削除依頼とは何か?方法・注意点・成功ポイントを解説
最終更新日: 2024年01月08日
- インターネット掲示板での悪意のある投稿を削除したい。
- 削除依頼の方法にはどのようなものがあるのだろう?
- 削除依頼を成功させるポイントを知りたい。
インターネットの普及で、インターネット掲示板やブログ、SNS、口コミサイトで自分の意見を自由に投稿できる機会が増えました。
しかし、特定の個人や企業を誹謗中傷する投稿も激増し、社会問題化しています。
掲示板等で誹謗中傷を受けた個人や企業は、迅速に悪意の書き込みを削除してもらいたいものです。
そこで今回は、インターネットに関する法的トラブルに対応してきた専門弁護士が、削除依頼の方法や削除依頼の注意点等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 削除依頼の方法は、誹謗中傷等を受けた本人が自分で申請するか、弁護士に依頼する
- 削除依頼は明確な証拠を取得し、サイト等の規約に則った方法で手続きを進める必要がある
- 弁護士のサポートを受けて進めた方が迅速に悪意ある書き込みを削除できる可能性が高い
削除依頼とは
インターネット掲示板やブログ、SNS、口コミサイトに自分または自社の誹謗中傷等が記載されていた場合、これらのサービスを運営する管理者側に削除依頼ができます。
投稿した本人が任意で削除できる場合は多いものの、被害を受けた他人・企業は投稿された内容を自由に削除できません。
そのため、サイト等に設置されている「削除依頼フォーム」や、管理者側のメールアドレス等に問い合わせ削除を要求します。
この場合、各サイト等の規約に従い手続きを進める必要があります。
削除依頼の方法
削除依頼をする場合、被害者本人(誹謗中傷等を受けた者)の申請または弁護士に任せる方法があります。裁判所へ投稿の削除に関する申し立ても可能です。
フォームから依頼
インターネット掲示板やブログ、サイト等に設置されている「削除依頼フォーム」から、依頼が可能です。
また、サイト等で指定されたボタンをクリックするとメールソフトが立ち上がり、削除依頼が送信できるところもあります。
これらの方法ならば削除依頼に関する費用はかかりません。早ければ数日で悪意のある投稿を削除する管理者もいます。
ただし、各サイトの管理者側によって対応が異なり、悪意のある投稿の削除がなされないばかりか、依頼した人への連絡すら行われない可能性があります。
数日経っても、悪意のある投稿が削除されない場合、別の方法で対応した方がよいでしょう。
弁護士を通じた依頼
被害者本人の代理人として、弁護士に削除依頼を任せる方法があります。
削除依頼の方法は被害者本人の申請と変わりません。しかし、弁護士が削除依頼をすると大きなプレッシャーを管理者側に与えられます。
それでも管理者側が対応しない場合、送信防止措置依頼や裁判所に申立て削除のための手続きを進めていきます。
送信防止措置依頼
送信防止措置依頼はサイト管理者やプロバイダへ、侵害情報の通知という形で書面を送付し、削除請求をする方法です。
依頼書には、侵害された権利(例:名誉毀損や肖像権等)、権利侵害された理由を明記する必要があります。
被害者本人が送信防止措置依頼をしても構いません。しかし、法律的な知識が必要となるため、弁護士に送信防止措置依頼を任せた方が手続きはスムーズに進みます。
仮処分の申立て
サイト管理者が誹謗中傷等の投稿をなかなか削除しないとき、被害者は裁判所に投稿記事削除仮処分命令の申し立てが可能です(民事保全法第23条第2項)。
被害者の申立てが認められれば、裁判所はサイト管理者に投稿記事削除を命じます。
命令を受けたサイト管理者は、正式な裁判を経なくても削除に応じるケースが多く、結果的に削除させる目的が達成できます。
ただし、仮処分申立てから削除命令が下されるまで、基本的に1〜2か月程度要するため注意しましょう。
また、裁判手続きのとき、被害者の主張や権利侵害の証拠の収集、提出が求められます。そこで、弁護士をたてて対応すればスムーズに権利侵害の主張・立証が可能です。
削除依頼の注意点
削除依頼を行うときは5つの注意点について把握しておく必要があります。
- 削除依頼の方法
- 詳細情報の提示
- 法律の知識
- 炎上の危険性
- 削除できないリスク
それぞれの注意点について説明します。
方法が大切
削除依頼をする場合は、サイト管理者の指定した方法(例:削除依頼フォームからの依頼等)に従い申請する必要があります。
たとえばサイト内で「削除依頼フォームからのみ依頼を受け付ける」と明記されているのに、運営会社のメールや電話から依頼をした場合、削除されない可能性は高いです。
誹謗中傷等が投稿されているサイトや掲示板、ブログ、SNSでは、「Q&A」で削除依頼の方法が明記されている場合もあるので、慌てずに手順を確認してから申請しましょう。
詳細情報が必要
サイト管理者が削除の依頼に応じるかどうかは、誹謗中傷等を受けたとする証拠の提示も必要です。
削除を依頼するときは、権利侵害の内容・番号、投稿日時、投稿されたスレッドやブログSNS等の名称・URLをスクリーンショットで撮影し、忘れずに証拠の保管を行いましょう。
法律の知識が必要
削除依頼フォームや管理者への問い合わせメールで依頼が可能ならば、法律の知識はあまり必要ありません。
しかし、送信防止措置依頼や裁判所への仮処分命令の申し立てを行う場合、一定の法律の知識が求められます。
必要な書類の収集・作成に手間取っていては、思うように手続きが進まなくなるでしょう。
被害者本人だけで対応しようとはせず、法律の専門家である弁護士に代理を依頼し、手続きを任せればスムーズに進みます。
炎上する可能性
削除依頼により管理者が悪意のある投稿を削除しても、今度は投稿者(発信者)が激高し、更に投稿サイト等で被害者を攻撃する投稿が行われるおそれもあります。
このようなリスクを避けるため、削除依頼だけではなく投稿者を特定し、法的措置をとる方法について検討してみましょう。
発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、サイト管理者や投稿者(発信者)が利用するプロバイダ(例:NTT等)側へ、投稿者に関する情報開示を求める手続きです(プロバイダ責任制限法第5条)。
発信者情報開示請求が認められれば、悪質な投稿をした者の氏名・住所等の特定ができます。
請求手順は次の通りです。
- 証拠を保管する
- サイト管理者に発信者情報開示請求書を送付(任意開示)
- サイト管理者からIPアドレスを教えてもらい、プロバイダを特定する
(任意開示を拒否された場合、裁判所に仮処分を申立て) - 投稿者が利用したプロバイダへ発信者情報開示請求訴訟を提起
- プロバイダが投稿者(契約者)の氏名、住所等を開示
- 投稿者に対し法的措置を行う
なお、本請求により悪意のある投稿を阻止できるわけではありません。投稿者への法的措置(損害賠償請求や刑事告訴)の前提として行う手続きです。
【新設】発信者情報開示命令
従来の発信者情報開示請求を利用しても、投稿者(発信者)の特定が可能です。
しかし、2022年10月1日に新設された「発信者情報開示命令」を利用すると、従来の開示請求より早く投稿者を特定できます(プロバイダ責任制限法第8条)。
請求手順は次の通りです。
- 証拠を保管する
- 裁判所に発信者情報開示命令の申立てをする
- 審理開始
- 審理中、裁判所はサイト管理者へ「IPアドレス提供命令」、管理者とプロバイダへ発信者情報の「消去禁止命令」をする
- 裁判所が管理者とプロバイダに発信者情報開示命令を下す
- 被害者は開示された投稿者氏名、住所等をもとに、法的措置を行う
発信者情報開示命令は、1回の裁判手続きでサイト管理者・プロバイダの双方に対する請求を、一括で行えます。
削除できない可能性
フォームからの削除依頼や送信防止措置依頼にサイト管理者が応じない場合は、裁判所に投稿記事削除仮処分命令の申し立てが必要となるでしょう。
裁判所が削除措置を取るよう命じた場合、管理者側がそれに従わないと、命令を履行するまでの間、一定の金銭を支払わせる方法で強制されます。
そのため、管理者は裁判所の決定に従って削除する可能性が高いです。
削除依頼を成功させるためのポイント
権利侵害された被害者だけで削除依頼を検討するよりも、弁護士にサポートを依頼したほうが削除の成功率は高まります。
弁護士は主に次のようなアドバイスをします。
- 客観的にみて削除が必要な投稿か否か
- 証拠保管の方法は十分か
- 削除依頼の手順
- 管理者が削除依頼に応じない場合の裁判手続きの提案
- 削除依頼の他、投稿者の特定や法的措置が必要か否か 等
まとめ
今回はインターネットに関する法的トラブルへ対応してきた専門弁護士が、削除依頼の方法や手順等を詳しく解説しました。
悪質な投稿を削除しても、再び同じような投稿が繰り返される可能性はあります。
削除依頼の他、発信者情報開示請求・命令や法的措置を行い、投稿による権利侵害の抑止を図りましょう。
弁護士のアドバイスやサポートを受けながら、冷静に悪質な投稿への対応策を考えてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。