婚約中の浮気、婚約破棄による慰謝料請求について

最終更新日: 2022年03月15日

はじめに

婚約相手が浮気したので婚約を破棄して慰謝料を請求したい、浮気した交際相手が婚約を破棄してきたので慰謝料を請求したい、浮気相手にも慰謝料を請求したいなどのご相談はよくあります。

婚約は内縁関係と同様、婚姻届を出す婚姻関係のようにその関係性が外部から明確ではありません。そのため、将来結婚する約束をしていたとしても、法的に保護される婚約とは認められないケースが出てきます。

そこで、今回は、法的に保護される婚約についてご説明いたします。

婚約破棄の定義について

婚約とは、将来婚姻することの合意をいいます。婚約したときは、将来婚姻する契約上の義務を負いますので(とはいえ、婚姻を強制することはできません。)、婚約を不当に破棄すれば契約違反として損害賠償責任を負うことになります。

このように法的責任を負うことになる婚約破棄は、「法的に保護される婚約を正当な理由なく一方的に解消すること」と定義できます。

以下では、「法的に保護される婚約」にあたるか、「正当な理由なく一方的に解消する」場合にあたるか、そして婚約破棄した場合に請求される損害の内容について順にみていきます。

法的に保護される婚約にあたるか

法的に保護される婚約と認められるためには、当事者間に将来婚姻をすることの「確実な合意」が必要です。

結納や婚約指輪の交換、両親や兄弟、友人に婚約者として紹介するなど、外部に婚約を公示する言動は婚約を認定するための必須要素ではありませんが、このような事実があると当事者間に将来婚姻することの確実な合意があるとの認定はされやすいでしょう。

他方、このような事実がない場合には、将来婚姻することの確実な合意の存在を伺わせる交際中の様々な言動を主張、立証していく必要があります。

婚約を否定する判例も多く、例えば、結婚相談所を通じて知り合い、交際をスタートさせ、同棲するための新居を探すなどの言動はあったものの、家族に紹介したことはなく、友人にも「交際相手」として紹介したことがあるに過ぎないことから婚約を否定したケースがあります。

正当な理由のない一方的な婚約破棄か

婚約解消には、一方の意思表示で解消される場合と双方の合意による解消があります。不当破棄として損害賠償責任が発生するのは、正当な理由なく一方の意思表示で解消される場合です。

正当な理由を認めた判例には、相手方が挙式の直前に無断で行方をくらませた場合、相手方に虐待、暴行侮辱などの言動があった場合、一方的に挙式日を延期して新たな挙式日を申し入れた場合などがあります。

その他にも婚姻後の生活を困難にする経済事情や病気、親族への著しい非礼なども正当な理由になりうるでしょう。

他方、相手方に大きな落ち度なく一方的に婚約解消の意思表示をした場合には婚約の不当破棄になります。

例えば、金銭感覚の相違を埋められないと考えて婚約を解消した、押し切られる形で婚約したけれども未だ結婚は早いと考えて婚約を解消したという場合には婚約の不当破棄となるでしょう。

ただし、婚約解消の希望を伝え、それに対して渋々ながらそれに応じる言動が相手方にあったという場合には、婚約の一方的な解消ではなく、合意による婚約解消となる可能性がありますので注意が必要です。

婚約破棄があった場合の損害賠償請求

婚約をすると、婚姻に向けて様々な準備が進んでいきます。

そのため婚約が不当破棄されてしまいますと、そのような準備のためにした支出が無駄になって、経済的損害が発生します。

また、当然、婚約の不当破棄によって精神的苦痛も受けます。

婚約破棄があった場合には、婚姻不履行に基づき以下のような損害について賠償を請求できます。

同居準備のための家具、日用品

婚姻が決まると、一緒に住む家のためにソファやベッドなどの家具、テレビや冷蔵庫などの家電を新しく購入することがあります。

しかし、婚約が破棄されるとこれらのものは不要となりますので、購入代金について損害賠償の対象になり得ます。

ただし、婚約が解消されてもこれらの物の経済的価値は下がりませんし、所有権は代金を支払った人にありますので、損害として認められない可能性もあります。

ウエディングドレスの代金、結婚式の費用

損害賠償の対象となります。

ただし、結婚式を挙げたあとに婚約を不当破棄された場合、ご祝儀は損害額から控除されることになるでしょう。

退職による逸失利益

結婚準備のため、遠方に住む婚約者のもとに転居することになり、勤務先を退職するケースがあります。

このようなケースで婚約を不当破棄されてしまうと、本来得られた給与が得られない損害が発生します。

そこで、退社から再就職まで(又は婚約解消まで)の期間に勤務先を退職していなければ得られたであろう給与相当額(手取金額から生活費相当額を控除した金額)について損害賠償の対象となりえます。

婚約指輪、結納金

婚約指輪や結納金は、将来の結婚を前提として贈与されるものですから、婚約破棄があった場合には、損害賠償の対象となります。

また、婚約破棄した当事者がこれらのものを贈っていた場合にも、相手方に対して動産引渡請求や、不当利得返還請求をすることができます。

婚約破棄の慰謝料

婚約破棄されたことによる精神的苦痛については、慰謝料の請求が可能です。

慰謝料の金額は、交際期間、婚約期間、婚姻までの準備の進み具合、婚約解消時の年齢(結婚適齢期を逃したなど)、婚約破棄の理由(浮気、暴力など)、婚約破棄の結果(中絶することになったなど)を考慮して判断されます。

判例では、100万円から150万円ほどを認めているケースが多いですが、100万円以下を認めているケースもあります。他方、200万円以上を認めているケースは、婚約破棄の明確な理由として相手方の暴力や浮気がある場合が多いようです。

婚約中の不貞行為

婚約をしたときは、相手方と異なる人物と性的関係を持たない貞操義務を負うと考えられます。

そのため、婚約相手が浮気をしたときは、婚約相手に対して不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料を請求する余地があります。

もっとも、婚約破棄に至らなかった場合には慰謝料は認められない可能性が高いでしょう。

他方、浮気相手に対して慰謝料を請求することも考えられますが、婚約の事実を浮気相手が知っていたことを立証する必要があります。また、やはり婚約破棄に至らなかった場合には慰謝料請求は認められない可能性が高いでしょう。

最後に

以上、法的に保護される婚約、婚約の不当破棄についてご説明しました。

法的に保護される婚約と一般的な感覚での婚約が食い違うことはしばしばあります。
また、婚約中の浮気については結婚後の浮気よりも慰謝料を請求するハードルは高いです。

婚約破棄による損害賠償請求をしたい、あるいは損害賠償請求を受けたという場合には、婚約関係に詳しい弁護士にご相談ください。

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