サイバー攻撃の犯人特定は可能?費用と法的措置の全手順

2026年04月20日

サイバー攻撃の犯人特定は可能?費用と法的措置の全手順

企業や組織を狙うサイバー攻撃が急増する中、被害に遭った際に「犯人を特定して責任を追及できるのか?」と悩む方は少なくありません。

サイバー攻撃の犯人特定は専門的な知識と迅速な対応が求められるため、ハードルが高いのは事実です。

しかし、正しい手順を踏むことで特定に至るケースもあります。

本記事では、サイバー攻撃の犯人特定に関する難易度や、被害発生から法的措置までの全手順、費用の目安、相談すべき専門家について詳しく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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目次

サイバー攻撃の犯人特定は困難だが不可能ではない

なぜサイバー攻撃の犯人特定は難しいのか?

サイバー攻撃の犯人特定が難しい最大の理由は、攻撃者が身元を隠蔽する技術に長けているためです。

IPアドレスの偽装や、海外のサーバー、匿名化ネットワーク(Torなど)を経由して攻撃を行うため、発信元を辿ることが非常に困難になります。

また、ログ(通信記録)の保存期間が短い場合や、攻撃によって証拠となるデータ自体が消去されてしまうケースもあり、調査が行き詰まる要因となります。

それでも犯人特定を目指すべき理由

犯人特定が困難であっても、調査を行う意義は大きいです。

調査の過程で「どのような経路で攻撃されたのか」「どのデータが被害に遭ったのか」という被害の全容と原因が明確になります。

これにより、再発防止策を的確に講じることができ、顧客や取引先への説明責任を果たすことにもつながります。

また、内部犯行であった場合や、国内からの未熟な攻撃であった場合は、特定に至り法的措置を取れる可能性も十分にあります。

【全手順】サイバー攻撃発生から法的措置までのロードマップ

被害の覚知と初動対応(証拠保全)

サイバー攻撃に気づいたら、まずは被害の拡大を防ぐためにネットワークから端末を物理的に切断します。

このとき、電源を切るとメモリ上の重要な証拠(揮発性データ)が消えてしまうため、電源は入れたままにしておくことが重要です。

これが犯人特定に向けた最初の証拠保全となります。

社内での情報共有と対応体制の構築

速やかに社内の対策チーム(CSIRTなど)や経営陣に報告し、情報共有を行います。

誰が指揮を執り、どの部門がどのように動くのか、対応体制を明確にすることで、その後の調査や外部との連携がスムーズに進みます。

専門家への相談(フォレンジック調査会社・弁護士)

自社内だけでサイバー攻撃の犯人を特定するのは極めて困難です。

証拠を正確に抽出・分析するために、デジタル機器の鑑識を行う「フォレンジック調査会社」に依頼しましょう。

同時に、今後の法的措置や対外的な対応を見据え、サイバー犯罪に詳しい弁護士にも相談しておくことが推奨されます。

犯人特定に向けた調査の実施

フォレンジック調査会社が、サーバーや端末のログ、マルウェアの挙動などを詳細に解析します。

通信履歴やアクセスログから攻撃者のIPアドレスや攻撃手法を割り出し、犯人特定の手がかりを探ります。

警察への被害届提出・刑事告訴

調査によって犯罪の証拠が揃い始めたら、管轄の警察署(サイバー犯罪対策課など)に被害届を提出します。

刑事事件として立件を求める場合は、弁護士のサポートを受けながら刑事告訴を行い、警察の強力な捜査権限による犯人の割り出しを期待します。

犯人特定後の法的措置(民事・刑事)

警察の捜査や調査によって犯人が特定された場合、刑事責任の追及と並行して、被った損害に対する賠償を求める民事訴訟などの法的措置を実行します。

※サイバー攻撃が発生した際のより詳細な対応フローや、インシデント対応の全体像についてさらに深く知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

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サイバー攻撃の犯人特定にかかる費用の目安

費用の内訳:調査費用と弁護士費用

サイバー攻撃の犯人を特定し、法的措置を取るためには、主に「フォレンジック調査費用」と「弁護士費用」の2つが発生します。

被害の規模や調査の深度によって金額は大きく変動します。

フォレンジック調査費用の相場

調査対象となる端末の台数やサーバーの規模によりますが、一般的な相場は数十万円から数百万円程度です。

端末1台の簡易な調査であれば30万円〜50万円程度から可能ですが、ネットワーク全体の詳細な解析が必要な大規模インシデントの場合は、300万円以上かかることも珍しくありません。

法的措置にかかる弁護士費用の相場

弁護士費用は、相談料、着手金、報酬金などで構成されます。

被害届や刑事告訴のサポート、発信者情報開示請求などの手続きを依頼する場合、着手金で数十万円、事件解決時(損害賠償を獲得した際など)の報酬金として経済的利益の10〜20%程度が相場となります。

犯人特定後に取れる法的措置とは?

刑事責任の追及|不正アクセス禁止法違反などでの告訴

犯人が特定された場合、不正アクセス禁止法違反、電子計算機損壊等業務妨害罪、窃盗罪(データの窃取)などで刑事告訴を行うことができます。

これにより、犯人は逮捕や刑罰を受けることになります。

民事責任の追及|損害賠償請求

サイバー攻撃によって生じたシステムの復旧費用、調査費用、業務停止による逸失利益、慰謝料などを犯人に対して請求する民事上の措置です。

ただし、犯人に支払い能力がない場合や海外にいる場合は、回収が困難なケースもあります。

攻撃経路の特定に有効な「発信者情報開示請求」

犯人が掲示板やSNS、特定のプロバイダを経由して攻撃や情報漏えいを行っていた場合、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」が有効です。

裁判手続きを通じてプロバイダに契約者の情報(氏名、住所など)を開示させ、犯人を特定します。

サイバー攻撃の犯人特定はどこに相談すべき?目的別の専門家

証拠保全と原因究明が目的なら「フォレンジック調査会社」

「どのように侵入されたのか」「どのデータが盗まれたのか」といった技術的な被害状況の把握と証拠の確保を最優先にする場合は、高度な解析技術を持つフォレンジック調査会社に依頼します。

法的措置や交渉を任せるなら「サイバー犯罪に詳しい弁護士」

損害賠償請求や刑事告訴、発信者情報開示請求といった法的な手続きを進めたい場合は、ITリテラシーが高く、サイバー犯罪の対応実績が豊富な弁護士に相談することが必須です。

刑事事件として捜査を求めるなら「警察のサイバー犯罪相談窓口」

犯人の逮捕や処罰を強く望む場合は、都道府県警に設置されているサイバー犯罪相談窓口へ連絡します。

ただし、警察が動くためには、フォレンジック調査などであらかじめ客観的な証拠を集めておくことが重要です。

泣き寝入りしないために企業が平時からやるべきこと

インシデント対応計画(IRP)の策定と訓練

いざサイバー攻撃を受けた際、パニックにならずに初動対応を行うためには、平時からインシデント対応計画(IRP)を策定しておくことが重要です。

定期的なシミュレーション訓練を実施し、誰が何をすべきかを組織に浸透させておきましょう。

ログの適切な収集・管理体制の構築

犯人特定には、アクセスログや通信ログが不可欠です。ログの保存期間が短い、あるいは適切に取得されていないと、調査自体が不可能になります。

重要なログは長期間(最低でも半年〜1年以上)保存し、改ざんされない安全な場所に隔離して管理する体制を整えましょう。

専門家との連携体制を構築しておく

サイバー攻撃が発生してから慌てて調査会社や弁護士を探すようでは、初動が遅れ、証拠が消失するリスクが高まります。

平時から信頼できるフォレンジック調査会社やITに詳しい弁護士と顧問契約や提携を結んでおき、すぐに相談できる体制を構築しておくことが、被害を最小限に抑える鍵となります。

※平時からの危機管理体制の構築方法や、サイバー攻撃被害による企業の法的責任について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

不正アクセスが企業にもたらす法的責任と危機管理体制の構築

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サイバー攻撃の犯人特定に関するFAQ

サイバー攻撃の犯人が海外にいる場合でも特定や逮捕は可能ですか? 

犯人が海外にいる場合、特定や法的措置のハードルは極めて高くなります。

日本の警察の捜査権は海外には及ばないため、現地の捜査機関との連携(国際捜査共助)が必要になります。

国家の支援を受けたハッカー集団などの場合は事実上逮捕が不可能なケースが多いですが、被害状況の全容解明と再発防止の観点から調査を行うことは非常に重要です。

社内の従業員による内部犯行の疑いがある場合、どう進めるべきですか? 

内部犯行が疑われる場合、対象者に気づかれないように慎重に調査を進める必要があります。

不用意に社内で聞き込みを行うと証拠隠滅の恐れがあるため、まずはフォレンジック調査会社に依頼し、アクセスログや端末の操作履歴などの客観的な証拠を水面下で確保します。

証拠が固まった段階で、弁護士と協議のうえで懲戒処分や損害賠償請求、刑事告訴を進めます。

警察に相談すれば、無料で犯人を特定してくれますか? 

警察は犯罪捜査のプロですが、企業のシステム復旧や被害調査を無料で行ってくれるわけではありません。

警察が本格的に捜査を開始するためには、企業側がある程度「犯罪の証拠(被害の事実)」を揃えて被害届や告訴状を提出する必要があります。

そのため、初期の証拠収集やログ解析については、自費でフォレンジック調査会社を利用するのが一般的な流れです。

サイバー攻撃の対応を弁護士に相談するメリット

法的に有効な証拠の集め方をアドバイスしてもらえる 

サイバー攻撃の被害に遭った直後は混乱しがちですが、弁護士のアドバイスを受けることで「どのデータを、どのような状態で保存すべきか」という法的に有効な証拠保全の手順を正確に把握できます。

これにより、後の裁判や刑事告訴で「証拠能力がない」と判断されるリスクを回避できます。

警察への被害届・刑事告訴がスムーズに進む 

警察は証拠が不十分な状態では被害届や告訴状を受理しないことがあります。

サイバー犯罪に精通した弁護士がいれば、フォレンジック調査の結果をもとに法的な構成を整理し、警察が受理しやすい形で告訴状を作成・提出してくれるため、捜査機関がスムーズに動く可能性が高まります。

民事での損害賠償請求や示談交渉を任せられる 

犯人が特定された場合、企業が被ったシステム復旧費用や業務停止による損害について賠償を請求することになります。

弁護士に依頼することで、妥当な賠償額の算定から、犯人(またはその代理人)との煩雑な交渉、必要に応じた民事訴訟の提起までを一貫して任せることができ、企業は事業の復旧に専念できます。

対外的な対応(顧客・取引先・マスコミ)の法的サポートを受けられる 

サイバー攻撃によって情報漏えいが発生した場合、個人情報保護委員会への報告義務や、被害に遭った顧客・取引先への通知・謝罪が必要になります。

弁護士の助言を得ることで、法令遵守(コンプライアンス)に則った適切なプレスリリースの作成や二次被害の防止策を講じることができ、企業のレピュテーション(信用)低下を最小限に抑えることができます。

※サイバー攻撃などのセキュリティインシデントにおいて、弁護士へ依頼する具体的なメリットやサポート内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。

サイバーセキュリティに精通した弁護士の役割と導入メリット

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まとめ

サイバー攻撃の犯人特定は技術的・法的なハードルが高く、決して容易ではありません。

しかし、迅速な証拠保全、フォレンジック調査の実施、そして弁護士や警察との適切な連携によって、特定と法的措置の道が開けることもあります。

万が一の事態に泣き寝入りしないためにも、平時からのログ管理やインシデント対応体制の構築、専門家とのネットワークづくりを徹底しておくことが、企業にとって最大の防御策となります。

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