不正アクセス禁止法違反の逮捕で問われる罪とは?流れ・すべきことも解説

最終更新日: 2023年09月13日

不正アクセス禁止法違反の逮捕で問われる罪とは?流れ・すべきことも解説

  • 不正アクセス行為にはどのような罪があるのだろう
  • 不正アクセスをして逮捕されてしまった、これから一体どうなるのだろう
  • 逮捕されてしまったら、弁護士を立てるべきだろうか

不正アクセス行為とは、データの不正取得や保管、不正アクセスを助長する行為を指す犯罪です。

不正アクセス行為を行うと、「不正アクセス禁止法違反」で逮捕されてしまうおそれがあります。同法違反で有罪となったら、最悪の場合は懲役刑が言い渡される可能性もあります。

そこで今回は、数多くの不正アクセス事件に携わってきた専門弁護士が、不正アクセス行為の種類、不正アクセス行為で逮捕された場合の対応等について詳しく解説します。 本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 不正アクセス行為や不正取得罪
  • 不正助長罪等も不正アクセス禁止法の処罰対象
  • 不正アクセスに関する罪も通常の刑事事件と同じ手続きで進められる
  • 弁護士を立てれば、加害者にとって最小限の損害で済む場合がある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

不正アクセス禁止法違反の逮捕で問われる罪

「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」は、日本国内のインターネットの利用拡大に対応し、2000年から施行された電気通信に関する秩序維持を図るための法律です。

同法では不正アクセスに関する様々な罪を明記しています。

出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | e-Gov法令検索

不正アクセス行為

不正アクセス行為とは次のような行為が該当します。

  • 他人の識別符号(ID・パスワード、生体認証情報)を無断で入力する行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律第2条第4項第1号)
  • 識別符号以外の情報または指令を入力する行為(同法第2条第4項第2号、第3号)

つまり、ログイン認証のあるウェブサイトで、正規の利用者の許可を取らずに、利用者のID・パスワードでログインする行為を禁じています。

一方、認証情報が不明のままでも、インターネット回線から不正なデータを送って、ウェブサイトの脆弱性(セキュリティホール)を攻撃し、ログイン認証を回避する方法(ハッキング行為)も同様です。

不正アクセス行為で有罪となった場合は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(同法第11条)。

不正取得罪

不正取得罪は、不正アクセス行為に利用する目的で、他人のID・パスワードを取得したときに成立します(同法第4条)。

他人のID・パスワードの取得に関して、具体的に次のような方法が該当します。

  • 他人のID・パスワードが記載された書面を受け取った
  • 他人のID・パスワードが記録されたUSBメモリ等を受け取った
  • 自分が使用するスマートフォンやパソコンの画面に、他人のID・パスワードを表示させた
  • 他人のID・パスワードを暗記した

不正取得罪で有罪となった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第1号)。

不正助長罪

不正助長罪は、業務その他正当な理由以外で、他人のID・パスワードを第三者へ提供したときに成立します(同法第5条)。

他人のID・パスワードを第三者へ提供すること自体、危険な行為なので、不正アクセス行為を助長してしまう認識があった他に、その認識が無かった場合も処罰対象です。

不正助長罪で有罪となった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第2号)。

なお、不正アクセス行為を助長してしまう認識がなかったときは、30万円以下の罰金となります(同法第13条)。

不正保管罪

不正保管罪は、不正アクセス行為に利用するため、不正に取得した他人のID・パスワードを保管したときに成立します(同法第6条)。

他人のID・パスワードの保管に関して、具体的に次のような方法が該当します。

  • 他人のID・パスワードが記載された書面を保有
  • 他人のID・パスワードが記録されたUSBメモリ等を保有
  • 自分が使用するスマートフォンやパソコンに保有

不正保管罪で有罪となった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第3号)。

不正入力要求罪

不正入力要求罪は、正規のアクセス管理者のように装い、他人のID・パスワード情報を騙し取ったときに成立します(同法第7条)。騙し取る方法は次の通りです。

  • 他人にID・パスワードの入力を求める情報の公開
  • ID・パスワードの入力するよう求める情報を電子メールで送信した

不正入力要求罪で有罪となった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第4号)。

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不正アクセスで逮捕された後の流れ

不正アクセス禁止法違反の疑いで警察から逮捕されてしまうと、一般の刑事事件と同様に、取り調べや勾留、起訴・不起訴へと手続きが進んでいきます。

取り調べ

逮捕された本人は「被疑者」とされ、一般的に警察署で警察官から取り調べを受けます。

警察官が「被疑者は逃走や不正アクセスの証拠隠滅を図るおそれがある。」と判断したならば、警察署の留置施設・拘置所に留置されてしまいます。

なお、逮捕前に弁護士へ相談し弁護を依頼(私選弁護人)していれば、逮捕後すぐに弁護士と面会が可能です。

送検

送検とは、警察が捜査した事件を検察官に送る手続きです。警察は逮捕・留置した被疑者を、48時間以内に、関係書類や証拠物と共に検察官へ送ります(身柄送検)。

更に検察官は被疑者の身柄拘束の継続が必要と判断した場合、送検から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、警察の留置施設・拘置所に引き続き拘束する請求を裁判所へ行います(勾留)。

勾留

裁判官は、被疑者が逃走や証拠隠滅を行う可能性があると判断した場合、勾留を決定します。

勾留が認められると、その期間は最長20日間にも及びます。被疑者が勾留されている間、警察官や検察官は被害者から詳しい事情聴取、実況見分等を行います。

起訴・不起訴

事情聴取や実況見分等で収集した証拠をもとに、検察官は次の判断を行います。

  • 被疑者を刑事裁判にかける→起訴
  • 被疑者を刑事裁判にかけない→不起訴

ただし、被疑者と被害者との間で示談が成立していた場合、検察官は不起訴処分を行う可能性もあります。

裁判

検察官から被疑者が不正アクセス禁止法違反で起訴されると「被告人」となり、刑事裁判は基本的に公開の法廷で行われます。

裁判所は検察官、被告人、弁護人の主張を聴きつつ、証拠を調べて審理します。その後、被告人へ刑罰を科すべきか否かが判断され、判決を言い渡します。

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不正アクセス禁止法違反で逮捕されたときの対応

不正アクセス禁止法違反の疑いで警察から逮捕された場合、身に覚えの有無関係なく、速やかに弁護士へ相談し、適切な対応をとった方がよいでしょう。

こちらでは、それぞれのケースに応じた適切な対応を説明します。

身に覚えがない場合

自分が不正アクセスをしていない場合は、所有しているパソコンを遠隔操作され、不正アクセスに利用された可能性があります。

遠隔操作(リモートコントロール)とは、物理的に離れた場所から端末を操作する方法です。この方法は不正アクセスのサイバー攻撃で悪用されるケースがあります。

遠隔操作により自分のパソコンが悪用された場合、自分だけで無実を立証するのは非常に困難です。逮捕されたら、なるべく早く弁護士と相談し対策を決めていきましょう。

ただし、本人が逮捕された後、スマートフォン等は警察から取り上げられてしまうため、自分で弁護士を検索し、依頼する方法は取れません。

不正アクセス等に詳しい弁護士(私選弁護人)と相談したいならば、家族から弁護士に連絡をとってもらい、依頼した方が無難です。

なお、希望すれば警察官が国選弁護人を呼びます。

しかし、国選弁護人が付けられるのは勾留後です。これでは対応が遅くなる可能性もあるので、逮捕直後からでも面会できる私選弁護人を選びましょう。

身に覚えがある場合

不正アクセスを行った自覚があり、警察官から逮捕されそうなときは、前もって不正アクセス事件に詳しい弁護士と相談し、弁護を依頼しておきましょう。

弁護士には次の対応が期待できます。

警察・検察等への対応

警察から逮捕された直後でも、弁護士へ弁護を依頼していたなら、すぐに面会が可能です。

弁護士から今後の手続きがどのように進むのか、どのような対応をとるべきか、詳しい説明を受けます。

弁護士はその後、次の方法で被疑者の身柄を解放するよう、警察・検察に主張していきます。

  • 被疑者は自分の犯罪を反省し、証拠資料を提出したいと言っている
  • 被疑者には自宅があり、住所不定ではない
  • 被疑者には逃亡する意思がない

このような主張が通れば、検察官は勾留の必要がないと判断し、自宅に戻れる可能性もあります。

被害者への対応

弁護士は警察や検察へ被疑者の身柄の早期解放を促すとともに、被害者との示談交渉も進めていきます。

被害者は被疑者(加害者)本人への怒りがあり、被疑者と直接対面する交渉には応じないでしょう。しかし、法律の専門家である弁護士となら、交渉する可能性もあります。

弁護士はまず、被疑者の不正アクセス行為を謝罪したうえで、被害者の心情・被害状況に応じて、示談の条件・示談金額を提示します。

被害者との調整の末、示談内容に合意したら、示談書を作成します。この示談書を被疑者側が検察等に提出すれば、被害者との示談が成立した証拠となります。

検察官は被害者と示談が成立した事実を踏まえ、不起訴処分とする可能性があります。たとえ起訴されたとしても、裁判で減刑が期待できます。

不正アクセス禁止法違反での逮捕なら当事務所にご相談を

今回は多くの不正アクセス事件に携わってきた専門弁護士が、不正アクセスに関する罪、逮捕後の手続きの流れ、弁護士を立てる有効性等について詳しく解説しました。

不正アクセス行為は、他人に暴力を振るい、ケガをさせるような犯罪ではありません。しかし、被害者の財産に影響を与えたり、電気通信に関する秩序維持を破壊したりする、深刻な犯罪です。

不正アクセス行為を真摯に反省し、被害者へ謝罪するとともに、問題解決へ積極的に協力する必要があるでしょう。

不正アクセス禁止法違反に問われたら、速やかに弁護士へ相談し弁護を依頼してみてはいかがでしょうか。

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