開示請求から刑事告訴にどうつなげる?成功のポイントを解説
最終更新日: 2024年12月16日
- 開示請求から刑事告訴への流れを知りたい
- 誹謗中傷を受けて刑事告訴したい場合どのような罪に問える?
- 開示請求を成功させるポイントは?
インターネット上では匿名で発言できることが多く、誹謗中傷やプライバシー侵害の被害にあっても投稿だけで加害者を特定するのは難しいケースがあります。それでも刑事告訴したい場合は、前段で開示請求が必要です。
そこで今回は、誹謗中傷やプライバシー侵害に関するトラブルの解決に豊富な実績を持つ専門弁護士が、開示請求や刑事告訴の意味、成功するポイント等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 開示請求の対象行為は親告罪にあたる罪状が多い
- 開示請求は、サイト管理者とプロバイダの両方に行う
- 開示請求や刑事告訴は時間との勝負
開示請求・刑事告訴の基礎知識と知っておくべきポイント
ここでは、開示請求・刑事告訴の基礎知識と、知っておくべきポイントを2つ解説します。
- 開示請求の意味
- 刑事告訴の意味
1つずつ解説します。
開示請求の意味
開示請求・刑事告訴の基礎知識と知っておくべきポイント、1つ目は開示請求の意味です。
開示請求とは、個人情報保護法第33条に基づき「企業など個人情報を扱う事業者に対して、自分に関する情報を開示するよう求める」ことです。
企業には、個人から得た保有個人データを適切に管理する義務があります。開示請求が認められれば、企業が有する保有個人データの内容やその利用方法を確認できるのです。
基本的に、企業自ら取得した保有個人データは、全て開示の対象になります。ただし、他企業より委託を受けて得た情報や、公開により社会への悪影響が懸念される場合は開示されない可能性が否めません。
開示請求の手続きは企業によって異なりますが、企業のウェブサイトや問い合わせ窓口で所定の様式に従い必要事項を記入する方法が一般的です。
刑事告訴の意味
開示請求・刑事告訴の基礎知識と知っておくべきポイント、2つ目は刑事告訴の意味です。
刑事告訴とは、警察など捜査機関に犯罪があった旨を伝え、犯人を罰してほしいと申し出ることです。刑事告訴は口頭でも可能ですが、告訴状を作成する場合がほとんどです。
ここでは、開示請求の対象行為を刑事告訴する場合の罪について3つ解説します。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
では、1つずつ解説します。
刑事告訴すべき罪は親告罪が多い
まず、刑事告訴の罪状では基本的に親告罪であることを、前提条件として知っておかなければなりません。
誹謗中傷が該当する主な罪は、「侮辱罪」や「名誉毀損罪」です。この2つに関して注意しなければならないことは、親告罪であることです。
親告罪では、被害者自らが告訴しなければ、検察官は被疑者を起訴できません。
なお、脅迫罪は親告罪ではありませんが、よほど悪質なものでない限り捜査機関が独自に捜査を行うケースは少ないため、誹謗中傷の罪を問いたい場合は被害者の告訴が必要です。
名誉毀損罪
刑事告訴する場合の罪の1つ目は、名誉毀損罪です。
名誉毀損罪は、特定個人について真実・虚偽を問わず事実を公然と広め、その人の名誉を傷つける行為に対する罪を指します(刑法230条)。
たとえば、SNSやインターネット掲示板で、ある人物の行動や発言を根拠にその人物の社会的評価を下げる書き込みがあれば、名誉毀損とみなされる恐れがあるでしょう。
▼名誉毀損罪が成立する条件
公然性 | 不特定多数の人が見る可能性がある場での発言 |
事実の摘示 | 特定の事実を述べている |
名誉の毀損 | その事実により被害者の社会的評価が低下 |
▼名誉毀損罪で受ける可能性がある処罰
- 3年以下の懲役
- 禁錮
- 50万円以下の罰金
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※刑法より抜粋
侮辱罪
刑事告訴をする場合の罪の2つ目は、侮辱罪です。
侮辱罪は、事実を具体的に摘示しなくても、相手を悪口で侮辱した場合の罪です。
たとえば、「あいつはダメなやつだ」など抽象的な表現でも、相手を侮辱したと認められれば侮辱罪(刑法231条)が成立します。
2022年の法改正で侮辱罪の罰則が強化され、侮辱罪が成立した場合以下の刑に処される可能性があります。
▼侮辱罪で受ける可能性がある処罰
- 1年以下の懲役
- 禁錮
- 30万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
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※刑法より抜粋
脅迫罪
刑事告訴をする場合の罪の3つ目は、脅迫罪です。
脅迫罪は、相手やその親族などに対し「生命、身体、自由、名誉、財産に害を加える旨を告知し、相手を脅かす」行為に対する罪です(刑法222条)。
誹謗中傷だけでなく「殺してやる」など誰かを脅迫した場合などが、脅迫罪に該当するでしょう。
▼脅迫罪で受ける可能性がある処罰
- 2年以下の懲役
- 30万円以下の罰金
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※刑法より抜粋
開示請求と刑事告訴を進める具体的な流れ
ここでは、開示請求と刑事告訴を進める具体的な流れを解説します。
- 開示請求の流れ
- 刑事告訴の流れ
1つずつ解説します。
開示請求の流れ
1つ目は開示請求の流れです。
開示請求の流れを2つ解説します。
- サイト管理者への発信者情報開示請求
- プロバイダへの発信者情報開示請求
1つずつ解説します。
サイト管理者への発信者情報開示請求
開示請求の流れの1つ目は、サイト管理者への発信者情報開示請求です。
まずは、発信者情報開示請求で書き込みがあったサイトの管理者に、投稿者IPアドレスなどの情報を開示するよう求めましょう。これは、裁判所を通さずに、直接サイト管理者に書面で請求する方法です。
請求は、誹謗中傷内容やサイトURL、情報開示を求める理由などを添えて行います。手続きを促すため、回答期限を設けた方がよいでしょう。
しかし、サイト管理者が簡単に情報を開示してくれるとは限りません。請求に応じない場合は、裁判所に「発信者情報開示の仮処分」を申し立てましょう。裁判所が申立てを認めれば、サイト管理者に情報を開示するよう命令を出してくれます。
プロバイダへの発信者情報開示請求
開示請求の流れの2つ目は、プロバイダへの発信者情報開示請求です。
サイト管理者から得られたIPアドレスや発信時間などの情報に基づき、IPアドレスの利用プロバイダを特定しましょう。裁判所は、投稿が悪質な誹謗中傷で違法な行為であると認めれば、プロバイダに対して情報を開示するよう命じます。
プロバイダを特定できたときは、プロバイダに対し契約者の氏名や住所などを情報開示するよう請求します。プロバイダの契約者が、誹謗中傷を行った人かそれに近い人になるでしょう。請求に応じない場合は、裁判所を介して請求することになります。
刑事告訴の流れ
2つ目は刑事告訴の流れです。
刑事告訴の流れを3つ解説します。
- 告訴状作成
- 告訴状提出
- 検察の調査から裁判
1つずつ解説します。
告訴状作成
刑事告訴の流れの1つ目は、告訴状作成です。
刑事告訴は口頭でも可能ですが、原則的には「告訴状」を作成することになります。
▼告訴状に書くべき内容の例
作成年月日 | いつ告訴状を作成したのか |
宛先 | どの警察署に告訴状を提出するのか |
告訴人 | 誰が告訴するか(氏名、住所など)※1 |
被告訴人 | 誰を告訴するのか※2 |
告訴理由 | どのような犯罪がされたか具体的に説明 |
証拠 | 誹謗中傷のスクショなど |
※1:被害者本人だけでなく、被害者の法定代理人(弁護士や親権者)でも可能
※2:被告訴人が不明でも、「被告訴人 不詳」として告訴可能
告訴状提出
刑事告訴の流れの2つ目は、告訴状提出です。
作成した告訴状を警察署に提出します。検察庁への提出も可能ですが、まずは警察で捜査が行われるため、事件の発生場所か自宅に近い警察署がよいでしょう。
告訴には期限があることに注意が必要です。特に、名誉毀損罪や侮辱罪などは親告罪で、自ら被害を訴えないと警察は動きません。刑事訴訟法235条により、犯人を特定できた日から6か月以内に告訴しないと告訴できなくなります。
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※刑事訴訟法より抜粋
検察の調査から裁判
刑事告訴の流れの3つ目は、検察の調査から裁判を行うことです。
告訴状が受理されると警察や検察が捜査を開始し、検察は「起訴」か「不起訴」かを決定します。起訴の場合は裁判に移り、有罪であれば加害者は処罰されます。基本的には、加害者が起訴されれば何らかの刑事処分が下され、前科が付くものと考えましょう。
不起訴になれば刑事処分の対象とはなりません。ただし、不起訴でも警察や検察の記録には前歴が残ります。
開示請求から刑事告訴を成功させるためのポイント
ここでは、開示請求から刑事告訴を成功させるためのポイントを3つ解説します。
- 早い始動
- 準備を十分にしてから削除請求
- 弁護士への依頼
1つずつ解説します。
早い始動
開示請求から刑事告訴を成功させるためのポイントの1つ目は、早い始動です。
開示請求は、急いで行わないと不利になります。なぜなら、SNSなどのインターネットサービスやプロバイダでは、ログの保存期間があるためです。サービスによりますが、3〜6か月程度しか保存しないと考えてよいでしょう。
最悪の場合、開示請求が認められたものの、ログが削除されていて投稿者を特定できないかもしれません。また、投稿者自身が証拠を保存する前に投稿を削除してしまうことも考えられます。
そのようなことがないよう、誹謗中傷に気づいたらすぐに証拠を保存するなど早く始動しましょう。
準備を十分にしてから削除請求
開示請求から刑事告訴を成功させるためのポイントの2つ目は、準備を十分にしてから削除請求を行うことです。
誹謗中傷の投稿を早く消してしまいたいと思うこともあるでしょう。しかし、証拠を残さないまま削除請求を行うと、開示請求や刑事告訴に必要な証拠を消してしまうことになります。弁護士と相談して適切なタイミングで削除請求を行いましょう。
弁護士への依頼
開示請求から刑事告訴を成功させるためのポイントの3つ目は、弁護士への依頼です。
開示請求や刑事告訴に必要な告訴状の作成を行うためには、専門知識や経験が必要です。誹謗中傷問題に詳しくない一般の方が自分だけで行うことは、現実的ではありません。
ここでは、弁護士に依頼するときのポイントを3つ解説します。
- 事前に資料を用意
- 費用の確認
- 複数の弁護士に相談
1つずつ解説します。
事前に資料を用意
弁護士に依頼するときのポイントの1つ目は、事前に資料を用意することです。
これにより、弁護士に要点がいち早く伝わり相談がスムーズに進むでしょう。弁護士が事前情報を把握した上で速やかに依頼できれば、その分解決も早まります。
資料には、これらの情報を盛り込んでおきます。
▼資料に盛り込むべき内容
- 誹謗中傷の投稿がわかるスクショ・URL
- 誹謗中傷に気づいた日時
- 誹謗中傷を受けたきっかけ(心当たりがあれば)
- 自ら開示請求や削除依頼を行った日時(あれば)
- 被害内容(売上ダウンを示す資料や診断書など)
費用の確認
弁護士に依頼するときのポイントの2つ目は、費用の確認です。
弁護士費用は、事務所によって大きく異なります。費用の目安だけでなく、費用の内訳や費用の計算方法についても細かく聞き取りましょう。
複数の弁護士に相談
弁護士に依頼するときのポイントの3つ目は、複数の弁護士に相談することです。
開示請求や刑事告訴は長期戦になるため、弁護士とも長い関わりになります。最初は複数の弁護士に相談し、弁護士との相性や提示してくれる解決策を比較しましょう。そこから、最もよいと思える弁護士に依頼します。
開示請求や刑事告訴を行いたい場合は春田法律事務所の弁護士に相談
今回は誹謗中傷やプライバシー侵害に関するトラブルの解決に豊富な実績を持つ専門弁護士が、開示請求や刑事告訴の意味、成功するポイント等を詳しく解説しました。
春田法律事務所では、初回相談が無料です。インターネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害にお悩みであれば、開示請求や刑事告訴について事務所にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。