【弁護士監修】高齢者の立ち退きにおける悩みとトラブル・すべきことを徹底解説!
最終更新日: 2023年11月03日
- 賃貸人から立ち退きを要求され、転居先も決まらずどうすればよいのかわからない
- 賃貸物件を取り壊したいが高齢の賃借人がいる、何とか穏便に立ち退きを要求できないか
- 立ち退きを要求された高齢者をサポートしてくれる制度はないものだろうか
高齢の賃借人が、何らかの理由で賃貸人から立ち退きを要求されるケースもあります。
高齢者はすでに仕事を退職したり、足腰も弱っているかもしれません。立ち退きを要求されたら、今後の生活に大きな不安を抱いてしまうはずです。
そこで本記事では、数多くの立ち退き問題を扱ってきた専門弁護士が、高齢者が立ち退きを要求された場合の影響、様々な対応策や弁護士へ相談するメリット等を賃貸人の立場も含めて詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。
- 立ち退きを要求された高齢者は、立ち退きのときに大きな負担を伴う
- 賃貸人側も転居先が決まらないなど、高齢者の立ち退きがなかなか進まないリスクはある
- 立ち退きを要求された高齢者は、公的な助成制度の利用や弁護士に相談する等して、柔軟に対応策を検討できる
立ち退きで高齢者が抱える主な悩み【賃借人】
賃貸人から高齢者である賃借人が立ち退きを要求された場合、様々な不安や悩みを抱えるかもしれません。
こちらでは想定される困難な作業、費用負担、精神的な負担について解説しましょう。
現状の住まいがなくなる
立ち退きにより高齢者は生活の拠点を失う事態となります。立ち退きを要求されたからといって、現在の賃借物件を退去後に路上生活となるような事態は避けなければなりません。
しかし、立ち退き後の転居先はどうするのか、費用負担はどうすればよいのか、新たな環境で生活していけるのか、という様々な不安に悩まされます。
自分一人で悩むのではなく、事前に最寄りの市区町村へ相談したり、法律の専門家である弁護士に相談したりして、対応を話し合った方がよいでしょう。
転居先の確保が困難
高齢者が単身で賃貸物件に入居を希望する場合、部屋の中で賃借人が体調を崩して、そのまま死亡してしまうケースを危惧する賃貸人もいます。
そのため、賃貸人によっては高齢者の入居を拒否する可能性があります。
また、高齢の賃借人はすでに仕事を引退している人が多く、年金だけが収入源になっている場合も珍しくありません。賃貸人としては家賃を滞納される不安もあります。
そのため、賃借人が高齢者の場合、希望に合った転居先が見つかっても、その確保は難しく、契約・入居に時間がかかる場合があります。
費用がかかる
現在の賃貸物件から退去するために、予定外の引越し費用がかかってしまいます。年金収入だけでは大きな費用負担になるかもしれません。
しかし、賃借人である高齢者本人が、契約違反で立ち退き要求された場合を除き、基本的に賃貸人から立ち退き料が支払われるはずです。
この立ち退き料には引越し費用も考慮されるため、まず賃貸人から提示された立ち退き料が、自分にとって適正な金額かどうかよく確認しておきましょう。
引越し作業が困難
現在の賃貸物件から退去する場合、家財道具も転居先に運んだり、処分したりする必要があります。
足腰が弱ってしまった高齢者にとって、引越し作業は大きな負担です。本人が作業できない分、引越し作業員の増員を引越し会社へ依頼する必要がでてくるはずです。
このような高齢者の負担をカバーできるように配慮された立ち退き料となっているか、立ち退き通知等を受けたときに確認する必要があります。
近所付き合いがなくなる
現在の物件の他の賃借人と交友関係にある場合、その全員が立ち退きを要求されることもあります。しかし、友人たちが自分と同じ転居先で新たな生活を始められるとは限らず、みんなバラバラになる可能性もあり、近所付き合いがなくなってしまうおそれもあります。
転居先が決まったら、その住所や電話番号を教え合う等、交流が途絶えないように工夫しましょう。
新環境への適用が困難
高齢者の希望に沿った物件に引越したとしても、新しい場所でなかなか落ち着かないと感じる人もいます。
たとえば、立ち退き前は閑静な環境で生活していたが、転居先は時間帯によって周辺の騒音があって慣れない、という場合もあるはずです。
一度、受け入れた立ち退きの条件を、後から変更することは難しいものです。転居先は慎重に選ぶとともに、転居後は新しい環境に慣れるように心がける必要があります。
立ち退き料の交渉が困難
賃貸人から立ち退き料が提示された場合でも、まずはその金額が適正かどうか、よく確認しておく必要があります。
- 賃貸物件の立ち退き料は家賃の何か月分となっているか
- 立ち退き料に引越し費用は含まれているのか
- 敷金の返還はどうなるのか 等
以上のように確認するべき事項は多いといえます。
立ち退き料に納得できなければ賃貸人側と交渉するべきですが、自分自身では難しいかもしれません。
立ち退き料は、法律の専門家である弁護士に相談し、代わりに交渉してもらうことをお勧めします。
立ち退きでありがちな高齢者のトラブル【賃貸人】
立ち退きを要求する側の賃貸人も、高齢者との交渉が難航して頭を抱える事態になるかもしれません。
こちらでは、高齢者とトラブルになるケースを解説しましょう。
感情的になり交渉が進まない
家族と疎遠となっている、または身寄りがない高齢者は、現在の賃貸物件が唯一の生活の本拠といえます。
そこから立ち退きを要求された場合の反発は、予想以上に強いかもしれません。賃貸人・賃借人が直接話し合いをすると感情的になり、なかなか立ち退きが進まなくなる場合もあります。
そのため、賃貸人側も弁護士のような専門家を立てて、交渉にあたった方がよいでしょう。交渉がうまくいかなかった場合、弁護士へ依頼すれば代理人として裁判所に物件からの退去や明渡し請求などの訴えも提起してくれます。
また、賃貸人に正当事由がある場合、立ち退きを命じる判決を獲得できるかもしれません。
立ち退きが遅れる
無職でかつ収入が年金のみとなっている高齢者は、転居先がなかなか見つからず、立ち退きが遅れるおそれもあります。
このようなケースも考慮し、賃貸人側が高齢者でも入居可能な賃貸物件を積極的に紹介したり、あっせんしたりすれば、立ち退き交渉が成立する可能性は高くなるはずです。
立ち退きを要求されたら高齢者がすべきこと【賃借人】
立ち退きを要求された賃借人は、次のような制度の利用や相談をして、柔軟な対応を行うことも必要です。
- 助成制度の活用
- 落ち着いた対応
- 弁護士への相談
それぞれの対応について解説していきます。
助成制度の活用
地方自治体によっては、立ち退きを要求された賃借人に対し、引越し費用の一部を助成する制度が設けられています。
主に次のような助成金があります。
助成金 | 助成内容 |
住宅家賃助成金 | 転居先の家賃と立ち退きする前の家賃との差額を助成。 |
転居費用助成金 | 引越し費用・今までの家賃と転居後の家賃の差額等を助成 |
ただし、助成金の名称の他、助成金が適用される費用負担の範囲、助成金額や条件は、地方自治体ごとにかなり異なります。
まずは、地方自治体(市区町村役場)の窓口で相談し、詳しく助成内容を確認しましょう。
なお、高齢者が賃借物件をスムーズに見つけられるよう、連帯保証人の役割を果たす「家賃債務保証業者登録制度」を国土交通省が設けています。
家賃債務保証会社登録制度に登録された保証会社を利用すれば、賃貸人も安心して高齢者と賃貸借契約を締結できるはずです。
落ち着いた対応
立ち退きを要求された高齢者は、地方自治体や政府から様々な支援を受けられる可能性があります。
そのため、立ち退きを要求されても慌てずに、立ち退き条件を確認しましょう。もちろん、立ち退き通知に不明な点があれば賃貸人や不動産会社へ問い合わせましょう。
立ち退き条件に納得すれば、賃貸人側と立ち退き合意書(契約書)を取り交わしても構いません。ただし、適正な立ち退き条件か疑問が残るなら、次項のように弁護士に相談してみるのもよい方法です。
弁護士への相談
立ち退き条件に不満がある、賃貸人との交渉がうまくいかないという場合、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
ただし、弁護士なら誰でもよいというわけではなく、立ち退き交渉・訴訟に実績のある弁護士を選ぶ必要があります。
経験豊富な弁護士か否かは、まず法律事務所のホームページで確認します。
法律事務所のホームページで立ち退き交渉の成功事例や、立ち退き交渉の相談実績等が詳しく掲示されているなら、立ち退き問題を得意としている可能性があります。
まずはホームページで候補を絞り込み、相談した上で、交渉依頼を行うべきか検討しましょう。
高齢者の立ち退きを進めるためにすべきこと【賃貸人】
高齢者に立ち退き要求をする場合、まずは弁護士に相談してから手続きを進めた方が、トラブルの軽減につながるはずです。
大まかな立ち退き交渉の流れは次の通りです。
- 弁護士への相談
- 賃貸契約の解約通知
- 立ち退き交渉
- 立ち退きの合意・実行
それぞれの手順について解説していきましょう。
弁護士への相談
賃貸人はどのように立ち退き交渉を進めるべきか、弁護士に相談しましょう。
弁護士は立ち退き交渉を進める前に、以下のような点を確認します。
- 賃貸人に立ち退きを要求する正当事由(やむを得ない理由)はあるのか
- 立ち退き要求を行う期間は十分な猶予期間が設けられているか
- 立ち退き条件はどのような内容を想定しているか(例:立ち退き料は賃貸期間の〇か月分等)
- 賃借人に入居可能な賃貸物件の紹介、あっせんを行うのか
- 賃借人に賃貸借契約の違反があったか 等
なお、立ち退きの要求は契約期間満了の半年〜1年前に、立ち退き交渉をする必要があります(借地借家法第26条)。
この期間よりも短い期間で進めようとしても、賃借人に従う義務はありません。
賃貸契約の解約通知
弁護士と相談後は賃貸借契約の解約通知を行います。解約通知は遅くとも契約期間満了の半年前までに賃借人へ届けなければいけません。
主に次のような内容を明記します。
解約通知書の項目 | 内容 |
賃貸借契約の内容 |
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立ち退き理由 | 賃貸物件から立ち退いてもらいたい理由(例:耐震性に問題があるため取り壊す 等) |
立ち退き条件 |
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賃貸物件の情報 |
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賃貸人が賃借人へ直接渡すのが確実です。しかし、賃借人と連絡が取れない場合は、通知の日付を確定する「配達証明付き内容証明郵便」で郵送した方がよいでしょう。
立ち退き交渉
立ち退きまでのスケジュール、賃借人に支払う立ち退き料等、具体的な条件を示して賃借人と話し合います。
当然、賃貸人側の言い分だけではなく賃借人の主張も良く聴き、双方が歩み寄れる交渉条件で合意を得たいものです。
賃借人全員との交渉成立ができるよう、弁護士の力も借りて進めていきましょう。
立ち退きの合意・実行
賃借人と立ち退き条件で合意を図れたなら、賃貸人・賃借人双方との間で、合意書(契約書)を取り交わし、明渡承諾書も作成します。
合意内容を書面化し、双方が署名・捺印をすれば、合意後に賃借人から立ち退きを拒否される事態もないはずです。
高齢者の立ち退きは専門弁護士への相談がおすすめ
今回は数多くの立ち退き交渉に実績を持つ専門弁護士が、高齢者の立ち退き問題、弁護士へ立ち退きについて相談するメリット等を詳しく解説しました。
高齢者が立ち退く場合は、若い方々よりも転居先が見つけにくいのは事実です。公的な支援制度や、弁護士の助力も受けながら立ち退き問題に対処していきましょう。
立ち退き交渉のときは弁護士のアドバイスやサポートを得つつ、迅速な交渉成立を目指してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。