介護事故の専門弁護士が教える相談・依頼のメリット・デメリット・選び方

介護事故の専門弁護士が教える相談・依頼のメリット・デメリット・選び方

2021年04月13日

大切なご家族が介護施設で事故に遭ってしまったとき、弁護士に相談をするべきでしょうか?

 

弁護士への相談をためらっていた、悩んでいた」というお話を聞くことがあります。

今までお世話になった施設だから感謝の気持ちや遠慮がある、弁護士に依頼することで施設側との争いが本格化してしまうと感じる等の理由が多いと感じます。

他にも、ご家族が選んだ施設での事故の場合には、施設を選んだご家族が自責の念を感じているとのお話を聞くこともあります。

このように、交通事故と比べて、介護事故の場合には弁護士に相談することに、やや抵抗があることが多いのではないでしょうか。

しかし、事故について納得がいかない、施設側の説明や対応が不誠実であると感じるのであれば、弁護士に相談するべきです。

以下では、年間200件以上の介護トラブルの相談を受けてきた弁護士が、介護事故について専門の弁護士に相談することのメリットやデメリットなどを解説いたします。

この記事を監修したのは

弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所に勤務
春田法律事務所 入所

1.介護事故は弁護士に「相談」するべきか?

困ったことが起きたときに、家族や友人、信頼のできる人に相談をしたという経験がある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。同じように、弁護士にも相談をすればよいのです。

「これって、弁護士に話すことなのかな?」、「施設側に情報が伝わってしまうのでは」などの不安があるかもしれませんが、少しでもお悩みなのであれば、まずは、弁護士に「相談」することが重要です。

些細に感じられることでも、弁護士に相談をして、気にしなくてもいいですよと言われたら、心配を取り除くことができるでしょう。もしかしたら、大きな紛争の火種に早い段階で気づくことができるかもしれません。

弁護士は守秘義務を負っていますので、あなたが相談した内容が外部に漏れることは、ありません。

さきほど述べたとおり、介護事故の場合には、今までお世話になってきた施設が相手となるため、あまり揉めたくないとの思いもあるでしょう。

しかし、弁護士に「相談すること」は、「相手と揉めること」とイコールではありません。

多くの方が、介護事故という初めての状況に直面し、どうしたらよいかわからない中、専門家にアドバイスを求めているだけなのですから、弁護士に「相談すること」が「相手と揉めること」では、決してないのです。

なお、弁護士に「相談」をすることと、「依頼」をすることは、全く別の段階です。
相談をしたからといって、必ず依頼しないといけないわけではなく、相談を踏まえて依頼をするか否かを決めるという流れで進むことが一般的です。
そのため、弁護士への「相談」について、慎重になりすぎる必要はないでしょう。

2.介護事故の「依頼」を受けた弁護士ができること

介護事故について「依頼」をした場合、弁護士はどのようなことができるのでしょうか。
次の4つが考えられます。

  • 証拠の収集や保全
  • 責任追及の可否の検討
  • 施設側との交渉(示談交渉)
  • 訴訟等

それでは、それぞれ解説していきます。

証拠の収集や保全

介護事故に関する証拠の多くは、介護施設側が作成した介護記録等の書類です。そのため、ご本人やご家族から、施設に対して書類開示を求めることも可能です。

ただ、ご家族は、どのような書類が介護事故において重要なのかわからない場合が多いですので、どのような場面で、どのような書類を作成し保管しているのか熟知した弁護士を通じて請求を行うことが望ましいといえます。

また、それまでの施設側の対応から、証拠の改ざんや隠滅などのおそれがあると考えられる場合には、その時点での証拠を保全するため、裁判所に証拠保全(民事訴訟法234条)という手続の申立てをすることもあり得ます。

責任追及の可否の検討

証拠書類を確保したら、それをもとに、施設側の責任を追及できるか否かを慎重に検討します。

責任追及をする前提として、施設側に安全配慮義務違反があるか否か、過失があるか否か、という点が極めて重要ですが、この判断には法的な知識や経験が不可欠ですので、専門家である弁護士の意見を聞く必要があります。

施設側との交渉(示談交渉)

責任追及が可能であるとの見通しであれば、施設側との交渉(示談交渉)を進めます。
いきなり裁判をするのではなく、まずは交渉を通じて、話合いでの解決を図ることが一般的です。

経験上、この時点で、施設側にも弁護士が介入することが多く、弁護士同士の交渉で、事件が進展していきます。

訴訟等

示談交渉で折り合いがつかない場合には、訴訟提起に進むことが一般的です。そのほかにも、裁判所を通じた話合いの場として、調停手続を選択することもあり得ます。

3.介護事故を弁護士に「依頼」するメリット・デメリット

ここでは、介護事故を弁護士に依頼するメリットとデメリットについて解説をしていきます。

まずは、メリットから見てきましょう。

介護事故を弁護士に「依頼」するメリット

依頼を受けた弁護士ができること、事件の流れを確認しましたが、
介護事故を弁護士に「依頼」するメリットは、どういったところにあるのでしょうか。

依頼をするメリットは以下の3つです。

  • 専門的な見地からのアドバイスや見通しの説明
  • 適切な額の賠償金の獲得
  • ご本人やご家族の負担を軽減できること

それでは、それぞれを解説していきます。

専門的な見地からのアドバイスや見通しの説明

1つ目のメリットは、専門的な見地からのアドバイスや見通しの説明です。

よく、介護施設の中で怪我をしたのだから、施設に責任があって当然だとのお話を聞きますが、施設内での事故であったとしても、必ず施設に法的責任が認められるわけではありません(施設の法的責任に関する考え方は、別の記事で説明しています。)

そのため、施設に責任追及をすることが可能な事案かどうかを、見極める必要があるのです。

弁護士に依頼をすれば、事件の見通しについて説明を受けたうえで、その見通しを前提に、どのように事件を進めていくのかという提案やアドバイスを受けることが可能です。

適切な額の賠償金の獲得

2つ目のメリットは、適切な額の賠償金の獲得です。

たとえば、ご家族が施設側との交渉で一定の賠償金の提示を受けておられるケースもあります。

ただ、ご家族が受けている提示は、訴訟などをした場合に認容されるであろう金額と比較して低額にとどまっていることがほとんどです。

弁護士が介入することで、賠償実務上相当とされる金額まで提示額を引き上げる可能性が高まります。

また、施設側が提示できていない損害などについても、こちらから積極的に主張・立証をすることで、検討の対象にしてもらうことも可能です。

本人やご家族の負担を軽減できること

3つ目のメリットは、ご本人やご家族の負担を軽減できることです。

ご家族が介護事故で怪我をしたという状況は、ただでさえ精神的に負担の大きい状況でしょう。その中で、施設との話合いなどを進めることは、困難です。

また、施設側からの説明が適切なものなのかどうかを見極めることも難しいでしょう。

そのため、弁護士に依頼して、窓口を弁護士とすることで、直接の交渉による負担を軽減することができるのです。

介護事故を弁護士に「依頼」するデメリット

では、弁護士に依頼するデメリットもあるのでしょうか。場合によっては、次の2点がデメリットと言えるかもしれません。

  • 費用がかかる
  • 心理的な抵抗

それではそれぞれ見ていきましょう。

費用がかかる

まずは、費用がかかる点です。交渉や、訴訟などの裁判手続を依頼する場合には、やはり、それなりの弁護士費用が必要です。

事案によっては、施設側の責任追及が難しく、費用倒れとなってしまうこともあり得るでしょうから、費用がかかることはデメリットといえるでしょう。

心理的な抵抗

次に、弁護士に依頼することを「徹底抗戦」のように捉えており、トラブルが深刻に、大きくなってしまうのではないかと懸念を抱く人もいるでしょう。

では、実際に、弁護士に依頼することへの心理的抵抗は、デメリットといえるのでしょうか。

確かに、弁護士と聞いて、「裁判」をイメージする人は多いでしょう。しかし、実際には、弁護士は、相手方と常に「徹底抗戦」しているわけではありません。依頼者と相手方の主張を調整して、可能な限り、円満な解決策を探ることも弁護士の重要な役割なのです。

特に、介護事故の分野では、それまでの利用者側と施設側との関係性を尊重することが求められますので、「弁護士に依頼すること」=「トラブルが深刻になる、大きくなる」というわけでは、ありません。

もちろん、不誠実な対応を続ける施設に対しては、権利の実現を目指して徹底抗戦するべきですが、弁護士を介入させることで、むしろ柔軟な対応につながったというケースも多く存在します。その意味で、弁護士への依頼に対して、心理的な抵抗を感じるとしても、そのこと自体はデメリットではありません。

4.介護事故を相談・依頼する弁護士はどうやって選べばいい?

これまで、介護事故については、弁護士に相談・依頼することが重要であると説明してきましたが、実際に相談・依頼する弁護士はどのようにして決めればよいのでしょうか。

 

(1)介護事故について専門的な知見を有しているかどうか

まずは、介護事故について詳しく、専門的な知識・経験を有しているかどうかです。

介護事故という分野は、弁護士の取り扱い分野の中でも、比較的専門性が高い分野であり、介護分野の事件を取り扱った経験のない(または、少ない)弁護士もいらっしゃるでしょう。

また、施設側への責任追及が可能かどうか判断するためにも、介護現場での実務や行動を把握していることが必要とされます。

このように、介護事故について専門的な知見を有する弁護士に相談・依頼することが重要です。

(2)介護事故事案についての業務内容と費用を明確に示しているか

次に、弁護士との契約の内容を明確に説明してくれるか否かも重要です。

せっかく、弁護士に依頼をしても、その弁護士と報酬のことで揉めてしまっては、元も子もありません。

たとえば、弁護士にお願いする内容は、施設側との交渉だけにとどまるのか、訴訟までも含むのか、訴訟の場合には追加の費用がかかるのか、弁護士が裁判に出廷する場合に日当は必要なのか等の条件を、わかりやすく、明朗に説明してくれる弁護士に頼むべきでしょう。

(4)弁護士が疑問点にきちんと回答してくれるか

私の経験上、介護事故に巻き込まれてしまうことも、弁護士に依頼をすることも初めてという方が大半です。

これからどうなって行くのだろうか、解決までにどれくらいの時間や費用がかかるのだろうか、施設の言い分は正しいのだろうか等、たくさんの疑問が湧いているでしょう。

ぜひ、こういった疑問を弁護士に伝えてみてください。
前提の情報が不足して、暫定的な回答しかできない場合もありますが、真摯にあなたの疑問に答えようとしてくれるかどうか確認してみてください。

また、弁護士への相談や・依頼も、人間同士の関わりですので、弁護士との「相性」も重要です。真摯に回答してくれているとは感じられても、相性が合わないのであれば、別の弁護士と会ってみることも大切だと思います。

(5)セカンドオピニオンの重要性

近年、お医者さんの診断については、広くセカンドオピニオンが重要であるとの考え方が広まっているようです。

弁護士についても同様で、同じ専門家であっても、事件についての判断や解決方針が異なることもあり得ます。

ある弁護士に「依頼」している状況であっても、別の弁護士に「相談」することは可能ですので、気になることがあれば、セカンドオピニオンを検討してみてください。

5.介護事故の相談の流れと弁護士費用

ここでは最後に、介護事故の相談の流れと弁護士費用について見ていきましょう。

(1)相談の前に準備しておくことはある?

初回の相談時点では、介護事故について十分な情報収集ができていない場合もあるでしょう。もっとも、当然のことながら、多くの資料や情報を事前に準備できた方が、相談はより充実したものになるでしょう。

初回相談では、特に施設側に責任追及が可能かどうかを中心にお話することが多いですので、介護事故の状況(施設からの説明の内容)、事故に遭ったご本人の事故前の生活状況や要介護度、認知症の有無や程度を整理しておくとよいでしょう。

また、施設側に対して、利用者の状態をどのように説明していたのか、施設がどのように認識していたのか等の事情も重要です。

(2)介護事故を弁護士に「相談」した後は?

弁護士に「相談」をした後は、見通しや方針についての説明を聞き、弁護士報酬を確認したうえで、その弁護士に「依頼」をするか否かを決めます。

「相談」をしたからといって、必ず「依頼」をしないといけないわけではありません。
また、「相談」をしたその日に、「依頼」するかどうかを決める必要はありませんが、早く決めることで、弁護士も早くに事件への対応を開始することができます。

(3)弁護士に依頼した事件はどのように進んでいくのか?

その後、事件はどのように進むのでしょうか。

1.証拠収集
資料が十分に揃っていない事件では、まずは資料収集からスタートすることになります。

弁護士から、施設側に対して、資料を提供するよう求めます。
施設が任意の開示をしない可能性が高い場合や改ざんが懸念される場合などは、先ほど説明した証拠保全という手続をとることもあります。

2.施設側への通知
既に十分に資料が整っている事件では、証拠収集の作業を行わない場合もあります。

資料や情報が一定程度揃ったタイミングで、資料を弁護士が精査し、施設側への通知文書(多くの場合、この通知文書によって、損害賠償請求を開始することになります)を作成します。

記録の分量にもよりますが、慎重に資料を精査し、法的構成を決めなければなりませんので、相当な準備期間が必要な場合もあります。
具体的な目安は、担当の弁護士に確認すればよいでしょう。

3.施設側との交渉
通知文書を踏まえ、施設側と交渉します。
この時点では、施設側も弁護士に依頼することが多く、弁護士同士が書面でのやり取りを展開することが多いです。

4.訴訟提起等
交渉での解決が望めない場合には、訴訟を中心とする裁判手続に臨むことになります。

裁判に移行した場合、そこから1年以上の期間を要することが一般的です。

(4)弁護士費用は?

ここまで、弁護士に依頼することのメリットやデメリット、弁護士に相談・依頼する方法などを説明してきましたが、やはり費用がどのくらい必要なのかは、みなさん気になるところだと思います。

結論から言うと、法律事務所ごとに料金体系を定めていますので、具体的な金額をここに記載することはできません。

ただ、相談料は1時間1万円~2万円程度と設定している法律事務所が多く、中には相談料は無料とする法律事務所もあるようです。

また、依頼をした場合の費用は、弁護士に依頼する業務の範囲によって異なります。
交渉のための着手金として20~30万円程度がかかることが多く、裁判などの手続に移行した際に、追加で着手金が発生する料金体系をとる法律事務所が多いようです。

これとは別に、施設側から賠償金を得られたら、そのうちの一部(10%~20%ほど)を成功報酬と金額だけを見ると高額に感じると思いますが、お怪我の程度によっては数百万円以上を請求することも多く、事案の複雑さや経験が重要であることなどを考慮すれば、それなりの費用が必要であることはやむを得ないと思います。

だからこそ、見通しや方針をきちんと説明してくれる弁護士に依頼することをお勧めいたします。

6.介護事故相談の過去事例

ここで、1つ過去の事例をご紹介します。

その事案は、ある施設の利用者さんが、施設内で転倒し骨折、その後、搬送先の病院でお亡くなりになった事案でした。

ご相談前の段階で、ご家族は、施設や施設側の保険会社からの説明を受けておられましたが、その説明は十分なものとは言い切れず、単に、施設に責任がないとの結論のみを伝えられるばかりでした。

このような状況に疲れ果てたご家族からご相談を受けました。

ご家族が一定の資料をお持ちでしたので、それをお預りして検討したところ、過去の同種の裁判例に照らしてみても、施設側に法的責任が認められる可能性の高い事案ではないかと判断しました。

ご家族にその旨を説明したうえで、ご依頼を受け、弁護士から施設側に当方から丁寧に主張をしたところ、施設側は、これまでは全面的に否定していた責任の一部を認めたうえ、相応の賠償金が提示されるに至りました。

これほど早期に状況が好転することはとても珍しいですが、弁護士に依頼をしたことで、それまでは、責任がないとの結論ばかりが伝えらえていた状況から、一歩踏み込んだ議論をすることができたことが、良い結果につながった一因ではないかと考えます。

このように、介護事故においては、個別の事案に応じた具体的かつ詳細な検討が不可欠ですので、弁護士への相談や依頼の必要性は高いといえるでしょう。

7.まとめ

まとめ

以上のとおり、弁護士に依頼をするには、もちろん費用が必要です。

しかし、費用がかかるとはいえ、専門的な知識・経験が必要な分野において、ご本人やご家族の負担を軽減しながら、交渉を進められるのは、弁護士しかいません。

介護事故で少しでもお困りであれば、早めに、介護分野に強い専門の弁護士に相談することが大切です。

この記事を監修したのは

弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所に勤務
春田法律事務所 入所

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