脅迫罪で逮捕されたらどうなる?その後の流れと逮捕回避の可能性を徹底解説
最終更新日: 2023年07月12日
- 脅迫罪で逮捕される可能性はあるのか?
- 脅迫罪で逮捕された後の流れはどのようなものか?
- 脅迫罪で示談の可能性はあるのか?
軽い気持ちで発した言葉が脅迫罪に問われて逮捕された場合、このあとどうなるのかと不安な気持ちになっている人もいることでしょう。そして被害者に対しどのように対処すればよいのかと悩んでいる被疑者本人やその家族もいるかもしれません。
そこで今回は、刑事事件に精通している専門の弁護士が、脅迫罪で家族が逮捕されたらどうなるのか・逮捕後の流れ・示談の捜査や裁判への影響の度合いなどについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 脅しが人に向けられれば脅迫罪、財物の交付や財産上の利益に向けられれば恐喝罪
- 脅迫罪は犯した6割近くの者が逮捕されるため弁護士に依頼する方がよい
- まずは脅迫罪での対応実績が豊富な弁護士に相談することが大切
逮捕の可能性がある「脅迫」とは?
逮捕の可能性がある「脅迫」について3つ解説します。
- 脅迫罪とは?
- 脅迫罪が成立する「害悪の告知」とは?
- 恐喝罪との違いは?
1つずつ解説します。
脅迫罪とは?
1つ目は、脅迫罪についてです。
脅迫罪は、人に対し、その者(1項)又はその親族(2項)の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して脅迫することによって成立します(刑法222条)。
「脅迫」とは、人を畏怖させるに足りる害悪を告知することをいいます。害悪は、告知した本人だけではなく、告知者が影響を及ぼす第三者によって加える場合も対象になります。
人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。また、脅迫罪の未遂は処罰されません。
脅迫罪が成立する「害悪の告知」とは?
2つ目は、脅迫罪が成立する「害悪の告知」についてです。
脅迫としての害悪の告知とは、他人を畏怖させるに足りる程度のものでなければなりません。
脅迫罪は、加害の対象を相手方本人又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に限定しています(刑法222条)。
告知した害悪が他人を畏怖させるに足りる程度のものと認められるかどうかは、告知内容と周辺の客観的状況によって判断されるものとされています。
告知の方法には制限がなく、直接口頭で告げるだけではなく、たとえば書面や録音テープを送付したり、挙動によって加害を暗示する場合も対象となります。
恐喝罪との違いは?
3つ目は、恐喝罪との違いについてです。
人を脅すという点では脅迫罪も恐喝罪も共通しています。
しかし、その脅しが、人に向けられれば脅迫罪になり、財物の交付や財産上の利益に向けられれば恐喝罪になるという違いがあります。
人を畏怖させるような害悪の告知は、脅迫罪と恐喝罪で違いがあり、恐喝罪では脅迫罪におけるそれとは異なり、必ずしも人の生命・身体・自由・名誉・財産に関するものに限らず、また、相手又はその親族以外の者、たとえば、友人・縁故者等に属するものでもよいのです。
脅迫罪と恐喝罪には、法定刑に大きな違いがあります。また、未遂規定が脅迫罪にはなく、恐喝罪にはあるという違いもあります。公訴時効でも違いがあり、脅迫罪は3年、恐喝罪は7年となっています。
脅迫罪で逮捕される可能性は?
令和4年版の検察統計年報にある「罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員ー自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除くー」の統計表(令和3年の統計)によると、脅迫罪の場合、総数2,343人のうち逮捕された者は1,384人(59.1%)、逮捕されなかった者は959人(40.9%)となっています。
あくまでも脅迫罪の態様・内容によるとはいえ、脅迫罪を犯した6割近くの者が逮捕されているのです。したがって、脅迫罪で逮捕される可能性はあるといえましょう。
出典:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員 -自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く-|検察統計
脅迫罪での逮捕は回避できるのか?
脅迫罪での逮捕は回避できるのかについて解説します。
脅迫罪は、人を脅迫する行為を行った時点で犯罪として成立します。脅迫となる発言を撤回しても、犯罪がなかったことになるわけではありません。
しかし、脅迫となる発言を可能な限り速やかに撤回し、被害者に謝罪することは、犯罪の成否は別にしても、量刑を判断する材料として意味があるといえます。
このような被疑者の対応によって、被疑者による逃亡や罪証隠滅のおそれが軽減されることで、逮捕の可能性を低くできます。
被疑者が逮捕を回避するには、被害者が被害申告をする前に被害者との示談交渉が必要になるため、早期に弁護士に相談することが望ましいといえます。弁護士の力添えにより被害者と示談が成立すれば、逮捕は回避できる可能性があります。
脅迫罪で逮捕された後の流れ
脅迫罪で逮捕された後の流れについて4つ解説します。
- 警察での取調べ
- 送検
- 勾留
- 起訴・不起訴処分
1つずつ解説します。
警察での取調べ
1つ目は、警察での取調べについてです。
警察官は、逮捕した被疑者に対して「直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え」、弁解録取書を作成します。
弁解録取の手続きは、取調べとは異なります。しかし、警察官は、弁解録取とは別に、被疑者の逮捕中も、被疑者に対する取調べを行うことができます。取調べを行った場合には、被疑者供述調書を作成します。
送検
2つ目は、送検についてです。
警察官は、被疑者を逮捕してから48時間以内に、被疑者を釈放するか、身柄を検察官に送る手続きをしなければなりません。被疑者の身柄を検察官に送る手続きを送検と呼んでいます。
被疑者の身柄が検察官に送られた場合には、検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、裁判官に勾留請求をするか、被疑者を釈放するか、いずれかの判断をしなければなりません。
勾留
3つ目は、勾留についてです。
検察官が、逮捕に引き続き、捜査を進める上で被疑者の身柄の拘束が必要であると判断した場合には、裁判官に勾留請求をします。
裁判官は、被疑者に対して勾留質問を行って、その当否を審査します。裁判官は、被疑者が罪を犯したことが疑われ、かつ、住居不定や罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあり、勾留の必要性があるときには、10日間の拘束を認める勾留決定をします。
被疑者の勾留期間は10日間ですが、やむを得ない事情がある場合は、検察官の請求により、裁判官が更に10日間以内で勾留期間の延長を認めることもあります。
起訴・不起訴処分
4つ目は、起訴・不起訴処分についてです。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内、あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、起訴・不起訴の判断をしなければなりません。
検察官は、受理した脅迫事件の被疑事実について、的確な証拠に基づき有罪である見込みが高い場合には、原則として起訴することになります。
脅迫罪について起訴する場合、正式な公判審理を請求する公判請求と、書面審理で罰金を科す略式命令請求があります。
争いのない簡易明白な脅迫事件については、公訴提起と同時に即決裁判手続きを申し立てることもできます。
一方で、検察官は、起訴しない場合には被疑事実について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、不起訴の処分をします。
脅迫罪での逮捕で弁護士ができること
脅迫罪での逮捕で弁護士ができることについて4つ解説します。
- 逮捕回避の可能性を高めてくれる
- 逮捕されても早期釈放が期待できる
- 不起訴の獲得が可能になる
- 減刑が期待できる
1つずつ解説します。
逮捕回避の可能性を高めてくれる
1つ目は、逮捕回避の可能性を高めてくれることについてです。
脅迫罪は、被害者本人やその家族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して脅迫するわけですから、何よりも、被害者本人の畏怖心が緩和される必要があります。
そのために最も重要になるのは、被害者との間で示談が成立することです。そして、被害者が「加害者を許すという」宥恕文言付きの示談ができれば、逮捕されない可能性が高まります。
このような示談は、多くの事件を解決してきた弁護士であれば期待できるといえます。その結果、被害者の被害感情の緩和が逮捕回避の可能性を高めてくれることにつながります。
逮捕されても早期釈放が期待できる
2つ目は、逮捕されても早期釈放が期待できることについてです。
逮捕後の初動が早い弁護士であれば、すぐに接見に来てくれ、前後策を相談できます。その上で、弁護士は、被疑者から事情をよく聴き取り、被害者との連絡・示談を迅速に進めてくれます。
その結果を踏まえ、弁護士は警察官に面談を求め、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示して、被疑者を早期に釈放するように働きかけるができます。
不起訴の獲得が可能になる
3つ目は、不起訴の獲得が可能になることについてです。
自首は、捜査機関に対し自ら自分の犯罪事実を申し出て、その処分をまかせることです。誰しも、自首後の逮捕は覚悟しているとはいえ、捜査機関に一人で出頭することには勇気がいるものです。その上、自首後の取調べの対応や、残された家族のことが気がかりで、自首することにためらうこともあるでしょう。
そのような場合に、弁護士に依頼すれば、弁護士は、本人の自首に同行することも可能です。
検察官から見れば、自首は反省悔悟と更生の意欲の表れと評価できるため、同種の前科前歴や不起訴処分を不相当とする事情がない限り、起訴猶予の不起訴処分となる可能性が高くなります。
減刑が期待できる
4つ目は、減刑が期待できることについてです。
令和4年版の検察統計年報にある「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員ー自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除くー」の統計表(令和3年の統計)によると、検察庁が脅迫罪で送致を受け、起訴不起訴とした者の総数2,203人のうち、起訴した者は824人(37.4%)、その内訳は公判請求の者が400人、略式命令請求の者が424人であり、不起訴とした者は1,375人(62.4%)となっています。
ちなみに、不起訴とした者のうち、起訴猶予で不起訴とした者の割合は66.4%、それ以外の理由で不起訴とした者の割合は33.6%です。
減刑に対して最も影響のある要因として考えられるのが、被害者との示談、慰謝の措置です。
被害者に対する誠意ある謝罪と示談、慰謝の措置を講ずることによって、早く示談を成立させられる可能性があります。
また慰謝の措置ができれば不起訴処分、もし起訴されたとしても略式命令請求になる可能性もあり、罰金刑にできない事情があって公判請求となっても、執行猶予付きの判決となる可能性が高くなります。
まとめ
今回は、刑事事件に精通している専門の弁護士が、脅迫罪で家族が逮捕されたらどうなるのか・逮捕後の流れ・示談の捜査や裁判への影響の度合いなどについて解説しました。
被害者は、脅迫によって畏怖しているのはもちろん、精神的な打撃を負うこともあります。そのような中、被害者の気持ちを緩和するためには、被害者に対する謝罪を行うとともに慰謝料の支払いを含めた対応が必要です。
しかし、被疑者本人やその家族が被害者と直接示談交渉をすることには限界があるため、弁護士に頼ることが最善の方法です。
脅迫罪で逮捕された被疑者やその家族の方は、被疑者が早期に釈放されたり、不起訴処分、罰金刑あるいは執行猶予付きの判決の可能性もありますので、ぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。