高齢の親が万引きしてしまった…家族はどう対応すべきか?弁護士が解説

最終更新日: 2025年07月31日

高齢の親が万引きしてしまった…家族はどう対応すべきか?弁護士が解説

「高齢の親が万引きで警察に呼ばれた」。
驚きと困惑のなかで、「家族としてどう対応すればいいのか」「刑務所に入れられてしまうのでは」「前科がついたらどうしよう」といった不安が頭をよぎるはずです。

さらに、被害を受けたお店への謝罪の仕方が分からなかったり、認知症の疑いがある親の今後を考えると、どう動くべきか判断に迷う方も少なくありません。

本記事では、

  • 高齢者による万引きが増えている背景
  • 万引き発覚後に家族が取るべき対応
  • 店舗や警察とのやりとりで気をつけるべきポイント
  • 弁護士に依頼することで不起訴処分になる可能性があること
  • 再発防止のためにできること(認知症対策を含む)

について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
穏便に、そして後悔のないように対応するためのヒントをお伝えします。

刑事事件に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

高齢者による万引きが増えている背景

実は、近年は高齢者による万引きが増加しています。
警察庁の統計でも、刑法犯全体が減少傾向にある中、高齢者による窃盗事件(とくに万引き)の割合が高くなっていることが報告されています。

参照元:警察庁「令和5年の犯罪情勢

背景としては、

  • 加齢による判断力・記憶力の低下
  • 初期の認知症によって「支払いを忘れた」「盗った認識がない」状態になる
  • 年金生活での経済的な不安
  • 一人暮らしによる孤独感・ストレス

といった複合的な要因があると考えられています。

家族としてまず取るべき対応

事実関係を整理する

突然の連絡に驚いても、まずは冷静になることが大切です。
どこの店舗で何を盗ったのか、被害額はいくらか、本人に盗るつもりがあったのかといった具体的な事実関係を整理することが、今後の対応を考えるうえで欠かせません。

親本人の話だけでは状況が正確につかめないこともありますので、可能であれば警察や店側の話も直接聞き、内容をメモに残しておくと安心です。

店側への謝罪と弁済の準備をする

被害にあったお店に対しては、誠意ある謝罪が重要です。
ただし感情的になってしまったり、逆に「年寄りだから許してくれるだろう」という甘い対応をすると、かえって示談が難航することもあります。

口頭での謝罪だけでなく、謝罪文や弁償金の支払いを通じて誠意を伝えると、示談成立の可能性が高まります。

弁護士に相談する

家族だけで対応するのが不安な場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
特に刑事事件に詳しい弁護士であれば、店舗とのやり取りから示談書の作成、警察・検察との調整までサポートしてもらえます。

弁護士が介入することで「不起訴処分」になる可能性が高まるだけでなく、精神的な負担もぐっと減らすことができます。

不起訴処分になれば前科はつかない

「不起訴処分」とは、検察官が「起訴しない」と判断することです。
これは「無罪」とは違いますが、刑罰を受けないという点では非常に重要な処分です。

不起訴になると、前科はつかず、刑務所に行くこともありません。
初犯で被害金額が少なく、示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性が高くなります。

一方、対応を誤ったり、店側とのトラブルが長引いたりすると、略式起訴→罰金刑→前科あり、という流れになることもあるので注意が必要です。

弁護士に依頼するメリットとは?

店舗との示談交渉をスムーズに進められる

謝罪や示談の進め方を誤ると、相手の不信感を招いてしまうこともあります。

弁護士が関与すれば、法律的に適切かつ誠意ある対応が可能になり、相手側も冷静に受け止めやすくなります。

不起訴処分を得るための主張をまとめてくれる

示談成立だけでは不起訴にならないケースもあるため、弁護士が意見書を通じて、検察官に不起訴の妥当性を理論的に訴えてくれます。

警察・検察とのやりとりを任せられる

「どう説明すればいいか」「書類は何が必要か」など、慣れない手続きもすべてフォローしてくれます。家族の負担が大きく減ります。

再発防止への助言も受けられる

認知症の可能性や再犯の不安がある場合、医療機関との連携や支援制度の利用についてもアドバイスしてくれます。

精神的な支えになる

「このまま進めていいのか」と不安になるときでも、専門家がそばにいるという安心感は大きいものです。

よくある状況と対応例

父の万引き、記憶にない数十件の余罪

70代の父親が書店で万引きをしてしまい、警察の捜査を受けていると、ご家族からご相談がありました。捜査の過程で、本人も記憶が定かではない数十件の余罪が発覚。ご家族は先の見えない状況に大変な不安を抱えておられました。

ご依頼後、弁護人が直ちに間に入り、被害店舗様と誠実に協議。まずは被害状況を正確に把握し、過去の分も含めて弁償を行いました。
さらに、本人の深い反省や家族による監督体制などをまとめた意見書を検察官に提出。

その結果、略式起訴により前科が付くことも危ぶまれましたが、最終的に不起訴処分となりました。

 

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

よくある質問(Q&A)

Q:初犯でも前科がつきますか?

初犯で示談が成立していれば、ほとんどの場合不起訴処分となり、前科はつきません。正式に起訴されてしまうと罰金刑などとなり、前科になります。

Q:高齢で認知症の疑いがあれば許されますか?

認知症の疑いは情状として考慮されますが、「許される」わけではありません。医師の診断書があると不起訴の参考になります。

Q:示談金はいくらぐらいが相場?

万引きの場合、被害額+数千~数万円程度が相場です。ただし、店側が「示談不要」とするケースもあり、事前の確認が大切です。

Q:家族が店に直接謝罪しに行ってもいいの?

行くことはできますが、謝罪の内容や言葉選びを間違えると逆効果になることもあるので、弁護士の助言を受けるのが無難です。

Q:家族が弁護士に相談してもいいの?本人じゃなくて大丈夫?

はい、大丈夫です。ご家族からのご相談で受任することは可能です。高齢の方ご本人が動けない場合も対応可能です。

Q:相談だけでも受けてもらえますか?

多くの法律事務所で初回相談(無料または低料金)を行っています。不安な点を整理する意味でも、一度相談してみるのがおすすめです。

Q:刑務所に入れられてしまうことはありますか?

初犯・少額・示談成立なら通常はありません。ただし、再犯や常習性があると拘禁刑となることもあるため、初動対応がとても大切です。

まとめ|高齢者の万引きに家族がどう向き合うか

高齢の親が万引きをしてしまったとき、驚きや不安は当然のことです。
でも、正しい対応を取れば、前科がつくことを避けられたり、穏便に解決できる可能性も十分にあります。

  • まずは事実関係を把握し、冷静に対応する
  • お店には誠意ある謝罪と弁償を
  • 不安なときは弁護士に早めに相談する
  • 再発防止のために認知症の可能性も視野に入れる

大切な親を守るためにも、家族としてできる最善の行動を取りましょう。
どうしていいか分からない…というときは、弁護士にぜひご相談ください。

刑事事件に強い弁護士はこちら

窃盗のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。