発信者情報開示請求が来る?開示される?不安な方のために専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月08日

発信者情報開示請求が不安な方のために専門弁護士が解説!

  • 発信者情報開示請求をされるのか不安だ
  • 発信者情報として個人情報が開示されるのか不安だ
  • 発信者情報開示請求の後にどんな責任を問われるのか不安だ

インターネットを利用していると、匿名性ゆえについ軽い気持ちで他人の権利を侵害してしまうことがあります。また、権利侵害というほどのことでもないのに、相手が過剰反応してくることもあります。

近時はこのようなケースで発信者情報開示請求がなされるケースが非常に増えており、請求を受ける側の立場に立った方はその後にどうなるのか不安を抱えて生活をすることになります。

今回は、そのような不安を少しでも軽減するために、発信者情報開示請求について専門の弁護士が解説していきます。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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発信者情報開示請求が来るのか不安

インターネット上で名誉毀損や著作権侵害などをしてしまい、発信者情報開示請求が来るのか不安を抱えている方もおられるでしょう。ここでは、まず発信者情報開示請求の流れを簡単に確認した上で、いつ頃請求が来るのかについてご説明します。

発信者情報開示請求の流れ

発信者情報開示請求とは、インターネット上で権利侵害をした匿名である相手の氏名や住所などを突き止める手続きです。以下の2段階の手続きで行われます。

第1段階で、権利侵害の行われた掲示板などのサービス管理者に対して裁判手続をして相手が使用したIPアドレスを開示させます。

第2段階では、当該IPアドレスをもつインターネットのプロバイダ(NTTやソニー、auなど)に対して裁判手続を用いてそのIPアドレスを使用したプロバイダ契約者の氏名や住所などを開示させます。

このような2段階の手続きで半年以上も時間がかかるため、2022年10月以降に施行される改正法は1度に上記二つの手続きを行うことを可能にしています。

なお、サービスの管理者が氏名などの情報を持っている場合はサービス管理者に裁判をして開示させます。

請求はいつ来るのか

では、問題とされている行動をした後、いつになったら発信者情報開示請求が来るのでしょうか。

発信者情報開示請求はプロバイダに対してなされるものですから、発信者自身に来るのは、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」というプロバイダから郵送されてくるものです。この意見照会書とは、発信者情報開示に同意するか否かを尋ねる書面です。

この意見照会書が届いて初めて発信者情報開示請求がされたことを知ることになります。

第1段階のサービス管理者からIPアドレスを開示してもらうのに要する期間は1か月~3か月ほど、そして、第2段階の発信者情報開示請求の裁判を起こされてから通常、1か月以内には意見照会書が来ます。

しかし、問題とされている行動があった後、相手がいつ弁護士に依頼するかわかりませんし、その弁護士が準備にどれくらいの期間を要するかもわかりません。そのため、いつ発信者情報開示請求が来るのかを正確に判断することは不可能です。

もっとも、プロバイダはアクセス記録を3か月から6か月ほどの期間しか保存していません。この点から逆算すると、問題とされている行動から概ね1年を経過すれば発信者情報開示請求が来る可能性は低くなります。

発信者情報開示請求で開示されるのか不安

次に、発信者情報開示請求を受けたことを知った後に、ご自身の発信者情報が相手に開示されてしまうのか不安に思うことでしょう。そこで、ここでは発信者情報が開示されるのかどうかについてご説明します。

意見照会書への対応

プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が来たら、これに対して発信者情報開示に同意するか同意しないかを回答します。

指摘されていることに身に覚えがあり、かつ法的に違法な権利侵害が成立すると考える場合には、発信者情報開示に同意します。なぜなら、同意しなかったとしてもその後の裁判では開示が認められますし、裁判までされますと高額な弁護士費用の賠償も求められることになるからです。

他方、指摘されていることに身に覚えはあるが、違法な権利侵害ではないと考える場合もあります。この場合、単に違法な権利侵害はないと回答するだけでは意味はなく、法的な説明をすることが重要です。これによって相手がその後の裁判を断念したり、裁判でも開示がなされない結論になる可能性が高まるからです。

なお、指摘されていることについて身に覚えがない(覚えていないではなく)場合、例えば、同居する家族がその行動をしていた可能性もありますので、誰がやったことなのか調査することが必要です。

開示される要件

では、発信者情報開示に同意せず、請求者がプロバイダに対して裁判を起こした場合、裁判所は発信者情報開示を認めてしまうのでしょうか。

裁判で主要な争点となるのは、名誉権侵害、著作権侵害等の権利侵害の事実が明白であるかどうかです。

特に名誉権侵害の場合には、当該発信に公共性があり、公益目的をもって発信しており、かつ当該発信が真実である(又は真実と信じるに相当の理由がある)場合には違法性が否定されます。

権利侵害の事実が明白と裁判所が判断するかどうかについては、法律の専門家でなければ判断は困難ですから、専門の弁護士に相談することが必要です。

発信者情報開示請求で不安になる法的責任

最後に、法的責任についてご説明します。

発信者情報開示請求は最終的に法的責任を追及するために個人を特定する手続きです。そのため、発信者情報開示がなされた後は当然、法的責任を問われます。

まず、民事責任としては損害賠償請求です。慰謝料であれば10万円から高くとも100万円ほどですが、発信者情報開示請求に要した50万円から100万円ほどの弁護士費用も請求されます。

著作権侵害の場合には損害賠償金額は高額になることが多く、数百万円から数千万円の請求がなされることも少なくありません。

他方、民事責任だけでなく刑事責任を問われることもあります。名誉毀損罪、侮辱罪、著作権法違反などです。有罪判決を受けますと罰金刑や懲役刑の刑事罰を受けて前科が付きます。また、逮捕・勾留されると20日間以上も身柄拘束される可能性があります。

このように最後に来る法的責任は重いものがあります。もし権利侵害が事実なのであれば、発信者情報開示には同意をして、誠意をもって相手に謝罪し、示談成立を目指すことをお勧めします。

まとめ

以上、発信者情報開示請求が不安な方を対象に解説しました。

発信者情報開示請求は最初の対応を誤ると、また手続きが進むほどに請求を受ける側の方にとって痛手が大きくなる手続きです。そのため、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いたときには直ちに専門の弁護士に相談することが重要です。

なお、発信者情報開示請求が来るかどうかはわかりませんので、意見照会書が届くまでは特に前もって準備することはありません。ただし、相手がわかっている場合には、意見照会書を待たずに示談をすることも効果的です。

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