執行猶予とは?条件・期間・取り消しリスクを弁護士が解説
2026年06月03日

家族が逮捕・起訴されたとき、真っ先に気になるのが「刑務所に入らなければならないのか」という点ではないでしょうか。
有罪判決を受けても、一定の条件を満たせば「執行猶予」がつき、社会生活を継続できる可能性があります。
この記事では、執行猶予の仕組み・要件・期間・保護観察・取り消しリスクまで、弁護士が詳しく解説します。
執行猶予が認められるかどうかは事件の内容・前科・示談の有無などによって大きく異なります。
まず全体像を理解した上で、弁護士に相談することをお勧めします。
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執行猶予とは何か?基本的な仕組みを解説
執行猶予の定義
執行猶予(しっこうゆうよ)とは、有罪判決を受けた場合でも、一定の猶予期間中に問題を起こさなければ刑の執行を免除する制度です(刑法第25条)。
たとえば「懲役1年・執行猶予3年」という判決が下された場合、3年間再犯しなければ懲役1年の実刑は執行されません。
猶予期間が満了すれば、その刑の言渡しの効力は失われます(刑法第27条)。
実刑との違い
実刑判決を受けた場合は、判決確定後に刑事施設(刑務所・拘置所)に収監されます。
一方、執行猶予つき判決であれば、日常生活・仕事・家族との生活を継続しながら猶予期間を過ごすことができます。
ただし、執行猶予はあくまで「有罪」です。前科は付きます。
「逮捕歴」(前歴)だけで前科にはならないのとは異なり、執行猶予付き判決は有罪判決であり、前科として記録されます。
執行猶予付き判決の割合
全国の刑事事件の有罪判決のうち、約60〜65%が執行猶予付き判決です(令和5年司法統計)。
初犯・軽微な犯罪・被害者との示談が成立しているケースでは、執行猶予の可能性が高まります。
逆に重大事件・再犯・組織的犯罪では執行猶予は難しくなります。
前科と前歴の違い
執行猶予について理解する上で、前科と前歴(前科とも混同されやすい概念)を区別しておく必要があります。
- 前科:有罪判決を受けた事実。執行猶予付き判決も前科になる。
- 前歴:逮捕・補導されたが起訴されなかった(不起訴)場合の記録。前科ではないが警察の記録には残る。
- 前科なし・初犯:過去に科料以上の刑を受けたことがない状態を指す。
執行猶予の要件において重要なのは「前科」の有無であり、前歴(逮捕歴)があっても不起訴なら要件上は初犯として扱われます。
執行猶予がつく条件(法的要件)
刑法上の要件
刑法第25条により、以下の条件をすべて満たす場合に執行猶予が認められます。
- 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の判決であること
- 前刑の執行終了後または免除後5年以内に拘禁刑以上の刑を受けていないこと
- 情状に酌量すべき事情があること
この3要件が全て揃って初めて執行猶予が検討されます。
特に「3年以下の拘禁刑」という条件は重要で、起訴状の罪名・被疑事実によっては量刑が3年を超え、執行猶予の対象外になることがあります。
弁護士が量刑を3年以内に収めるための弁護活動を行う意義はここにあります。
情状として考慮される事情
裁判所が酌量する情状(量刑事情)として重視されるのは次の要素です。
| 要素 | 執行猶予に有利 | 執行猶予に不利 |
|---|---|---|
| 前科・前歴 | 初犯または軽微な前科 | 同種の前科・前歴あり |
| 被害者との示談 | 示談成立・被害弁償済み | 示談不成立・弁償なし |
| 反省・再犯防止 | 深く反省・再犯防止策あり | 反省の態度が見えない |
| 被害の程度 | 軽微な被害・被害回復済み | 重大な被害・被害者多数 |
| 家族・社会的環境 | 家族の監督・支援体制あり | 身元引受人なし・孤立 |
| 犯行の動機・態様 | 偶発的・計画性なし | 計画的・常習的 |
| 職業・生活状況 | 安定した職・住居あり | 無職・住所不定 |
執行猶予がつきにくい犯罪類型
- 不同意性交等罪(性犯罪)
- 薬物犯罪の再犯(覚醒剤・大麻の再犯)
- 組織的詐欺・組織的強盗
- 殺人・強盗致傷など重大犯罪
- 危険運転致死傷(死亡事故を伴う場合)
これらは法定刑が重く、示談が困難なケースや社会的影響が大きいケースが多いため、執行猶予の難易度が高くなります。
ただし、弁護活動によって量刑が変わる可能性は常にあります。
執行猶予の期間はどのくらい?
執行猶予期間の範囲
刑法第25条では、執行猶予期間は1年以上5年以下と定められています。
実務では3〜5年とされるケースが多く、犯罪の内容・量刑・再犯リスクに応じて裁判所が決定します。
猶予期間中の日常生活への影響
執行猶予期間中は、特別な法律上の制限がある活動は限られていますが、以下の点に注意が必要です。
仕事・職業について
執行猶予付き判決を受けた場合、一部の資格・職種では法律上の欠格事由に該当する場合があります。
弁護士・医師・税理士・教員免許などは、有罪判決(執行猶予含む)によって資格が停止される場合があります。
就職先に前科が知られるリスクも考慮が必要です。
海外渡航について
執行猶予中でも原則としてパスポートの取得・海外渡航は可能です。ただし国によっては入国拒否になることがあります(米国・カナダ等)。
保護観察がついている場合は、住居変更等の届出が必要になります。
再犯のリスク管理
猶予期間中に再び事件を起こすと、執行猶予が取り消されて元の刑と新たな刑の両方が執行されます。
日常生活において、事件を起こした原因となった環境・交友関係の改善が重要です。
保護観察付き執行猶予
執行猶予に「保護観察」がつく場合があります(刑法第25条の2)。
保護観察がつくと、猶予期間中に保護観察所の保護観察官の指導・監督を受ける義務が生じます。
具体的には次のような事項を遵守する必要があります。
- 定期的な保護観察官との面談への出席
- 住居・就労状況の報告
- 保護観察官の指示に従った生活
- 特別遵守事項(薬物治療受講など個別に設定される場合がある)
保護観察付きになるのは主に次のケースです。
- 再度の執行猶予(2回目の執行猶予)は必ず保護観察付き
- 裁判所が再犯リスクが高いと判断した場合
執行猶予が取り消されるケース
執行猶予が取り消されると、猶予されていた刑が執行され、直ちに刑事施設に収監されます。
必要的取り消し(必ず取り消される)
刑法第26条では、以下の場合に執行猶予が必ず取り消されると規定しています。
- 猶予期間中に拘禁刑以上の実刑判決が確定したとき
- 猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の実刑判決が確定したとき
- 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき
裁量的取り消し(取り消される可能性がある)
刑法第26条の2では、以下の場合に裁判所の裁量で取り消せると規定しています。
- 猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき
- 保護観察中に守るべき事項(遵守事項)に違反し、その情状が重いとき
- 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき
裁量的取り消しの場合は、弁護士が意見書を提出することで取り消しを回避できる可能性があります。
取り消しの流れ
執行猶予の取り消しは検察官が申し立て、裁判所が決定します。取り消し決定が出ると収監されますが、即時抗告が可能です。
弁護士に依頼することで抗告・意見書提出により取り消しを争うことができます。
再度の執行猶予の条件(2回目の執行猶予)
執行猶予期間中に新たな犯罪を犯した場合でも、以下の条件を満たせば「再度の執行猶予」が認められることがあります(刑法第25条第2項)。
- 新しい罪の刑が2年以下の拘禁刑であること
- 「情状に特に酌量すべき事由」があること
- 保護観察中でないこと
「特に酌量すべき事由」は通常の酌量よりも高いハードルが設定されており、実務上かなり難しい要件です。
被害者との示談成立・反省の度合い・家族の強固な支援体制など、あらゆる有利事情を積み上げる必要があります。
また再度の執行猶予には必ず保護観察がつきます。
執行猶予を得るために弁護士ができること
被害者との示談交渉
被害者との示談成立は、執行猶予取得において最も重要な要素の一つです。
弁護士は被害者側との交渉窓口となり、慰謝料・損害賠償・謝罪を通じて示談書を締結します。被害者が直接被疑者と接触することを拒んでいる場合でも、弁護士を通じることで交渉が可能になります。
示談書には「宥恕条項」(被害者が被疑者を許す旨)と「被害者は処罰を求めない」という記載を盛り込むことが、起訴猶予・執行猶予獲得に効果的です。
刑事事件における示談の重要性や示談交渉の進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
情状立証(情状弁護)
弁護士は、反省の態度・再犯防止策・家族の監督体制などを裁判所にわかりやすく伝える「情状弁護」を行います。
具体的には次の書類・証拠を収集・作成します。
- 被告人本人の反省文・謝罪文
- 家族の監督誓約書・支援誓約書
- 就労証明書・在職証明書
- 再犯防止プログラム(薬物依存治療・アンガーマネジメント等)受講証明書
- 社会復帰支援者の意見書(カウンセラー・支援団体等)
不起訴・略式命令への誘導
起訴前の段階で弁護士が動くことで、不起訴(起訴猶予)や略式命令(罰金のみ)に持ち込める場合もあります。
この場合は公開の法廷で審理されず、前科がついても拘禁刑ではなく罰金刑で済みます。
起訴後の流れや対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
勾留阻止・早期釈放
逮捕直後から弁護士が介入することで、勾留請求に対して意見書を提出し、早期釈放を実現できる場合があります。
身柄が自由になることで、仕事の継続・家族との時間確保・示談交渉の進行が容易になります。
逮捕後すぐに弁護士に相談すべき理由や依頼の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
こんなご相談が多く寄せられています
ケース1:同種前科がある傷害事件で執行猶予を獲得したケース
状況
30代会社員男性。居酒屋でのトラブルから口論になり相手を殴って怪我を負わせ、傷害罪で逮捕・起訴された。
同種前科あり。被害者は全治1ヶ月の重傷。職場への影響を非常に心配していた。
対応
弁護士が被害者との示談交渉を即日開始。治療費・慰謝料の支払いと誠意ある謝罪により示談書を締結。「被害者は処罰を求めない」旨の宥恕条項を明記。
裁判では反省文・家族の監督誓約書・職場の就労継続証明を提出した。
→結果:懲役1年・執行猶予3年の判決。職場には事件が知られることなく社会復帰を果たした。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
ケース2:万引きの繰り返しで実刑が心配だったケース
状況
50代女性。万引きで3度目の逮捕。前に罰金刑の前科あり。店側との示談なし。今回の被害額は8,000円程度。家族が「今度こそ刑務所か」と相談。
対応
弁護士が店舗(コンビニチェーン)の法務担当に被害弁償・謝罪の申し入れ。示談が難しかったため供託(被害弁償金を法務局に預ける)も並行して実施。
窃盗症(クレプトマニア)の疑いがあることから精神科クリニックへの通院を開始。治療記録・再犯防止計画書を情状証拠として裁判所に提出した。
→結果:懲役1年・執行猶予3年(保護観察付き)。クリニックでの治療継続を条件に社会復帰。専門的な治療受講が情状として大きく評価された。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
ケース3:執行猶予期間中の再犯で相談があったケース
状況
20代男性。傷害罪の執行猶予(残り1年半)の期間中に、SNSのトラブルから相手に暴行してしまった。被害者は軽傷。家族が「今度こそ刑務所に行く」と相談。
対応
弁護士が即日接見。被害者との示談交渉を最優先で進め、数日以内に示談書を締結。
「情状に特に酌量すべき事由」の立証として、被害者への誠意ある謝罪・金銭的弁償・アンガーマネジメント研修受講・家族の強固な監督誓約を証拠化した。
→結果:再度の執行猶予(保護観察付き)を獲得。ただし保護観察の条件が厳格になった。前刑の懲役1年は執行されずに済んだ。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
執行猶予に関するよくある質問(FAQ)
Q. 執行猶予がつくと前科はつかないのですか?
A. 前科はつきます。執行猶予は「刑の執行を猶予する」制度であり、有罪判決を受けた事実(前科)は消えません。
ただし、猶予期間が満了した後は刑の言渡しの効力が失われ、欠格事由から外れる資格もあります(弁護士・医師など)。
前科は一般に公開はされませんが、採用時の身元調査や資格審査には影響する場合があります。
Q. 執行猶予中でも転職・引っ越しはできますか?
A. 保護観察がついていない場合は法律上の制限はありません。
保護観察付きの場合は保護観察官への事前届出が必要です。無断で転居すると遵守事項違反になる可能性があります。
Q. 逮捕から何日以内に弁護士に頼めばよいですか?
A. できる限り早く、逮捕当日または翌日が理想です。
逮捕後72時間以内に身柄処分(勾留・釈放)が決まるため、この間に弁護士が動くことが重要です。
Q. 被害者と示談しなければ執行猶予はつきませんか?
A. 示談が絶対条件ではありませんが、示談成立は執行猶予取得の最重要要素です。
示談ができない場合でも、供託(弁償金を法務局に預ける)・贖罪寄付・反省の態度・再犯防止策などで補完する方法があります。弁護士に相談してください。
Q. 執行猶予期間が終わったら前科は消えますか?
A. 前科の記録自体は消えません。しかし刑の言渡しの効力が失われ(刑法第27条)、弁護士・医師・教員などの資格制限が解除されるケースがあります。
また犯罪経歴証明書(警察が発行するもの)への記載がなくなる場合があります。
Q. 「情状証人」とは何ですか?
A. 情状証人とは、被告人の性格・これまでの生活状況・反省の態度・今後の被告人の生活サポートの約束などを証言する人物です。
家族・上司・職場の同僚などが情状証人として出廷します。
情状証人の証言は執行猶予獲得に有効であり、弁護士が事前に証人と打ち合わせを行います。
まとめ:執行猶予を目指すなら早期の弁護士相談が鍵
執行猶予は、一定の条件を満たせば有罪判決を受けても社会生活を継続できる重要な制度です。
執行猶予がつくかどうかは、事件の内容・前科・示談の有無・弁護活動の質によって大きく異なります。
執行猶予取得のポイントをまとめます。
- 早期の示談成立:被害者との示談は執行猶予の最重要要素
- 情状弁護の充実:反省・再犯防止・家族サポートを丁寧に立証する
- 逮捕直後からの弁護活動:早期介入が勾留阻止・不起訴・軽い量刑につながる
- 量刑を3年以内に収める:執行猶予の法的要件である3年以下の判決を目指す
「執行猶予がつくか不安」「実刑になるのでは」と心配な方は、まず弁護士に相談してください。初回相談は無料で対応しています。
刑事事件の弁護士相談については、こちらからご相談いただけます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
職員が丁寧にお話を伺います初回無料
刑事事件の実績









