立退料の相場と計算方法|居住用・事業用別に弁護士が解説
最終更新日: 2025年09月29日

立退きを求められたとき、多くの人がまず気になるのは「立退料はいくらが相場なのか」という点です。
実際には、立退料に明確な基準はなく、物件の種類や立退き理由、移転に伴う費用などをもとに個別に算定されます。そのため、提示された金額が妥当かどうか判断できず、不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、立退料の意味や内訳、居住用・事業用それぞれの相場、計算の考え方、交渉のポイントを整理しました。最終的には専門家のサポートを得ることで、納得のいく金額で合意できる可能性が高まります。
立退料とは?
立退料とは、貸主が借主に立退きを求める際に、立ち退きが認められるための「正当の事由」を補完するために支払う金銭的補償のことです。法律で金額や計算式が決まっているわけではなく、当事者間の交渉によって決まるのが特徴です。
補償の目的は、借主が新しい住居や事業所へ移転するにあたり発生する費用や、生活・営業上の不利益を埋め合わせることにあります。
立退料の内訳
立退料の中には、単なる引っ越し費用にとどまらず、多岐にわたる補償要素が含まれます。
- 引っ越し費用
荷物の運搬費用、引っ越し業者への依頼料。家具や大型家電等が多い場合は高額化します。 - 新居の契約費用
敷金・礼金・仲介手数料・保証料など、新しい物件を借りる際の初期費用。居住用だけでなく、事務所や店舗の場合は保証金が高額になることもあります。 - 事業用移転費用
店舗や事務所を移す場合、内装工事・看板の設置・広告宣伝・設備の移設など、多大の費用がかかることもあります。 - 営業損失の補填
移転準備や休業期間による売上減少。特に店舗の場合は「顧客を失うリスク」まで含めて補償対象にされることもあります。 - 生活上の不利益の補填
例えば通勤時間が増える、生活環境が悪化するなど、金銭で評価しにくい損失についても話し合いの中で加味される場合があります。
こうした要素を一つひとつ積み上げていくことで、最終的な立退料の額が形づくられていきます。
立退料の相場は?
賃貸マンション・アパート
一般的な目安は家賃の6か月〜12か月分といわれます。ただし、老朽化による建て替えや修繕が理由の場合は、家賃数か月分でまとまることもあります。
逆に、借主が立退きを強く拒否できる事情がある場合には、より高額の補償が提示されることもあります。
一軒家
賃貸の場合には賃貸マンションやアパートと同様に家賃の6か月〜12か月分を目安として立退料が決められることが多いといわれます。
持ち家の場合であっても、再開発や土地区画整理事業などにより立ち退きを求められることもあり、一軒家の場合には土地の価格や移転補償などの要素をふまえて立退料が計算されることが多いです。
店舗
店舗の立退きでは、補償額が最も高額になる傾向があります。単なる移転費用だけでなく、営業権の価値や売上減少の補償が交渉の中心になるからです。
小規模な飲食店でも数百万円規模、大型店舗や老舗の商店街の店舗では家賃の1〜3年分、時には数千万円規模に達することも珍しくありません。
事務所
事務所は店舗ほど営業権補償が大きく評価されない一方で、コピー機やサーバーなど移設に費用がかかるケースもあります。
相場としては家賃の6か月〜1年分程度に収まることが多いといえるでしょう。
立退料の計算方法
立退き料を算定する際には、いくつかの要素を組み合わせて考えます。
- 家賃水準
高額物件であれば移転費用も高くなるため、補償も増額されやすいです。 - 立退き理由
老朽化による建て替えか、貸主の自己使用か、再開発かなど、立退きを求める理由によって必要になる補償額も変わります。 - 移転にかかる実費
引っ越し代、敷金・礼金、仲介手数料、改装費、設備移設費など。見積もりを出して具体的に示すことが有効です。 - 営業補償の有無
店舗や事務所の場合は、休業期間中の売上減少分や、顧客流出リスクをどの程度補填するかが大きな争点になります。 - 借主の立場の強さ
借地借家法では、借主の保護が強く働きます。貸主に「正当事由」が乏しい場合、裁判ではそもそも立退きを認めてもらえない可能性もあることから借主が強気の交渉にでることも多いため、立退料は高額化しやすくなります。
つまり、「家賃の何か月分」といった目安はあくまで参考値にすぎず、最終的にはケースごとの事情を具体的に積み上げて算定する必要があるのです。
弁護士のサポート内容
立退き交渉は、感情的な対立を伴いやすく、当事者同士だけではまとまりにくいことが多いものです。そこで弁護士を活用することには次のようなメリットがあります。
- 適正な立退料の算定
過去の判例や同種事例を参考に、妥当な金額の目安を提示してもらえます。 - 交渉代理
相手方との直接交渉を避けられるため、心理的負担を大きく軽減できます。 - 法的トラブルの予防
合意書や和解契約の内容を整えることで、後日の紛争を防げます。 - 裁判対応も視野に
交渉が決裂した場合でも、裁判手続きまで見据えて有利に準備を進められます。 - 早期かつ円満な解決
専門家が間に入ることで、感情的なもつれを解消しやすく、時間や費用の無駄を防げます。
立退料は数百万円単位に及ぶことも多く、交渉の成否によって負担額が大きく変わります。不安を抱えたまま話し合いを進めるよりも、早めに弁護士へ相談する方が結果的に有利になるケースがほとんどです。
FAQ(よくある質問)
Q:立退料に法律上の基準はありますか?
明確な基準はなく、借地借家法の「正当事由」と補償のバランスで決まります。判例や事例を参考に実際の損害内容をふまえて交渉する必要があります。
Q:提示された金額が低すぎる場合、どうすれば良いですか?
賃借人が任意に退去に応じない限り、賃貸人は裁判をして勝訴しなければ強制的に賃借人を追い出すことはできません。提示された内容に納得できない場合にはすぐに応じず、必要な移転費用や営業損失を具体的に試算し、増額を求めることを検討しましょう。弁護士に相談すれば、適正額の根拠を提示しながら交渉してもらえます。
Q:立退きを拒否することはできますか?
貸主に「正当事由」がない場合は拒否可能です。ただし、裁判になった場合には立退料の額や立退きを求めるに至った事情等に応じて退去に応じるべきか否かが最終的に判断されます。
Q:事業用物件の立退きでは、どんな費用を請求できますか?
引っ越し費用に加え、改装費・設備移設費・営業損失・広告費などについても請求できることが多いです。
Q:弁護士費用はどのくらいかかりますか?
事務所や案件の難易度によりますが、着手金と成果報酬の形が一般的です。立退料の増額が期待できる場合、費用以上のメリットが得られるケースも多いです。
まとめ
立退料は法律で一律に決められたものではなく、個別事情に応じて交渉で決まる補償です。居住用・事業用いずれの場合も、相場の目安はありますが、提示額が適正かどうかは状況によって異なります。
損をしないためには、過去の判例や具体的な費用をもとに冷静に判断することが欠かせません。もし提示額に納得がいかない場合や、交渉が難航している場合は、早めに弁護士へ相談することが解決への近道になります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





