、不起訴処分獲得への最短ルートであると心に留めておいてください。

窃盗事件の弁護士費用については、以下の記事で解説しています。

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窃盗罪の刑罰に関するよくある質問

窃盗罪に関して抱かれる疑問は多岐にわたります。ここでは、窃盗罪の刑罰や逮捕後の手続き、前科の扱いや時効など、皆様が特に関心をお持ちの点について、Q&A形式で詳しく解説していきます。

Q:窃盗の初犯であれば、実刑判決を回避できますか?

窃盗事件の初犯の場合、多くの場合で実刑判決(刑務所に収容される判決)を回避できる可能性が高いです特に、被害額が比較的小規模な万引きなどのケースで、被害者と示談が成立し、被疑者本人が深く反省の態度を示している場合であれば、不起訴処分、罰金刑、または執行猶予付きの判決となることが一般的です。

しかし、初犯であっても、被害額が著しく高額である場合や、組織的な犯行、犯行態様が悪質(例えば、強盗に近い手口など)であると判断されるケースでは、実刑判決が下される可能性も十分にあります。ご自身のケースがどの程度に該当するのかは、専門家である弁護士に相談し、具体的な状況を評価してもらうことが重要になります。

Q:罰金刑でも前科はつきますか?

はい、罰金刑でも前科はつきます罰金刑は拘禁刑と比較すると刑務所に収容されることはなく、刑罰としては軽い部類に入りますが、刑事裁判で有罪判決を受けた結果であることに変わりはありません。

そのため、法律上の「前科」として記録されることになります。略式起訴によって罰金刑が確定した場合も同様に前科となりますので、前科をつけずに事件を解決したい場合は、罰金刑ではなく不起訴処分を目指す必要があります。

Q:示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?

必ず不起訴になるわけではありませんが、示談が成立すれば不起訴になる可能性は非常に高くなります。示談、特に被害者から許し(宥恕)を得られているという事実は、検察官が起訴・不起訴を判断する上で最も重視する要素の一つです。被害者の被害感情が和らいでいると判断されれば、検察官は「あえて刑事裁判にかける必要はない」と判断し、不起訴処分(特に起訴猶予)とする傾向があります。

しかし、示談が成立していても、犯行の悪質性が極めて高い場合や、過去に同種の犯罪で何度も前科がある場合など、状況によっては起訴される可能性もあります。最終的な判断は、検察官が事件全体の事情を考慮して行います。

Q:窃盗罪の時効は何年ですか?

窃盗罪の公訴時効は「7年」です。公訴時効とは、犯罪行為が終わった時から一定期間が経過すると、検察官がその犯罪について起訴することができなくなる制度を指します。

つまり、窃盗行為があった日から7年間が経過すれば、その窃盗事件で逮捕されたり、刑事裁判にかけられたりすることはありません。ただし、これは犯罪行為が終わった時点からの期間であり、事件が発覚した時点からの期間ではないことに注意が必要です。

まとめ|窃盗罪で前科をつけないためには、一刻も早い弁護士への相談が重要

窃盗罪は、万引きや置き引きなど、私たちの日常生活に潜む身近な犯罪でありながら、刑法上では「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科せられる可能性がある重い罪です。一度逮捕され、有罪となってしまえば、前科がつくことで社会生活に大きな支障をきたし、ご自身だけでなくご家族の将来にも影響が及ぶ可能性があります。

窃盗事件で前科をつけずに解決するためには、警察や検察による捜査の早い段階、特に逮捕直後からの時間的制約がある中で、適切な弁護活動を行うことが極めて重要です。具体的には、被害者の方との示談交渉を速やかに進め、誠意ある反省の意を示しながら再犯防止策を講じることが、不起訴処分を獲得するための鍵となります。

これらの対応は、逮捕されたご本人やご家族だけで行うには、専門的な知識や経験、そして被害者の方との直接交渉という精神的な負担が伴います。そこで頼りになるのが、刑事事件に詳しい弁護士の存在です。弁護士は、取り調べへの適切なアドバイス、被害者の方との示談交渉の代理、勾留阻止や早期釈放に向けた活動、そして検察官や裁判官への有利な情状の主張など、多岐にわたる弁護活動を通じて、不起訴処分や執行猶予付き判決の可能性を最大限に高めます。

もし窃盗事件を起こしてしまい、逮捕の不安や前科への恐れを感じているのであれば、一人で悩みを抱え込まず、一刻も早く刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。早期の弁護士相談こそが、状況を好転させ、日常を取り戻すための最も確実な第一歩となるでしょう。

 

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