家賃滞納者に取るべき法的措置は?種類・メリット・注意点を徹底解説

2024年11月13日

家賃滞納者に取るべき法的措置は?種類・メリット・注意点を徹底解説

  • 家賃滞納者に法的措置をとりたい。条件や手続きについて教えて欲しい。
  • 家賃滞納者に法的措置をとると、どのようなメリットを得られるのか知りたい。
  • 法的措置をとる場合は、専門弁護士に相談した方がよいのだろうか?

賃借人の家賃滞納問題を、裁判等で解決したい賃貸人も多いことでしょう。

ただし、法的措置による解決を目指すには、一定の条件を満たす必要があります。

そこで今回は、家賃滞納トラブルの解決に携わってきた専門弁護士が、家賃滞納で実施される法的措置の種類、法的措置の手順等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 法的措置の種類には明け渡し請求訴訟や少額訴訟、強制執行があげられる
  • 法的措置をとれば、家賃滞納者にプレッシャーを与えられる他、解決も早まる場合がある
  • 法的措置にかかる主な費用には裁判費用、弁護士費用等がある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

家賃滞納で取るべき法的措置の種類

法的措置にはいくつか種類があります。ただし、法的措置をとる前に家賃滞納者への通知が必要です。

法的措置を予告した場合は、家賃滞納者が支払いに応じたり、話し合いを持ちかけてきたりする場合があります。

督促状等の送付

督促状とは、家賃滞納者に家賃の支払いを促す通知です。法的措置とはいえませんが、法的措置をとる前段階として、家賃滞納者に支払いを要求する方法です。

督促状は複数回送付した方がよいでしょう。

  • 1回目の送付:家賃滞納者に自主的な支払いを促す。家賃の振込みが確認できなかったので、速やかに家賃を支払うよう要求する。1回目の送付では法的措置を行う旨の記載は不要。
  • 2回目以降の送付:家賃滞納者に自主的な支払いを促すが、指定期日までに支払わない場合は連帯保証人へ報告する旨を記載する。

連帯保証人に報告されるのをおそれ、家賃滞納者が支払に応じる可能性があります。2回目の送付でも反応がなければ、連帯保証人に報告・支払いの要求や、家賃滞納者への3回目の督促状送付を行っても構いません。

催告書を作成し、内容証明郵便を利用した送付も有効です。

催告書には次のような内容を記載しましょう。

  • 滞納分の家賃、支払い金額
  • 支払いを指定した期日、支払方法(振り込む金融機関、口座番号の明記)
  • 期日を経過したら賃貸借契約を解除する旨
  • 法的措置を行う旨

内容証明郵便で送付すれば、催告をした証明になります。内容証明郵便の控えは、裁判所に法的措置を取るとき、証拠として提出しなければいけません。

明渡請求訴訟

催告書を内容証明郵便で送付後、指定期日までに支払いが行われないならば、賃貸人は賃貸借契約を解除し、明け渡し請求訴訟を提起します。

訴訟の提起は、賃貸物件の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所(財産上価額が140万円以下なら可能)に行います。

賃貸人の主張が認められたら、裁判所は判決で家賃滞納者に賃貸物件の明け渡しを命じます。

少額訴訟

家賃の滞納金額が60万円以下なら「少額訴訟」の提起も可能です。少額訴訟は簡易裁判所で行われます。

少額訴訟の審理は原則1回で、ただちに判決が言い渡されます。滞納金額が低額ならば少額訴訟を利用してみましょう。

ただし、1回で審理が終了するので、調べる証拠が多い場合には向かない法的措置なので注意しましょう。

賃貸人が少額訴訟を選んだ場合は、審理の当日に主張したい内容を全て話せるよう、前もって証拠等を揃えておく必要があります。

強制執行

裁判所が判決で賃貸物件の明け渡しを命じても、家賃滞納者が居座り続けている場合、賃貸人は裁判所に強制執行の申立てが可能です。

強制執行の申立てが認められたら、裁判所は家賃滞納者へ指定期日までに退去するよう催告書を送付します。それでも家賃滞納者が従わない場合、滞納者宅に執行官・専門業者が向かい、強制執行を開始します。

賃貸物件に居座る滞納者・同居人は強制的に退去させられ、物件内の家財道具は撤去されます。

家賃滞納問題で法的措置を取るメリット

家賃滞納者との話し合いで、家賃の支払いや自主的な退去に合意できるなら、穏便に滞納問題が解決できます。

しかし、話し合いがなかなか進まない場合や、家賃滞納者に無視されている場合は、法的措置をとった方が、早期の解決を図れることでしょう。

相手にプレッシャーを与えられる

法的措置を取れば、家賃滞納者にプレッシャーを与えることができます。

裁判所に訴えの提起後、家賃滞納者が裁判の期日に出廷せず、答弁書を提出しなかった場合、賃貸人の主張が優先されるでしょう。

家賃滞納者には不利な状況となるため、法的措置は相手方に大きなプレッシャーを与える効果があります。

裁判では、双方の主張や証拠が出揃い、尋問手続が終わると、裁判所から和解を提案されるケースが多いです。

家賃滞納が原因で裁判にまで発展しているので、家賃滞納者は問題の解決に前向きとなっていることでしょう。和解案に双方が合意すれば、裁判は終結します。

手続きをスムーズに進められる

法的措置を取れば、問題解決のための手続きをスムーズに進められます。

法的措置を行った場合、家賃滞納者は裁判等で自分の言い分を主張しなければ不利な状況に追い込まれます。

裁判では、賃貸人からの退去要求を無視し続ける方法は通用しません。そのため、家賃滞納者が協力的であっても非協力的であっても、手続きは支障なく進行します。

ただし、家賃滞納者による妨害工作の危険があるならば、「占有移転禁止の仮処分」を検討しましょう。

想定される妨害工作には、家賃滞納者が第三者へ物件を転貸し、入居者を頻繁に変更する方法があげられます。

訴訟の提起後、賃借人が妨害工作をすれば、入居者を変えるたびに被告の変更も必要となります。このような状態では、訴訟手続きが全く進まない事態となるでしょう。

前もって占有移転禁止の仮処分をしていれば、訴訟の相手方となる被告を固定できるので、安心して訴えを提起できます。

解決が早まる

法的措置を取れば、迅速な解決が期待できます。

裁判所の明け渡し判決すら家賃滞納者が無視している場合、交渉による解決もできますが、強制執行による強制退去も可能です。

裁判所による強制執行ならば、家賃滞納者の強制的な退去、家財道具の撤去が可能なので、迅速な問題解決が図れることでしょう。

家賃滞納から法的措置を取る流れ

家賃が滞納されているからといって、いきなり裁判所に明け渡し請求訴訟の提起をしたり、強制執行の申立てを行ったりすることは認められません。

事前にいろいろな手順を踏んだうえで、法的措置が可能となります。

支払い催促

家賃滞納者に滞納分の家賃を支払うよう通知または連絡します。次のようなステップで要求してみましょう。

  1. 1.期日に口座振込が行われなかった、または口座引落ができなかった:電話、
  2. ール、手紙で賃借人に連絡
  3. 2.1週間経っても家賃が支払われない:1回目督促状送付
  4. 3.1か月経っても家賃が支払われない:2回目督促状送付
  5. 4.2回目の督促をして1か月経っても家賃が支払われない:催告書を内容証明郵便で送付

内容証明郵便で送付しても、家賃滞納者が家賃の支払いを拒否する場合は、賃貸借契約の解除を通知し、法的措置の準備を開始しましょう。

連帯保証人への催促

家賃滞納者が賃貸借契約の解除や法的措置へ移る前に、連帯保証人に督促状や内容証明郵便を送付しても構いません。

なぜなら連帯保証人は、滞納者(主債務者)の債務(家賃支払い等)を保証する義務があるからです。

連帯保証人が家賃支払いに応じる場合、賃貸借契約は継続し、その後の法的措置も不要となります。

家賃滞納者が家賃保証会社と保証契約を締結している場合は、家賃保証会社に連絡を取りましょう。家賃保証会社なら迅速に家賃滞納分を支払います。

契約解除

家賃滞納者や連帯保証人のいずれに家賃の支払いを要求しても、支払いに応じなかった場合、賃貸人は賃貸借契約を解除します。

家賃滞納者に賃貸借契約の解除を通知(内容証明郵便が好ましい)し、法的措置の準備を開始しましょう。

家賃滞納者に催告書を送付する段階で、明け渡し請求訴訟に必要な書類を収集していれば、スムーズに訴訟提起ができます。

明け渡し請求の申立て・訴訟

賃貸借契約の解除後、明け渡し請求訴訟を提起します。

訴えの提起は、賃貸物件の所在地を管轄する裁判所で行います。訴える場合は、様々な提出書類を収集しなければいけません。

  • 訴状、物件目録:裁判所の窓口等で用紙を取得、必要事項を記入する
  • 固定資産課税台帳登録事項証明書:市区町村役場で取得、1件につき手数料300円
  • 登記事項証明書:法務局で取得、手数料は480円~600円
  • 内容証明郵便の控え:郵便局で取得する
  • 配達証明書:郵便局で取得する
  • 賃貸借契約書:賃貸人が保管している書類を準備

賃貸借契約書をはじめ、すでに内容証明郵便を送付しているなら、控えと配達証明書は提出のときに自分で揃えなければいけません。

ただし、弁護士に訴え提起の代行を依頼した場合、訴状の作成や固定資産課税台帳登録事項証明書、登記事項証明書の収集は委任できます。

強制執行

明け渡し請求訴訟で賃貸人の主張が通り、家賃滞納者に賃貸物件の明け渡しが命じられても、判決日翌日から2週間以内に控訴が可能です。

しかし、家賃滞納者が控訴をしないばかりか、依然として賃貸物件に居座り続けている状態の場合は、強制執行の申立てが可能です。

賃貸人は申立てのとき、次の書類を揃えなければいけません。

  • 強制執行の申立書:裁判所の窓口等で用紙を取得、必要事項を記入する
  • 債務名義:明け渡し請求訴訟を行った場合、裁判所から受け取った和解調書や判決書が該当する
  • 送達証明書:家賃滞納者に債務名義が送達された旨を証明する文書で、裁判所に申請し取得できる。証明事項一つにつき収入印紙150円分が必要。
  • 執行文:裁判所が強制執行を認めた証明書で、裁判所に申請し取得できる。1通につき収入印紙300円分が必要。

強制執行の申立てが認められたら、裁判所は家賃滞納者に催告書を送付し、退去に従わない場合、強制執行が開始されます。

家賃滞納の法的措置にかかる主な費用

家賃滞納の法的措置には、弁護士費用や裁判費用等、様々な費用がかかります。

費用総額100万円以上になる可能性が高いです。事前にどれくらいの費用が必要となるのか、十分把握したうえで法的措置の準備を進めましょう。

弁護士費用

弁護士費用は法律事務所ごとに異なりますが、55〜80万円程度が目安となります。

内訳は次の通りです。

  • 相談料:無料~5,500円(30分)
  • 着手金:22~33万円程度
  • 成功報酬:22〜44万円程度
  • 日当:1~3万円程度

ただし、家賃滞納問題の解決が長期化してしまう場合、追加費用を請求される可能性があります。

着手金は弁護士に依頼するとき必ず支払う費用で、基本的に一括払いとなります。

一方、成功報酬は家賃滞納者との和解成立や勝訴判決を得た場合、弁護士に支払う必要があるお金です。なお、成功報酬は分割払いに応じる法律事務所が多いです。

日当は裁判所へ弁護士が出廷すると発生する費用となります。何度も出廷する事態になれば、その分、費用が加算される場合もあるでしょう。

なお、法律事務所の方で裁判費用や内容証明郵便費用等を立て替えた場合、立て替えた分のお金(実費)も請求される可能性があります。

ほとんどの法律事務所では、事前に実費を預けてもらい、余った金額があれば依頼者に返還する仕組みをとっています。

裁判費用

明け渡し請求訴訟を提起するときの費用は、次の通りです。

  • 印紙代:1万円前後(賃貸物件の固定資産評価額が基準)
  • 予納金:6,000円程度(裁判所からの書類の送付に必要な切手代)

なお、占有移転禁止の仮処分を事前に申し立てるとき、保証金を法務局に預ける必要があります。

保証金の額は、家賃の3〜6か月が相場とされています。たとえば、家賃5万円のマンションでは、15〜30万円の保証金が必要です。

なお、保証金は訴訟手続きを終えたら賃貸人に返還されます。

内容証明郵便費用

内容証明郵便は、催告を証明する郵送サービスなので、一般的な郵送物より費用は割高となります。

費用の内訳は次の通りです。

  • 郵便物の料金:110円~
  • 一般書留の加算料金:480円~
  • 内容証明の加算料金:1枚480円~
  • 配達証明料:350円~

合計で1,420円以上の費用になります。

強制執行費用

強制執行に関する費用は、賃貸物件の種類に応じて金額に差が出てきます。

たとえば、マンションの場合なら40万円以上、一軒家の場合なら100万円以上かかる可能性があります。

基本的な費用の内訳は次の通りです。

  • 執行官に対する予納金:6~7万円程度
  • 運搬用車両:5~10万円程度
  • 残置物保管費用:10~20万円程度

強制退去執行の費用も高額になる傾向はありますが、家賃滞納者に請求が可能です。ただし、滞納者の資産状況を考慮すれば、請求はかなり難しいといえるでしょう。

執行補助業者費用

強制執行に関しては執行官の他に、執行補助業者(ドアを解錠したり、荷物を運び出したりする専門業者)への報酬も必要です。

費用の内訳は次の通りです。

  • 解錠技術者報酬:5万円程度
  • 執行補助者、作業員報酬:15~50万円程度

強制執行を行うとき、賃貸物件の種類や大きさ、家財道具の量等によって費用は異なります。

家賃滞納問題で法的措置を取るなら弁護士に相談を

今回は、家賃滞納トラブルの解決に尽力してきた専門弁護士が、法的措置の手順や必要な費用等を詳しく解説しました。

家賃滞納者の支払い拒否に憤っていても、賃貸人が強引に賃貸物件へ押し入って、滞納者を追い出したり、家財を撤去したりする「自力救済」は禁じられています。

法的措置を望む場合は、法律に則って冷静に裁判手続きを進めていく必要があります。

家賃滞納に悩んだら自分だけで解決しようとは考えず、弁護士と相談し対応を協議してみましょう。

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