発信者情報開示請求を自分で行うには?方法とリスク・弁護士に相談するメリットも紹介
最終更新日: 2024年12月27日
- 誹謗中傷の投稿を行った人物について調査したい。調査方法を教えて欲しい。
- 発信者情報開示請求は自分だけで行えるのだろうか?
- 発信者情報開示請求を行う前に、弁護士に相談した方がよいのだろうか?
発信者情報開示請求は、SNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダに、発信者(誹謗中傷の投稿を行った者)の情報開示を求める方法です。
開示請求は自分で行えますが、発信者の特定までには各プロセスを経なければいけません。
そこで今回は、ネット上の様々な問題に携わってきた専門弁護士が、発信者情報開示請求を自分で行う方法、自分で行う場合のリスク等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 発信者情報開示請求はまずSNS・掲示板サイトの運営者に請求後、プロバイダに請求するという流れとなる
- 発信者情報開示請求を自分で行うと、手続きに手間取る可能性がある
- 発信者情報開示請求をスムーズに進めたいなら、専門弁護士に相談や依頼をした方がよい
発信者情報開示請求は自分でできるか?
発信者情報開示請求は、誹謗中傷の投稿をされたあなた自身が行えます。
その他に次のような方も請求が可能です。
- 代理人:あなた本人ではなく家族等の誰かに開示請求を任せたい場合
- 親権者:開示請求を希望する本人が未成年の場合
- 弁護士:法律の専門家に開示請求を任せたい場合
なお、代理人が開示請求を行う場合は、弁護士を除き委任状が必要です。委任状は開示請求を希望するあなたが作成します。
代理人となる人物の氏名・住所・生年月日と、「私は〇〇を、代理人と定め権限を委任する」と記載し、委任する内容も明記します。
その後、委任した年月日、委任者(あなた)の氏名・住所・連絡先を記載し、押印(実印が好ましい)しましょう。
発信者情報開示請求を自分で行う方法
発信者情報開示請求を進める場合、まずはSNS・掲示板サイトの運営者に任意開示の請求を行いましょう。
最終的には、発信者と契約しているプロバイダを相手に、裁判所へ「発信者情報開示請求訴訟」を提起します。
サイトへの請求
SNS・掲示板サイトの運営者に任意開示請求を行います。
任意開示請求のときは主に、次の内容を運営者に提示しなければなりません。
- 掲載された誹謗中傷の投稿情報、証拠
- 侵害されたあなたの権利
- あなたの権利が明白に侵害されたと主張する理由
- あなたが発信者情報の開示を受ける正当な理由
- 開示請求する発信者に関する情報 等
忘れずに運営者へログ保存も依頼しておきましょう。
運営者が開示請求を拒否した場合、運営者を相手に裁判所へ「発信者情報開示仮処分」を申し立てます(ログ保存を拒否されたら、ログ保存の仮処分申立)。
運営者が開示に応じても、まだ発信者の氏名・住所・メールアドレス等の把握はできません。開示されるのはIPアドレス・タイムスタンプ等です。
IPアドレスが判明すれば、発信者の契約しているプロバイダがわかります。今度はプロバイダへの開示請求に移ります。
プロバイダへの請求
発信者が契約したプロバイダを特定後、プロバイダに開示請求が可能です。
ただし、拒否された場合はプロバイダを相手に、裁判所へ「発信者情報開示請求訴訟」を提起しましょう。
裁判所から開示を命じる判決が出た場合、プロバイダは発信者の情報を開示します。開示される情報は、発信者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等です。
発信者の個人情報を得たあなたは、誹謗中傷の投稿をした発信者に対し、損害賠償の請求ができます。
損害賠償請求
誹謗中傷の投稿をした発信者の氏名・住所等が特定できたら、発信者の住所に「損害賠償請求」の通知を送付しましょう。
通知には「あなたの誹謗中傷の投稿で精神的な苦痛を受けたので、損害賠償および誹謗中傷の投稿削除を請求します。」と記載し、次の内容を明記します。
・損害賠償額、支払方法
・誹謗中傷の投稿削除
・期限までに履行が確認できない場合、法的措置を行う旨
通知のときは「内容証明郵便」を利用すると、発信者に心理的なプレッシャーを与え、「確かに発信者へ損害賠償を請求した」という証明にもなります。
内容証明郵便を送付後、発信者が請求を無視・拒否した場合、指定期限経過後、通知に明記していた通り法的措置を進めていきましょう。
裁判手続き
発信者が損害賠償請求の通知に応じない場合、発信者の住所地を管轄する裁判所に、「損害賠償請求訴訟」を提起します。
裁判所に訴えを提起するときは、訴状の他、誹謗中傷の投稿の証拠、内容証明郵便の控え・配達証明書等の提出が必要です。
裁判所で審理された結果、原告であるあなたが勝訴した場合、発信者(被告)に損害賠償を命じる判決が言い渡されます。
なお、損害賠償請求の通知をせずいきなり訴訟提起が可能です。また、発信者の刑事裁判中でも訴訟を行って構いません。
発信者情報開示請求を自分で行うメリット
開示請求をあなた自身で行えば、その分費用が抑えられます。
「発信者情報開示仮処分」と「発信者情報開示請求訴訟」にかかる費用を見てみましょう。
発信者情報開示仮処分
主な費用は申立手数料、郵便切手(予納郵券)、担保金の3つです。
- 申立手数料:1件あたり2,000円分の収入印紙
- 郵便切手:約3,000~6,000円
- 仮処分担保金:約10~30万円
なお、担保金は仮処分命令が却下された場合に、SNS・掲示板サイトの運営者側に対する損害賠償の担保として納めるお金です。あなたの請求が正当であると認められた場合、担保金は返還されます。
発信者情報開示請求訴訟
主な費用は申立手数料、郵便切手(予納郵券)の2つです。
- 申立手数料:1万3,000円分の収入印紙
- 郵便切手:約6,000円
後から返還される担保金の額も含めれば、仮処分・訴訟にかかる費用は約20〜32万円です。
発信者情報開示請求を自分で行うリスク
自分で開示請求を行う場合は、費用を抑えられる反面、予想外のアクシデントが発生する可能性もあります。
手続きを慎重に進めるだけではなく、迅速な対応も必要となるでしょう。
受理されないことも多い
「犯罪者に報復したい。」「社会的に抹殺してやる。」という理由で開示請求を行う場合は、受理されない可能性が高いです。
発信者情報の開示を受けて、自らの権利侵害の救済につなげる目的でなければ、SNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダ、そして裁判所も開示請求は認めないことでしょう。
開示請求の手続きは感情的とならず、理性的に進めていく必要があります。
時間との戦いになる
プロバイダの投稿(ログ)保存期間は、約3〜6か月といわれています。一定の期間が経過すると、投稿(ログ)は消去されてしまうことでしょう。
発信者情報開示仮処分の場合、SNS・掲示板サイトの運営者が開示に応じるまで2週間〜2か月かかると言われています。
仮処分により2週間〜2か月くらいでプロバイダが判明するので、その後すぐプロバイダを相手に訴訟を提起しないと、発信者の個人情報は特定されないおそれもあるでしょう。
なお、発信者情報開示請求訴訟でプロバイダが開示に応じる期間は、概ね6か月〜1年と言われています。
発信者情報開示請求を弁護士に相談・依頼するメリット
「発信者情報開示請求の手続きを自分だけの力で進めるのは難しい。」と感じたら、発信者情報開示請求に詳しい弁護士と相談し、サポートを依頼しましょう。
弁護士に手続きを任せれば、スムーズに発信者の個人情報の開示が行えます。
法的なアドバイス
開示請求の手続きを進める前に、弁護士と相談すれば次のようなアドバイスが得られます。
- 発信者の投稿が誹謗中傷にあたるか
- 発信者情報開示請求を行う正当な理由があるのか
- 発信者情報開示請求の手順
- 必要な書類の説明
- 証拠の保存の仕方
- 発信者情報開示請求訴訟の流れ
弁護士と相談し「弁護士に開示請求を任せた方がよい。」と考えたら、そのまま委任契約を締結しても構いません。
スムーズな対応
弁護士は発信者情報開示請求の手続きに精通しており、スムーズに発信者の情報開示が実現できます。
法律の素人が無理に手続きを進めると、次のようなアクシデントの発生が懸念されます。
- SNSや掲示板サイトの運営者に任意開示を求めたら、書類の不備を指摘された
- 裁判所に仮処分や訴訟を提起しようとしたら、管轄外を指摘された
- 裁判所から発信者情報開示請求に関する仮処分や訴訟提起が受理されなかった
手続きが進まないと、プロバイダの投稿(ログ)保存期間が経過し、発信者の特定が不可能となる場合もあるので注意が必要です。
弁護士を代理人にする場合、書類の不備、仮処分や訴訟提起が受理されないという事態はまず考えられません。
適切な損害賠償金の請求
あなたが誹謗中傷した発信者に損害賠償請求を行うとき、あまりに法外な金額を提示すると、交渉や裁判であなたの主張は通らないおそれがあります。
発信者が誹謗中傷でどのような罪に問われる可能性があるかで、損害賠償請求の金額は異なります。
- 名誉毀損:(個人の場合)約10~50万円、(団体の場合)約50~100万円
- 侮辱:約1~10万円
- 業務妨害:約100~200万円
ただし、誹謗中傷の投稿の悪質性や、被害者であるあなたの損失等によっては、請求可能な金額の上乗せも可能です。
弁護士は様々な状況を加味し、適正な賠償金額を算定します。弁護士の提示した賠償金額ならば、交渉や裁判のとき、主張が受け入れられる可能性も高くなります。
発信者情報開示請求を自分でしたいなら弁護士にご相談を
今回はネット上の様々な問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、発信者情報開示請求の手順や、スムーズに手続きを進めるポイント等について詳しく解説しました。
被害者であるあなたが発信者(加害者)を特定しようとしても、発信者情報開示請求を円滑に進められるとは限りません。
トラブルなく迅速に情報開示を実現し、発信者に損害賠償請求、刑事責任を追及するためには、弁護士のサポートが必要となるでしょう。
発信者情報開示請求前に、弁護士と相談し、自分で対応できるかどうか慎重に検討してみてください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。