発信者情報開示請求を個人で行う方法や費用相場は?メリット・デメリットと注意点も徹底解説

最終更新日: 2025年03月31日

発信者情報開示請求を個人で行う方法や費用相場は?メリット・デメリットと注意点も徹底解説

  • ネット上で誹謗中傷した発信者を特定したい。開示請求の費用はどれくらいかかるのだろう?
  • 発信者情報開示請求を個人が自分で行う場合の費用が知りたい。
  • 発信者情報開示請求は弁護士に任せた方がよいのだろうか?弁護士費用の目安も知りたい。

発信者情報開示請求は、インターネット上のSNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダに、誹謗中傷の投稿を行った者(発信者)の情報開示を求める方法です。

発信者情報開示請求を裁判所に申し立てるときは、手数料等の費用がかかります。

そこで今回は、ネット上の様々な問題に携わってきた弁護士が、発信者情報の開示請求を個人が行う場合の費用や方法・メリット・注意点等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。

  • 発信者情報開示請求を個人が自分で行う場合の費用は、合計約10~31万円かかる
  • 発信者情報開示請求を弁護士に任せると、追加費用が約60万円以上かかる可能性がある
  • 発信者情報開示請求を自分で行う場合、スピーディにいかないおそれもある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

発信者情報開示請求の費用はどれくらいか?

発信者情報開示請求を個人が自分で行う場合と、弁護士を立てて行う場合では、当然のことですが費用に差が出てきます。

こちらでは、それぞれの場合の費用の目安を紹介します。

個人が自分で行う場合

個人が自分だけで裁判所に開示請求を申し立てる場合、主な費用は申立手数料、郵便切手(予納郵券)、担保金の3つです。

  • 申立手数料:1件あたり2,000円分の収入印紙
  • 郵便切手:約3,000~6,000円
  • 仮処分担保金:約10万~30万円

合計約10万~31万円が費用の目安となります。

仮処分担保金とは、仮処分命令が却下されたときにSNS・掲示板サイトの運営者側に対して支払う損害賠償の担保として納めるお金です。

申立人の請求が正当であると裁判所に認められれば、仮処分担保金は返還されます。

弁護士に依頼する場合

弁護士に代理人を依頼して開示請求を申し立てるときは、申立手数料等の他にも次のような費用がかかります。

  • 相談料:30分5,500円程度が目安。相談料が無料の法律事務所もある。
  • 着手金:依頼するときに必ず支払う費用。約20万〜40万円が目安。基本的に一括で支払う。
  • 成功報酬:申立てが認められたときに発生する費用。約10万〜20万円が目安。
  • 実費や日当:申立手数料や郵便切手・担保金の他、裁判所に出席するときや出張するときの日当(半日もしくは1日:約1万~5万円)など。

弁護士に依頼するときは60万円以上かかる場合があり、裁判所に納付する申立手数料・郵便切手・担保金を含めれば、総額100万円程度負担する必要があるでしょう。

個人で行う発信者情報開示請求のステップ

発信者情報開示請求を申立人だけで進める場合、証拠保存や必要書類の準備、裁判手続きまですべてを行わなければなりません。

発信者情報開示請求のステップを見ていきましょう。

証拠保存

まずはSNSや掲示板サイトに投稿された誹謗中傷の内容や画像、日時、URL等を保管しましょう。

次のような内容をスクリーンショット等で撮影し、証拠を保存しておくとよいです。

  • 誹謗中傷の口コミや画像・動画の投稿
  • 誹謗中傷の投稿が確認されたスレッドの名称・URL
  • レスの番号
  • 投稿日時 等

要件確認

誹謗中傷の投稿が確認できたら、発信者情報開示請求の要件を満たしているか確認しましょう。発信者情報開示請求を行うには、次の要件すべてを満たす必要があります。

要件留意点
不特定多数に向けたインターネット上の通信であること電子メールやLINEメッセージなど、個別のやりとりは対象外
誹謗中傷を受けた本人または団体が申し立てること弁護士による代理申立ても可能
投稿内容から明らかに権利侵害が認められること正当な批判や意見は対象外
損害賠償請求または刑事告訴に必要であること 
発信者情報がプロバイダ等に保管されており、開示が可能であること 
開示を求める情報が「発信者情報」に該当すること例:発信元IPアドレス、発信者の氏名・住所・電話番号・メールアドレスなど

必要書類の準備

発信者情報開示請求を行うときは、前もって必要書類を準備しておきましょう。

必要書類内容
発信者情報開示請求書投稿者による誹謗中傷等のURL情報や、掲載された情報・侵害情報を明記
請求者の本人確認資料個人は身分証明書等、法人は登記事項証明書等の写しを添付
権利侵害の証拠スクリーンショットで撮影したもの
発信者のアクセス履歴SNS・掲示板サイトの運営者等からアクセス履歴が開示されていた場合
委任状弁護士が代理人として請求する場合

任意開示請求の実施

発信者のIPアドレスを知るため、発信者情報開示請求書をSNS・掲示板サイトの運営者に送り、情報開示請求をしましょう(任意開示請求)。

IPアドレスとは、発信者が投稿で利用したパソコンやスマートフォンに割り当てられる識別符号です。

IPアドレスがわかれば、発信者の利用したプロバイダがわかります。プロバイダが判明したら今度はプロバイダに情報開示を求めましょう。

裁判手続き

任意開示請求は強制でないため、SNS・掲示板サイトの運営者が開示に応じない可能性もあります。その場合は仮処分の手続きを進めましょう。

仮処分とは、発信者情報開示請求訴訟の確定前に証拠保全のため、IPアドレスの開示を求める裁判手続きです。

仮処分が認められ、運営者側からIPアドレスが送達されれば、発信者が利用したプロバイダを特定できます。

プロバイダはインターネット接続サービスの提供事業者なので、発信者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等を記録しているでしょう。

IPアドレスでプロバイダが判明後、プロバイダに発信者情報開示を求めましょう。開示を拒否したら、プロバイダ相手に発信者情報開示請求訴訟を提起します。

なお、訴訟はプロバイダの本社所在地を管轄する裁判所で行わなければいけません。

申立人(原告)が勝訴したら、プロバイダは発信者氏名、住所等を開示します。情報開示後、申立人は発信者に法的措置(損害賠償請求や刑事告訴)等を行い、問題の解決を図ります。

個人で発信者情報開示請求を行うメリット

申立人だけで裁判所に開示請求を申し立てるときは、費用をかなり抑えられる点がメリットです。

個人が自分で開示請求する場合、合計約10~31万円が費用の目安となるものの、費用の中で大きな割合を占めるのが仮処分担保金(約10〜30万円)です。

ただし、裁判所が申立人の請求を認められば仮処分担保金は返還されます。

仮処分担保金が返還された場合、申立人の負担する費用は1万円未満で済む可能性があります。

個人で発信者情報開示請求を行うデメリット

個人の場合、一般的には法律などの専門知識が必ずしも十分ではなく、申立手続を行った経験もほとんどない場合が多いでしょう。

そのため、申立人だけで開示請求を進めると、思いのほか手間がかかることもあります。また、予想外のアクシデントが発生して対応に苦慮することもあるでしょう。

手間と時間を要する

発信者情報開示の仮処分を行えば、2週間〜2か月くらいでプロバイダが判明するとされています。最長で2か月程度かかる場合があることも念頭に置いておきましょう。

プロバイダが判明したら、今度はプロバイダに発信者情報開示を求めなければなりません。しかし、請求後に迅速な情報開示が行われるとは限らず、開示を拒否される場合もあるでしょう。

その場合、発信者情報開示請求訴訟を起こすことになりますが、発信者が特定されるまでにさらに6か月〜1年程度かかる可能性があります。

発信者が特定されるまでの手続きや時間の短縮を希望するなら、「発信者情報開示命令」制度を利用しましょう。

発信者情報開示命令は改正プロバイダ責任制限法が施行され(2022年10月1日)、新たに設けられた制度です。

発信者情報開示命令の導入により、1回の裁判手続きでSNS・掲示板サイトの運営者とプロバイダの双方に対する請求を、まとめて行えるようになりました。

発信者情報開示請求では手間・時間がかかり過ぎると思うのであれば、開示命令の利用を検討してみましょう。

受理されない場合もある

開示請求のときに提出する書類に不備があれば、SNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダから指摘を受けるか、申立てが裁判所で受理されない場合があります。

また、発信者に報復するという理由で開示請求を行うと、裁判所は受理しない可能性が高いでしょう。

開示請求は、自らの権利侵害の救済のための制度です。開示請求をするときは、憤る気持ちをなるべく抑え、理性的に手続きを進めましょう。

発信者情報開示請求の費用以外に個人が注意すべき点

発信者情報開示請求の申立人は費用だけではなく、ログ保存期間のタイムリミットがある点にも注意が必要です。

また、申立人が迅速に発信者情報開示を求めても、SNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダが任意開示に応じないこともあります。そのような場合は、すぐ他の対策を取らなければなりません。

開示請求は迅速に行う

IPアドレスはできるだけ早く開示を受ける必要があります。

なぜなら、プロバイダのログ保存期間は、発信者の投稿があったときから通常3〜6か月程度と短いからです。

ログ保存期間中に発信者が利用したIPアドレスが判明しなければ、期間経過後に発信者情報が消失してしまうリスクがあります。

任意開示に応じない場合はすぐ開示命令を利用する

任意開示は裁判所を介さずに請求できますが、強制はできません。そのため、SNS・掲示板サイトの運営者やプロバイダが開示に応じない可能性もあります。

その場合、改めて仮処分や訴訟で開示請求を行わなけれなりませんが、手間取るリスクがあります。

任意開示で手間取りたくないのであれば、訴訟手続よりも簡易迅速に進められる発信者情報開示命令を利用しましょう。

発信者情報開示請求を弁護士に依頼するメリット

発信者情報開示請求を弁護士に依頼すると、弁護士費用はかかるものの、スムーズに申立手続きを進められるでしょう。

弁護士に相談すれば、発信者情報開示請求に関する法的なアドバイスも得られます。

法的知識のアドバイス

開示請求前に、弁護士と相談すれば次のようなアドバイスを受けられます。

  • 発信者情報開示請求ができる要件を満たしているか
  • 開示請求でどのような発信者の情報がわかるか
  • 発信者情報開示請求の流れ
  • 必要な書類の説明
  • 証拠を保存する方法

的確な対応

弁護士は発信者情報開示請求の手続きを熟知しており、的確な対応を行えます。

弁護士を代理人にすれば、請求手続きが進まないためにプロバイダのログ保存期間が経過してしまい、発信者特定が不可能となるリスクを回避できるでしょう。

また書類の作成代行や、仮処分申立・訴訟提起も任せられるので、書類の準備や申立手続きに手間取る心配もなくなります。

適切額の請求

損害賠償の適正額を把握している弁護士を代理人にすれば、説得力のある損害賠償金額を提示できます。

発信者を特定した場合、申立人は損害賠償請求を行えます。発信者による誹謗中傷がどのような罪に問われるかによって、損害賠償請求の金額は異なります。

  • 名誉毀損:(個人の場合)約10~50万円、(団体の場合)約50~100万円
  • 侮辱:約1~10万円
  • 業務妨害:約100~200万円

弁護士は様々な状況を加味し、適正な賠償金額を算定するでしょう。弁護士が正確に算定した賠償金額であれば、申立人側の主張が受け入れられる可能性があります。

しかし、法外な金額を提示すれば、交渉や裁判で申立人の主張はまず通らないでしょう。

発信者情報開示請求を個人で行う前に春田法律事務所にご相談を

今回はネット上の様々な問題の解決に尽力してきた弁護士が、個人で発信者情報開示請求を行う場合の費用やメリット・デメリット等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は、ネット上のトラブルの解決に力を入れている法律事務所です。発信者情報開示請求で悩んでいるときは、まず弁護士と相談し、対応の仕方を話し合いましょう。

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