リベンジポルノに関する裁判での争点とは?流れ・問われる罪も解説
最終更新日: 2023年08月31日
- リベンジポルノで逮捕・起訴されてしまった、今後はどうなるのだろう
- リベンジポルノ事件の刑事裁判はどのように進む
- リベンジポルノ事件の刑事裁判で、弁護士にどのような弁護が期待できる
リベンジポルノとは、元交際相手等の性的な画像や動画(私事性的画像記録)の俗称です。そのような画像を、インターネット上に掲載し、不特定多数の人が閲覧できる状態にする行為がいわゆるリベンジポルノ罪として 処罰されるのです。
リベンジポルノ事件で検察から起訴され、刑事裁判で有罪となれば、最長3年の懲役刑を受ける可能性があります。
刑事裁判が開かれることになった場合は、執行猶予付き判決・減刑にとどめられるよう、弁護士とよく相談して適切な対応・主張を行っていく必要があります。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、リベンジポルノ事件の裁判の流れ、弁護士に期待できる活動等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- リベンジポルノ事件も通常の刑事裁判手続で審理が進められる
- 裁判では、性的な画像を不特定または多数の人に提供したのか、公然と陳列したかが争点となる
- 弁護士は、執行猶予付き判決・減刑になるよう、必要な弁護活動を行う
リベンジポルノの裁判の流れ
リベンジポルノ事件でも、他の刑事事件と同様、基本的に公開の法廷で審理が進められます。裁判では、検察・被告人双方から、証拠の提示、主張等が行われます。
冒頭手続
刑事裁判が開かれると、まず裁判官は被告人の氏名・生年月日・住所・本籍・職業等を尋ね、本人確認をします(人定質問)。
事実と相違なければ、その旨をきちんと答えましょう。正直に答えなければ、裁判官の心証が悪くなります。
次いで、検察官が起訴状を朗読して、裁判の審理対象を明示します。被告人側は、罪状認否で、起訴された罪を認めるか、それとも争うかを明らかにします。
証拠調べ手続
冒頭陳述が行われ、検察官が証拠をもとにして、証明しようとする事実を明らかにします。
刑事裁判では検察官が犯罪の立証を行わなければなりません。そのため、検察官が証拠の取調べを請求します。
証拠調べでは裁判所が被告人側の意見も聴いた上で、個々の証拠について採否を決定し、採用した証拠(証人、証拠書類、証拠物)について、取調べを進めます。
検察官の立証に続いて、被告人側の立証があります。裁判所は検察官の立証のときと同様に、被告人側が取調べ請求した証拠について、採否を判断し、採用した証拠について取り調べます。その場合、被告人質問も可能です。
弁論手続
証拠調べ手続後、まず検察官が、論告でリベンジポルノの事実関係・法律的問題等の意見を述べ、求刑で被告人に科すべき刑罰について主張を述べます。
次に弁論が開始され、弁護人(弁護士)がリベンジポルノの事実関係・法律的問題等の意見を述べます。
被告人は最終陳述で自分の意見を主張することも可能です。最終陳述をもって法廷での審理は終了します(弁論終結、結審)。
判決の宣告
裁判所は、慎重な審理を経て被告人へ判決を言い渡します。 裁判官が、被告人は「リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反を犯したことは間違いない」と判断すれば、有罪判決が言い渡されます。
有罪となったからといって、必ずしも実刑判決になるとは限りません。様々な事情を考慮し、被告人に執行猶予付き判決が言い渡される可能性もあります。
一方、被告人が同法違反を犯したとの確証がない場合は、無罪判決が言い渡されるでしょう。
リベンジポルノの裁判で問われる罪
リベンジポルノ事件では、「リベンジポルノ防止法」に違反したか否かが争われます。
同法による刑事罰は、「公表罪」と「提供罪」の2つがあり、それぞれ次のような懲役刑または罰金刑に問われます。
出典:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 | e-Gov法令検索
三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
リベンジポルノ公表罪に該当する場合は、3年以下の懲役刑か、50万以下の罰金に処される可能性があります(リベンジポルノ防止法第3条第1項)。
公表罪は、第三者が撮影対象者を特定できる方法で、私事性的画像記録を不特定多数の者に提供、または公然と陳列した罪です。
一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金
リベンジポルノ提供罪に該当する場合は、1年以下の懲役刑か、30万以下の罰金に処される可能性があります(同法第3条第3項)。
提供罪は、インターネット等を使って公表させる目的で、私事性的画像記録を提供する罪です。
リベンジポルノの裁判の主な争点
リベンジポルノ防止法違反となる行為は、単に性的な画像を保管することではなく、その画像の投稿や提供、公表等を行う場合です。
裁判では、主に次のような点が争われています。
不特定または多数の人に提供したか
保管している性的な画像を、ホームページ等で多くの訪問者が閲覧可能な状態にしていれば、もちろんリベンジポルノ防止法違反です。この場合、閲覧数が多い・少ないは関係ありません。
また、販売目的で不特定多数者に閲覧できる状態にした場合も、同法違反にあたるとしてで有罪になった事件があります。
事件の内容は次の通りです。
- 被告人は男女共用トイレにカメラを設置
- 自分とは面識のない女性の性器・用を足す姿等を動画撮影
- 撮影した動画をインターネット上に投稿・販売
リベンジポルノ防止法では、不特定多数者への提供または公表を禁じています。したがって 、「リベンジ(復讐)ポルノ」と俗称されていますが、元交際相手への報復目的の有無は関係ありません。法律の定める公表か提供に該当すれば法律違反に問われます。
公然と陳列されたか
性的な画像を不特定または多数の人達が認識できる状態に置いていたか否かも、主な争点です。
性的な画像であっても、被害者だけに公開用URLを送っただけでは、「公然と陳列」に当たらないとして、一部無罪を言い渡した判決があります。
事件の内容は次の通りです。
- 被告人はインターネット上のストレージサービス内に、被害者の裸体や性器等の撮影動画をデータ保存
- 被告人は公開設定をしてその公開用URLを作成・所持
- 被害者だけに公開用URLを送付
このケースでは、公開用URLを送付した相手は被害者だけで、不特定または多数人が公開用URLやデータを認識し得る状況になかったと、判示しています。
リベンジポルノの裁判で弁護士ができること
検察官によって起訴され刑事裁判にまで進んでしまった場合、無罪判決を得ることができなければ前科が付いてしまいます。また、懲役3年の実刑判決が下り、刑務所へ収容され刑に服する可能性もあるでしょう。
日本の刑事事件では起訴されると、99%の確率で有罪判決が下されるといわれています。
しかし、弁護士は次のように公判廷で主張し、執行猶予付き判決や減刑になるよう最大限の弁護活動をします。
- 被告人は真摯に反省し、被害者に謝罪もしている
- 被害者の性的な画像はすべて消去した
- 初犯である
- 捜査へ全面的に協力している
裁判所は上記の事情を考慮し、執行猶予付き判決を言い渡す可能性もあります。 執行猶予付き判決であれば、被告人は執行猶予期間中(1年〜5年)、刑務所に入ることなく、通常の社会生活が可能です。
執行猶予期間を問題なく過ごせば、裁判所から言い渡された刑の効力自体が無効となり、再び同罪で問われることはありません。
まとめ
今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、リベンジポルノ事件の裁判の流れ、裁判で弁護士ができる活動等について詳しく解説しました。
リベンジポルノ事件は親告罪です。被害者と示談が成立し、被害者が告訴を取り下げれば罪に問われません。
しかし、示談に応じるかどうかは被害者次第であり、示談が成立せず、検察官によって起訴され刑事裁判となるケースもあります。
弁護士は仮に裁判になっても、執行猶予付き判決や減刑のための弁護活動を懸命に続けます。被告人になったと諦めずに、弁護士としっかり相談し協力することが大切です。
リベンジポルノ事件で逮捕されたら、速やかに弁護士と相談し、今後の対応をよく検討しましょう。