離婚を回避するためにできることは?可能なケースと避けるべき行動も解説
最終更新日: 2023年10月05日
- 配偶者との離婚は避けたいが、どのような行動をとればよい?
- 配偶者が別居を申し出たが、すんなりOKしてよいのだろうか?
- 離婚回避のためにやってはいけない行動があれば知りたい
配偶者は離婚をしたくても、自分はまだ愛情が冷めていない、子どもへの影響が心配などの理由で、離婚を避けたい人もいるでしょう。
離婚を回避する方法はいろいろあり、夫婦の事情に合った対応を選ぶのがよいです。
ただし、離婚回避でやってはいけない行動もあり、誤った対応をとれば夫婦間で深刻なトラブルが発生するおそれもあります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚回避の方法、行ってはいけない対応等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 配偶者が有責配偶者であれば、基本的に配偶者からの離婚は認められない
- 離婚回避の方法は、弁護士を代理人とした話し合いや、裁判所の調停による解決もある
- 配偶者と別居したり、親が夫婦の問題に介入したりすると離婚回避が難しくなる
離婚回避できるケース
自分が離婚をしたくないのであれば、配偶者が離婚を申し出てもはっきりと拒否しましょう。
こちらでは、離婚を回避できる2つのケースについて解説します。
相手に非がある
結婚生活を破綻させるような離婚の原因をつくった配偶者は「有責配偶者」といわれます。有責配偶者からの離婚請求は認められません。
離婚の原因については民法に列挙されています(民法第770条)。下表をご覧ください。
裁判上の離婚(離婚の原因) | 内容 |
配偶者に不貞行為があった | 配偶者が浮気相手と肉体関係を持った |
配偶者から悪意で遺棄された | 正当な理由もなく、家族に生活費を与えない等 |
配偶者の生死が3年以上明らかでない | 配偶者が遭難し生死がわからない、行方不明で生死を確認する方法がない等 |
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない | 婚姻関係が破綻してしまうほどの、精神病を患った場合 |
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある | DVや子どもに対する暴力、セックスレス等 |
たとえ有責配偶者が離婚の請求をしたとしても、基本的に家庭裁判所はその請求を却下します。
夫婦生活が破綻していない
子どもの教育に関して意見が割れていたり、ケンカをしたりするのは、夫婦生活を送るうえでよくあるトラブルです。
夫婦の双方が「自分たちは仲が悪い」と感じていても、夫婦の一方に不貞行為があった、悪意で遺棄された等のように、客観的にみて深刻な事態に至っているのでなければ、夫婦関係が破綻しているとは判断されません。
なお、自分が明確に離婚を拒否したにもかかわらず、配偶者が家庭裁判所に調停離婚を申立てるケースもあります。
離婚を回避したいのであれば、このようなケースに備えて配偶者に口頭だけではなく、SNSやLINE、メール等、履歴に残る方法で、関係を修復したいと伝えましょう。
そうすれば自分には関係を修復する意思があり、これまでも関係修復に努めてきたと裁判所に主張できます。
離婚回避のためにすべきこと
離婚回避のためには、配偶者への配慮の他、様々な制度の利用や専門家のサポートも検討する必要があります。
こちらでは、離婚回避の5つのポイントを取り上げましょう。
冷静な対応
たとえ配偶者が「離婚したい!」とエキサイトしても冷静に受け止め、自分が離婚したくない理由をわかりやすく伝えましょう。
配偶者のペースにのってしまうと、お互いの亀裂は深まり、結局は離婚に至るおそれがあります。
配偶者が自分の話を聞こうとしないのであれば、SNSやLINE、メール等を使い自分の意思を伝え、関係修復について働きかけていきましょう。
相手を尊重
離婚を主張する配偶者には、離婚したいと考える原因や理由があるのです。
配偶者の言い分をしっかりと聴き、離婚以外にその原因・理由を解消できる方法がないか、話し合ってみましょう。
たとえば、配偶者が自分一人になる時間をつくりたいのであれば、お互い全く干渉しない日を設ける等して、夫婦関係を継続するのもよい方法です。
未来を考える
離婚した場合、未来にどのような影響が出るかをよく考え、離婚を回避しましょう。
たとえば、夫婦だけでなく小さな子どもがいる場合、子どもの将来を考え、離婚を回避する工夫が必要です。
夫婦が離婚してしまうと、次のような影響が子どもに及ぶおそれがあります。
- 子どもが片親を失った、という喪失感に苛まれる
- 子どもが安定した生活を送れなくなる
- 引越しや転校を余儀なくされ、精神的に疲弊してしまう
- 親が離婚したという事実が知れわたり、学校でいじめにあう(特に小学校・中学校)
このような影響を考慮し子どもへのリスクが大きいと判断したら、離婚を主張する配偶者を説得し、離婚回避に努めましょう。
今は離婚をしないが、子どもが一定の年齢(例:高校を卒業する17・8歳、子どもが就職する22・3歳)になったら離婚を考える、と配偶者と猶予期間について話し合うのもよい方法です。
円満調停
夫婦関係を回復するための話し合いができる制度もあります。それが家庭裁判所で行う「夫婦関係調整調停(円満)」です。
調停を行う場合、相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に申立をします。
提出する書類は主に次の通りです。
- 調停申立書とその写し1通
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
- 収入印紙1,200円、連絡用切手
調停は非公開で行なわれ、原則として夫婦双方が出席しなければなりません。
調停手続では調停委員がまず当事者双方から事情を聞いたうえで、夫婦関係が円満でなくなった原因を探り、その原因を踏まえて、夫婦がどのように努力すれば夫婦関係を改善できるか、等について考えます。
調停委員から解決案の提示や、解決のために必要な助言をする形で進められます。
弁護士への相談
離婚を行うかどうかで揉めている場合は、離婚問題の解決に実績のある弁護士へ相談してみましょう。
離婚をしたくない相談者に対し、弁護士は夫婦関係を回復するためのアドバイスや、離婚したいと主張する配偶者との交渉・調整を行います。
実績のある弁護士は、まず法律事務所のホームページを確認して選びましょう。
ホームページに、以下の掲載があれば夫婦や家庭の問題を得意とする法律事務所といえます。
- 「夫婦関係の相談実績〇〇件」と、具体的な数字をあげている
- 夫婦の問題に関しての話題が、豊富に紹介されている
- 協議や調停、離婚の手順や費用を明確に記載している
離婚回避のためにやらない方がよい行動
離婚回避のためにとった行動が、逆に夫婦関係の修復を難しくする場合もあります。
こちらでは行わない方がよい、4つの行動を取り上げましょう。
別居
配偶者から「お互いが冷静に話し合うため、別居したい」と提案されても、安易に同意してはいけません。
なぜなら、別居すれば裁判で離婚するか否かを決める場合に、離婚を認める判決が言い渡される可能性があるからです。
裁判官は別居が長期間に及んだ状況を考慮し、すでに夫婦関係は破綻していると判断する傾向があります。
離婚したいと考えている配偶者にとって、別居は夫婦関係が破綻しているという心証を与えやすい方法になるので注意しましょう。
相手への批判
離婚をする・しないで揉めていた場合、配偶者を批判すると更に亀裂が深まってしまいます。
夫婦関係を修復したいのであれば、配偶者の批判ではなく、夫婦関係を修復したい理由を冷静に説明しましょう。
配偶者と離婚をしなくて済む方法について、柔軟に話し合う姿勢が大切です。
過去にこだわる
離婚を主張する配偶者に「浮気したあなたなんかに、離婚を語る資格はない!」と、すでに解決した何年も前の過ちを持ち出し、反論するのは避けましょう。
夫婦関係の修復には、過去の過ちを掘り返すのではなく、未来志向で話し合いを進める努力が必要です。
話し合いを進めるときに、将来は夫婦でこのような事をやってみたい等と提案し、関係改善を図っていきましょう。
話し合いへの両親参加
夫婦の問題に親が加わると、関係修復は困難となる場合があります。
親からみれば婚姻しても可愛い子どもに変わりありません。子どもの立場にたって、相手の言い分も聴かず批判を行い、相手の怒りを買うおそれがあります。
自分の親に夫婦関係の相談をしたり、アドバイスを求めたりしても構いませんが、親が加わる話し合いは避けた方が無難です。
どうしても離婚回避できないときの流れ
夫婦関係の修復ができず離婚を進める状況になったときは、まずは夫婦で協議し離婚成立を目指しましょう。
ただし、離婚条件が全く噛み合わない場合、調停や裁判で解決を図りましょう。
協議
まず夫婦間で離婚の条件を話し合いましょう(協議離婚)。未成年の子どもがいれば親権をどうするか、慰謝料や財産分与、養育費等の取り決めも行わなければなりません。
話し合いがまとまれば、離婚条件を書面化しておきましょう。
書面化には、夫婦だけで作成し署名押印する「離婚契約書」、公証人に作成してもらい証拠力の高い公文書として作成する「離婚公正証書」の2種類の方法があります。
調停
協議離婚が不成立の場合は「調停離婚」で解決を図ります。
相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)」の申立てをしましょう。
調停手続では離婚条件が話し合われ、夫婦の主張の隔たりを埋めるために、調整委員からの解決案の提示や助言が行われます。合意するまで、何回か調停が開かれます。
裁判
調停でも話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に提訴が可能です(裁判離婚)。
裁判離婚では夫婦が原告・被告となり、公開の法廷で互いに自分の主張をして、証拠を提出します。
裁判官は原告・被告の主張と証拠、一切の事情を考慮し、判決を言い渡します。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚回避のコツや夫婦関係の修復を図る方法等について詳しく解説しました。
夫婦関係の修復のためには、自分の主張だけでなく配偶者の考えもよく聴き、解決策を共に考える努力が大切です。
夫婦関係の修復に悩むときは、なるべく早く弁護士と相談し、アドバイスを受けましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。