不正アクセス禁止法違反を不起訴にするためにすべきことは?実施方法と問われる罪も解説
最終更新日: 2023年09月13日
- 不正アクセス禁止法違反に問われない方法はあるのだろうか
- 不正アクセス禁止法違反で逮捕されたらどうすればよい
- 弁護士に弁護を依頼した場合、どのようなメリットがあるのだろう
不正アクセス行為とは、他人のデータを許可なく不正取得・保管したり、不正アクセスを助長したりする行為を指す犯罪です。
不正アクセス行為をすれば、捜査機関から「不正アクセス禁止法違反」で逮捕されるおそれがあります。同法違反で起訴され有罪となった場合、懲役刑が言い渡される可能性もあるので注意しましょう。
ただし、逮捕前または逮捕されても迅速な対応ができたならば、不起訴処分になるかもしれません。
そこで今回は、数多くの不正アクセス事件に携わってきた専門弁護士が、不正アクセス禁止法違反が不起訴になるケース、弁護士を立てて対応するメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 不正アクセス禁止法違反が不起訴となるには、検察官が「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」と判断する必要がある
- 不起訴にできなかった場合は加害者本人・家族に重大な影響が出る
- なるべく早く弁護士のサポートを受ければ、不起訴処分となる可能性が高まる
不正アクセス禁止法違反が不起訴処分になるケース
不正アクセス行為で有罪になった場合、懲役刑や罰金刑を受ける可能性があります。
しかし、次のような理由で不起訴処分となる可能性があります。
嫌疑なし
被疑者が不正アクセス行為をしていないことが明白な場合の他、不正アクセス禁止法違反と認定される明白な証拠のない場合に適用される、不起訴の裁定の一つです。
捜査機関が捜査の過程で、このような結論に達すれば、被疑者は不起訴処分となり、釈放され、日常生活に戻れます。
ただし、嫌疑なしと認められるまで待つのではなく、不正アクセス行為をしていなければ、何らかの方法で積極的に無罪を主張する必要があります。
嫌疑不十分
被疑者が不正アクセス行為をした嫌疑が無いわけではないものの、不正アクセス禁止法違反の成立を認定すべき証拠が不十分なとき適用される、不起訴の裁定の一つです。
嫌疑不十分で不起訴となれば、再逮捕はされないので安心してください。不起訴となるためにも捜査へ協力しつつ、冷静に無罪を主張していく必要があるでしょう。
起訴猶予
被疑者に犯罪の嫌疑が十分認められ、訴訟条件も欠けていないものの、検察官の判断で訴追を不要と判断し、起訴をしないと決める処分です。
起訴猶予となれば事件は裁判所に行かず、裁判で有罪にもなりません。
不正アクセス行為をしても比較的軽い罪にとどまり、被疑者(加害者)が反省し、被害者とも示談を成立させた場合、起訴猶予になりやすいと言われています。
不正アクセス禁止法違反を不起訴にできなかった場合に起きること
警察から逮捕され、何らかの対策も取られないまま勾留・起訴されてしまい、刑事裁判で有罪となれば、有罪判決を受けた本人・家族にとって深刻な事態となります。
前科が付く
刑事裁判で不正アクセス禁止法違反を問われ有罪になった場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(不正アクセス行為の禁止等に関する法律第11条)。
罰金刑を受けたならば単に罰金を支払って済むわけではなく、「前科」が付いてしまいます。
前科とは実際に刑罰を受けた、という経歴を指します。一度ついた前科は生涯消えません。前科が付けば、就職活動時に不利となるおそれがある、新たに犯罪を犯したとき刑罰が重くなる等、本人にとってデメリットとなる可能性があります。
出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | e-Gov法令検索
日常生活を失う
不正アクセス禁止法違反で有罪となれば、本人だけではなく家族にも大きな影響を及ぼします。
たとえば、有罪判決を受け懲役刑に服する場合、受刑者として刑事施設に収容され、強制的に労働へ従事しなければいけません。
同法違反の懲役刑は最高3年なので、最悪の場合は3年間も刑事施設で反省する必要があります。受刑者となれば、これまで就いていた仕事は解雇されてしまうでしょう。
また、受刑者が家族と同居していたならば、その家族も周囲の目が気になり、住み慣れた家や土地を離れる可能性もあるでしょう。
不正アクセス禁止法違反で問われる罪
不正アクセス禁止法違反等で逮捕・起訴された場合、下表のような刑罰を受ける可能性があります。
罪名 | 罪の内容 | 罰則 |
不正アクセス禁止法違反 (同法第2条) | 他人のID・パスワード等を無断で入力する行為、インターネット回線からハッキング行為をした | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金 (同法第11条) |
不正取得罪 (同法第4条) | 不正アクセス行為に利用する目的で、他人のID・パスワードを取得した | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 (同法第12条) ※ただし、不正助長罪に問われ、不正アクセスを助長する認識がなかったとき、30万円以下の罰金 (同法第13条) |
不正助長罪 (同法第5条) | 不正アクセス行為に利用する目的で、不正に他人のID・パスワードを第三者へ提供した | |
不正保管罪 (同法第6条) | 不正アクセス行為に利用する目的で、不正に取得した他人のID・パスワードを保管 | |
不正入力要求罪 (同法第7条) | 正規のアクセス管理者に偽装し、他人のID・パスワード情報を騙し取った |
出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | e-Gov法令検索
不正アクセス禁止法違反の不起訴処分を目指す方法
不正アクセス禁止法違反の疑いで警察から逮捕されたとしても、暴れたり泣き叫んだりして、警察の手続きを妨害するような行為は慎みましょう。
不正アクセスの身に覚えがなくても、身に覚えがあっても、なるべく早く弁護士に面会し、今後の対応をよく話し合うことが大切です。
身に覚えがない場合
自分が不正アクセスをしていなくても、自己のパソコンが遠隔操作され、不正アクセスに利用された可能性があります。
物理的に離れた場所から端末を操作する遠隔操作は、不正アクセスによるサイバー攻撃で、犯人が悪用する方法の一つです。
このような方法で悪用された場合、逮捕された本人だけで無実を主張するのは難しく、弁護士と相談し対策をとる必要があります。
ただし、自分が逮捕された場合、所持していたスマートフォン等は取り上げられてしまうので、家族が代わってサイバー犯罪に強い弁護士(私選弁護人)へ依頼しましょう。
私選弁護人ならば、逮捕後すぐに面会が可能です。無罪を主張する方法について、迅速に相談ができるでしょう。
身に覚えがある場合
自分が不正アクセス行為を認めているなら、弁護士を逮捕前に選び、弁護を依頼していれば、速やかに依頼者のための対応をとります。
もちろん、自分が自首をしたいなら弁護士に同行してもらえます。
不正アクセス行為に対して身に覚えがある人は、主に次の行動をとる必要があるでしょう。
示談交渉
逮捕前でも逮捕後でも、被害者との示談は可能です。
被疑者(加害者)本人が被害者に、直接示談交渉を申し立てても、被害者側は怒りと不信感で交渉になかなか応じないでしょう。
しかし、弁護士に交渉を依頼すれば、被害者側も交渉に応じる可能性があります。
弁護士の提示した示談内容に被害者側が合意したら、合意書を取り交わし示談が成立します。
検察官は示談交渉を評価し、起訴猶予処分とする可能性も高いです。
被害者への対応
被疑者(加害者)本人は「示談のときに示談金さえ払えばよい。」などと考えず、誠心誠意、被害者への謝罪も必要です。
直接の謝罪が叶うなら、しっかりと謝って更生する意志も告げましょう。
示談を成立させた後も、反省する姿勢を示し続けなければ、検察官も起訴猶予処分を決めません。
弁護士への相談
不正アクセス行為をしたならば、なるべく早く弁護士(私選弁護人)と相談し、不起訴処分を得るための対応について検討しましょう。
もちろん、逮捕された後に検察官へお願いすれば「国選弁護人」を呼ぶことができます。しかし、逮捕された本人が弁護士を選べないばかりか、国選弁護人が付けられるのは勾留後となります。
逮捕直後から国選弁護人を呼べないと、対応が遅くなる可能性も出てくるので、なるべく私選弁護人を選んでおきましょう。
不正アクセス禁止法違反の不起訴を目指すなら専門家に相談を
今回は多くの不正アクセス事件に携わってきた専門弁護士が、不正アクセス禁止法違反を疑われても、不起訴処分となる方法について詳しく解説しました。
もしも不正アクセス行為をしたのなら、黙秘や逃走するのはやめましょう。真摯に反省し、被害者へ謝罪・示談をするとともに、問題解決へ積極的に協力した方が、不起訴となる可能性は高くなるでしょう。
不正アクセス禁止法違反に問われたら、速やかに弁護士と対策を協議してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。