撮影罪の成立要件とは?罰則と過去の判例を解説
最終更新日: 2026年04月13日

「これくらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちで行った撮影が、あなたの人生を大きく変えてしまうかもしれません。
2023年7月、盗撮行為などを厳しく取り締まるための新しい法律「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」が施行されました。
これにより、これまで各都道府県の条例で対応されていた盗撮が、国の法律である刑法で処罰されることになり、罰則も強化されています。
この記事では、新しい法律である「撮影罪」について、以下の点をどこよりも分かりやすく解説します。
- 撮影罪とは何か?従来の盗撮との違い
- どのような行為が撮影罪にあたるのか(成立要件)
- 撮影罪の具体的な罰則と時効
- 撮影罪で逮捕された後の流れと、疑われた場合にすべきこと
自分自身や大切な人を守るためにも、正しい知識を身につけていきましょう。
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撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは?
撮影罪とは、正式名称を「性的姿態等撮影罪」といい、正当な理由なく、ひそかに人の性的な姿態などを撮影する行為を罰する犯罪です。
スマートフォンの普及やSNSの拡大に伴い、盗撮やその画像の拡散といった「デジタル性暴力」が深刻な社会問題となったことを背景に、新たにつくられました。
2023年7月に新設された法律
撮影罪は、2023年7月13日に施行された改正刑法によって新設された法律です。正式には「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及びその記録に係る電磁的記録の保管等に関する法律」として定められています。
この法律ができたことで、これまで各都道府県が定める「迷惑防止条例」で主に取り締まられてきた盗撮行為が、日本全国どこで行われても、刑法に基づいた統一の基準で処罰されることになりました。
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従来の迷惑防止条例(盗撮)との違い
撮影罪と従来の迷惑防止条例には、いくつかの重要な違いがあります。特に大きな違いは「適用範囲」と「罰則の重さ」です。
【撮影罪と迷惑防止条例の比較】
①法律の種類
- 撮影罪:刑法(国の法律)
- 迷惑防止条例:条例(都道府県ごとのルール)
②適用範囲
- 撮影罪:場所を問わない。公共の場所だけでなく、自宅、ホテル、オフィス、撮影スタジオなど、あらゆる場所での行為が対象となる。
- 迷惑防止条例:原則として「公共の場所」や「公共の乗り物」などに限定されることが多い。
③処罰の対象
- 撮影罪:「性的姿態等」の撮影に特化。性的羞恥心や性的道義観念に反する行為を処罰する目的が明確。
- 迷惑防止条例:盗撮のほか、痴漢やつきまといなど、公衆に迷惑をかける様々な行為を包括的に規制。
④罰則
- 撮影罪:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(後述)
- 迷惑防止条例:例えば東京都の場合、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」など、撮影罪より軽い場合が多い。
このように、撮影罪は迷惑防止条例の穴を埋め、より厳しく盗撮行為を取り締まるために作られた法律と言えます。
撮影罪の成立要件
どのような場合に撮影罪が成立するのでしょうか。法律の条文を基に、3つの主要な要件を分かりやすく解説します。
要件①:人の性的姿態等を撮影する行為
まず、撮影の対象が「性的姿態等」であることが必要です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
- 性的な部位:
性器、肛門、臀部(お尻)、胸部(胸)など、通常は衣服で隠されている部位。 - 性的な行為の様子:
性交やわいせつな行為をしている様子。 - 性的な部位を連想させる姿態:
下着姿や、裸に近い格好など、人の性的羞恥心を引き起こすような姿態。
これらの姿態を、スマートフォンやカメラ、その他の機器を使用して記録(撮影、録画)する行為が処罰の対象となります。
要件②:正当な理由がない
撮影罪が成立するには、その撮影に「正当な理由がない」ことが必要です。例えば、医師が診察のために患部を撮影する場合や、事件の証拠として撮影する場合などは「正当な理由」があると認められ、罪にはなりません。
一方で、「相手の同意がない」「性的好奇心を満たすため」といった理由は、正当な理由とは認められません。
要件③:4つの撮影類型
法律では、撮影罪が成立する具体的な状況を4つの類型に分けて定めています。
- 承諾なく撮影する類型:
相手の同意がないにもかかわらず、ひそかに撮影する行為です。
駅のエスカレーターでスカートの中を撮影したり、更衣室やトイレに小型カメラを仕掛けて撮影したりする、いわゆる典型的な「盗撮」がこれにあたります。 - 脅迫や暴行を用いて撮影する類型:
相手を脅したり、暴力をふるったりして無理やり性的な姿態を撮影する行為です。
たとえ形式的に相手が撮影に「同意」していたとしても、それが脅迫や暴行によるものであれば、この類型に該当し処罰されます。 - だまして撮影する類型:
「モデルのオーディション用の撮影です」などと嘘をついて、実際には性的な姿態を撮影するようなケースです。
相手がだまされている(錯誤している)ことを利用して撮影する行為も処罰の対象です。 - 無意識・抵抗不能な状態を利用して撮影する類型:
相手が眠っている、泥酔している、気絶しているなど、意思表示ができない状態や抵抗できない状態に乗じて撮影する行為です。
撮影罪の罰則と時効
撮影罪で有罪となった場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。罰則と時効について詳しく見ていきましょう。
撮影罪の罰則
撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。
また、盗撮が常習的な場合、罰則はさらに重くなります。常習としてこれらの行為を行った場合は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」が科されます。
※「拘禁刑」とは、2025年までに施行される、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」を一本化した新しい刑罰です。
撮影以外の関連する罪と罰則
撮影罪は、撮影する行為だけでなく、撮影した画像を他人に提供したり、保管したりする行為も厳しく罰します。
- 提供・頒布・陳列(性的姿態等撮影提供等罪):
撮影した画像や動画を、不特定多数の人が見られるインターネットの掲示板に投稿したり、他人にデータを送ったりする行為です。
【罰則】5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 - 保管(性的姿態等記録保管罪):
相手を脅す目的や、性的な目的で利用するために、撮影した画像や動画を保管し続ける行為です。
【罰則】2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
軽い気持ちで撮影した画像を友人に送るだけでも、非常に重い罪に問われる可能性があるのです。
撮影罪の時効は3年
撮影罪の公訴時効(検察官が起訴できる期間)は3年です。犯罪行為が終わった時点から3年が経過すると、起訴されることはなくなります。
ただし、後述する提供罪や保管罪の時効はそれぞれ5年、2年と異なります。また、海外に滞在している期間は時効の進行が停止するなど、例外もあるため注意が必要です。
【判例解説】撮影罪が適用された過去の事例
撮影罪は新しい法律ですが、すでに適用された事例が報道されています。どのような行為が罪に問われたのか、具体的な事例を見てみましょう。
※プライバシー保護のため、実際の事件を基に内容を一般化して解説します。
事例①:駅構内での盗撮事件
【概要】
駅のエスカレーターにおいて、男が前を歩く女性のスカートの中にスマートフォンを差し入れ、動画を撮影したとして、通行人に取り押さえられ現行犯逮捕されたケース。
【解説】
これは典型的な盗撮行為であり、従来は迷惑防止条例違反で摘発されていました。
撮影罪の新設により、このような行為は刑法犯として、より厳しく処罰されることになります。場所が「公共の場所」である駅構内であっても、刑法である撮影罪が適用された事例です。
事例②:同意なく性的な動画を撮影した事件
【概要】
交際相手の女性と合意の上で性行為に及んだが、その様子を相手の同意を得ずにスマートフォンで撮影したとして、後日、女性がデータを発見し警察に被害届を提出。男が逮捕されたケース。
【解説】
この事例のポイントは、性行為自体に同意があったとしても、それを「撮影」することへの同意がなければ撮影罪が成立しうるという点です。
恋人や夫婦といった親しい関係性であっても、相手の尊厳を無視した撮影行為は犯罪となります。
事例③:SNS投稿目的での無断撮影
【概要】
フィットネスジム内で、トレーニング中の女性の臀部などを、本人の許可なくスマートフォンで撮影し、自身のSNSアカウントに投稿。
「#筋トレ女子」などのハッシュタグを付けていた。後日、画像を発見した本人からの通報で事件が発覚したケース。
【解説】
この行為は、撮影罪の「性的姿態等」の撮影にあたる可能性が非常に高いです。レギンスやトレーニングウェア越しの撮影であっても、部位やアングルによっては「性的羞恥心を惹起させる人の姿態」と判断されます。
さらに、SNSに投稿する行為は、撮影罪に加えて「性的姿態等撮影提供等罪」という、より重い罪に問われる可能性があります。
撮影罪で逮捕された後の流れ
万が一、撮影罪の容疑で逮捕されてしまった場合、手続きはどのように進むのでしょうか。一般的な流れを理解しておくことが重要です。
現行犯逮捕と後日逮捕
逮捕には大きく分けて2つのパターンがあります。
- 現行犯逮捕:盗撮行為の最中や直後に、被害者や周囲の人に取り押さえられて警察に引き渡されるケースです。
- 後日逮捕:被害届が提出された後、警察が防犯カメラの映像や聞き込み捜査などを行い、後日、裁判所の令状に基づいて逮捕されるケースです。押収されたスマートフォンやPCから、余罪が発覚することも少なくありません。
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逮捕から起訴・不起訴までの流れ
逮捕されると、以下のような刑事手続きが進行します。
- 警察による捜査(最大48時間):
逮捕後、警察署で取り調べを受けます。 - 検察への送致(最大24時間):
警察は48時間以内に、事件を検察官に引き継ぎます(送致)。 - 勾留請求・勾留(最大20日間):
検察官は、さらに捜査が必要と判断した場合、24時間以内に裁判所へ「勾留」を請求します。
認められると、原則10日間、延長されるとさらに10日間(合計最大20日間)、警察署の留置場などで身柄を拘束されながら捜査が続きます。 - 起訴・不起訴の決定:
検察官は、勾留期間が満了するまでに、被疑者を刑事裁判にかける「起訴」とするか、裁判にかけずに釈放する「不起訴」とするかを最終的に決定します。
不起訴となれば前科はつきませんが、起訴されると日本の刑事裁判では99%以上が有罪となります。
つまり、逮捕から最大23日以内に「不起訴処分」を獲得できるかどうかが、極めて重要になります。
撮影罪で疑われたらすべきこと
もしご自身やご家族が撮影罪の疑いをかけられてしまった場合、パニックにならず、冷静に、そして迅速に行動することが何よりも大切です。すぐに以下の3つのことを実行・検討してください。
速やかに弁護士に相談する
逮捕された場合、早い段階で弁護士に相談してください。これが最も重要です。
弁護士は、以下のような活動を通じて、あなたの強力な味方となります。
- 取り調べへの適切なアドバイス:
警察の取り調べで不利な供述をしてしまわないよう、法的な観点からアドバイスをくれます。 - 早期の身柄解放に向けた活動:
勾留されないよう、検察官や裁判官に意見書を提出するなど、身柄解放を働きかけます。 - 被害者との示談交渉:
あなたに代わって、被害者との示談交渉を進めてくれます。
逮捕直後であれば、無料で1度だけ弁護士を呼べる「当番弁護士制度」も利用できます。
被害者と示談交渉を進める
撮影罪のような被害者がいる犯罪では、被害者との示談が成立しているかどうかが、起訴・不起訴の判断や量刑に極めて大きな影響を与えます。
示談とは、加害者が被害者に謝罪し、示談金を支払うことで、当事者間で事件を解決することです。被害者が加害者を許す「宥恕(ゆうじょ)」の意思を示してくれれば、不起訴処分となる可能性が大きく高まります。
ただし、加害者が直接被害者に連絡を取ろうとすると、かえって被害者の感情を逆なでし、トラブルが大きくなる危険があります。示談交渉は、必ず弁護士を介して行うようにしてください。
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自首を検討する
もし、まだ捜査機関に犯行が発覚していない段階であれば、「自首」も選択肢の一つです。
自首が成立すれば、刑法上の「自首減軽」という規定により、刑が軽くなる可能性があります。また、反省の意思を示すものとして、捜査や裁判で有利な情状として考慮されることもあります。
ただし、どのタイミングで、どのように自首するかは非常に難しい判断を伴います。証拠をどうするか、警察署に一人で行くべきかなど、不安な点も多いでしょう。
自首を考える場合も、まずは弁護士に相談し、最善の方法についてアドバイスをもらってから行動することをおすすめします。
まとめ
この記事では、2023年7月に新設された「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」について、その成立要件から罰則、逮捕後の流れまでを詳しく解説しました。
【この記事のポイント】
- 撮影罪は、迷惑防止条例より適用範囲が広く、罰則も重い刑法上の犯罪です。
- 「性的姿態」を「同意なく」撮影すれば、恋人同士や自宅での行為であっても罪に問われる可能性があります。
- 撮影だけでなく、撮影した画像を他人に送ったり、保管したりする行為も重罪となります。
- もし罪を犯してしまった、疑いをかけられてしまった場合は、一人で抱え込まず、一刻も早く弁護士に相談することが、その後の人生を左右する最も重要な行動です。
スマートフォンのカメラは、使い方を誤れば凶器にもなりえます。
軽い気持ちや出来心で撮影ボタンを押す前に、その行為が取り返しのつかない結果を招く重大な犯罪であることを、今一度深く認識してください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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