子どもの連れ去りは違法なのか?リスクと対処法を専門家が解説

最終更新日: 2023年11月17日

子どもの連れ去りは違法なのか?リスクと対処法を専門家が解説

  • 配偶者が離婚前に子どもを連れ去ったが、きちんと世話をしていないので取り戻したい
  • 自分の子どもであっても連れ去りが違法となるケースはあるのだろうか
  • 我が子を連れ去った後の対応方法を知りたい

子供を連れ去られた側の親は、自分の子どもが充実した生活を送れているか不安になるかもしれません。

もし相手方の同意なく子どもを勝手に連れ去ったら、大きなトラブルに発展する可能性があります。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、我が子を連れ去るとどうなるのか、連れ去った場合に起こり得るリスク等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 子どもを連れ去ると最悪の場合、「未成年者略取及び誘拐」の罪に問われる可能性がある
  • 親権の無い親が勝手に子どもを連れ出したり、親権争い中に連れ出したりすると違法となる
  • 子どもの連れ去りは基本的に調停や審判で解決を図る

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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子どもの連れ去りの定義

子どもの連れ去りとは、配偶者または元配偶者との事前の合意なく、相手のもとに返さない行為を指します。

子どもを返さないからといって、子どもに生命・身体の危機が及ぶとは限らないものの、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

最悪の場合は、「未成年者略取及び誘拐」の罪(未成年者略取等罪)に問われ、「三月以上七年以下の懲役」を受けてしまうかもしれません(刑法第224条)。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

子どもの連れ去りが違法となる状況

離婚後、子どもとずっと一緒にいたい、離婚した元配偶者のもとに返したくない、という理由で子どもを連れ去ると、違法行為となる可能性があります。

こちらでは、違法となる状況について説明します。

離婚前の親権争い中

夫婦が離婚する前に、夫婦の一方が勝手に子どもを連れて家から出ていくと、違法とみなされる可能性があるので注意しましょう。

離婚前は夫婦双方が子どもの監護権を有しています。

しかし、子どもを連れ出さなければいけない特段の理由がなく(例:配偶者から虐待を受けている等)、その連れ去る方法が粗暴で強引である等、悪質と判断された場合は未成年者略取等罪が成立するおそれもあります。

親権者でない

離婚後に親権者とならなかった親が、勝手に子どもを連れ去ったケースが該当します。

親権者でない親による、子どもの連れ去りが違法となる事例は次の通りです。

  • 面会交流の実施後、親権者のもとに子どもを返そうとしない
  • 親権者である元配偶者宅に押しかけ、子どもを強引に連れ去った
  • 子どもを学校等の通学路で待ち伏せ、通学または帰宅途中の子どもを連れ去った 等

特に、元配偶者宅に押しかけたり、通学路で待ち伏せたりして、子どもを連れ去る行為は、実の親であっても未成年者略取等罪に問われる可能性があります。

子どもの連れ去りが違法とならない状況

自分の子どもを連れ去ったとしても、違法とはならないケースもあります。

主に次の2つのケースがあげられます。

夫婦で合意している場合

次のようなケースならば、違法とはなりません。

  • 子どもが自分のもとを離れて、相手方としばらく同居させることに合意した
  • 子どもが親権の無い親ともっと長く過ごしたいと希望し、親権の無い親が元配偶者(親権者)にその希望を告げて、元配偶者が許可した 等

親権者の合意があれば、面接交流を延長しても、親権者宅から子どもを連れ出し遊園地や映画に行っても、もちろん構いません。

子どもの安全を確保する場合

相手方の合意がなくても、同居している子どもが虐待を受けている、または虐待を受けそうなとき、子どもを保護する目的で連れ去る行為は違法ではありません。

なお、親権者の暴力や性暴力に限らず、ネグレクト(保護者が責務を怠たる行為)からの保護も同様です。

ネグレクトには次のようなケースが該当します

  • 子どもに何日も食事を与えない
  • 子どもが病気になっても病院に受診させない
  • 下着など不潔な状態で子どもを放置する 等

子どもの連れ去りをしてしまったら起こり得るリスク

子どもを連れ去ったからといって、連れ去った親がいきなり警察から逮捕されるわけではありません。

基本的に家庭裁判所による調停や審判で、問題の解決を図っていきます。

調停

子どもを連れ去ってしまうと、相手方が子どもを取り戻すため、家庭裁判所に調停の申立てを行う可能性があります。

調停とは家庭裁判所が関与し、当事者の合意を図る解決方法です。

調停を行うときは、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に「子の引渡し調停」の申立てを行います。

申し立てるときは、次の書類等を提出します。

  • 家事調停(子の引渡し)申立書とその写し1通
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
  • 収入印紙代:子ども1人につき1,200円
  • 切手代:1,000円程度

子どもを連れ去った親には、原則として申立書の写しが送付されるので、自宅に届いたら内容をよく確認しましょう。

なお、調停は非公開で行われ、基本的に子どもの両親が出席しなければいけません。

調停時には家庭裁判所から選ばれた調停委員が当事者の言い分を聴き、双方の子の引き渡しに関して主張の隔たりを埋める助言、解決案も提示します。

当事者が話し合いで納得したら、家庭裁判所で合意内容を記載した調停調書が作成され、手続きは終了します。

出典:子の引渡し調停 | 裁判所

審判

子の引渡し調停が不成立となっても、自動的に審判手続へ移行し、子の引渡しに関する決定が審理されます。

裁判官は当事者双方の主張に加え、子どもの年齢や性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等も踏まえ、子どもの意向を尊重する等、一切の事情を考慮したうえで、審判を行います。

審判前の保全処分

離婚後の連れ去りで、子どもが穏やかに生活できているなら、親権者および連れ去った親が、冷静に問題の解決を行っていきましょう。

しかし、「子どもに差し迫った危険がある。」と親権者が判断したら、審判の申立ての他に、審判前の保全処分を申立てられるかもしれません。

この申立てがあると、裁判所は申立人(親権者)へ子どもを仮に引き渡すよう、連れ去った親に命ずる処分(保全処分)を下す可能性もあります。

子どもの連れ去りで気を付けるべきこと

子どもを連れ去った親が、連れ去りの状況によっては、「未成年者略取及び誘拐」の罪(未成年者略取等罪)に問われる可能性がある点に注意しましょう。

有罪となってしまうと罰金刑はないので、3か月〜7年以下の懲役に処されてしまいます。

また、子どもが精神的に不安定とならないよう配慮も必要です。もしも、子どもが親権者の元へ帰りたいと希望したら、無理に押しとどめず帰宅させましょう。

子どもを連れ去ってしまったらすべきこと

子どもを連れ去ってしまった場合は、速やかに弁護士と相談しましょう。

弁護士は連れ去った親の事情をヒアリングしたうえで、最適な対応方法をアドバイスします。

具体的には次のような提案が可能です。

  • 子どもが相手方に虐待を受けており、保護を目的に連れ出した場合は今後の対応の助言
  • 離婚後、親権者が「子の引渡し調停」を申し立てた場合の対応方法
  • 子どもの親権に納得がいかない場合は、家庭裁判所に「親権者変更の申立て」を行う提案等

弁護士に代理人を依頼すれば、親権者との交渉はもちろん、調停で依頼者の立場にたった主張も行えます。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、親権の無い親が子どもを連れ去った後のリスクや、連れ去った後の有効な対応方法等について詳しく解説しました。

子どもの身に危険が迫った場合の連れ去りはやむを得ない行動です。しかし、親の身勝手な判断による連れ去りには、刑罰が適用される可能性もあるので注意しましょう。

子どもの親権で悩んだら、なるべく弁護士に相談し、対応を話し合ってみてはいかがでしょうか。

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