借地明渡で知っておきたい重要ポイント!地主・借地権者がすべきことを詳しく解説

最終更新日: 2024年11月14日

借地明渡で知っておきたい重要ポイント!地主・借地権者がすべきことを詳しく解説

  • 賃借人に貸した土地を返してもらいたい。明け渡しを要求する方法が知りたい。
  • 借地明渡には立退料が必要なのだろうか?金額の目安を教えて欲しい。
  • 賃貸人から土地の明け渡しを要求された。弁護士に相談した方がよいのだろうか?

地主が何らかの理由で、賃借人から土地を返還してもらいたい場合もあるでしょう。

ただし、明け渡しを求めるならば、一定の条件を満たしておかなければいけません。

そこで今回は、土地問題の解決に携わってきた専門弁護士が、借地明渡を要求できるケース、明渡の流れ等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 借地明渡を要求するには正当な事由や、賃借人の債務不履行の事実等が必要
  • 借地明渡にかかる費用は、立退料や法的な手続き費用等がある
  • 地主も賃借人も弁護士からアドバイスを受けつつ、交渉を行った方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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借地明渡とは

借地明渡とは、地主(賃貸人)が土地の賃借人に対し、土地の明け渡しを求める意思表示です。

ただし、基本的に地主の都合で明け渡しを要求しても、賃借人は要求を拒否できます。

なぜなら賃借人には借地借家法で借地権が認められているからです。借地権とは、地主から土地を借りる権利です。

賃借人は借りている土地の地代を所有者に払いながら、契約に従って土地を利用できます。

契約の範囲内でなら、賃借人は借地の上に自宅を建て居住できる他、マンションを建築し自己の収入源として活用も可能です。

賃貸借契約期間中は、たとえ地主であっても、みだりに土地の明け渡しは要求できません。

そのため、地主が明け渡しを要求するには、一定の条件を満たす必要があります。

借地明渡ができるケース

地主が借地明渡を要求できるのは、賃貸借契約期間が終了した場合や、賃借人が借地上で問題を起こしたとき等です。

なお、地主の都合による借地明渡は、賃借人の同意があれば認められる可能性もあります。

賃貸借契約の期間満了

地主は賃貸借契約の期間満了により、借地明渡を要求できる場合があります。

借地権に関する契約は次の5種類です。

  • 普通借地権:契約期限は決まっているものの、更新すれば半永久的に土地を賃貸借できる。存続期間は当初30年で、合意による更新で1回目20年、2回目以降10年となる。
  • 定期借地権:住宅用として土地を賃貸借する。契約期間50年以上で更新はしない。
  • 事業用定期借地権:事業用として土地を賃貸借する。契約期間は10年以上50年未満で更新はしない。
  • 一時使用目的の借地権:仮設事務所やプレハブ倉庫等を設置するための、一時的な土地の賃貸借。
  • 建物譲渡特約付借地権:契約終了後、地主が建物を買い取る。契約期間30年以上。

定期借地権や事業用定期借地権、一時使用目的の借地権の場合は、契約期間満了で明け渡しの要求が可能です。

ただし、普通借地権は地主に正当な事由がなければ、賃借人は明け渡しを拒否できます。

建物譲渡特約付借地権の場合は、地主の建物買取が必要な他、賃借人との借家関係は継続します。

合意による契約解除

「貸している土地を自分が利用したい。」「借地を再開発したいから返して欲しい。」と地主の都合で明け渡しを要求し、賃借人が同意した場合、契約解除が可能です。

ただし、口約束で契約解除に合意しても、後日、賃借人が土地に居座り続けたり、「そんな約束はした覚えがない。」と明け渡しを拒否したりするおそれもあります。

そこで、契約解除に双方が合意したら合意書を作成し、取り決めた内容を記載しましょう。

  • 借地明渡日
  • 明け渡し方法:建物を取り壊し更地にするか、現状のままにするか
  • 地主が建物を買い取るか、買い取らないか
  • 地代を前払いしている場合の返還方法
  • 敷金、保証金等を預け入れていた場合の返還額と返還方法
  • 立退料の金額、支払時期 等

賃借人の債務不履行による契約解除

賃貸借契約を継続するにあたって、賃借人が問題のある借地利用をしていた場合、契約違反を理由に解除ができます。また、明け渡しを要求するときに立退料も不要です。

次のような債務不履行が該当します。

  • 賃借人の地代の支払いが延滞し、不払いが継続している
  • 住居建築に限定し土地を貸したが、賃借人側が突然商業ビルを建て始めた
  • 賃借人が無断で第三者に借地権を売却した、勝手に借地の譲渡や転貸を行っている

賃借人が毎月地代の支払いをしていても、契約に従った利用を行わないときは、契約解除が可能です。

正当な事由

地主側に正当な事由があれば、借地明渡の要求は可能です。

地主の契約更新拒絶、借地明渡に必要となる正当な事由は次の4つです。

  • 土地利用の必要性:地主の利用と、賃借人の借地利用の継続、どちらの重要度が高いかを検討
  • 借地に関する諸事情:賃借人が契約に従った土地利用を行っているか等
  • 土地利用の状況:賃借人が借地を利用しているか(放置されていないか)、建物の築年数や構造、用途等
  • 借地明渡を求めたときの財産上の給付:立退料の金額は十分か、代替不動産の提供は可能か等

正当な事由の有無は最終的には裁判で判断されます。

たとえ地主に立退料を支払う準備があっても、賃借人が拒否し、賃借人の借地利用の必要性が高いと判断されれば、借地明渡は認められにくくなります。

借地明渡の流れ

地主が借地明渡を進めていく場合、まず正当な事由の有無はもちろん、賃貸借契約の内容をよく確認する必要があります。

賃貸借契約に従い、賃借人と交渉しつつ手続きを進めていきましょう。交渉がうまくいかない場合は、裁判所への訴訟提起・強制執行(強制退去)で解決を図ります。

借地契約終了

賃貸借契約(借地契約)終了のタイミングを見計らい、賃借人に借地明渡を要求します。

定期借地権や事業用定期借地権、一時使用目的の借地権の場合、当然に契約は終了するので、賃借人は建物を撤去し更地にしなければいけません。

普通借地権の場合は、賃借人と話し合いたい旨を伝え、自主的な明け渡しを促していきます。

また、話し合いが決裂し裁判所に明渡請求訴訟を提起するとき、賃借人が妨害工作を行うリスクも想定しておきましょう。

たとえば、借地上の建物居住者・建物所有者を頻繁に変更する工作が該当します。

明渡請求訴訟の提起後に、賃借人による妨害工作が行われた場合、その都度、被告を変更しなければいけません。これでは、明渡請求訴訟がいつまで経っても進まなくなります。

妨害工作を防ぐ措置として、事前に裁判所へ「占有移転禁止・処分禁止の仮処分」を申し立てておきましょう。

仮処分が認められれば、建物居住者・建物所有者の変更は禁止されるので、安心して賃借人との交渉を開始できます。

明渡の交渉

地主は賃借人と借地明渡の交渉を開始します。次の明渡内容・条件を調整し、合意書を作成しましょう。

  • 借地明渡日、明け渡し方法
  • 正当な事由
  • 地代、敷金、保証金の返還等
  • 明渡条件:立退料、代替不動産(土地)の提供等

事前に地主が占有移転禁止・処分禁止の仮処分を行っていれば、賃借人側に大きなプレッシャーを与える効果があります。

「所有者は本気だ。明け渡しを真剣に考えよう。」と賃借人が交渉に前向きとなり、借地明渡に同意する可能性があります。

明渡請求訴訟

賃借人と明渡の交渉が決裂すれば、土地の所在地を管轄する裁判所に、明渡請求訴訟を提起しましょう。

裁判では原告(地主)と被告(賃借人)に分かれ、互いに主張や証拠提出を行わなければいけません。裁判所は慎重に審理を進め、原告の主張を認めるか否かについて判断します。

原告の主張が認められた場合、被告に借地明渡を命じる判決が下ります(原告勝訴)。

判決を受けても、被告である賃借人が明け渡しに応じない場合、地主は裁判所に強制執行の申立てが可能です。

強制執行

地主の強制執行の申立てが裁判所から認められた場合、裁判所は賃借人へ借地明渡に応じるよう催告書を送付します。

催告書に明記された期日を過ぎても居座り続けた場合、裁判所の執行官による強制執行が開始されます。

強制執行の手順は次の通りです。

  1. 1.執行官が建物に居座る人たちを物理的に排除
  2. 2.専門業者が屋内の家具・備品等を強制的に搬出(家具・備品等は倉庫業者に保管)
  3. 3.地主が建物を解体する

賃借人等が強制執行に抵抗した場合は、執行官が警察へ連絡をとる等して、柔軟に対応していきます。

借地明渡にかかる費用

借地明渡のときは、立退料や法的な手続き費用、移転費用と様々な費用がかかってしまいます。

明け渡しを求める借地の規模・使用用途にもよりますが、費用総額は数千万円〜数億円に上る可能性もあるでしょう。

立退料

賃借人に借地明渡を要求する場合、基本的に立退料を支払う必要があります。

ただし、借地明渡の立退料に決まった計算方法や目安はなく、ケースバイケースで金額の算定を必要とします。

立退料の金額は「地代(賃料)の〇か月分」と計算されるのが一般的です。たとえば毎月の地代が100万円で、6か月分の支払いに双方が合意した場合、地主は600万円を支払います。

借地上の建物が事業用の場合は、営業に関する補償も検討しなければいけません。

もしも賃貸借契約書に、借地明渡を要求した場合の立退料が記載されていれば、記載された通りの金額を支払います。

なお、賃借人に債務不履行があった場合は、立退料の支払いは不要です。

法的な手続き費用

借地明渡請求訴訟を行うとき、裁判所に費用の支払いが必要です。また、弁護士に依頼するときの報酬費用も考慮しなければいけません。

費用の内訳・目安は次の通りです。

  • 郵便切手:被告1人につき約6,000円程度
  • 印紙:固定資産税評価額の1/2の金額
  • 弁護士費用:60万円~120万円(法律事務所による)

費用総額は100万円以上となる可能性があります。

移転にかかる費用

基本的に賃借人の引越し費用や、建物の解体費用も地主が負担しなければいけません。

賃借人の引越し費用は建物の使用目的にもよりますが、10万円〜数十万円程度が目安です。

一方、建物の解体費用は建物の広さや、木造・軽量鉄骨造か鉄骨造・鉄筋コンクリート造かでも変わってきます。延床面積1㎡あたり1.5万円〜5万円程度です。

100㎡の平屋建て住宅の場合は、150万円〜500万円となります。借地上の建物が高層ビルの場合、数千万円以上の解体費用がかかるときもあるでしょう。

借地明渡請求されたときにすべきこと

あなたが地主から借地明渡を要求された賃借人ならば、慌てずに賃貸借契約書の確認が必要です。

借地明渡があまりに理不尽と感じたり、交渉に不安を感じたりしたら弁護士へ相談しましょう。

請求内容の確認

賃貸借契約満了に伴い、地主から借地明渡を通知される場合があります。

通知書の内容を確認し、賃借人側からみて同意できるかどうかを判断しましょう。

地主の借地明渡の条件が納得できるものであったり、借地明渡日までに無理なく明け渡しができたりするなら、契約解除・明け渡しに合意しても構いません。

契約書の確認

賃貸借契約書に記載されている内容を確認しましょう。

地主と取り決めた賃貸借契約期間が満了していないならば、借地明渡を拒否できます。

また、普通借地権ならば契約を更新したい旨や、借地明渡に同意するなら条件の検討を開始しましょう。

一方、定期借地権や事業用定期借地権、一時使用目的の借地契約だった場合、明け渡す準備を行います。

ただし、建物の取り壊し費用が足りない場合や借地明渡日までに退去が難しい場合は、地主と交渉して、取り壊しの免除や明渡日を延期しても構いません。

弁護士への相談

地主の借地明渡に納得がいかない、自分だけで交渉は難しいと感じたら、不動産問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

賃借人の状況や希望を聴いたうえで、次のようなアドバイスを提供します。

  • 借地契約更新が可能かどうか
  • 地主との交渉ポイント
  • 借地明渡を拒否した場合のリスク
  • 賃借人の事情に合わせた立退料の算定 等

弁護士に代理人を依頼すれば、あなたの代わりに地主側との交渉も可能です。

借地明渡をスムーズに進めるために地主がすべきこと

地主(地主)は、土地を所有しているからといって、強引に借地明渡を要求すると、深刻な事態に発展する可能性もあります。

交渉は賃借人の事情も十分に考慮したうえで、冷静に進める必要があります。

契約内容の確認

地主の場合も、まずは賃貸借契約書を確認しましょう。

契約内容に従い、賃借人との交渉や借地明渡の準備を開始します。借地明渡のとき、賃借人の同意を要する場合は、同意を得られそうな条件もよく考えておきます。

また、借地明渡に必要な費用を算定し、重い負担とならないかを検討しておきましょう。

円満な話し合い

賃貸借契約を更新しない旨について通知し、賃借人と交渉を開始します。

地主の提案した明渡に関する条件(立退料の金額、代わりの土地の提供等)を、必ず賃借人が受け入れるとは限りません。

賃借人に断られても粘り強く交渉を継続し、お互いの条件を調整しながら、円満な解決を図りましょう。

立退料提案の準備

地主は賃借人に提案する立退料の金額を決定します。

賃借人からみてあまりに低い金額だと、話し合いは成功しない可能性が高くなります。次のような費用の支払いも検討しましょう。

・立退料は「地代〇か月分」だけでなく、引越し費用や建物の取り壊し費用の支払いも加える
・借地上の建物が店舗の場合は、営業に関する補償も上乗せする 等

弁護士への相談

賃借人が借地明渡に応じるか不安だ、賃借人が抵抗するかもしれないと感じたら、不動産問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。

地主の事情を聴いたうえで、次のようなアドバイスを提供します。

  • 借地明渡が正当な事由に該当するかどうか
  • 占有移転禁止・処分禁止の仮処分の必要性
  • 賃借人との交渉ポイント
  • 交渉が決裂した場合の対応方法
  • 弁護士を代理人にたてる有効性 等

弁護士に代理人を依頼すれば、あなたの代わりに賃借人側との交渉も可能です。

借地明渡なら春田法律事務所にご相談ください

今回は不動産問題の解決に携わってきた専門弁護士が、借地明渡の手順や交渉のポイント等を詳しく解説しました。

地主は賃借人との交渉がうまくいかなくとも、苛立って借地上の建物を取り壊すような行動は決して行ってはいけません。法律に則り、裁判による解決を図りましょう。

春田法律事務所では初回相談を無料で受け付けています。まずは気軽に弁護士と相談し、有益なアドバイスを受けてみましょう。

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