LINEでの開示請求はどう進める?法的リスクと被害者・加害者の対策法を解説!
2024年11月23日
- LINEで誹謗中傷されている。LINEでも開示請求は進められるのか。
- LINEで誹謗中傷したら開示請求をされてしまった。今後どうなるのか心配だ。
- LINEの開示請求を進めるため、弁護士に相談した方がよいだろうか?
LINEは日本のモバイルメッセンジャーアプリケーションです。日本や台湾、タイで利用者が多いです。
一方で、LINE上での誹謗中傷が跡を絶ちません。誹謗中傷を放置すると、被害者には更なる拡散のリスクがあり、加害者は民事責任・刑事責任を追及される可能性があります。匿名のアカウントであっても、相手に開示請求されると特定されます。
そこで今回は、LINE上のトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、LINEで加害者を特定する方法、加害者が問われる刑罰等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- LINEで加害者が誰かを特定するには、一定の条件や手続きが必要
- 誹謗中傷の加害者は、被害者から損害賠償請求や刑事告訴を受ける可能性がある
- LINEでの開示請求を検討するのであれば、専門弁護士に相談しよう
LINEで開示請求はできるか
LINE上であなたが誹謗中傷を受けたら、加害者に対し損害賠償請求や刑事責任の追及が可能です。その前に加害者が誰であるかを特定しなければなりません。
ただし、LINEを運営するLINEヤフー株式会社は、情報開示を厳重に制限しています。
LINEヤフーは、加害者(投稿者)の同意がなければ、法令に基づく捜査機関からの要請等を除き、被害者はおろか弁護士からの照会にも応じない姿勢です。
そのため、LINEが決めた条件に従い、開示請求を行う必要があります。
令状がある場合
捜査機関からの適切な要請(令状がある等)があれば、LINEヤフーは情報開示に協力する方針を示しています。
次のような条件が満たされていれば、開示に応じる可能性は高いです。
- 警察等の捜査機関から情報開示を求められた
- LINEヤフー側が確認し、特定の人物(加害者)が誹謗中傷をしていると認められた
ただし、あなたの開示請求が通る前提条件として、警察が正式に被害届を受理し、捜査を開始していなければなりません。
違法性が認められる場合
LINE上で見過ごせないような深刻な違法行為(例:恐喝や脅迫、ストーカー行為等)が行われている場合、LINEヤフーが早急に開示請求に応じる可能性があります。
深刻な違法行為があった場合、LINEのグループであっても1対1のトークであっても、同様にLINEヤフー側は対応します。
ただし、「バカ」「アホ」等、単なる悪口程度にとどまる場合は、LINEヤフー側から深刻な違法行為と見なされない可能性が高いです。
裁判所経由の場合
あなたが「発信者情報開示請求」又は「発信者情報開示命令」の裁判手続きを行った場合、LINEヤフー側は開示請求に応じます。
開示請求・命令の場合、あなたは裁判所に次のような申立てを行います。
- 発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条):LINEヤフーを相手に、あなたが「発信者情報開示仮処分」を申し立て、裁判所は仮処分を行う
- 発信者情報開示命令(同法第8条):LINEヤフーを相手に、あなたが「発信者情報開示請求」(非訟)を行い、裁判所がプロバイダにログ提供命令を下す
ただし、LINEヤフーを相手とした仮処分や命令で、誹謗中傷の投稿をした加害者の氏名・住所が判明するわけではありません。
LINEヤフーは次の内容を開示します。
- 発信者(加害者)のIPアドレス
- スマートフォンのインターネット接続サービス利用者識別番号
- SIMカード識別番号
- タイムスタンプ(発信時間)
- IPアドレスと組み合わされたポート番号
IPアドレスが判明すれば、加害者の利用していたプロバイダがわかります。今度はプロバイダに開示請求を行い、加害者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス等を開示させます。
ネットへの投稿はプロバイダを通じて保存されていますが、投稿(ログ)保存は3〜6か月程度と短いです。迅速に裁判手続きを行う必要があります。
LINEオープンチャットの場合
LINEで2019年に登場した「LINEオープンチャット」は、不特定多数の人が参加できるサービスです。
最大5,000人まで同時にリアルタイムで会話できる便利な機能ですが、利用中に誹謗中傷を受ける場合もあるでしょう。
こちらのケースでも、「発信者情報開示請求」又は「発信者情報開示命令」の手続きを利用し、LINEヤフー側に開示請求できます。
LINEで開示請求する流れ
誹謗中傷の加害者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を望むなら、LINEヤフー側の協力が必要不可欠です。
LINEヤフー側の情報提供とプロバイダの開示を経たうえで、損害賠償請求・刑事告訴が可能となります。
開示請求
「発信者情報開示請求」又は「発信者情報開示命令」の裁判手続きで、LINEヤフー側への開示請求ができます。
誹謗中傷の投稿を発見した場合、迅速に手続きを進める必要があります。
なぜなら、プロバイダの投稿(ログ)保存期間は、3〜6か月程度だからです。
プロバイダが情報開示に至るまでの期間は、次の通りです。
- 発信者情報開示請求:6か月~1年程度
- 発信者情報開示命令:3か月未満(半年以上かかる可能性もある)
LINEヤフー側の開示請求に手間取っていると、プロバイダから加害者の情報が得られなくなる場合もあります。
自分の力だけで手続きを進めるのではなく、法律の専門家の力を借りて対応した方がよいです。
損害賠償請求
誹謗中傷の加害者が特定できたときは、加害者に「損害賠償請求」をしましょう。
損害賠償請求の通知は「内容証明郵便」を利用すると、加害者に損害賠償請求した証拠となります。
損害賠償の他、誹謗中傷の削除要求も可能です。指定期限までに賠償金の支払い、投稿の削除を実行しなければ、法的措置(損害賠償請求訴訟)を行うと記載します。
加害者は法的措置をおそれ被害者の要求に応じ、あるいは話し合いを申し出る場合もあるでしょう。
指定期限までに加害者が何ら対応しなければ、加害者の住所地を管轄する裁判所に、「損害賠償請求訴訟」を提起します。
あなた(原告)の主張が認められれば、加害者(被告)に損害賠償を命じる判決が言い渡されます。
刑事告訴
誹謗中傷の内容が名誉毀損又は侮辱行為にあたる場合は親告罪になるため、加害者の刑事責任を追及するためには刑事告訴が必要です。
警察署に被害届が提出されていても、加害者を特定した後に告訴しなければ、捜査機関は逮捕や起訴を行えません。
刑事告訴し、捜査機関が加害者を逮捕・起訴した場合、刑事裁判が開催され、加害者は懲役刑・禁錮刑・罰金刑等を受ける可能性があります。
LINEで開示請求された加害者が問われる法的リスク
LINE上で誹謗中傷を行った加害者は、名誉毀損罪や侮辱罪で刑事責任を追及されます。
その他にも、あなたは肖像権侵害やプライバシー侵害を理由に、加害者に損害賠償請求が可能です。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、LINE上で公然と事実を摘示し、名誉を侵害する罪です。
LINE上での誹謗中傷の内容が真実でも嘘でも、事実の摘示に該当します。誹謗中傷であなたの社会的評価が失墜した場合、本罪で刑事責任の追及が可能です。
次のようなLINE上での発言が名誉毀損罪の対象となります。
- 「〇県〇市に住む〇〇(あなた)は学校で同級生に暴力を振るい、植物状態にした犯人。鬼畜の所業だ」
- 「〇〇(あなた)は精神病院に通院している小児愛者だ。女子小学生を見る目が異常で、いつか強姦事件を起こすだろう」
LINE上に投稿した加害者が、名誉毀損罪に問われ有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
侮辱罪とは、LINE上で公然と事実を摘示せず、不特定のユーザーが閲覧できる状況で侮辱する罪です。
次のようなLINE上での発言が侮辱罪の対象となります。
- 「お前は知能が低すぎる。どっか行け」
- 「この中卒の低学歴が。大卒様に意見する気か!」
LINE上に投稿した加害者が、本罪で有罪判決を受けた場合、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第231条)。
肖像権侵害・プライバシー侵害
LINE上で許可なく第三者が、あなたの顔や容姿の撮影画像・動画を投稿した場合、肖像権侵害を理由に損害賠償請求が可能です。
また、あなたの私生活に関する情報が無断でLINE上に投稿された場合は、プライバシーの侵害を理由として、損害賠償請求ができます。
肖像権侵害・プライバシー侵害は、いずれも「不法行為責任」に該当し、最終的には損害賠償請求訴訟で解決が図られます(民法第709条・710条)。
請求可能な損害賠償額は侵害の程度にもよりますが、10〜50万円程度が目安です。
LINEで開示請求するためにすべきこと
プロバイダの投稿(ログ)保存期間は非常に限られているため、誹謗中傷の加害者の特定は迅速に行わなければなりません。
誹謗中傷の証拠をしっかり保存し、弁護士の助言やサポートを受け、スムーズに手続きを進めましょう。
証拠保存
LINE上での誹謗中傷の投稿は、スクリーンショットで撮影し証拠として保存するのが一般的です。
保存する場合は、誹謗中傷の投稿内容の他、投稿日時・オープンチャットのURL等が確認できるように撮影しましょう。
スマートフォン画面よりもパソコン画面の方が大きいので、撮影はパソコン画面で行いましょう。
弁護士への相談
開示請求を自分だけの力で進めていくのが不安なときは、ネット上のトラブル解決に実績のある弁護士と相談しましょう。
弁護士はLINE上の誹謗中傷の内容を確認し、次のようなアドバイスを行います。
- LINE上の誹謗中傷がどのような罪にあたるか
- 開示請求・開示命令の手順
- 開示請求・開示命令をスムーズに進めるポイント
- 弁護士に代理人を依頼するメリット
弁護士のアドバイスを受け「開示請求の手続きを弁護士に任せた方がよい」と感じたときは、委任契約を締結しましょう。
弁護士はあなたの代理人として、開示請求・開示命令の手続きを迅速に進めていきます。
LINEで開示請求されたことがわかるタイミング
あなたがLINE上で相手を誹謗中傷した場合、被害者があなたの個人情報を特定するため、裁判手続きを開始する可能性があります。
誹謗中傷の件で、あなたの個人情報の開示が検討されている場合、契約プロバイダからあなたに、「発信者情報開示請求に係る意見照会」の通知が届くでしょう。
「被害者から開示請求を受けたので、あなたの情報を開示してよいか?」と尋ねる通知です。
開示を拒否しても構いませんが、契約プロバイダはいずれ裁判所から、あなたの個人情報の開示を命じられるでしょう。
意見照会の通知が届いたときは、速やかに弁護士と相談し対応を協議した方がよいです。
LINEで開示請求されたらすぐすべきこと
意見照会の通知が届いたら、いずれあなたの個人情報が被害者に開示され、損害賠償請求や刑事告訴されるでしょう。
誹謗中傷を行ったあなたは、速やかに今後の対応を検討する必要があります。
弁護士への相談
あなたは現状を冷静に受け入れ、民事裁判や刑事裁判に詳しい弁護士と相談しましょう。
弁護士は意見照会の通知内容を確認し、次のようなアドバイスを行います。
- LINE上で誹謗中傷を行った自覚はあるのか
- 意見照会書の記載の仕方
- 損害賠償請求を受けた場合の対応
- 刑事告訴された後の対応
- 示談で問題を解決する必要性
弁護士と相談後、あなたの私選弁護人としてサポートを依頼しましょう。
弁護士はあなたの代理人として、被害者との示談交渉や、捜査機関との話し合いを行います。
意見照会書への回答
あなたに意見照会通知が届いた場合、照会書の記載内容を確認したうえで、開示に同意するか拒否するかを回答します。
誹謗中傷の投稿をした事実を認める場合は、素直に同意して返送した方がよいでしょう。返送後、弁護士と今後の対応を協議していきます。
一方、全く身に覚えがない場合は、開示を拒否する意思表示も可能です。ただし、拒否する回答を返送する場合、プロバイダ側が納得できるような、説得力のある反論を行う必要があります。
LINEでの開示請求なら春田法律事務所にご相談を
今回はLINE上のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、LINEで加害者を特定する条件や手順等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、ネット・トラブルの解決に実績豊富な法律事務所です。弁護士とLINE上で発生したトラブルについて相談し、問題の解決方法を見いだしましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。