厚生局による病院・クリニックへの個別指導について弁護士が徹底解説!

最終更新日: 2023年07月06日

厚生局による病院・クリニックへの個別指導について弁護士が徹底解説!

地方厚生局による個別指導とは何なのか?
保険医療機関の指定や保険医の登録は取り消されてしまうのか?
個別指導に対して適切に対処するにはどうするのが良いのか?

ある日突然、地方厚生局から個別指導を実施する旨の通知書が送られてきて、初めてのことで驚き、不安に思われている医師の先生もおられるかもしれません。医師の仲間に相談することができずにいる先生もおられるかもしれません。

個別指導の通知を受け取ったときは指導日までに十分な準備を行わなければ、指定・登録の取消処分という最悪の結果となる恐れがあります。取消処分を受けた場合、5年間は保険診療を行うことができなくなってしまいます。

今回は、病院、クリニック(診療所)への個別指導に詳しい弁護士が個別指導について徹底解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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厚生局による病院・クリニックへの個別指導とは?

個別指導とは行政手続法の行政指導にあたるものです。地方厚生局による病院、クリニック(診療所)への指導には、次の4種類があります。

  • 集団指導
  • 集団的個別指導
  • 個別指導
  • 新規個別指導

以下、それぞれについて簡単に説明します。

厚生労働省:指導・監査の流れ

集団指導

新規指定から概ね1年以内の全ての病院、クリニックに対して実施される指導です。また、診療報酬改定時や保険医療機関の指定更新時、保険医の新規登録時にも指導の目的、内容を勘案して対象者を選定して実施されます。

集団指導は、保険診療、診療報酬請求事務などについて講義方式で行われます。出欠状況は確認されますが、欠席しても特にペナルティはありません。

集団指導については特に事前準備は必要ありません。

集団的個別指導

レセプト1件あたりの平均点数が高い病院、クリニックを対象に実施される指導です。

下記2点を満たす病院、クリニックが選定対象となります。

  • レセプト1件当たりの平均点数が都道府県の平均点数より1.2倍(病院は1.1倍)を超え
  • 前年度及び前々年度に集団的個別指導又は個別指導を受けた保険医療機関を除き、類型区分ごとの保険医療機関の総数の上位より概ね8%の範囲

地方厚生局のホームページには管内の平均点数が掲載されています。開設者・管理者が、地方厚生局に電話で問い合わせれば自院の点数について回答を得られることになっています(医療指導監査業務等実施要領(指導編)P55)。

集団的個別指導は、講習方式で行う集団部分と、少数のレセプトに基づき面接懇談方式で行う個別部分が設けられていますが、現在は、ほとんどの場合2時間ほどの集団部分のみが実施されています。

集団的個別指導は正当な理由なく拒否すると、個別指導の対象となります。出席できないことについての正当な理由については厳しく判断されます。集団的個別指導が実施された翌年度も高点数の場合、翌々年度には個別指導がなされます。

集団部分のみの場合、集団的個別指導についても特に事前準備は必要ありません。

都道府県個別指導

以上のとおり、集団指導、集団的個別指導についてはさほど恐れる必要はありませんが、問題となるのはこの都道府県個別指導と次の新規個別指導です。

下記の理由によって選定された病院、クリニックに対して実施される指導です。元従業員や患者からの情報提供(下記1点目)がきっかけとなっているケースが多いと言われています。

都道府県個別指導は正当な理由なく拒否すると、監査の対象となります。指導方法や指導結果については後の項目で説明します。

  • 支払基金等、保険者、被保険者等から診療内容又は診療報酬の請求に関する情報の提供があり、都道府県個別指導が必要と認められた保険医療機関
  • 個別指導の結果、「再指導」であった保険医療機関等又は「経過観察」であって、改善が認められない保険医療機関
  • 監査の結果、戒告又は注意を受けた保険医療機関
  • 集団的個別指導の結果、指導対象となった大部分の診療報酬明細書について、適正を欠くものが認められた保険医療機関
  • 集団的個別指導を受けた保険医療機関のうち、翌年度の実績においても、なお高点数保険医療機関に該当するもの(ただし、集団的個別指導を受けた後、個別指導の選定基準のいずれかに該当するものとして個別指導を受けたものについては、この限りでない。)
  • 正当な理由がなく集団的個別指導を拒否した保険医療機関
  • その他特に都道府県個別指導が必要と認められる保険医療機関

新規個別指導

新規指定から概ね6か月経過後1年以内に病院、クリニックに対して実施される指導です。

教育的指導ではありますが、集団指導とは異なり、指導内容によっては監査手続に移行し、保険医療機関の指定、保険医の登録を取り消されるケースがありますので油断は禁物です。

なお、歯科は90%以上が新規個別指導の対象となるのに対し、医科で新規個別指導の対象となるのは約30%ほどです。

厚生局による病院・クリニックへの個別指導の流れと結果

次に、個別指導について具体的にその流れや結果について説明します。

個別指導の流れ

厚生局による個別指導の流れは以下のとおりです。

実施通知~指導日

指導日の1か月ほど前に個別指導の実施通知が届きます。指導日の1週間前に20人分、前日の正午までに10人分の対象患者名がFAXで指定されます。

指導日当日

指導対象がクリニックの場合は厚生局の会議室、病院の場合は病院内で実施されます。厚生局と都道府県の職員が5人前後と医師会から派遣される立会医師が参加します。

指導日当日は、原則として指導日の概ね6か月前の連続した2か月分の診療報酬明細書に基づき、関係書類等を閲覧し、面接懇談方式により行われます。指導時間は、クリニックは2時間、病院は3時間です。

依頼した資料が持参されなかった、対象患者の保険診療等について十分な回答がなされなかった、診療内容などに疑義が生じたなどによって予定時間内に指導を終了できない場合は、指導を中断して、後日再開されます。

また、指導中に診療内容又は診療報酬請求について明らかに不正又は著しい不当が疑われる場合、指導を中止し、必要に応じて患者調査をして監査に移行されます。

指導担当者は、個別指導が終了すると、保険医療機関に対し、口頭で指導の結果を説明します。

留意点
  1. 弁護士は委任状を提出して帯同できますが、保険医の代わりに答弁することはできません。
  2. 保険医自身による指導内容の確認が目的であると説明すれば、録音は認められます(医療指導監査業務等実施要領(指導編)P68)。必ず録音します。
  3. 厚生局に診療録のコピーをする権限はなく、保険医療機関に応じる義務はありません。決してコピーに応じてはいけません。

指導日以降

地方厚生局は、指導の結果及び指導後の措置について、原則1か月以内(遅くとも概ね2か月以内)に文書により保険医療機関に通知します。

その後、保険医療機関は指導結果の通知後1か月以内に改善報告書を提出します。指導対象となったレセプトのうち返還が生じるもの及び返還事項に係る全患者の指導月前1年分のレセプトについて、自主点検の上、返還をします。

新規個別指導と都道府県個別指導の比較

対象患者の通知 新規個別指導 指導日の1週間前にクリニックは10名分、病院は20名分を通知
個別指導 指導日の1週間前に20名分、前日に10名分を通知
指導時間 新規個別指導 クリニックは1時間
病院は2時間
個別指導 クリニックは2時間
病院は3時間
自主返還 新規個別指導 対象レセプト分のみ
個別指導 指導月以前1年分
正当な理由なく拒否 新規個別指導 個別指導へ
個別指導 監査へ

 

個別指導の結果

前記のとおり、指導日から1か月ほどで厚生局より指導結果の通知が届きます。指導結果は、「概ね妥当」、「経過観察」、「再指導」、「要監査」の4つのうちいずれかです。ただし、監査が必要と判断された場合には個別指導が中止されるのが通例のため、指導結果の通知において「要監査」の結果が通知されることは通常ありません。

いずれの措置とするかについては、診療の内容及び診療報酬の請求に対する理解の程度、請求根拠となる記録の状況、請求状況等を確認し、次の4つの観点を中心に、総合的に判断されます(医療指導監査業務実施要領(指導編)P70)。

4つの観点
  1. 診療が医学的に妥当適切に行われているか。
  2. 保険診療が健康保険法や療養担当規則をはじめとする保険診療の基本的ルールに則り、適切に行われているか。
  3. 『診療報酬の算定方法』等を遵守し、診療報酬の請求の根拠がその都度、診療録等に記録されているか。
  4. 保険診療及び診療報酬の請求について理解が得られているか。

 

概ね妥当

指摘事項の内容及び返還事項が軽微である等、4つの観点のうちいずれの観点においても特筆すべき問題点が認められない場合

 

実際には概ね妥当の結果を得ることは難しく、次の経過観察の結果を目指すことになります。

経過観察

4つの観点のうち、問題が認められる観点はあるが多岐にわたるものではなく、かつ、内容が重大でない場合
※判断にあたっては、個別指導実施時に診療内容及び診療報酬の請求について理解が得られているかどうかについて考慮する。

 

改善報告書受理後、数か月の問、レセプト又はその他必要に応じ保険医療機関から提出を求める書類により改善状況を確認し、改善が認められない場合は、次年度の個別指導の対象となります。

 

案外しっかりとチェックされていますので、気を抜かずに改善しなければなりません。

再指導

 4つの観点のうち、多岐にわたる観点において問題が認められる、又は、重大な問題が認められる場合

 

・次年度の個別指導の対象となる。
・不正又は不当が疑われ、患者から受療状況等の聴取が必要と考えられる場合は、速やかに患者調査を行い、その結果を基に当該保険医療機関の再指導を行う。患者調査の結果、不正又は著しい不当が明らかとなった場合は、再指導を行うことなく当該保険医療機関に対して「監査要綱」に定めるところにより監査を行う。

要監査

指導の結果、「監査要綱」に定める監査要件に該当すると判断した場合

 

・後日速やかに監査を行う。なお、指導中に診療内容又は診療報酬の請求について、明らかに不正又は著しい不当が疑われる場合にあっては、指導を中止し、直ちに監査を行うことができる。

 

厚生局による病院・クリニックへの個別指導の対処法

ここまでで個別指導の制度についてお分かりいただけたかと思います。ここからは個別指導の対象となった場合にどのように対処すれば良いのかについて説明します。

多くのケースではしっかりと事前準備を行えば、再指導や監査移行は回避して「経過観察」の結果を得ることが可能です。

実施通知を受けた後の準備

個別指導の実施通知を受けた場合、有効な準備・対策をとるべく、まずは個別指導の対象となった原因について推測します。

個別指導の対象となる端緒は主に、①レセプト1件あたりの高点数か②元従業員や患者といった第三者からの情報提供です。

以前に集団的個別指導の対象となっていたのであれば、レセプトの高点数が理由である可能性が高いです。高点数を理由とした集団的個別指導や個別指導の対象とならないためには、日ごろから支払基金から返戻された付箋の内容はよく確認して、二度と同じ過ちを繰り返さないよう努めることが重要です。

第三者からの情報提供の場合、誰から、どのような情報提供であったのかを推測できれば対象となる診療録を確認して厚生局からの指摘や質問を想定して準備することができます。

しかしながら、このように考えても個別指導の対象となった原因がわからないことも多くあります。

そこで、指導日の概ね6か月前の連続する2か月のレセプトが指導対象とされるので、指導日の1週間前に指定された20名の患者全員が来院している連続した2か月を特定し、その2か月の20名の診療録を確認することで指導目的、指摘事項を推測し、想定される指摘事項とそれに対する回答を準備します。

指導日当日の注意点

指導日当日は以下の点に注意して対応しましょう。後で改めて説明しますが、個別指導には弁護士を帯同することを強くお勧めします。

指示されたものは漏れなく持参する

事前に指示されていた書類は漏れなく持参しましょう。不足があると指導が中断され、1回の指導で終わらずに2回、3回と指導が続く恐れがあります。ただでさえ忙しいのに何度も指導を受けること自体が苦痛ですし、時間をかけて粗探しをされることになります。

 

できる限り1回の指導で終わるよう持参物の準備はしっかりと行いましょう。

感情的にならない

指導医療官も同じ医師であるなら現場のことはわかってくれるだろうと期待してしまうかもしれません。しかし、指導医療官は行政の人間と考えてください。医療現場の実際を理解せずに責めるような発言をされることがありますが、それに対して感情的になると、適切でない回答をしてしまったり、担当官の心証を悪くして再度指導の必要があると判断される恐れがあります。

何を言われようと冷静に落ち着いて対応することが重要です。

迷ったら発言しない

複数人に囲まれて質問を受けるため個別指導は精神的に相当疲弊します。そのため、中盤以降につい不用意な発言をしてしまうことがあります。藪蛇になることがありますので、質問の意味をよく咀嚼して、回答に迷ったら回答を控えましょう。

そして、休憩を申し出て、帯同している弁護士とどのように回答すべきか協議しましょう。

個別指導をクリアするための診療録等に関するポイント

過去の指摘事項については各地方厚生局のホームページに掲載されています。この過去の指摘事項を参照しながら、個別指導となった原因を特定したり、指導日当日の想定問答を準備すると良いでしょう。

以下、過去の指摘事項の具体例をいくつか見ていきましょう。

診療録

診療報酬請求の根拠となるので、診療録は診療の都度、遅滞なく必要事項を十分に記載する必要があります。

記載が不十分だと無診察治療を疑われるおそれがありますし、診療報酬請求の根拠が不十分であり不正請求を疑われるおそれもあります。

もちろん実施通知が来た後の追記・変更は改竄となるので厳禁です。

指摘例

  • 医師による日々の診療内容の記載が全くない日が散見される又は極めて乏しい
  • 医師の診察に関する記載がなく、「薬のみ(medication)」、「do」等の記載で投薬等の治療が行われている。
  • 保険診療と自由診療の診療録を区別して管理していない。

診療報酬明細書

診療報酬明細書は、請求事務任せにせず、審査支払機関への提出前に、ドクター自ら点検しましょう。レセプトとカルテの突き合わせが行われ、矛盾があると取消処分を受ける恐れがあります。スタッフがレセプトを作成したからわからないという弁解は通りません。

指摘例

  • 診療録と診療報酬明細書で傷病名が一致しない。
  • 主傷病名と副傷病名を区別していない。
  • 主傷病名は原則1つとされているところ、非常に多数の傷病名を主傷病名としている。

診療料

    指摘例

  • 再診相当であるにもかかわらず、初診料を算定している。
  • 常態として診療応需の態勢をとっている時間に時間外加算を算定している。
  • 入院診療計画の記載内容が画一的であり、個々の病状に応じたものとなっていない。

一部負担金等

    指摘例

  • 一部負担金について従業員や家族など受領すべき者から受領していない。
  • 未収の一部負担金に係る管理簿を作成していない。
  • 領収証に消費税に関する文言がない。

検査

    指摘例

  • 必要以上に実施回数の多い検査
  • 段階を踏んでいない検査
  • 健康診断として実施した検査

厚生局による病院・クリニックへの個別指導で弁護士に依頼するメリットと費用

弁護士をつけると厚生局の心証を害するのではないかとか、やましいことがあるから弁護士をつけたのだと思われるではないかとか不安に思うかもしれません。

しかし、昨今では個別指導の際に弁護士が帯同することは珍しくなくなりましたし、厚生局側のマニュアルにも弁護士が帯同する場合の手続きについて記載がありますので、上記のような心配は無用です。

以下、個別指導で弁護士をつけるメリットと弁護士費用について説明します。

個別指導で弁護士に依頼するメリット

まず、弁護士は、個別指導の対象となった選定理由を推測し、指摘事項を想定、回答方針を準備することを手伝ってくれます。個別指導を乗り切れるかどうかは、いかに充実した事前準備ができているかにかかっています。

次に、指導日当日の厚生局側の恫喝・脅迫ともいえるような強権的な言動、進行を防止することができます。弁護士が帯同していない場合には警察による尋問とも思えるような手続きが行われることがあります。

3点目として、プレッシャーや誘導尋問によって不利な事実を認めたり、不正確な供述をとられる事態を防ぐことができます。帯同した弁護士は医師の先生の横に座り、適宜助言したり、休憩を挟むなどして監査移行の可能性を低下させます。

弁護士費用

最後に、当事務所の弁護士費用について確認をしてきましょう。

帯同のみ
  1. 個別指導 22万円
  2. 監査 33万円
  3. ※1期日で終わらなかった場合は、以降1期日につき11万円
個別指導対応
  1. 着手金 33万円
  2. 要監査にならずに終結した場合の報酬 33万円
  3. ※1期日で終わらなかった場合は、以降1期日につき11万円
監査対応
  1. 着手金 55万円
  2. 取消にならなかった場合の報酬 110万円

まとめ

以上、病院、クリニック(診療所)への個別指導に詳しい弁護士が個別指導について解説しました。

初めてのことで何もわからずにぶっつけ本番で指導日当日を迎えてしまい、まともに回答ができず監査に移行してしまったという方もおられます。また、新規指定の研修のノリで新規個別指導を受けたところ、要監査の評価を受けてしまったという方もおられます。

個別指導は真剣に対応しなければ指定・登録の取消という事実上廃業の結果となる恐れるべき手続きです。指導対象となった場合には、あらゆるリリースを投下して指導日当日までに準備をするべきです。

厚生局から個別指導の通知を受けた病院、クリニックの方は、一日も早く個別指導に詳しい弁護士にまずは無料でご相談ください。

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