公務執行妨害で逮捕の対象となる行為・適用される法律・刑罰・逮捕後の流れを解説
最終更新日: 2023年11月29日
- 公務執行妨害で家族が逮捕されてしまいどのようにしたらよいのか
- 公務執行妨害をしてしまったかもしれず逮捕されるか不安
- 公務執行妨害の逮捕を回避するためにできることは何かないか
通行中に警察官に腕を捕まれ職務質問されたので押し返した、役所の職員に対して大声で怒鳴った、といった行為は、公務執行妨害罪に該当することがあります。しかし、具体的にどのような行為が公務執行妨害になるか、詳しく知る人はあまりいないでしょう。
そこで今回は、これまでに多くの公務執行妨害事件を解決してきた刑事専門の弁護士が、公務執行妨害罪で逮捕の対象となる行為や適用される法律、刑罰や逮捕後の流れについて詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 公務執行妨害は公務員の職務の執行を妨害すること
- 公務執行妨害罪の被害者は国であり示談はできない
- まずは公務執行妨害での対応実績が豊富な弁護士に相談することが大切
公務執行妨害で逮捕されるということの意味
ここでは公務執行妨害罪で逮捕されるということの意味について解説します。
- そもそも公務執行妨害罪とは
- 適用される法律
- どのような刑罰を受けるのか
それでは1つずつ見ていきましょう。
そもそも公務執行妨害とは
そもそも公務執行妨害罪とは、どのような刑罰なのでしょうか?
公務執行妨害罪とは、公務員の職務の執行を暴行又は脅迫を加えて妨害する犯罪です(刑法95条)。
わかりやすいのは、警察官に暴行を加えるような場合です。公務執行妨害罪が成立するためには、
- 公務員に
- 職務の執行中に
- 暴行又は脅迫を加えること
の3つの要件があります。
公務執行妨害罪の被害者は、円滑な公務の執行を妨害された国や地方公共団体などです。公務という国や地方公共団体などの役割を守ることが目的であることから、被害者が国または地方公共団体とされるのです。
公務執行妨害罪は公務の円滑な執行を保護するものであることから、職務の内容についても広く、公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれます。
適用される法律
公務執行妨害罪で適用される法律は刑法95条です。
「公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する」
公務員とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員(刑法第7条1項)のことをいいます。
公務執行妨害罪は公務の円滑な執行を保護するものであることから、暴行・脅迫の程度も公務を妨害する程度のものとしています。そのため、たとえば手を払いのけただけでも公務執行暴行罪に問われる可能性があります。
どのような刑罰を受けるのか
公務執行妨害罪とはどのような刑罰を受けるのでしょうか?
公務執行妨害罪の刑罰は、以下の3つです。
- 3年以下の懲役
- 3年以下の禁錮
- 50万円以下の罰金
公務執行妨害罪で逮捕・起訴されると、懲役刑の実刑判決が下され刑務所に収監される可能性があるため注意が必要です。
懲役とは、刑務所で労働させられる刑罰をいいます。禁固とは、労働をさせられずに身柄の拘束をうける刑罰をいいます。
公務執行妨害事件を起こした場合、被害者が国や地方公共団体であることから基本的に示談はできません。また公務員個人と示談を試みても応じてくれる可能性は極めて低いでしょう。
公務執行妨害で逮捕される可能性のある事例
ここでは公務執行妨害で逮捕される可能性のある事例について解説します。
以下の行為は公務執行妨害に該当する可能性があります。
- 駐車違反を取り締まっている民間の駐車監視員を殴る
- 警察官に大声で怒鳴る
- 市役所の職員に対して傘を投げる
- 税務調査に入った職員を押し返す
公務執行妨害罪というと、警察官に暴行を働くような場面を想定しますが、本罪の暴行は、必ずしも公務員の身体に向けられる必要はありません。
たとえば、公務員の近辺で物を壊す行為も暴行に当たるとされるため、上記の行為はすべて公務執行妨害罪に該当する可能性が高いでしょう。
公務執行妨害で逮捕されてしまった後の流れ
次に公務執行妨害で逮捕されてしまった後の流れについて解説します。
- 警察で取り調べを受ける
- 検察に送検される
- 勾留される
- 起訴・不起訴が決定される
- 刑事裁判が開かれる
それぞれについて見ていきます。
警察で取り調べを受ける
公務執行妨害罪で逮捕されると、まず警察で取り調べを受けます。
警察署の取り調べにおいては、警察官が被疑者に事件の概要や被害の状況などを聴き出して供述調書を作成します。
供述調書はその後の刑事処分に影響を与える可能性があります。警察での取り調べは逮捕から最長48時間です。警察はこの期間内に取り調べを終えて、供述調書とともに被疑者を検察官に送検しなければなりません。
警察での取り調べの最中は、携帯電話や財布などの携帯品を没収されるため、外部との接触もできません。弁護士だけが面会できます。
公務執行妨害罪で逮捕された場合は、早期に弁護士に依頼することで「接見」という面会を通じて、取り調べを受ける上でのアドバイスを行うことが可能です。
検察に送検される
48時間以内に警察の取り調べを終えると、事件は検察に送検されます。
送検とは、逮捕された被疑者の事件や証拠を検察官に引き継ぐことをいいます。
送検を受けた検察官はさらに被疑者を取り調べ、24時間以内に裁判官に勾留請求をするか、あるいは釈放するか決定しなければなりません。
24時間の取り調べだけでは事件の全容がわからず、さらに時間を要する場合には、検察官は裁判官に勾留の請求をします。
弁護士はこの間、被疑者の釈放を獲得するために検察官の説得にあたります。
勾留される
検察官が勾留請求を行い裁判官がこれを認めると、被疑者は10日間の身柄を勾留されます。勾留される場所は、警察署の留置場などの刑事施設です。
検察官が取り調べのためにさらに時間を要すると判断した場合は、10日間の延長勾留を請求できます。合計で最長20日間の勾留が続くことになります。
勾留中は、重大犯罪などによる接見禁止がない限り、家族や友人との面会が可能になりますが、時間帯などが制約され警察官も付き添うことになります。
弁護士は被疑者が勾留されている間、被疑者に有利な証拠や証言を得たりして検察官に釈放を求める弁護活動を行います。
起訴・不起訴が決定される
検察官は、被疑者の勾留期間内に起訴・不起訴の決定を下します。
不起訴になれば被疑者は即日に身柄を釈放され、釈放後は在宅事件として捜査が継続します。
検察官が事件を起訴すると、起訴からおよそ1か月後に裁判が行われます。検察官が事件を起訴した時点で、被疑者は被告人と呼び方が変わり裁判で被告人の罪状が争われます。
起訴には、略式起訴と公判が開かれる通常起訴の2種類があります。略式起訴は、100万円以下の罰金または科料の事件にのみ適用される手続です。起訴されたときに被告人に弁護士がいない場合には、私選の弁護士を依頼するか、あるいは国選の弁護士を付けるように裁判所に申請できます。
起訴された時点で、弁護士は裁判所に被告人の保釈の申請を行えます。弁護士が保釈の申請をして裁判所がこれを認めれば、保釈金を納付して被告人は釈放されます。
刑事裁判が開かれる
起訴された日から、およそ1か月後に1回目の公判が開かれます。
被告人が罪状を認めている場合は、情状が認められ比較的軽い処分を求めることが多くなります。
公務執行妨害罪では、計画的な犯行というよりは、衝動的に犯行に走ったというケースが多く見られます。
起訴された場合でも略式裁判となり、罰金を納めて事件が終了するケースも多く見られます。前科がつくことになりますが、迅速に事件を終わらせることができます。
略式裁判とはならずに通常裁判となった場合は、裁判官に反省の態度などを理解してもらうことが重要になります。
公務執行妨害でも逮捕回避の可能性はある
公務執行妨害罪でも逮捕の回避は可能です。
公務執行妨害罪は現行犯逮捕される事案が多い傾向にありますが、被害者が警察官以外の公務員というケースもあるため、現行犯逮捕されないこともあります。
弁護士に相談することで、逮捕前であればリスクや処分の見込みを判断し、事案に応じて最善の対応策を提案してもらえるでしょう。
公務執行妨害罪は、被害者と示談ができない犯罪であるため、通常の事件よりも逮捕回避が難しくなりますが、だからこそ弁護士の迅速な弁護活動が重要になります。
公務執行妨害で逮捕を回避するためにはすぐに弁護士に相談することがおすすめ
公務執行妨害罪で逮捕を回避するためには、すぐに弁護士に相談することがおすすめです。
公務執行妨害罪で万が一逮捕されると、最長で23日という長い間、刑事施設に拘束される可能性もあります。
事件化する前であれば、事件が報道される前に被疑者に有利な証言や証拠を集めたり、逮捕を回避することが可能になります。
弁護士に依頼すれば、自首にも同行してくれ、被疑者の身元引受人にもなってもらうことも可能です。逮捕を回避するためには、早い段階から弁護士に相談するとが重要になります。
まとめ
今回は、これまでに多くの公務執行妨害事件を解決してきた刑事専門の弁護士が、公務執行妨害罪で逮捕されてしまうことはあるのか、対象となる行為や適用される法律、刑罰や逮捕後の流れについて解説しました。
公務執行妨害罪は、他の刑事事件と異なり被害者と示談ができない事案ですので、何よりも弁護士を通じて被疑者の反省の情を伝えるなど、真摯な弁護活動が重要になります。まずは弁護士に相談することをおすすめします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。