【保存版】立退き料を払ってくれないときの対処法|初心者にもやさしく解説+裁判例つき

最終更新日: 2025年05月12日

【保存版】立退き料を払ってくれないときの対処法|初心者にもやさしく解説+裁判例つき

オーナー(貸主)から「退去してほしい」と言われて交渉の末、「立ち退き料は支払います」と合意していたのに、いざ退去が近づくと「やっぱり払えない」「そんな約束していない」と言われてしまった──。

実際、こうした立ち退き料に関するトラブルは多く発生しています。

本記事では、法律初心者の方にもわかるように、立ち退き料の考え方・支払われないときの対処法・実際の判例・相談先の選び方までを丁寧に解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

「立退き料」ってそもそも何?

立退き料とは、借主(住んでいる側)が退去することで被る損失を補償するために、貸主(オーナー)が支払うお金のことです。法律で明確に義務づけられているわけではありませんが、実務上は「当然に支払われるべきもの」として扱われます。

想定される費用の内訳例:

  • 引っ越し費用(荷造り、運搬)
  • 敷金・礼金、仲介手数料など新居契約費用
  • 仮住まい費用(家賃が上がる場合)
  • 差額賃料(家賃が上がる場合)
  • 生活再建のための準備費用
  • 事業用物件であれば、営業補償や看板の再設置費用

法律ではどう扱われているの?

実は、立退き料の金額や支払い義務は法律上明文化されていません。ただし、借地借家法では、契約更新拒否や解約申し入れにあたって「正当事由(せいとうじゆう)」が必要とされています。

正当事由とは「契約を終わらせて退去してもらう、合理的で社会的に認められる理由」のことです。

たとえば…

  • 建物が老朽化し、取り壊しが必要
  • 自分や家族が住むために使用したい
  • 長期的に空室が続き、維持が難しい

これらの理由があっても、借主が被る不利益が大きいときは、立退き料を支払って“補う”ことが求められます

オーナーが「払えない」と言ってくる典型パターンと対応策

オーナーの主張

借主側の対応ポイント

「そんな話していない」

メールや録音などの証拠提示、文書にまとめた交渉履歴を活用

「建替えだから当然出て」

正当事由があっても、立退き料を払わないと無効になるケースも

「今はお金がない」

分割払い・後払いの提案。話が進まなければ法的措置へ

 

実際の請求方法とポイント(3ステップ)

請求書を作成する

書面で明確に立退き料を請求しましょう。以下の内容を記載:

  • 金額の内訳(例:家賃の6ヶ月分など)
  • 合意した内容の要約
  • 支払期限・振込先口座
  • 添付資料(メールの写しなど)

配達証明付きで送る

「言った/言わない」のトラブルを避けるため、内容証明郵便または配達証明郵便で送付するのが安心です。

支払いがなければ、調停・裁判へ

  • 調停:裁判所を通じて話し合う方法。費用も抑えられ、柔軟な合意が可能。
  • 少額訴訟:60万円以下なら迅速に解決。1回の審理で終了することも。
  • 通常訴訟:争点が複雑な場合はこちら。

実際の裁判例

オーナーが「払うとは言ってない」と否定 → 裁判所が補償を認めた(東京地裁 平成22年)

借主が退去に応じたものの、オーナーが「口約束だけ」「契約終了だから支払い義務はない」と支払いを拒否。

 裁判所は「借主はオーナーの都合に協力したのだから、補償は当然」として、立退き料50万円の支払いを命じました

営業用の店舗で立退き → 月額賃料12ヶ月分が認められた(大阪地裁 平成27年)

長年営業していた店舗が立退きを求められた事例。

借主が営業損失などを主張した結果、裁判所は月額賃料の12ヶ月分を目安とした補償金の支払いを認定

老朽化を理由に立り退き→285万円の立退料が認められた

築60年の木造の家屋について、大規模な地震により倒壊の可能性は高く、建物の明渡を認める必要性はあるが、賃借人は家族4人で生活し生活の本拠としていることを理由に、285万円の立退料の支払が命じられました。

弁護士に相談するメリットと相談タイミング

こんなときは早めに相談を:

  • 書面での交渉に自信がない
  • オーナーが高圧的、または連絡が取れない
  • 法的な手段を検討している

弁護士に相談すれば、交渉戦略・証拠整理・文書の作成・代理交渉を任せられ、精神的な負担も軽減できます。

まとめ

立退き料は、明文化された法律こそないものの、実務上は強い支払い義務が認められている重要な補償です。

オーナーに拒否されても、あきらめずに次のステップを踏むことで、解決できる可能性は十分にあります。

  • 証拠を残す(メール・録音・メモ)
  • 書面で請求する
  • 弁護士に早めに相談する

泣き寝入りせず、自分の権利をしっかり守るための一歩を踏み出しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q:退去に応じたあとでも、立退き料を請求できますか?

はい。交渉や合意の経緯が残っていれば、後からでも請求可能です。

Q:口約束しかない場合でも支払いを求められますか?

可能性はあります。LINE・メール・録音など、客観的に交渉の痕跡があれば有効です。

Q:立退き料はどれくらいが相場ですか?

住宅用:家賃の6〜12ヶ月分程度。

事業用:損害内容によって大きく変動します。(例:100万円〜数百万円)

Q:弁護士費用は高いですか?

初回相談は5,000〜1万円程度。着手金はケースによりますが、10万〜20万円程度で対応可能な場合もあります(成功報酬型の事務所もあり)。

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